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通所・短期入所介護事業の市場環境
通所・短期入所介護事業の市場環境
2024年1-4月の「通所・短期入所介護」事業者の倒産は19件(前年同期比58.3%増)で、上半期(1-6月)の最多18件を上回り、増勢ぶりが目立つと。介護報酬が小幅なプラス改定にとどまったため、経営環境が厳しさを増していると。
人手不足の問題
介護職員の人手不足が深刻で、厚生労働省によると2024年3月の「介護サービス職業従事者(常用、パート含む)」の有効求人倍率は3.70倍(職業計1.17倍)に達すると。他産業では5%を超える賃上げが相次ぎ、賃金格差の広がりに歯止めが掛からず、採用の難航や離職が深刻さを増し倒産増にもつながっていると。
コスト増加の影響
光熱費やガソリン代などのコスト増も資金繰りを圧迫しており、介護事業者は人手不足に加えコロナ禍の利用控えや感染防止対策などでコストが増加していると。
将来の動向
介護保険報酬改定2024年の大枠としては、地域包括ケアシステムの深化・推進や自立支援・重度化防止に向けた対応が含まれており、介護職員の処遇改善が図られていると。しかし、人材不足やコスト増加が続くため、介護業界の淘汰が急速に加速していると。
通所・短期入所介護事業のM&Aの背景と動向
介護業界における通所・短期入所介護事業のM&Aの背景と動向をまとめます。
### 背景
– 高齢化と介護需要の増加:日本の高齢化が進む中、介護需要が高まり、介護業界でのM&A件数が増加しています。
– 人材不足:介護職種の有効求人倍率が高く、慢性的な人材不足が課題となっています。同業種の企業を買収することでスキルやノウハウを持つ従業員を取り込む動きが見られます。
– 経営者の高齢化と事業承継問題:介護保険制度の発足から20年余りが過ぎ、経営者の多くが引退のタイミングに差し掛かっています。事業承継目的でのM&Aが増えています。
### 動向
– 人材確保とキャリアアップ:M&Aにより、従業員にとってキャリアアップのチャンスが生まれ、一般職員がリーダーとして他の施設に移動する機会が増えます。
– サービスの拡大とリソースの活用:同業種や関連業種とのM&Aにより、強み・弱みの相互補完やリソースの相互活用によってサービスの拡大が図れます。
– 事業の多角化と競争激化:M&Aによって、業界全体のイメージアップが期待され、サービスの多様化が進み、質の向上が求められます。
### メリット
– 人材確保の解消:M&Aにより、売り手側の人材も引き継ぐことができ、買い手にとっては人材不足を一気に解消することができます。
– 経営状況の安定:M&Aにより、大手企業の参入によって採用活動を大規模化し、資金投入による採用サービスの利用が促進されます。
### 事例
– 一樹会のM&A:老朽化や介護職員不足の問題を抱えていた一樹会の介護老人保健施設の再生を目的として行われたM&Aです。経営統合による人材交流促進や経営効率化などの効果も期待されています。
これらの要因と動向により、介護業界における通所・短期入所介護事業のM&Aは活発化しています。
通所・短期入所介護事業のM&A事例
通所・短期入所介護事業のM&A事例をまとめます。
### ツクイによるPUPのM&A
ツクイは2022年8月にPUPの株式を取得し、子会社化しました。PUPは訪問看護やリハビリステーションなどの事業所を東京都内に3ヶ所展開しています。この買収の目的は、サービスの拡充と訪問介護の強化を図ることです。
### ベネッセスタイルケアによるプロトメディカルケアのM&A
ベネッセスタイルケアは2021年6月にプロトメディカルケアを子会社化しました。プロトメディカルケアは事業者ガイドブックや転職サイトの運営を行っています。この子会社化は、ベネッセスタイルケアの重要な成長戦略の一つであり、事業戦略と連動したエリア拡大や、人材紹介事業の拡大を見据えています。
### リビングプラットフォームによるシニアケアのM&A
リビングプラットフォームの連結子会社であるリビングプラットフォームケアは、2023年12月にシニアケアより高齢者グループホーム事業を譲り受けました。シニアケアは兵庫県尼崎で2施設を運営する介護事業者です。この承継により、阪神南地域におけるシェア拡大を図る基盤となり、ドミナント戦略を進めて地域No.1企業を目指す考えです。
通所・短期入所介護事業の事業が高値で売却できる可能性
通所・短期入所介護事業の事業が高値で売却できる可能性について、以下のポイントをまとめます。
– 事業規模と利益: 通所・短期入所介護事業の売却価格は、事業規模と利益に大きく依存します。特に、売上高が1〜5億円の範囲と営業利益が2,000〜3,000万円の事業は、売却価格が高く評価されます。
– 買い手企業のニーズ: 施設系・訪問系の介護事業者は、コロナ禍による業績悪化の影響が比較的小さかったため、売却価格が高く評価されています。また、社会福祉法人はあらゆる買い手から人気を集めており、柔軟な事業承継スキームが魅力です。
– バリュエーションの手法: 実際のM&Aにおいて、介護事業の売買価格は買い手との交渉によって決定されます。株主価値や企業価値を売買額の算出根拠とする「バリュエーション」が使用されます。
– 後継者不在や人材不足: 後継者不在や人材不足が理由となっている場合、自社よりも経営基盤や資金力が強いグループへの傘下入りは、上記の経営課題を一挙に解決する手段として多くの売り手企業から有力視されています。
これらのポイントを考慮すると、通所・短期入所介護事業が高値で売却される可能性は高いと言えます。特に、事業規模が大きく、営業利益が高い場合や、買い手企業が求めるニーズに応えることができれば、より高価な価格で売却される可能性があります。
通所・短期入所介護事業の企業が会社を譲渡するメリット
通所・短期入所介護事業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです:
– 後継者不在問題の解決:M&Aにより、後継者不足による事業継続の問題を解決できます。特に、介護業界では経営者の高齢化が進み、後継者不在は経営に大きく影響する問題です。
– 債務や個人保証からの解放:株式譲渡により、金融機関などへの債務を包括的に買い手企業へ引き継ぐことができます。経営者保証ガイドラインが定める条件を満たせば、経営者の負う個人保証も解消することができます。
– 売却益の獲得:株式譲渡や事業譲渡により、廃業手続きの費用がかからないだけでなく、譲渡利益を獲得できます。通常、営業利益の数年分に値する利益が得られます。
– 安定した基盤での経営:M&Aにより、報酬改定などの変動に耐えられる安定した経営が可能になります。特に規模の小さい事業所の場合は、廃業となるケースもありますが、大手企業に譲渡することで経営が安定します。
– 介護業界の新規参入の簡素化:M&Aにより、許認可や施設建設などの初期費用や介護業務に関するノウハウを入手にかかる労力を大幅に削減できます。新規参入者にとっては、資金と期間を確保する必要が軽減されます。
– 事業の拡大:M&Aにより、未開拓のエリアを獲得し、既存エリアのエリアシェアの拡大が期待されます。シナジー効果を発揮することで、会社全体の業績向上が見込まれます。
– 従業員と利用者の引き継ぎ:M&Aにより、従業員と同時に施設利用者も引き継ぐことができるため、新規で顧客を開拓する手間が省ける点もメリットです。
– 財政的な負担の軽減:M&Aにより、施設建設や土地取得などの初期投資を削減できます。財政的な負担が軽減され、事業展開がスムーズに進むことが期待されます。
通所・短期入所介護事業の事業と相性がよい事業
通所介護事業と短期入所介護事業の事業と相性がよい事業についてまとめます。
### 通所介護事業
通所介護の目的
通所介護は、利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、また、利用者の社会的孤立感の解消や心身機能の維持、家族の介護の負担軽減などを目的として実施します。
サービス内容
利用者が通所介護の施設(利用定員19人以上のデイサービスセンターなど)に通い、施設では、食事や入浴などの日常生活上の支援や、生活機能向上のための機能訓練や口腔機能向上サービスなどを日帰りで提供します。生活機能向上グループ活動などの高齢者同士の交流もあり、施設は利用者の自宅から施設までの送迎も行います。
利用者負担
通所介護の利用料は、事業所の規模や所要時間によって設定されています。送迎に係る費用も含まれ、日常生活費(食費・おむつ代など)などは別途負担する必要があります。通常規模の事業所の場合、要介護1から5の利用料は655円から1,142円です。
### 短期入所生活介護事業
短期入所生活介護の目的
短期入所生活介護は、短期間で介護の必要性が高い場合に、介護の支援を提供するサービスです。利用者が短期間入所し、日常生活の支援や機能訓練を受け、自宅に戻ることができます。
サービス内容
短期入所生活介護では、入所期間中は日常生活の支援、機能訓練、生活機能向上のためのプログラムが提供されます。入所期間は1週間から3週間程度とされており、利用者は短期間で必要な介護支援を受け、自宅に戻ることができます。
### 相性がよい事業
施設との相性
介護施設を選ぶ際は、立地や予算などの条件だけでなく、施設との相性も大切です。利用者が施設を訪問し、第一印象や直感を確認し、施設スタッフとの付き合いが密になることを考慮することが重要です。利用者が施設に合う雰囲気や生活空間を確認することが大切です。
利用者の性格に合わせた選定
利用者の性格や病気の進行状況を予想し、相性のよい事業所を選ぶことが重要です。たとえば、進行する難病の方には特定のケアが必要になることがあります。たんの吸引が可能な訪問介護事業所を選ぶことも重要です。
通所・短期入所介護事業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、通所・短期入所介護事業の企業がM&Aを依頼する際におすすめの選択肢です。譲渡企業様から手数料を一切いただかないため、コストを抑えたM&Aが可能です。また、豊富な成約実績を誇り、これまで多くの企業様にご満足いただいております。さらに、通所・短期入所介護事業の業界にも知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確なサポートを提供いたします。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。