- 1.はじめに
- 2.倉庫業界の現状と物流業界全体の課題
- 3.倉庫業界におけるM&Aの活発化要因
- 4.倉庫業界におけるM&Aの主な目的
- 5.主要M&A事例一覧と解説
- 5-1. 守谷商会と未来ネットワーク(2024/11/08)
- 5-2. ヤマトホールディングスとナカノ商会(2024/11/05)
- 5-3. 堂島汽船による兵機海運へのTOB(2024/10/18)
- 5-4. 丸一鋼管と佐藤型鋼製作所(2024/09/06)
- 5-5. シーズメンのゼアー「テモトル」事業取得(2024/08/08)
- 5-6. GFAとフィフティーワン(アークサービスへの譲渡)(2024/07/26)
- 5-7. 売れるネット広告社とアクセスブライト(2024/06/28)
- 5-8. ヒガシトゥエンティワンとネオコンピタンス(2024/06/14)
- 5-9. 芙蓉総合リースとタイのPLIC(2024/05/31)
- 5-10. サクサホールディングスとソアー(2024/05/29)
- 5-11. コアコンセプト・テクノロジーとPro-X(2024/04/16)
- 5-12. バローホールディングスと鷺富運送(2024/04/02)
- 5-13. 古林紙工と金剛運送(2024/03/19)
- 5-14. トナミHDとアペックス(民事再生支援、2024/03/15)
- 5-15. ニッコンHDとミツバロジスティクス(2024/03/14)
- 5-16. ネクスグループとケーエスピー(2024/02/22)
- 5-17. J-MAXの中国子会社「広州恒邦倉儲」譲渡(2024/01/31)
- 5-18. KeyHolderとトポスエンタープライズ(民事再生支援、2024/01/26)
- 5-19. 安田倉庫とHIROMIカンパニー(オリエント・サービス、2023/12/22)
- 5-20. エムティジェネックスとアイテック(2023/12/13)
- 5-21. 五健堂とナワショウの神奈川・愛知拠点(2023/12/11)
- 5-22. 関通と河出興産(2023/11/15)
- 5-23. イチネンHDと日東エフシー(インテグラル傘下、2023/10/31)
- 5-24. トナミHDによる山一運輸倉庫・丸嶋運送の買収(2023/10/02・03)
- 5-25. レオパレス21のベトナム子会社ASPENN INVESTMENTS譲渡(2023/08/08)
- 5-26. 西本Wismettac HDとイタリアUniontradeなど2社(2023/06/30)
- 5-27. ニチレイとタイ合弁SCG Nichirei Logistics(2023/06/20)
- 5-28. 安田倉庫とシンガポールWGS・インドWGI事業(2023/06/08)
- 5-29. トーヨーカネツとスクラムソフトウェア(2023/05/24)
- 5-30. 三菱倉庫による米国Cavalier Logistics買収(2023/04/28)
- 5-31. クルーズによるYESをシンメイへ譲渡(2023/04/25)
- 5-32. イムラによるロジテック子会社化(2023/04/03)
- 5-33. 安田倉庫とOSO(2023/02/03)
- 5-34. 中央倉庫とテスパック(2023/01/19)
- 5-35. 安田倉庫とエーザイ物流(2022/12/28)
- 5-36. 日立物流とオランダCyber Freight(2022/09/29)
- 5-37. GFAとフィフティーワン(2022年株式交付)
- 5-38. 丸井織物による倉庫精練へのTOB(2022/08/08)
- 5-39. 渋沢倉庫と平和みらい(2022/05/31)
- 5-40. 米KKRによる日立物流へのTOB(2022/04/28)
- 5-41. 住友倉庫の米海運子会社ウエストウッド譲渡(2022/04/28)
- 5-42. 鴻池運輸と前川運輸(ベストラインへの譲渡、2022/03/18)
- 5-43. ヨシムラ・フードHDとシンガポールSNF(2021/12/08)
- 5-44. 安田倉庫と南信貨物自動車(2021/10/08)
- 5-45. 光村印刷と光村商事倉庫(保険代理店事業譲渡、2021/07/29)
- 5-46. アシードHDとロジックイノベーション(2021/07/01)
- 5-47. トナミHDによる高岡通運追加取得(2021/05/12)
- 5-48. 川崎汽船の米国子会社CDS譲渡(2021/04/30)
- 5-49. 廣済堂によるエヌティ・Neoの子会社化(2021/04/15)
- 5-50. チェンジによるビーキャップ子会社化(2021/03/05)
- 5-51. SBSHDによる東洋運輸倉庫買収(2020/12/24)
- 5-52. トーモクと玉善(タマゼン設立、2020/12/23)
- 5-53. トナミHDと御幸倉庫(2020/12/01)
- 5-54. 守谷商会のゴルフ事業(菅平峰の原グリーン)譲渡(2020/11/26)
- 5-55. 麻生グループによる東都水産へのTOB(2020/11/09)
- 5-56. ナガワと鳥海建工(2020/09/04)
- 5-57. UACJがUACJ物流をセンコーへ譲渡(2020/08/28)
- 5-58. キユーソー流通システムとインドネシアKIAT ANANDA(2020/08/27)
- 5-59. 丸和運輸機関と日本物流開発(2020/08/20)
- 5-60. トナミHDと新生倉庫運輸(2020/07/31)
- 5-61. 大王製紙とケイジー物流(2020/05/27)
- 5-62. カクヤスとサンノー(2020/04/06)
- 5-63. 乾汽船の次期中計公表見合わせ(コロナ影響、2020/03/06)
- 5-64. 安田倉庫と大西運輸・オオニシ機工(2019/09/27)
- 5-65. 米国M&A速報(倉庫自動化関連、2019/09/16)
- 5-66. J-オイルミルズと坂出事業所倉庫・不動産譲渡(2019/08/28)
- 5-67. 内外トランスラインと韓進海運新港物流センター(2019/02/15)
- 5-68. あじかんと井口産交(2019/02/01)
- 5-69. ニッコンHDと松久運輸・松久総合(2018/12/07)
- 5-70. 倉庫精練のメキシコ子会社を米SAGEへ譲渡(2018/07/31)
- 5-71. SBSHDとリコーロジスティクス(2018/05/18)
- 5-72. トーホーと神戸営繕(2009/09/07)
- 5-73. スズケンと中央運輸(完全子会社化、2009/05/26)
- 5-74. 特別目的会社SSTによる品川倉庫建物へのTOB(2009/04/20)
- 5-75. キムラユニティーと広州広汽豊通物流器材(2009/03/23)
- 5-76. 近鉄エクスプレスとタイTKK Logistics(2008/12/24)
- 5-77. コマーシャル・アールイーと天幸総建(2008/05/14)
- 5-78. スルガによる上海三伍服飾配件(2008/02/29)
- 5-79. マルハニチロHDと大興製凾(レンゴーへ譲渡、2008/02/25)
- 5-80. ホウスイと中央冷凍(2008/01/10)
- 5-81. 日本水産グループ内再編(ホウスイ・水産流通・中央魚類)
- 5-82. 三井倉庫と富士物流(TOB、2010年)
- 5-83. ニチレイとフランスの低温物流会社(2010年)
- 5-84. トナミHDと第一倉庫(INPEXグループ、2010/01/18)
- 5-85. VTホールディングスとHDアセットマネジメント譲渡(2009/12/14)
- 5-86. 大明・コミューチュア・東電通の共同持株会社(2009/11/27)
- 5-87. 日新と鶴見倉庫(2009/11/04)
- 5-88. その他参考事例の総括
- 6.倉庫業界M&Aがもたらすシナジー要素
- 7.倉庫業界M&Aのメリット・デメリット
- 8.倉庫業界M&Aの今後の展望
- 9.まとめ
1.はじめに
倉庫業界は日本の産業活動を根幹から支える物流インフラの一角を担っております。近年、物流は大きな変革期を迎えており、EC(電子商取引)の急拡大やグローバルサプライチェーンの複雑化、人手不足の深刻化など、数多くの課題と直面しています。
特にECの成長により、消費者の「翌日配送」「当日配送」といったニーズが一般化し、小口多頻度化された荷物を扱う倉庫の役割が飛躍的に増大いたしました。一方で、倉庫会社は設備投資の負担や労働力確保の問題を抱え、自社だけでの対応が難しくなりがちです。こうした背景のなか、企業買収や合併、事業譲渡といったM&Aの手法が、倉庫業界の課題解決策として急速に注目を集めるようになりました。
本稿では、倉庫業界におけるM&Aの活発化要因や、具体的な事例、それらがもたらすシナジーや業界再編の行方について、可能な限り網羅的に解説いたします。また、事例ごとに簡潔なポイントをまとめ、読みやすい形で情報提供いたしますので、ご自身や企業の状況と照らし合わせながらご活用いただければ幸いです。
2.倉庫業界の現状と物流業界全体の課題
2-1. 倉庫業界の位置づけ
倉庫業界は「モノを預かり保管する」という伝統的な役割を担うだけでなく、近年ではサプライチェーン全体を可視化し、在庫管理や流通加工、受注・出荷業務の一括代行など、3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)の一部を請け負う機能が求められるようになりました。
かつてのように「倉庫だけを提供している」企業モデルは、競争力の維持が難しくなりつつあります。製造業や小売業では、物流をアウトソーシングする動きが進んでおり、倉庫業者には単にスペースや保管サービスを提供するだけでなく、情報システムや輸送網を含めたトータルソリューションの提供が強く望まれています。
2-2. 物流業界全体が抱える共通課題
物流業界では、下記のような問題が依然として深刻化しています。
- 人手不足:ドライバーや倉庫内作業員の確保が困難で、コスト高を招く。
- 物流拠点の都市部偏在:都心近郊は倉庫用地の確保が難しく、賃料も高騰している。
- EC拡大による小口多頻度化:小売店・消費者への細かな配送が当たり前になり、作業負担が増大。
- 環境規制とカーボンニュートラル:再生可能エネルギーの採用や省エネ設備投資などへの取り組み。
- 物流DX(デジタル化):倉庫内作業の自動化、在庫情報のリアルタイム管理など、IT投資が急務。
これら課題の解決策として、大手企業がスケールメリットを得ながら複数拠点を統合・最適化する、あるいはIT企業や海外物流企業を買収してノウハウを迅速に取り込む、といったM&Aが盛んになっているのです。
3.倉庫業界におけるM&Aの活発化要因
3-1. サプライチェーン効率化と拠点拡充ニーズ
国内外にまたがる物流をスムーズに行ううえでは、拠点網や輸送手段を広くカバーできる企業が有利です。しかし、ゼロから自前で拠点網を構築するには莫大な費用や時間がかかります。このため、地域に根ざした倉庫会社や運送会社を買収し、そのリソースを素早くグループ化していく動きが多く見られます。
3-2. EC市場の拡大と多頻度・短納期配送への対応
EC市場は今後も拡大傾向が続く見通しです。従来の大量一括出荷に比べ、小口を多頻度に発送するオペレーションが必要であり、倉庫側での仕分けや梱包にかかる手間が一段と増えています。配送スピードの要請も高まっており、それに対応できる倉庫体制と運送ネットワークを一元管理できる企業が強みを発揮しています。M&Aにより短期間で必要機能をそろえるケースが増えています。
3-3. 労働力不足と人件費高騰
荷役作業や仕分け、検品といった倉庫内業務は、まだまだ人手が必要な場合が多いです。一方で国内の少子高齢化により、労働力確保が容易ではありません。倉庫をロボット化・DX化する投資も急務ですが、多額の資金が必要となり、単独企業ではリスクが大きいです。そのため、大手グループ入りすることで投資負担を分散し、人材派遣会社などを買収して作業スタッフを確保するといった動きが顕著になっています。
3-4. グローバル展開と海外拠点の獲得
国内物流だけでなく、海外企業との貿易や越境ECも盛り上がっているため、フォワーダーや海外倉庫会社をM&Aで取り込む事例が増えています。日系企業が海外に拠点を作る場合、現地の物流規制や商慣習に適応する必要があるため、すでに基盤を持つ企業の買収が効果的です。
3-5. 事業承継・後継者問題への対処
中小倉庫会社にはオーナー経営者が高齢化し、後継者不在のケースが多数あります。実際に、倉庫業は不動産や人件費など固定コストが大きく、次代の挑戦が難しい傾向があります。このため、M&Aを通じて大手企業や投資ファンドの傘下となり、経営を刷新する事例が増加しているのです。
4.倉庫業界におけるM&Aの主な目的
4-1. ネットワーク拡大と物流網の補完
配送エリアを広げたい企業や、主要幹線上の倉庫拠点が不足している企業にとって、地域の中堅倉庫業者を買収することは極めて有効です。拠点を取得するだけでなく、その企業が地場で築いてきた顧客基盤や人脈も同時に取り込めるため、スピーディーに事業規模を拡大できます。
4-2. サービスラインナップ・付加価値強化
倉庫業と一口に言っても、さまざまな付帯サービスが存在します。流通加工や通関手続き、フォワーディング、ITシステム開発など、多彩な機能を備えることで、顧客企業へのワンストップサービスを提供しやすくなります。M&Aで専門企業を傘下に収めることで、総合的な物流ソリューションを完成させる戦略です。
4-3. 顧客基盤や新規市場の取り込み
業種ごとに物流の特徴や必要設備が異なります。食品や医薬品は冷蔵・冷凍設備が必要ですし、自動車部品なら重量物対応のラックや梱包資材が重要になります。こうした業種特化型企業を買収することで、新たな顧客層を獲得しやすくなり、市場多角化を一気に進められます。
4-4. 事業再生・再編(民事再生支援・TOBなど)
経営破綻した物流会社をスポンサー支援するパターンも少なくありません。民事再生手続き中に投資し、拠点やノウハウを再編することで、再生企業と買収企業の双方にメリットが生まれます。また、上場企業の場合はTOB(株式公開買い付け)によって非公開化し、自由度の高い経営改革を行うケースもあります。
4-5. 組織若返りや事業承継
オーナー企業が次の世代にバトンタッチする手段として、M&Aが一般化してきました。これにより、ベテラン経営陣が築いてきた地盤を継承しつつ、新しいマネジメント人材や資金を投入できるため、企業価値を維持・向上しやすくなります。
5.主要M&A事例一覧と解説
ここからは、倉庫業界および周辺業種のM&A事例を網羅的に列挙し、要点を簡潔にまとめます。事例数が多いため、一つひとつの説明は短めにしておりますが、それぞれの背景や狙いを把握しやすいように留意しました。
5-1. 守谷商会と未来ネットワーク(2024/11/08)
ユニットハウス製造の未来ネットワークを守谷商会が子会社化しました。ユニットハウスは倉庫や事務所の簡易建物として人気があり、建設事業を展開する守谷商会が事業の多角化と顧客ニーズへの柔軟対応を狙った形です。
5-2. ヤマトホールディングスとナカノ商会(2024/11/05)
ヤマトHDが物流大手ナカノ商会を約469億円で買収し、株式87.7%を取得。ナカノ商会の全国51拠点や多様な顧客を取り込み、ヤマト独自のネットワークと統合することで、更なる物流効率化とサービス拡張を期待しています。
5-3. 堂島汽船による兵機海運へのTOB(2024/10/18)
内航海運や港湾・倉庫事業を行う兵機海運に対し、堂島汽船がTOBを実施。20%未満の追加取得によって過度な経営権は狙わず、連携強化による資本業務提携を目指す動きです。
5-4. 丸一鋼管と佐藤型鋼製作所(2024/09/06)
建築用鋼製下地材を製造する佐藤型鋼製作所を丸一鋼管が子会社化。物流倉庫や工場などに用いられる鋼製下地材分野で、丸一鋼管の素材供給拡大を狙っています。
5-5. シーズメンのゼアー「テモトル」事業取得(2024/08/08)
アパレル小売を中心に展開するシーズメンが、物流作業録画ソリューション「テモトル」を買収。倉庫内作業を動画で検証し、不正防止や梱包ミス低減を実現するITサービスを取り込み、トラブル対応力を高めています。
5-6. GFAとフィフティーワン(アークサービスへの譲渡)(2024/07/26)
GFAが運送会社のフィフティーワンをいったん子会社化したのち、多数の株式をアークサービスに譲渡。黒字体質への転換とグループの経営強化を図るための再編とみられ、25%はGFAが継続保有します。
5-7. 売れるネット広告社とアクセスブライト(2024/06/28)
中国向け越境EC事業をアクセスブライトから取得することで、海外ECサポートを強化。日本と中国に倉庫を持ち、マーケティング支援やSNS運営代行も可能な体制を手に入れ、海外市場の拡販を目指します。
5-8. ヒガシトゥエンティワンとネオコンピタンス(2024/06/14)
倉庫内人材派遣を主力とするネオコンピタンスをヒガシトゥエンティワンが子会社化。3PL事業やビル内デリバリーの人材不足対策が狙いで、物流サービスの品質と安定供給体制を強固にします。
5-9. 芙蓉総合リースとタイのPLIC(2024/05/31)
タイでフォークリフトレンタルなどを展開するPLIC Corp.を完全子会社化。海外事業のモビリティ物流分野を拡充し、倉庫内機器レンタルの領域にも進出しやすくなります。
5-10. サクサホールディングスとソアー(2024/05/29)
隣接工場を持つ有機EL製造のソアーを買収し、老朽化した社内施設を一本化。大規模倉庫の外部借り上げコスト削減や生産設備の効率化を実現し、新製品開発や受託サービスに注力します。
5-11. コアコンセプト・テクノロジーとPro-X(2024/04/16)
物流システム開発(WMS、TMSなど)に強いPro-Xを完全子会社化し、物流業界のDX支援を強化。既存顧客向けの付加価値アップにも期待がかかります。
5-12. バローホールディングスと鷺富運送(2024/04/02)
中部興産(バローホールディングス傘下)が鷺富運送を買収し、北陸3県の輸配送体制を拡大。温度帯別配送(常温・冷蔵・冷凍)や倉庫保管、物流ノウハウの共有により事業を拡張します。
5-13. 古林紙工と金剛運送(2024/03/19)
紙加工大手の古林紙工が運送会社を子会社化。段ボール製品の供給・流通を一貫管理することで、運送コスト低減や納期短縮を狙い、製造と物流の垂直統合を深めます。
5-14. トナミHDとアペックス(民事再生支援、2024/03/15)
冷凍冷蔵食品輸送・倉庫を主力とするアペックスが民事再生入り。トナミHDがスポンサーとなり、関連会社群を含めて物流ネットワークを再構築し、冷凍食品輸送を強化します。
5-15. ニッコンHDとミツバロジスティクス(2024/03/14)
自動車部品輸送を中心とするニッコンHDが、二輪車・自動車電装部品メーカーのミツバ子会社を買収。サプライチェーン上流から梱包・配送を最適化し、自動車関連物流を一手に担う体制を整えます。
5-16. ネクスグループとケーエスピー(2024/02/22)
IoT中心のネクスグループが、倉庫・工場向け資材の卸を行うケーエスピーを株式交換で子会社化。飲食店や工場への物流最適化や、外食チェーンのサプライチェーンサービスを拡大する狙いです。
5-17. J-MAXの中国子会社「広州恒邦倉儲」譲渡(2024/01/31)
自動車部品などを扱う中国拠点の物流子会社が業績悪化し、現地投資会社に譲渡。中国市場の事業環境変化が大きく、構造改革の一環として撤退を判断した事例です。
5-18. KeyHolderとトポスエンタープライズ(民事再生支援、2024/01/26)
パチンコホール大手グループ企業が破綻し、運送・倉庫・卸売など多角化していたトポスエンタープライズをKeyHolderが支援。物流倉庫をスタジオに転用するなど、エンタメ事業との融合を期待しています。
5-19. 安田倉庫とHIROMIカンパニー(オリエント・サービス、2023/12/22)
中京エリアで倉庫・輸送を行うオリエント・サービスを傘下に持つ持株会社を買収し、安田倉庫が中京圏の物流網を拡充。安田倉庫は地方中堅企業の買収を積極化しており、全国ネットワークを拡張中です。
5-20. エムティジェネックスとアイテック(2023/12/13)
大規模施設(商業施設・物流倉庫など)の電気配線・情報通信工事を手がけるアイテックを買収し、省エネ需要やDX化需要を掴む目的です。物流施設でもITインフラや防災設備が重要化しています。
5-21. 五健堂とナワショウの神奈川・愛知拠点(2023/12/11)
「2024年問題」への対応で、長距離ドライバーの拘束時間削減が求められています。五健堂は神奈川・愛知拠点を取得し、幹線輸送の中継拠点とすることで配送効率を向上させます。
5-22. 関通と河出興産(2023/11/15)
出版物の物流サービス事業を河出興産から関通が買収。通信販売物流で培ったノウハウを出版流通へ応用し、IT活用による効率化を図ります。
5-23. イチネンHDと日東エフシー(インテグラル傘下、2023/10/31)
肥料メーカーである日東エフシーをイチネンHDが買収。傘下の日東運輸倉庫など8子会社も含め、農業関連事業と物流機能の一体化でサプライチェーンを強化します。
5-24. トナミHDによる山一運輸倉庫・丸嶋運送の買収(2023/10/02・03)
静岡拠点と奈良拠点の物流企業を続けて買収し、東名阪・関西圏のネットワークを拡大。トナミHDは各地域の中堅企業を取り込み、全国的な配送網を整備する方針です。
5-25. レオパレス21のベトナム子会社ASPENN INVESTMENTS譲渡(2023/08/08)
不動産・ホテルなどで業績悪化していたレオパレス21が、ベトナム物流子会社を両備ホールディングスに売却。非中核事業を切り離し、財務改善を進めると同時に、両備HDは海外展開を強化します。
5-26. 西本Wismettac HDとイタリアUniontradeなど2社(2023/06/30)
アジア食輸入卸をイタリアで展開するUniontradeなどを西本Wismettacが買収。欧州市場への販路拡張を進めるうえで、物流倉庫や飲食店向け卸売事業を持つ企業取り込みが大きな武器となります。
5-27. ニチレイとタイ合弁SCG Nichirei Logistics(2023/06/20)
低温倉庫業を行うタイ合弁会社を子会社化。ニチレイは国内トップクラスの冷凍・冷蔵設備を持ちますが、海外成長市場として東南アジアを重視し、本格的な事業拡大を図ります。
5-28. 安田倉庫とシンガポールWGS・インドWGI事業(2023/06/08)
フォワーディング事業を担うシンガポール・インドの2社から事業を取得し、安田倉庫が新設した子会社へ移管。国際輸送網や海上・航空貨物手配を加速し、アジア地域のさらなる拡大を目指します。
5-29. トーヨーカネツとスクラムソフトウェア(2023/05/24)
自動倉庫や物流プラントを手がけるトーヨーカネツが、WMSやTMS開発を得意とするスクラムソフトウェアを買収。システム開発力を強化し、倉庫内自動化の高度化を図ります。
5-30. 三菱倉庫による米国Cavalier Logistics買収(2023/04/28)
医薬品・ヘルスケア特化型物流の米欧企業グループを三菱倉庫が取得し、日米欧の医療物流ネットワークを構築。GDP基準対応倉庫や特殊輸送設備を確保し、高付加価値の医療物流に本腰を入れます。
5-31. クルーズによるYESをシンメイへ譲渡(2023/04/25)
ECモール運用支援を手がけるYESを倉庫関連サービスのシンメイに売却。クルーズはファッション通販やメディア事業への集中を図り、シンメイはEC事業サポートの強化が可能となりました。
5-32. イムラによるロジテック子会社化(2023/04/03)
印刷関連を手がけるイムラが、運送・倉庫管理のロジテックを追加取得により完全子会社化。自社工場と倉庫を効率化することで、紙器・印刷物の安定供給体制を強化します。
5-33. 安田倉庫とOSO(2023/02/03)
京都府八幡市に拠点を持つOSOを安田倉庫が完全子会社化。輸配送・倉庫保管力が高い企業を地域ごとに取り込むことで、全国均一サービスに近づける狙いがあります。
5-34. 中央倉庫とテスパック(2023/01/19)
重量物や精密機器の梱包・輸送を得意とするテスパックを中央倉庫が買収。倉庫保管だけでなく、美術品や産業機器の梱包輸送を一気通貫で担える高付加価値サービスを構築します。
5-35. 安田倉庫とエーザイ物流(2022/12/28)
医薬品物流を担うエーザイ物流を子会社化し、メディカル分野を強化。国内3拠点を押さえ、製薬企業向け専門物流機能(温度帯管理など)を積極的に広げています。
5-36. 日立物流とオランダCyber Freight(2022/09/29)
オランダで医薬品取り扱いに特化したフォワーダーを買収し、欧州市場の医療系物流を強化。GDP基準対応施設や温度管理設備を手に入れ、ハイエンド物流への参入を加速します。
5-37. GFAとフィフティーワン(2022年株式交付)
運送・倉庫保管、緊急輸送など多様なサービスを行うフィフティーワンを、GFAが株式交付で子会社化。EC配送や新規物流分野への進出を意図した買収であり、再三にわたり条件修正が行われました。
5-38. 丸井織物による倉庫精練へのTOB(2022/08/08)
繊維の一貫生産体制を目指し、染色加工を担う倉庫精練に対しTOBを実施。最終的に上場廃止とし、垂直統合効果によってコストダウンや品質向上を実現します。
5-39. 渋沢倉庫と平和みらい(2022/05/31)
静岡県に広域ネットワークを持つ平和みらいを株式追加取得で子会社化。冷凍冷蔵設備を活用し、食品・日用雑貨の共同配送で静岡エリアの幹線輸送効率を改善します。
5-40. 米KKRによる日立物流へのTOB(2022/04/28)
KKRが約4492億円を投じて日立物流を非公開化し、日立製作所は再出資で10%を保有。グローバル展開やDX投資を加速するため、大胆な構造改革を進める計画です。
5-41. 住友倉庫の米海運子会社ウエストウッド譲渡(2022/04/28)
米国海運事業で業績変動が大きかったウエストウッドをシンガポール海運大手へ譲渡。住友倉庫はコア事業である倉庫・物流・不動産に集中し、非中核となった海運部門を売却する決断を下しました。
5-42. 鴻池運輸と前川運輸(ベストラインへの譲渡、2022/03/18)
鴻池運輸の子会社として運送事業を営む前川運輸を第三者であるベストラインに譲渡。譲渡後も業務提携を続け、幹線輸送や車両整備を共同化する事例です。
5-43. ヨシムラ・フードHDとシンガポールSNF(2021/12/08)
シンガポールで食品関連子会社4社をまとめる不動産会社SNFを買収。冷蔵倉庫や工場を一箇所に集約し、物流コスト削減と生産効率向上を狙います。
5-44. 安田倉庫と南信貨物自動車(2021/10/08)
甲信地方から関東・中京への幹線輸送を行う南信貨物を買収。安田倉庫はこうした中堅運送会社を次々と取り込み、全国的な輸配送網を築いています。
5-45. 光村印刷と光村商事倉庫(保険代理店事業譲渡、2021/07/29)
印刷事業会社が倉庫子会社の保険代理店事業を外部に売却。非中核事業を整理し、コアビジネスへの集中を進める典型例です。
5-46. アシードHDとロジックイノベーション(2021/07/01)
自販機運営や業務用食品卸を行うアシードHDが、物流受託や廃棄物リサイクルを手がけるロジックイノベーションを買収。倉庫・物流拠点強化と環境対応を同時に推進します。
5-47. トナミHDによる高岡通運追加取得(2021/05/12)
富山県拠点の高岡通運を約88%まで引き上げ子会社化。北陸地方の輸配送を集約し、車両運行や倉庫保管を効率化します。
5-48. 川崎汽船の米国子会社CDS譲渡(2021/04/30)
国際輸送の一部業務(バイヤーズコンソリデーション等)を行う子会社CDSを投資会社に売却。海運中心のポートフォリオ再編を進める一環です。
5-49. 廣済堂によるエヌティ・Neoの子会社化(2021/04/15)
物流倉庫へ派遣する人材サービス会社2社を廣済堂が買収し、EC需要増に伴う倉庫作業員の確保を目指します。労働力不足が深刻化するなか、派遣ビジネスの強化が進んでいます。
5-50. チェンジによるビーキャップ子会社化(2021/03/05)
AI・IoT活用の屋内位置情報サービス「BeacappHERE」を持つビーキャップをチェンジが傘下に収め、DX推進を強める形です。工場や倉庫の作業動線を可視化するソリューションを拡販し、業務効率化を提案します。
5-51. SBSHDによる東洋運輸倉庫買収(2020/12/24)
SMC傘下の東洋運輸倉庫(首都圏湾岸エリアの倉庫保有)をSBSHDが約72億円で取得。ECや食品物流のニーズが集中する臨海部の拠点確保が狙いです。
5-52. トーモクと玉善(タマゼン設立、2020/12/23)
戸建て住宅分譲を行う玉善の事業を新設子会社に移し、トーモクが取得。段ボール・紙器企業のトーモクが住宅事業を拡大し、将来的な物流施設開発なども視野に入れています。
5-53. トナミHDと御幸倉庫(2020/12/01)
愛知県春日井市の御幸倉庫を子会社化。東海地区での拠点を増やし、メーカー物流の効率化や輸配送ネットワークを統合します。
5-54. 守谷商会のゴルフ事業(菅平峰の原グリーン)譲渡(2020/11/26)
ゴルフ場事業をノザワワールドに売却。非中核事業の切り離しで、建設・倉庫など本業への集中を進める動きです。
5-55. 麻生グループによる東都水産へのTOB(2020/11/09)
豊洲市場の水産物卸大手である東都水産(冷蔵倉庫・不動産も展開)を対象に、麻生が3分の1超取得を目指すTOB。食ビジネスへの進出と上場維持を両立させる複雑なスキームです。
5-56. ナガワと鳥海建工(2020/09/04)
ユニットハウス大手のナガワが、倉庫・店舗工事に強い鳥海建工を買収。モジュール建築事業をさらに推進し、多彩な建築需要を取り込みたい考えです。
5-57. UACJがUACJ物流をセンコーへ譲渡(2020/08/28)
アルミ圧延大手UACJが自社物流子会社をセンコーHDに売却。本業にリソースを集中する一方、重量物輸送など専門分野は物流のプロに任せて全体最適を図ります。
5-58. キユーソー流通システムとインドネシアKIAT ANANDA(2020/08/27)
インドネシアで低温物流を手がける4社を約70億円で子会社化。人口増加と経済成長が続くインドネシアでの食品物流シェアを高め、東南アジア展開を促進します。
5-59. 丸和運輸機関と日本物流開発(2020/08/20)
EC向け物流の拡大を目指す丸和運輸機関が、株式交換で日本物流開発を完全子会社化。EC倉庫オペレーションを強化し、短納期・大規模発送に対応します。
5-60. トナミHDと新生倉庫運輸(2020/07/31)
広島・岡山・山口をカバーする新生倉庫運輸を傘下に取り込み、中国地方の配送サービスを強化。トナミHDは各地の中堅企業買収により全国網を整えている最中です。
5-61. 大王製紙とケイジー物流(2020/05/27)
衛生用紙大手の大王製紙が運送会社ケイジー物流を買収し、自社の紙製品輸送を一貫化。車両約70台を活用し、安定供給体制を確立します。
5-62. カクヤスとサンノー(2020/04/06)
業務用酒類販売を行うサンノー(福岡市)をカクヤスが子会社化し、九州エリアに進出。酒類の倉庫・配送網を強化し、繁華街型業務用から個人宅へのデリバリーまで幅広く対応します。
5-63. 乾汽船の次期中計公表見合わせ(コロナ影響、2020/03/06)
海運・倉庫事業などを持つ乾汽船が、新型コロナ拡大で中期計画を策定し直し。業績変動要因が大きく、M&A計画にも影響が出ることが示唆されています。
5-64. 安田倉庫と大西運輸・オオニシ機工(2019/09/27)
金沢市の大西運輸(倉庫・運送)とオオニシ機工(クレーン作業など)を子会社化。安田倉庫は北陸エリアでの拠点を強化し、港湾物流や建機輸送に力を入れます。
5-65. 米国M&A速報(倉庫自動化関連、2019/09/16)
アメリカでは倉庫ロボットを含む自動化技術企業への大型買収が相次いでいます。日本企業も技術取得や共同開発を目的に出資する動きがみられ、先端技術の取り込みが加速する見通しです。
5-66. J-オイルミルズと坂出事業所倉庫・不動産譲渡(2019/08/28)
飼料原料用サイロや倉庫を保有する坂出事業所の一部を譲渡。非中核資産を売却して本業に集中する一方、必要な倉庫機能は外部委託で補う事例といえます。
5-67. 内外トランスラインと韓進海運新港物流センター(2019/02/15)
韓国・釜山新港の倉庫運営会社を株式60%取得し、アジアの国際フォワーディング拠点を強化。港湾周辺でのコンテナ集積と大型倉庫の活用が狙いです。
5-68. あじかんと井口産交(2019/02/01)
加工食品大手のあじかんが、冷蔵・冷凍輸送を行う井口産交を買収。温度管理された幹線輸送を自社グループで行い、食品の安定供給を図ります。
5-69. ニッコンHDと松久運輸・松久総合(2018/12/07)
自動車物流大手のニッコンHDが岐阜県拠点の運送会社2社を買収。地域物流の拠点確保と新車輸送ルートの拡充が目的です。
5-70. 倉庫精練のメキシコ子会社を米SAGEへ譲渡(2018/07/31)
自動車向けシート材工場が採算不振に陥り、事業継続が困難となったため売却。国内中心にリソースを再配分する戦略です。
5-71. SBSHDとリコーロジスティクス(2018/05/18)
リコーの物流子会社を約180億円で買収し、66.6%を取得。IT機器輸送や外販物流を強化し、大口荷主の案件を安定的に取り込む事例です。
5-72. トーホーと神戸営繕(2009/09/07)
食品スーパー「トーホーストア」などを展開するトーホーが総合建設請負業の神戸営繕を子会社化。店舗や物流拠点の改修・建設を内製化してコスト効率を上げる狙いです。
5-73. スズケンと中央運輸(完全子会社化、2009/05/26)
医薬品卸のスズケンが運送子会社を吸収合併し、医薬品物流の品質とコスト管理を強化。温度帯管理やセキュリティ面も含め、垂直統合による効果を高めています。
5-74. 特別目的会社SSTによる品川倉庫建物へのTOB(2009/04/20)
老朽化が進んだ倉庫建物を所有する上場企業に対し、SPC(特別目的会社)が買収を提案。再開発や不動産有効活用を想定し、上場廃止後に経営改革を進める例です。
5-75. キムラユニティーと広州広汽豊通物流器材(2009/03/23)
中国における自動車関連物流拠点を確保するため、現地企業を買収。工場・倉庫・用地といったハード面を一度に取得することでスピード経営を実現します。
5-76. 近鉄エクスプレスとタイTKK Logistics(2008/12/24)
タイ国内で自動車部品や電子部品輸送を手がける企業を買収。アセアン地域の物流網を強化し、日本向け輸出にも対応可能な体制を整えます。
5-77. コマーシャル・アールイーと天幸総建(2008/05/14)
倉庫賃貸や不動産管理を営む天幸総建を株式交換で完全子会社化。管理物件の大幅増加により、首都圏倉庫賃貸ビジネスを拡充します。
5-78. スルガによる上海三伍服飾配件(2008/02/29)
上海に土地や倉庫、工場を持つ服飾部品メーカーを取得し、中国内需および輸出向けの生産・在庫拠点を確保。現地販売も見据えた動きです。
5-79. マルハニチロHDと大興製凾(レンゴーへ譲渡、2008/02/25)
段ボール製造の大興製凾をレンゴーへ売却し、水産事業へ集中投資。コア事業へのリソース配分を優先した事例です。
5-80. ホウスイと中央冷凍(2008/01/10)
水産物流のホウスイが中央冷凍を合併。冷蔵倉庫と水産卸売機能を統合し、食品流通の効率化を図りました。
5-81. 日本水産グループ内再編(ホウスイ・水産流通・中央魚類)
水産卸や冷蔵倉庫をグループ内統合し、川上(漁業・加工)から川下(卸売、外食)まで一貫体制を模索。再編により保管設備の共有とコスト削減を狙います。
5-82. 三井倉庫と富士物流(TOB、2010年)
富士電機系の富士物流を三井倉庫がTOBで子会社化。電機・自動車分野の物流を強化し、国内外の顧客基盤を取り込みます。
5-83. ニチレイとフランスの低温物流会社(2010年)
ニチレイロジが欧州での冷蔵倉庫と輸配送を統合運営する4社を買収し、海外売上拡大を急加速。冷凍食品需要が安定する欧州市場で事業基盤を確立します。
5-84. トナミHDと第一倉庫(INPEXグループ、2010/01/18)
エネルギー大手INPEXの倉庫子会社をトナミHDが買収。石油関連物流や港湾荷役なども組み込み、事業領域を広げています。
5-85. VTホールディングスとHDアセットマネジメント譲渡(2009/12/14)
自動車ディーラー大手のVTホールディングスが、不動産会社を倉庫業のヤマムラ倉庫に売却。有利子負債削減と経営資源の集中を狙った動きです。
5-86. 大明・コミューチュア・東電通の共同持株会社(2009/11/27)
情報通信エンジニアリング3社が経営統合し、工事基地や資材倉庫を活用。全国規模で施工体制を最適化し、コスト削減と受注拡大を図ります。
5-87. 日新と鶴見倉庫(2009/11/04)
京浜地区の危険品倉庫を得意とする鶴見倉庫を、国際物流の日新が買収。危険物を扱う際の許認可や安全ノウハウを取り込み、サービスを拡充します。
5-88. その他参考事例の総括
ここに挙げた以外にも数多くの事例があり、倉庫業界とその周辺(運送・物流IT・不動産など)を巻き込んだ再編が進んでいます。買収・譲渡の背景には「選択と集中」「事業承継」「海外展開」「DX対応」がキーワードとして顕著に表れているといえます。
6.倉庫業界M&Aがもたらすシナジー要素
倉庫業界のM&Aによって得られるシナジーは、多岐にわたります。主なものを挙げます。
- ネットワーク拡充:エリアカバーが広がり、荷物の集配や幹線輸送の時間短縮とコスト削減が可能。
- サービスライン拡大:フォワーディングや通関、システム開発、包装資材調達など、付帯サービスが強化。
- コスト削減:重複していた拠点や設備を統廃合し、スケールメリットを享受。大量発注による購買力強化も期待。
- 人材確保とノウハウ共有:派遣会社や専門技術企業との統合で労働力を補い、先端ノウハウをグループ全体に波及。
- 事業承継・経営改革:オーナー企業が大手グループの支援を受け、資金力・マネジメント力を得る。
これらシナジーをうまく引き出せれば、買収企業・被買収企業だけでなく、顧客企業や最終消費者までメリットが及びやすくなります。
7.倉庫業界M&Aのメリット・デメリット
メリット
- 事業規模の拡大と収益力向上:既存拠点と相手先拠点を統合し、輸送効率を高めることで収益性が上がりやすいです。
- サービス多角化による競争力強化:倉庫保管だけでなく、流通加工、運送、ITサービスなどを一括提供しやすくなります。
- グローバル対応の迅速化:海外企業を買収すれば、現地拠点を即座に手に入れられ、各種ライセンスや規制対応もスムーズです。
- 人材確保・社内リソースの充実:買収先の社員がそのまま加わるため、人手不足や技術者不足を補う効果があります。
- 事業承継問題の解消:オーナー経営者が高齢化している場合、大手グループに入ることで従業員や取引先も安心して事業継続ができます。
デメリット
- 統合後の組織摩擦:企業文化や業務フローが異なるため、統合初期に混乱が生じやすく、社員のモチベーション低下リスクもあります。
- 買収コストと財務リスク:過大なプレミアムを払った場合、想定シナジーが得られなければのれん代償却などで業績悪化する可能性があります。
- 拠点重複に伴う整理費用:統合後に余剰人員や使わない倉庫が発生するため、一時的リストラコストや解約違約金などが生じる場合があります。
- 競争法対応や規制問題:大手同士の統合で市場支配的地位を得る場合、公正取引委員会の審査が入るなど手続きが煩雑になるリスクがあります。
- 経営戦略の不一致:買収先と買収元で戦略目的が噛み合わず、結局大きな成果を出せないまま消耗するケースもありえます。
8.倉庫業界M&Aの今後の展望
- DX・ロボット化分野への投資集中
倉庫内自動化やAI在庫管理など、高度なデジタル技術を扱う企業を買収して、現場の省人化と作業スピード向上を狙う動きが続くと考えられます。 - 海外拠点拡充のさらなる加速
日本国内の需要が成長鈍化するなか、東南アジアやインド、欧米向けの輸出入物流が伸びています。海外企業を買収して一気にネットワークを広げるケースが増えるでしょう。 - 食品・医薬品など温度管理物流での再編
コールドチェーンへの需要増を受け、冷凍・冷蔵倉庫を備える企業や、特殊温度帯に対応する車両を保有する企業に高い評価が集まっています。業界再編が進む見通しです。 - 投資ファンドによる大型M&A
今後もKKRの日立物流買収のように、大手ファンドが物流企業を非公開化し、短期間で大規模な業務改革を行う動きが増加する可能性があります。 - 中小企業の事業承継M&A加速
地域密着型の倉庫会社や運送会社が、高齢化や後継者問題で廃業を余儀なくされる前に、大手グループへ譲渡する事例が増えると予想されます。物流ネットワークの細分化や拡張にもプラスに働きます。
9.まとめ
倉庫業界は、モノの保管だけでなく流通加工・IT統合など、これまで以上に広範な機能が求められるようになり、既存の枠組みを超えた企業連携・再編が不可欠になってきました。EC需要や海外展開、人手不足、設備投資負担といった課題への対処として、多くの企業がM&Aを活用する動きがさらに加速しています。
この潮流は大手企業がネットワークを拡大する一方、中堅・中小企業が将来の不確実性に対応するためにグループ入りを選択する構図でもあり、結果的に業界の集約化が進む可能性もあります。とはいえ、一概に大手だけが生き残るわけでもなく、ニッチなサービスや地域特化の強みを活かした企業が有利となる局面もございます。
また、医薬・食品など高度な品質管理や温度管理を要する分野、物流ロボットやAI在庫管理など最先端分野へ進出する企業に対しては、大きな期待が寄せられると同時に、新たな技術投資を共同で行うためのM&Aも活発に行われるでしょう。
このように、倉庫業界のM&Aは今後ますます進展していくと考えられます。EC・DX・グローバル化など時代の要請に即応しなければならないため、企業単独での最適化には限界があるのです。大手倉庫会社や投資ファンド、異業種の参入も相まって、業界構造はさらに変化し続けるでしょう。
ここまで紹介いたしました多数のM&A事例からもわかるように、目的や背景は多種多様ですが、それぞれの事例に共通するキーワードは「効率化」「付加価値化」「ネットワーク拡充」「事業承継」「DX・海外対応」です。倉庫企業がこれらの課題にどう対処するかが、今後の成長と競争力を左右いたします。
以上、倉庫業界におけるM&Aの主な事例や活発化の背景、そして今後の展望について、2万字を超える形で整理してまいりました。読み通すには相当なボリュームになりましたが、少しでも皆様のご参考になれば幸いです。倉庫業界は社会基盤として今後も需要が大きく、同時に急激な革新を迫られる分野です。各社がM&Aや提携をどのように活用するかが、物流の未来を大きく左右することでしょう。

株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。