目次
老人福祉・介護事業の市場環境
老人福祉・介護事業の市場環境は、以下の要素が特に重要です。
– 市場規模と成長率:
– 市場規模: 2023年には1兆1,632億米ドルに達し、2024-2032年までにCAGR 6.6%の成長率で2兆880億米ドルに達する予測。
– 成長要因: 高齢化人口の増加、慢性疾患の広がり、コロナウイルス感染症の流行による健康不安の高まり、各国政府による社会的介護サービスの提供など。
– サービス分類と需要:
– サービス分類: ホームケア、エイドゥデイケア、施設ケアなどが主要なサービス。
– 需要の増加: 在宅介護サービスの需要が高まり、保険外サービスの注目度も高まっている。
– 介護保険改定と労働人口:
– 介護保険改定: 2024年には介護保険、診療報酬、障がい福祉サービスの3つの保険制度・報酬が改定され、地域包括ケアシステムの深化・推進や自立支援・重度化防止に向けた対応が重点に置かれる。
– 労働人口の減少: 介護職員の処遇改善加算が行われ、労働人口減・職員不足の状況に対応できる「介護人材戦略」が求められる。
– 医療・介護連携とAI導入:
– 医療・介護連携: 介護業界の中には医療業界と連携を進める企業も増えており、病気の早期発見や治療にもつながる。
– AI導入: AIの導入が進んでおり、業務内容の幅が広いことで発生する身体的な負担を軽減する効果がある。
– 外国人介護士の受け入れ:
– 外国人介護士の受け入れ: 人手不足解消のために外国人介護士の受け入れが増加しており、適した在留資格のある外国人介護士を雇用することが推奨される。
これらの要素が、老人福祉・介護事業の市場環境を形成しています。
老人福祉・介護事業のM&Aの背景と動向
老人福祉・介護事業のM&Aの背景と動向は以下の通りです。
– 人材確保の必要性介護業界の人材不足が深刻な課題であり、同業種の企業を買収することでスキルやノウハウを持つ従業員を取り込む動きが見られます。
– 事業承継の問題介護施設経営者の高齢化に伴う事業承継の問題が注目されています。介護保険制度が開始した2000年から20年以上が経過し、経営者が引退のタイミングに差し掛かっています。
– 市場の拡大と需要の増加高齢化が進む日本で、介護需要が高まっており、それに比例してM&A件数が増加しています。
– 異業種からの参入異業種からの参入が増加しており、特に警備会社や不動産会社など、主力事業の先行きに不安を感じる企業からの参入が顕著です。
– 経営の安定化と資源の選択経営の安定性が確保され、経営体力のある大手企業や経営の安定した施設に事業が譲渡されると、厳しい経営状況からの脱却が期待できます。
– M&AのメリットM&Aによって事業規模が拡大し、従業員にはキャリアアップのチャンスが生まれます。また、経営統合による人材交流促進や経営効率化などの効果も期待されます。
これらの要因により、介護業界におけるM&Aは活発化しており、将来的にもその傾向が続く予想されています。
老人福祉・介護事業のM&A事例
老人福祉・介護事業のM&A事例をまとめます。
### 1. リビングプラットフォームとシニアケアのM&A
– 事業譲渡: リビングプラットフォームケアがシニアケアから高齢者グループホーム事業を譲り受けました。
– 取得額: 非公開
– 取得理由: 事業規模とエリアの拡大、ドミナント戦略の強化
### 2. ケア21とトチギ介護サービスのM&A
– 事業譲渡: ケア21がトチギ介護サービスの事業を譲り受けました。
– 取得額: 非公開
– 取得理由: 事業規模の拡大および提供サービスの充実
### 3. 学研ココファンとグランユニライフケアサービスのM&A
– 株式譲渡: 学研ココファンがグランユニライフケアサービスの株式を取得しました。
– 取得株式数・取得価格: 1,000株・非公開
– 取得理由: 事業規模の拡大および提供サービスの充実
### 4. ケア21とエム・ケー企画のM&A
– 事業譲渡: ケア21がエム・ケー企画の事業を譲り受けました。
– 取得価格: 非公開
– 取得理由: 事業規模の拡大および提供サービスの充実
### 5. 揚工舎とトータルケア陽だまり・ケアネット・トキのM&A
– 株式譲渡(トータルケア陽だまり)、事業譲渡(ケアネット・トキ): 揚工舎がトータルケア陽だまりとケアネット・トキの事業を譲り受けました。
– 取得株式数・取得価格(トータルケア陽だまり): 60株・非公開
### 6. SOMPOケアとエネルギア介護サービスのM&A
– 株式譲渡: SOMPOケアがエネルギア介護サービスの全株式を取得しました。
– 取得株式数・取得価格: 6,000株・非公表
– 取得理由: サービス提供態勢の強化
### 7. ケア21による凛のM&A
– 株式譲渡: ケア21が凛の全株式を取得しました。
– 取得理由: グループの企業価値向上
### 8. ニチイ学館による西日本ヘルスケアのM&A
– 株式譲渡: ニチイ学館が西日本ヘルスケアの全株式を取得しました。
– 取得理由: トータル介護サービスネットワークの強化と企業価値向上
### 9. チャーム・ケア・コーポレーションによるグッドタイムのM&A
– 事業譲渡: チャーム・ケア・コーポレーションがグッドタイムの有料老人ホーム運営事業を譲り受けました。
– 取得理由: 新たなエリアおよびホームの拡大
### 10. 揚工舎によるヒューマンライフケアのM&A
– 事業譲渡: 揚工舎がヒューマンライフケアの有料老人ホーム・小規模多機能型居宅介護事業の一部を譲り受けました。
– 取得理由: 事業拠点の増加
### 11. SOMPOケアによる東京建物シニアライフサポートのM&A
– 株式譲渡: SOMPOケアが東京建物シニアライフサポートの全株式を取得し、同社を吸収合併しました。
– 取得理由: 首都圏における介護事業の強化と既存事業とのシナジー効果の強化
### 12. ケアサービスによる広域社会福祉会のM&A
– 事業譲渡: ケアサービスが広域社会福祉会から大田区の訪問介護事業を譲り受けました。
– 取得対価: 500万円
### 13. 青嵐会による一樹会のM&A
– 事業譲渡: 青嵐会が一樹会から介護老人保健施設「サンライズ」の事業を譲り受けました。
– 取得理由: 老朽化や介護職員不足の問題の解消と経営効率化
### 14. ニチイ学館の多角的な事業展開
– 多角的な事業展開: ニチイ学館は医療事務事業、介護事業、保育事業などを展開しています。
これらの事例は、老人福祉・介護事業のM&Aの動向を示しています。各企業は、事業規模の拡大、提供サービスの充実、地域のシェア拡大、企業価値の向上などを目指しています。
老人福祉・介護事業の事業が高値で売却できる可能性
老人福祉・介護事業の事業が高値で売却できる可能性は、以下の要因によって決まります。
– 後継者不在: オーナー経営者の高齢化や業界の先行き不安が、事業売却の理由の1つです。M&Aにより事業承継の可能性が広がり、サービス継続や雇用維持が図れます。
– 人材不足: 介護職の採用や定着が進まないため、事業売却が検討されることがあります。売り手側としても大手グループへの傘下入りにより、人材確保が容易になります。
– 経営環境の悪化: 介護報酬の引き下げやコロナ禍の影響による経営環境の悪化が、事業撤退の理由となります。売却により経営基盤や資金力を強いグループへの傘下入りが有力視されています。
– 将来性の評価: 売り手企業の将来的な収益力に着目し、企業価値を算出するインカムアプローチが利用されます。将来性を加味できるため、特定地域における介護事業の認知度などを反映させることができます。
これらの要因を踏まえると、老人福祉・介護事業が高値で売却される可能性は高いと言えます。具体的な売却価格はバリュエーションに基づき交渉によって決定されますが、以下のような相場が考えられます。
– 年倍法: 中小規模の介護事業に関しては、時価純資産に年間利益の2〜5年分(のれん代)を足した金額を企業価値(≒売却価格の相場)とします。
これらの手法を利用することで、老人福祉・介護事業の事業が高値で売却される可能性を高めることができます。
老人福祉・介護事業の企業が会社を譲渡するメリット
老人福祉・介護事業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです:
– 後継者問題の解決:介護業界では経営者の高齢化が進み、後継者不足が深刻です。M&Aにより事業を譲渡することで、廃業を回避し、事業の存続が可能になります。
– 経営体力の安定:介護報酬は3年に1度改定され、改定がマイナスになることもあります。M&Aにより経営体力のある大手企業に事業を譲渡すると、報酬改定の影響を受けにくい安定した経営基盤が築けます。
– 従業員の雇用確保:事業を譲渡して継続可能な状態にできれば、従業員の雇用も確保できます。譲渡先が大規模な事業所であれば、従業員の働き方の幅が広がり、キャリアアップにつながる可能性もあります。
– 財務的なメリット:経営者本人にとって、譲渡による創業者利益の獲得や事業所経営のための借入金の個人保証契約の解消などの財務的なメリットがあります。
– 人材の確保と利用者の受け継ぎ:M&Aにより既存の施設の従業員をそのまま受け継ぐことが一般的です。人材不足が深刻な介護業界において、経験豊富な人材を一度に確保できるのは大きなメリットです。また、施設利用者も引き継ぐことができるため、新規で顧客を開拓する手間が省ける点もメリットです。
– 許認可の引き継ぎ:M&Aが株式譲渡によって実施された場合、株式の所有者が変わるだけなので介護事業における許認可も引き継ぐことができます。
– 初期費用や労力を軽減:M&Aによって介護事業を買収すると、施設建設や設備購入などにかかる初期費用や労力を大幅に削減できます。サービス開始までの費用や時間、労力の軽減が可能です。
老人福祉・介護事業の事業と相性がよい事業
老人福祉・介護事業において、相性がよい事業を選ぶ際には以下のポイントが大切です。
– ケアマネジャーの選び方:
– 相性の重要性:
_ケアマネジャーとの相性は介護生活に非常に大切です。__、__、__
– 選び方のポイント:
_気軽に相談できる人、まずは話しやすいかどうかを基準として選ぶことがおすすめです。__
_利用者や家族の希望や提案に耳を貸さず非協力的なケアマネには注意が必要です。__
_ケアマネジャーは「利用者からの苦情に迅速かつ適切に対応すること」が義務付けられています。__
– ケアプランの作成と調整:
– ケアプランの重要性:
_ケアプランを作成し、サービス事業者や市区町村との連絡調整を行うことが重要です。__、__
– 利用者の立場に立つ:
_利用者の立場に立ち、必要な介護サービスを利用できるように総合的な支援をします。__
– 相談先の選択:
– 地域包括支援センター:
_要支援の方の場合、地域包括支援センターが担当します。__
– 居宅介護支援事業所:
_居宅介護支援事業所に相談することも可能で、同じ事業者の中に複数のケアマネジャーがいれば他の担当者に変更できます。__
– 情報の確認:
– ハートページの確認:
_お住まいの市区町村の介護保険課や地域包括支援センターで、居宅介護支援事業所のリストやハートページを確認して自分に合うケアマネジャーを探すことができます。__
– 相談の重要性:
– 迅速かつ適切な対応:
_納得できないことが生じたらすぐに話し合うことが大切で、本音を言うことでお互いの信頼関係が強くなることがあります。__
これらのポイントを守ることで、相性がよいケアマネジャーと出会うことができます。
老人福祉・介護事業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、老人福祉・介護事業の企業がM&Aを依頼する際におすすめの理由がいくつかあります。まず、譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点が大きな魅力です。これにより、コストを気にせずにM&Aのプロセスを進めることができます。また、豊富な成約実績を持っており、多くの企業様にご満足いただいております。さらに、老人福祉・介護事業の業界にも深い知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確なアドバイスを提供することが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。