目次
訪問介護事業の市場環境
訪問介護事業の市場環境は、以下の要素が特に重要です。
– 倒産件数の増加: 2024年度上半期には、訪問介護事業者の倒産件数が95件に達し、前年同期比66.6%増となり、過去最多を記録しました。小規模事業者が財務面での苦境から倒産に至ったことが多く、従業員数10名未満の小規模事業者が大半を占めました。
– 基本報酬の引き下げ: 2024年度の介護報酬改定で、訪問介護の基本報酬が2%超減額となり、収支差率が低下しました。この改定は、収益の大半が公定価格で規定される介護保険による収入であり、物価高騰の影響を価格転嫁で吸収することが難しくなりました。
– 人手不足と高運営コスト: 介護事業者は深刻な人手不足と光熱費などの高騰に直面しています。これにより、経営環境が厳しくなり、黒字化が難しくなっています。
– 地域包括ケアシステムの重要性: 訪問介護事業は地域包括ケアシステムにおいて重要な役割を果たしていますが、倒産増加はこのシステムの根幹を揺るがすものと考えられます。
– 支援の必要性: 小規模な訪問介護事業者への支援が必要であり、人的資源の効果的・効率的な活用やデジタル技術の導入などによる生産性向上が重要です。
訪問介護事業のM&Aの背景と動向
訪問介護事業のM&Aの背景と動向を以下にまとめます。
### 訪問介護事業のM&Aの背景
高齢化社会の進展により、訪問介護事業の需要が増加しています。日本の人口は減少傾向にあり、高齢者の割合が増加しているため、今後も需要は継続的に拡大すると予想されています。
介護保険制度の改正により、サービスの充実が進んでいます。介護保険制度の改正により、訪問介護サービスの種類が増え、利用者のニーズに合ったサービスが提供されるようになりました。また、介護保険制度の自己負担額の引き上げにより、利用者の支払い負担が軽減され、需要が増加することが期待されています。
### 訪問介護事業のM&Aの動向
資本提携の必要性:訪問介護事業は人件費や設備投資が必要であり、資金調達が重要な課題となっています。資本提携を行うことで、新たな資金調達の手段を得ることができ、事業拡大に役立つことが期待されています。
人材確保のためのM&A:訪問介護事業は人材不足が課題となっています。M&Aを通じて優秀なスタッフや地域のノウハウを取り込むことで、人材不足を解消し、事業拡大に寄与することが期待されています。
AI・ロボットの導入:厚生労働省はAIやロボットを活用した生産性向上や外国人労働者や高齢労働者の活用を課題として挙げています。M&Aを通じて新技術を導入し、効率化を図る動きが見られます。
### 訪問介護事業のM&Aの成功事例
1. A社がB社を買収した事例:A社は地域拡大に伴い人材不足が課題となっていたが、B社を買収し、B社の優秀なスタッフを取り込むことで人材不足を解消し、事業拡大につながりました。
2. C社がD社を買収した事例:C社は高齢者向けのサービスに特化していたが、障がい者向けのサービスにも進出したいと考えていた。D社を買収し、D社が持つ障がい者向けのサービスのノウハウやスタッフを取り込むことで、新規事業の立ち上げに成功しました。
### 訪問介護事業のM&Aの失敗事例
1. 事業内容の異なる買収:買収先の事業内容と自社の事業内容が異なる場合、統合が難しく、結果的に失敗することがあります。
2. 買収先の経営状態の悪い場合:買収先が赤字経営や人材不足などの問題を抱えている場合は、統合が困難になり、結果的に失敗することがあります。
### 訪問介護事業のM&Aの現状
訪問介護事業のM&Aは高齢化社会の進展や介護保険制度の改正などにより、需要が増加する中で活発化しています。資本提携や人材確保のためのM&A、AI・ロボットの導入などが活発な動向となっています。
訪問介護事業のM&A事例
訪問介護事業のM&A事例を以下にまとめます。
– ケア21によるトチギ介護サービスのM&A:
– ケア21がトチギ介護サービスの訪問介護事業を譲受契約:
– 2023年10月2日、ケア21はトチギ介護サービスの訪問介護事業の譲受契約を締結しました。
– 既存の近隣事業所との連携が強化され、地域の利用者ニーズへの対応力が向上:
– ケア21は全国主要都市で幅広く介護サービスを提供しており、トチギ介護サービスの文京区事業所の取得により、既存の近隣事業所との連携が強化され、地域の利用者ニーズへの対応力が向上します。
– ケア21によるシィノンのM&A:
– ケア21がシィノンの全株式を取得:
– 2022年5月、ケア21は、大阪府豊中市で訪問介護事業を展開するシィノンの全株式を取得しました。
– 既存事業所と事業展開エリアが重なるため、営業、人的資源の一本化による業務効率化:
– 双方の既存事業所と事業展開エリアが重複しているため、M&Aにより営業、人的資源の一本化によって、業務の効率化が図れます。
– ケア21によるエム・ケー企画のM&A:
– ケア21がエム・ケー企画の事業を譲受:
– 2023年8月に、ケア21はエム・ケー企画の事業を譲受しました。
– 近隣事業所間の連携が図れ、多くの利用者ニーズに応えることが可能:
– 本譲受により、近隣事業所間の連携が図れ、多くの利用者ニーズに応えることが可能となります。
– ケア21による凛のM&A:
– ケア21が凛の全株式を取得:
– 2022年4月、ケア21は凛の全株式を取得し、子会社化しました。
– 既存事業所と事業展開エリアが重複するため、営業、人的資源の一本化による業務効率化:
– 双方の既存事業所と事業展開エリアが重複しているため、M&Aにより営業、人的資源の一本化によって、業務の効率化が図れます。
これらの事例から、訪問介護事業のM&Aは既存の近隣事業所との連携を強化し、地域の利用者ニーズへの対応力を向上させることで、企業価値を向上させることが多いことがわかります。
訪問介護事業の事業が高値で売却できる可能性
訪問介護事業の事業が高値で売却できる可能性について、以下のような点が重要です。
– 譲渡希望額の範囲:訪問介護事業の譲渡希望額は、老人ホームに比べて安い傾向があります。具体的には、売上高の1倍を下回る場合が多いです。
– 売上高と譲渡希望額の比率:訪問介護事業の売上高と譲渡希望額の比率は、0.1~0.5の範囲で見られます。例えば、売上高が1,000万円~3,000万円の場合、譲渡希望額は300万円~500万円です。
– 相場の算出方法:訪問介護事業の売却価格は、時価純資産額+営業利益(直近3年間の平均)×3~5年という計算式を用いて算出されます。
– 買収のニーズ:施設系・訪問系の介護事業に対する買収のニーズが大きく、売上が5,000万円~1億円程度の小規模な施設系・訪問系事業者でも売却できる可能性があります。
これらの点を考慮すると、訪問介護事業が高値で売却される可能性は限られていると言えます。ただし、特定の条件や買収企業のニーズによっては、一定の高値で売却される可能性もあります。具体的な売却価格は、売却側と買収側の交渉によって決定されます。
訪問介護事業の企業が会社を譲渡するメリット
訪問介護事業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです。
– 後継者問題の解決: 経営者が高齢になっても親族や社員に適切な後継者がおらず、経営が順調なのに廃業してしまうケースがよくあります。しかし、M&Aであれば幅広く後継者候補を探すことが可能です。
– 従業員の雇用を確保: 訪問介護事業所を廃業すると、そこで働いていた従業員は解雇されてしまいますが、M&Aで売却すれば従業員の雇用を確保できます。
– 大手グループの傘下に入り経営を安定: 訪問介護業界は異業種の大企業が参入するケースが多く、例えば、不動産会社の三菱レジデンスや化学メーカーの旭化成などが介護事業に参入しています。中小の訪問介護事業者が大手グループの傘下に入れば、安定した経営基盤を得られます。
– 個人保証や担保の解消: 中小の訪問介護事業所では経営者が個人保証や担保を提供しているケースが多いですが、個人保証は会社の倒産が経営者個人の破産に結びつくため、経営者にとって大きなプレッシャーです。M&Aにより個人保証や担保のプレッシャーから解放されることができます。
– 売却・譲渡益の獲得: 訪問介護事業所をM&Aで売却すれば、売却益・譲渡益が手に入ります。譲渡益を手に入れるためにM&Aを行うというのも有力な選択肢です。ここで獲得した譲渡益は、新たな事業への投資や、経営者の引退後の生活費に充てられます。ただし、事業譲渡の場合は、譲渡益が経営者個人に入らない点に要注意です.
訪問介護事業の事業と相性がよい事業
訪問介護事業と相性がよい事業は以下の通りです。
– 自宅での生活支援: 訪問介護は、自宅での生活支援がメインであり、買い物や掃除などの生活支援が多く行われます。
– 柔軟なサービス提供: 訪問介護は柔軟なサービス提供が可能であり、利用者のニーズに応じたサービスが提供されます。
– 地域密着型サービス: 訪問介護は地域密着型サービスであり、利用者の在宅生活を24時間365日支えることができます。
– 利用者の自立支援: 訪問介護は利用者の自立支援と重度化防止に取り組んでおり、機能訓練等を通じた生活機能の維持・向上を図ります。
– 包括報酬払い: 訪問介護の新サービス創設においては、包括報酬払いが求められており、制度の安定性・持続性の確保が重要です。
これらの点から、訪問介護事業は自宅での生活支援、柔軟なサービス提供、地域密着型サービス、利用者の自立支援、包括報酬払いの確保などが大切な要素です。
訪問介護事業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
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株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。