目次
葬儀業の市場環境
葬儀業界の市場環境は、以下の要素が特徴的です:
– 死亡者数の増加:2023年1月~6月は前年並みの約2.6%増加で、全国死亡者数は昨年比約109%増の2022年を上回る傾向にあります。
– 会葬人数の変動:会葬人数に一部「戻り」が影響し、単価が昨年よりもアップした会社が増加しています。
– 競合性の上昇:1会館あたりの死亡者数指標となる競合性が高まり、ネット紹介会社の自前店舗の出現や特定の葬儀社による超多店舗出店が要因です。
– サービス多様化:家族葬、マーケットの飽和、直葬、1日葬専門業態の出現、別ブランド、専門店化を立ち上げている会社の増加が見られます。
– 環境意識の高まり:消費者の環境意識の高まりに伴い、グリーン葬儀への志向が高まり、生分解性の棺や防腐処理液を使用しない自然埋葬が需要を刺激しています。
– 経済的不確実性:燃料価格の変動、人件費の上昇、棺や埋葬地などの材料費の高騰により、多くの企業に財務的圧力がかかっています。
– M&Aの活発化:多様化するニーズに追従する形で、業界内でも競争が激化しており、M&Aが実施されることが増えている現状があります。
– 地域市場の成長:特に米国とカナダでは、高齢化人口の間で事前に計画された葬儀サービスの普及が増加しており、地域市場の成長を促進しています。
– 新規ビジネスモデル:コロナ禍をきっかけに家族葬や直葬・火葬式などの新規ビジネスモデルが登場し、業界構造を一変させています。
これらの要素は、葬儀業界の競争激化とサービス多様化を促しています。
葬儀業のM&Aの背景と動向
葬儀業のM&Aの背景と動向についてまとめます。
### 葬儀業のM&Aの背景
葬儀業は、人々が生きていく上で避けて通れない死という現実に関連するビジネスであり、その需要は常に存在しています。しかし、現代社会においては、葬儀業界における市場環境は大きく変化しています。
高齢化社会の進展により、需要が増加: 高齢化が進むことで、葬儀の需要が増加しています。
核家族化が進んでいるため、葬儀の準備や手配をする人が減少: 核家族化が進むことで、葬儀の準備や手配をする人が減少していますが、これにより葬儀業者に依頼するケースが増えています。
### 葬儀業界の競争激化
葬儀業界は競争が激化しています。多くの葬儀業者が市場に参入し、価格競争が激しくなっています。また、オンライン葬儀サービスの登場により、価格の透明性が高まり、消費者にとって選択肢が増えたことで、価格競争がより激化しています。
### 社会的なニーズの変化
葬儀業界においては、社会的なニーズの変化も見られます。近年では、環境に配慮したエコ葬儀や、ペット葬儀など、新しいニーズに対応する業者も登場しています。
### M&Aの成功事例
1. 葬儀サービスの多角化: 一部の葬儀業者が、他の関連産業を手掛ける企業とM&Aを行い、葬儀業以外のサービスを提供することで、収益の多角化を図りました。例えば、自社の斎場に隣接してレストランやカフェを開業したり、霊園の管理や遺品整理のサービスを提供することで、葬儀に関するサービスを一括して提供することができました。
2. 地域密着型の葬儀業者の統合: 複数の地域密着型の葬儀業者が、経営資源の共有やブランド力の向上を目的としてM&Aを行いました。統合後も地域に密着したサービスを提供することで、顧客の信頼を得ることができました。
3. 葬儀費用の削減: 一部の葬儀業者が、他の葬儀業者を買収することで、経営効率を高め、葬儀費用の削減を図りました。例えば、葬儀業者同士で斎場や車両を共有することで、コストを抑えることができました。
### M&Aの重要なポイント
1. デューデリジェンス(DD)の重要性: M&Aにおいては、買収する企業の法的問題や規制に違反していないかを確認することが重要です。葬儀業においては、遺族保護に関する法律や地域による規制が存在するため、これらに適合しているかをしっかりと確認する必要があります。
2. 顧客基盤や業績の評価: M&Aにおいては、買収する企業の顧客基盤や業績を評価することが必要です。葬儀業においては、地域によって需要や競合状況が異なるため、地域ごとの顧客基盤や業績を評価し、買収することが適正であるかを判断する必要があります。
3. スタッフの人材評価: 葬儀業はサービス業であり、スタッフの技術や質が極めて重要な要素です。M&Aにおいては、買収する企業のスタッフや人材育成に注力しているかを確認する必要があります。また、買収後のスタッフの統合や新たな人材の採用計画も重要な要素となります。
### M&Aの成功事例の具体例
1. 燦HDによるきずなHDへのTOB: 燦ホールディングスがきずなホールディングスの普通株式を公開買付け(TOB)により取得し、完全子会社化しました。目的は地域の出店補完、小規模葬儀の拡大、管理コストの削減、エンバーミングサービスの活用による収益増です。
2. 大手企業による地域密着型の小規模葬儀会社の買収: 大手企業が地域密着型の小規模葬儀会社を買収し、事業規模・エリアの拡大を図ることで、競争激化を乗り切り、経営の安定化を図ることができます。
3. 同業他社によるM&A: 大手葬儀会社が中小の葬儀会社を買収することで、営業拠点の拡大や人材の獲得を図り、競争力を強化します。
### M&Aのメリット
1. 後継者問題の解決: M&Aにより、後継者不足を解決し、事業を継続させることができます。
2. 雇用の継続: M&Aにより、雇用の継続が可能となり、労働者にとって大きなメリットとなります。
3. 経営の安定化: M&Aにより、経営の安定化が図れ、創業一族の利益確保や負債の解消が可能となります。
葬儀業のM&A事例
葬儀業界のM&A事例を以下にまとめます。
### 株式会社ティアによる株式会社八光殿と株式会社東海典礼の株式取得
2023年11月20日、株式会社ティアは株式会社八光殿と株式会社東海典礼の株式を取得し、両社を完全子会社化しました。ティアは葬儀会館ティアを展開し、葬儀施行を行っています。売り手となった八光殿は大阪府、東海典礼は愛知県に拠点を置く葬儀会社です。取引額は72億円となり、葬儀業界でのM&Aとしては最高額となりました。
### 株式会社よりそうによるライブネット株式会社のライフログピクチャー事業の譲受
2023年1月、株式会社よりそうはライブネット株式会社からライフログピクチャー事業を譲り受けました。よりそうは「よりそうお葬式」をはじめ、さまざまなライフエンディングに関するサービスを提供しています。ライフログピクチャー事業では、訃報をデジタル化してスマートフォンなどで簡単にやり取りすることにより、遺族の満足度を高めつつ葬儀社の新たな収益を創出するサービスです。
### 株式会社アルファクラブ武蔵野による「ネット霊園 風の霊」の事業譲受
2023年1月、アルファクラブ武蔵野株式会社は、テクニカルブレイン株式会社が開発した「ネット霊園 風の霊」の事業を譲り受ける契約を締結しました。アルファクラブ武蔵野は、墓離れが進んでいる現在において、メタバースにおける霊園に今後の需要があると考え、今回の契約に至りました。デジタルを導入した新しい葬儀サービスを提供する予定です。
### 東京博善株式会社によるTSO International株式会社の事業譲受
2022年1月、東京博善株式会社は、TSO International株式会社より、葬祭業界において国内最大規模の展示会「エンディング産業展」の事業を譲り受けました。東京博善は、シニア層およびその家族が穏やかなエンディングライフを送れるためのエンディングプラットフォーム構想を掲げており、今回のM&Aはその実現に向けた取り組みの一つとなります。
### きずなホールディングスによる備前屋の株式取得
2021年1月、きずなホールディングスは、備前屋の全株式を取得し完全子会社化しました。備前屋は岡山県で家族葬・一般葬を手掛ける葬儀葬祭事業者です。きずなホールディングスは、グループ90店舗の体制で葬儀葬祭に関する一切の業務を全国7道府県で展開しています。
### 平安レイサービスによるさがみライフサービスとシンエイ・クリエート・サービスの株式取得
2019年1月、平安レイサービスは、さがみライフサービスとシンエイ・クリエート・サービスの全株式を取得しました。平安レイサービスは神奈川県平塚市を拠点に、冠婚葬祭業のほか介護・互助会・物流事業などを手掛けています。
### 木下によるアイ・セレモニーの株式取得
2019年9月、木下はアイ・セレモニーの株式95%を取得しました。アイ・セレモニーは佐賀県伊万里市を拠点に葬儀事業を手掛けています。木下は冠婚葬祭の施行業務のほか、文化事業なども手掛けています。
### こころネットによる北関東互助センターの株式取得
2018年9月、こころネットは北関東互助センターの全株式を取得しました。こころネットは葬祭・石材・婚礼・互助会などの事業を手掛けており、営業エリアの拡大を目的としています。
### サン・ライフによるペットセレモニーWAVYの事業譲受
2017年9月、サン・ライフはペットセレモニーWAVYからペット葬事業を譲受しました。サン・ライフは神奈川県平塚市を拠点に、ホテル・ブライダル事業、葬儀・式典事業、メンバーズシステム事業、少額短期保険事業、介護事業などを手掛けています。
### 燦HDによるきずなHDへのTOB
TOB実行時期不明、燦ホールディングスはきずなホールディングスの普通株式を公開買付け(TOB)により取得し、完全子会社化しました。燦ホールディングスは葬儀業界大手の「株式会社 公益社」を中心とする持株会社で、不動産や管理業務を手掛けています。きずなホールディングスは、地域の出店補完、小規模葬儀の拡大、管理コストの削減、エンバーミングサービスの活用による収益増を図ることを目的としています。
### こころネットによる喜月堂ホールディングスの株式取得
2023年7月、こころネットは喜月堂ホールディングスの全株式を取得し子会社化しました。こころネットは葬祭、石材、婚礼、生花、互助会など幅広い事業を提供し、お客様のライフステージを包括的にサポートしています。喜月堂グループは葬祭会館の運営、葬儀に関連する料理提供、仏壇・仏具販売などを行う地域密着の企業グループで、安定的な業績を持っています。
葬儀業の事業が高値で売却できる可能性
葬儀業の事業が高値で売却できる可能性について、以下のポイントをまとめます。
– 後継者問題の解決後継者不足を解決するためにM&Aを実施するケースが増えています。
– 高齢化による担い手不足を解決するため、M&Aによる事業の売却や譲渡が有効です。
– 雇用の継続従業員の雇用を守れる可能性があります。
– M&Aにより事業承継が実現すれば、従業員の雇用を守れる可能性があります。
– 負債の解消と創業一族の利益確保負債を解消し、創業者などの経営者は一定の利益を得ることができます。
– 葬儀会社が債務を抱えていた場合、事業譲渡によって負債を解消できる可能性があります。
– 経営の安定化経営の安定化が図れます。
– M&Aで自社より規模の大きな企業の傘下に入れば、買収側企業のリソースを活用することができ、経営の安定化が図れます。
– 売却相場の把握相場を把握することが重要です。
– 葬儀会社のM&Aの相場は、売却側の葬儀会社の規模や顧客、地域背景などによって大きく変わるため、相場を把握することが重要です。
– 具体的な相場の計算方法時価純資産 + 営業利益 × 2〜5年
– M&Aを行う場合、売却相場を知ることで安く買いたたかれたり、高値で打診してM&Aが成約できなくなったりする事態を避けることができます。
これらのポイントを踏まえると、葬儀業の事業が高値で売却できる可能性は高いと言えます。
葬儀業の企業が会社を譲渡するメリット
葬儀業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです。
– 後継者問題の解決後継者問題が解決されます。高齢化により担い手不足が問題となっている場合、M&Aにより新たな経営者に事業を任せることができます。
– 従業員の雇用継続従業員の雇用が継続されます。M&Aにより事業を譲渡することで、従業員の雇用を守ることができます。
– 負債の解消と創業一族の利益確保負債が解消され、創業者は一定の利益を得ることができます。事業譲渡によって負債を解消し、創業者は一定の利益を得ることができます。
– 経営の安定化経営の安定化が図れます。M&Aにより自社より規模の大きな企業の傘下に入れば、買収側企業のリソースを活用し、経営の安定化が図れます。
– 売却益の獲得売却益が得られます。M&Aにより株式を売却することで、オーナーはまとまった資金を手にすることができます。
– 個人保証や担保の解消個人保証や担保が解消されます。M&Aにより個人保証や担保が解消され、経営者がストレスなく引退後生活を送れるようになります.
葬儀業の事業と相性がよい事業
葬儀業の事業と相性がよい事業は以下の通りです。
1. 墓地・墓石業
– 葬儀の際に墓地の選定や墓石の購入が必要なため、墓地・墓石業と葬儀業は密接に関連しています。《墓地・墓石業》
2. 生花・ギフト業
– 葬儀の際に花束や供花が必要なため、生花・ギフト業は葬儀業と相性がよいです。《生花・ギフト業》
3. 霊柩運送業
– 遺体の搬送が必要なため、霊柩運送業は葬儀業と直接関連しています。《霊柩運送業》
4. ホテル業
– 葬儀の際に遺族が宿泊する場合があり、ホテル業は葬儀業と相性がよいです。《ホテル業》
5. 仏具・仏壇業
– 葬儀の際に仏具や仏壇が必要なため、仏具・仏壇業は葬儀業と相性がよいです。《仏具・仏壇業》
6. 不動産業
– 葬儀の際に遺族が不動産を売却する場合があり、不動産業は葬儀業と相性がよいです。《不動産業》
7. 介護サービス業
– 高齢化社会において、介護サービス業は葬儀業と相性がよいです。《介護サービス業》
8. テクノロジーサービス業(エイジテック)
– 高齢者向けのテクノロジーを使ったサービスは、葬儀業と相性がよいです。《エイジテック》
これらの事業は、葬儀業の需要に応じて、相互にサポートし合うことができます。
葬儀業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、葬儀業の企業様がM&Aを依頼する際におすすめの理由がいくつかございます。まず、譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点が大きな特徴です。これにより、コストを気にせずに安心してご相談いただけます。また、豊富な成約実績を誇っており、多くの企業様にご満足いただいております。さらに、葬儀業の業界にも深い知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確なアドバイスを提供することが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。