目次
預・貯金等保険機関の市場環境
日本における預金保険機関の市場環境は、以下の要素が特徴です。
– 預金保険機構の役割:
– 預金保険機構は、預金者の保護を図り、金融システムの安定を維持することを目的としています。
– セーフティネットの構築:
– 預金保険機構は、預金者保護のためのセーフティネットを盤石なかたちで構築しています。
– 定額保護と全額保護:
– 預金保険制度では、一定額以下の預金は定額保護され、一定額を超える預金は全額保護されます。
– 責任準備金の積立:
– 預金保険機構には約5兆円の責任準備金が積まれており、次の金融危機に備えています。
– 預金保険料の制度:
– 定率保険料率:
– 現在、日本では定率保険料率が採用されており、金融機関が預金額に応じて一定の料率を課しています。
– 可変保険料率の検討:
– 可変保険料率の導入が検討されており、金融機関の財務状況に応じた料率の枠組みが検討されています。
– メリットとデメリット:
– 可変保険料率には、金融機関に対して財務体質強化を促す効果がありますが、財務力の低下した金融機関に対し、他と比べ割高の保険料負担を課すこととなり、経営を脆弱化させるおそれがあります。
– 金融機関の環境変化:
– 人口動態と資金需要:
– 日本の人口は高齢化が進行し、人口減少が見込まれており、マクロ的な民間の資金需要が長期にわたって縮小する方向にある。
– 金融緩和措置と利率:
– 日本銀行による長期金融緩和措置がとられ、長期金利がゼロを目標とするイールドカーブコントロールが実施されています。
– ビッグテックの影響:
– フィンテック事業者やビッグテックが金融ビジネスに新規参入し、金融システムにおける預金の相対的な位置づけが変化しています。
– 銀行の収益源の縮小:
– 預貸利差が縮小傾向にあり、銀行の収益源が減少しています。
これらの要素が、日本における預金保険機関の市場環境を形成しています。
預・貯金等保険機関のM&Aの背景と動向
金融業界における預金・貯金等保険機関のM&Aの背景と動向についてまとめます。
### 背景
1. 規制緩和:
2000年前後に行われた大規模な規制緩和により、金融業界内における壁がなくなり、同業種同士の合併や異業種への参入が増加しました。
2. マイナス金利の影響:
マイナス金利の導入により、銀行の運営コストが増加し、本業赤字が多く見られました。生き残りのために業界再編が必要とされました。
### M&A事例
1. 新生銀行とフィナンシャル・ジャパン:
個人向け保険ビジネスの強化を目的に、新生銀行はフィナンシャル・ジャパンを完全子会社化しました。新生銀行は銀行窓口で保険商品を販売する方法に加えて、保険乗合代理店の方法を持つこととなり、顧客の多様なニーズに応えることが可能となりました。
2. 福井銀行と福邦銀行:
資本業務提携により、福井銀行と福邦銀行は店舗間の連携やATMの効率的な運用を進めました。両社は2020年から業務提携を行っていたが、新型コロナの影響などで思うような成果があげられていなかったため、資本提携も行いました。
3. 三菱UFJ銀行とバンクダナモン:
東南アジアでのビジネスプラットフォーム構築を目的に、三菱UFJ銀行はバンクダナモンを連結子会社化しました。三菱UFJ銀行はバンクダナモンの既存株主から発行済株式総数の54.0%を追加取得し、同社株式の94%を保有することになりました。
### まとめ
金融業界におけるM&Aは、規制緩和とマイナス金利の影響により活発に行われています。銀行や保険会社の再編が進んでおり、地域の持続的な発展や質の高いサービス提供を目指すためにM&Aが行われています。
預・貯金等保険機関のM&A事例
以下に、預金・貯金等保険機関に関連するM&A事例をまとめます。
### 1. 新生銀行がフィナンシャル・ジャパンを完全子会社化
– 背景: 新生銀行は個人向け保険商品の販売を強化するため、フィナンシャル・ジャパンを完全子会社化しました。
– 手法: 株式譲渡を使用し、フィナンシャル・ジャパンの全株式を取得しました。
– 目的: 窓口での保険商品販売を強化し、顧客の多様なニーズに応えることが可能になりました。
### 2. マネックスグループがコインチェックを完全子会社化
– 背景: マネックスグループはオンライン証券事業で培った経営管理やシステムリスク管理のノウハウを活用し、コインチェックの業務改善に注力しました。
– 手法: 株式譲渡を使用し、コインチェックの全株式を取得しました。
– 目的: 仮想通貨交換業への参入を進めるため、コインチェックを完全子会社化しました。
### 3. 三菱UFJ銀行がバンクダナモンを連結子会社化
– 背景: 三菱UFJ銀行は東南アジアでのビジネスプラットフォーム構築に向けた戦略出資を目指し、バンクダナモンを連結子会社化しました。
– 手法: 株式譲渡を使用し、バンクダナモンの既存株主から発行済株式総数の54.0%を追加取得しました。
– 目的: バンクダナモンや他のパートナーバンクとのさらなる協働・シナジーを追求するため、連結子会社化しました。
預・貯金等保険機関の事業が高値で売却できる可能性
預金保険機関の事業が高値で売却される可能性について、以下のポイントをまとめます。
– 定額保護の仕組み:預金保険機関は、金融機関が破綻した場合に、預金者1人当たり1,000万円までの元本とその利息を保護します。1,000万円を超える部分は、破綻金融機関の財産の状況に応じて支払われますが、一部カットされる可能性があります。
– 保護対象外の預金:外貨預金、譲渡性預金、金融債(募集債及び保護預り契約が終了したもの)などは、預金保険の対象外です。破綻金融機関の財産の状況に応じて支払われますが、一部カットされる可能性があります。
– 資金援助方式:資金援助方式では、破綻金融機関の金融機能を維持し、破綻に伴う混乱を最小限に止めることが目指されています。預金保険機関が他の金融機関に預金を預け入れ、その債権を預金者に譲渡する方式が採用されます。
– 民事再生法の活用:民事再生法を活用することで、破綻金融機関の破綻処理が進められ、決済用預金以外の保護の範囲を超える預金等について、一部カットされる可能性があります。
– 相殺と債権買取り:預金者が破綻した金融機関から借入を行っていれば、預金と借入金を相殺できる場合があります。また、保護されていない預金等も一部カットされる可能性がありますが、裁判所の関与により公平・公正な支払いが行われます。
これらのポイントを考慮すると、預金保険機関の事業が高値で売却される可能性は、破綻金融機関の財産状況や預金保険制度の仕組みに大きく依存します。具体的には、以下の大切なポイントが挙げられます:
– 破綻金融機関の財産状況:破綻金融機関の財産状況が、1,000万円を超える部分の支払いに影響を与えます。
– 預金保険制度の仕組み:定額保護や資金援助方式が、破綻処理のコストや預金者の利便性に影響を与えます。
– 民事再生法の活用:民事再生法を活用することで、破綻処理が進められ、預金者の利便性が確保されます。
これらの要素を考慮することで、預金保険機関の事業が高値で売却される可能性を評価することができます。
預・貯金等保険機関の企業が会社を譲渡するメリット
預金保険機関が会社を譲渡するメリット
– 経営権の維持:譲渡企業が経営権を維持することができるため、事業の継続や貸借対照表に計上されていない簿外債務がある場合に比較的容易にM&Aを行うことができます。
– 資産や従業員の選択:事業の一部だけを譲渡できるため、残したい資産や従業員の契約を選べることができます。
– リスクの遮断:特定の事業のみ譲受けることができるため、売り手企業に紐づく税務リスクなどリスクを引き継ぐ必要がなくなる。
– 現金の獲得:売却により現金が得られるため、資金援助方式を採用すれば、破綻した金融機関が保有していた金融仲介機能や決済機能を維持することができます。
預・貯金等保険機関の事業と相性がよい事業
預金保険機関と貯金保険機関の事業と相性がよい事業
1. 預金保険機関の事業
– 対象金融機関:銀行、信用金庫、信金中央金庫、信用組合、全国信用協同組合連合会、労働金庫、労働金庫連合会。
– 対象預金等:決済用預金(全額保護)、普通預金(元本1,000万円までとその利息)、定期預金(元本1,000万円までとその利息)。
– 業務内容:
– 保険料の収納と名寄せデータ整備。
– 金融機関破綻時の処理:保険金及び仮払金の支払、資金援助、金融整理管財人等に関する業務。
– 回収業務と責任追及:回収業務を担う整理回収機構に対する指導・助言、悪質な債務者に係る財産調査。
– 資本増強:金融危機対応措置としての資本増強、金融機能の強化を目的として行う資本増強。
2. 貯金保険機関の事業
– 対象金融機関:農水産業協同組合(農協・漁協)。
– 対象貯金等:貯金の払戻しを受けるための保険金の支払、貯金等債権の買取り制度。
– 業務内容:
– 貯金者の保護:農水産業協同組合の貯金者を保護し、経営困難農水産業協同組合に係る資金決済の確保。
– 経営破たんによる保険事故の防止:合併、信用事業の譲渡等経営困難組合を救済するための資金援助。
– 被災農協・漁協に対する資本増強:東日本大震災の被災地域における農協・漁協の金融機能を維持・強化。
大切なところ
– 両機関の共通点:預金保険機関と貯金保険機関共に、金融機関の破綻時の預金者等の保護が主な目的です。
– 対象金融機関の違い:預金保険機関は銀行や信用金庫などを対象とし、貯金保険機関は農水産業協同組合を対象とします。
– 保護対象の違い:預金保険機関は決済用預金を全額保護し、一般預金は元本1,000万円までとその利息を保護します。貯金保険機関は貯金の払戻しを受けるための保険金の支払を中心にします。
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株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。