目次
純粋持株会社の市場環境
純粋持株会社の市場環境は、以下の要素で構成されています。
– 解禁と増加: 1997年6月に純粋持株会社の設立が解禁され、多くの企業が持株会社体制へ移行しました。2023年9月末時点で、670社以上の上場企業が持株会社として存在しています。
– コロナ禍の影響: 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受けて、2020年度から2022年度にかけての期間に、多くの企業が持株会社化しました。コロナ禍による不確実性に対応する手段として、持株会社化が選択されました。
– M&Aの利点: 純粋持株会社は、親会社が事業を行っていないため、M&Aが行いやすくなります。被買収企業が新たに傘下へ入る際にも従業員の心理的抵抗が少なく、PMI(Post Merger Integration:M&A後の統合プロセス)も容易です。
– 組織再編: 純粋持株会社は、事業と経営の分離によって親会社の戦略策定機能が向上し、事業子会社が独自の事業経営を行うことができます。
– 金融業界の活躍: 金融業界では、1997年の独占禁止法改正により、多くの金融機関が純粋持株会社を設立しています。例えば、三菱UFJフィナンシャルグループ、東京海上ホールディングス、野村ホールディングスなどが挙げられます。
– グローバル化と競争力: 日本企業も海外進出や新規事業のきっかけとして、他社と協力関係を結ぶ例が増えています。グループによる相互関係を生かし、海外への競争力を強化する狙いがあります。
– 企業同士の関係性: 持株会社なら買収・合併といったM&Aを展開しやすく、買収相手との企業文化の違いを避けることができます。経営改善を受けた買収相手と新しい関係を築くことも可能です。
– 移行理由の変化: 2022年度には、従来代表的な「経営資源の最適化」が最多でしたが、コーポレートガバナンス・コードの改訂を機に「コーポレートガバナンスの強化」を挙げる例が急増しました。また、「ESG経営」を掲げる企業も現れました。
– 移行予定の減少: 2023年度上期の公表社数は直近7年間の同期間で最も少ない6社となっており、2024年度の移行社数は2022年度及び2023年度よりも減少する可能性があります。
これらの要素が純粋持株会社の市場環境を形成しています。
純粋持株会社のM&Aの背景と動向
純粋持株会社のM&Aの背景と動向についてまとめると、以下の点が重要です。
– M&Aの利点:
– 事業を行っていないメリット:
M&Aが行いやすくなるため、被買収企業が新たに傘下へ入る際にも従業員の心理的抵抗が少なく、PMI(Post Merger Integration:M&A後の統合プロセス)も容易となる。
– 組織再編の利点:
純粋持株会社は組織再編においてその真価を発揮し、企業買収時のみならず事業の売却や清算時にも共通するメリットがある。
– 移行方式:
– 組織再編型:
抜け殻方式:
親会社が保有する事業を子会社に移すことで親会社が持株会社へと移行する手法。
株式移転方式:
元の事業会社が新たな親会社を設立し、親会社と株式移転手続きを行うことで事業会社の株主が親会社の株主となる手法。
– 経営統合型:
複数の企業間の経営統合を行う手法。
– 動機とメリット:
– 経営資源の最適化:
コロナ禍において事業環境の見通しが不確実な中、近視眼的な経営資源の投下を防ぎ、リスク管理を伴った事業の最適化を進めるために、持株会社化が選択されている。
– コーポレートガバナンスの強化:
2020年度より2022年度にかけて急増しているが、減少したと推測している。
– ブランドの独立性の維持:
持株会社方式では、参加企業の法人格が維持されるため、組織文化や人事制度面での摩擦を回避し、従来のブランドが存続するため、顧客層も維持できる。
– 機動的なM&Aの実施:
迅速なM&Aを可能にするため、追加的なM&Aを実施する場合でも、持株会社にぶら下げるだけ統合を行うことができる。
– M&A市場の環境:
– 活況を呈しているM&A市場:
2020年度下期以降、M&A市場の環境が活況を呈しているが、積極的なM&A活動が続いている。
これらの点が純粋持株会社のM&Aの背景と動向を理解するために重要です。
純粋持株会社のM&A事例
純粋持株会社のM&A事例を以下にまとめます。
### 純粋持株会社のM&A事例
1. ソフトバンクグループによるL社の株式譲渡
– 純粋持株会社の特徴: ソフトバンクグループは日本の大企業であり、自社では事業を行わない純粋持株会社です。L社に株式譲渡した事例です。
2. ニトリホールディングスとエディオンの資本業務提携
– 資本業務提携の目的: 両社とも家での生活に欠かせない商品の販売を行っているため、互いの経営資源やノウハウを活用し、事業拡大を図る目的で資本業務提携が行われました。
3. ウェルシアホールディングスによるふく薬局の子会社化
– 地域特化の目的: 沖縄県エリアの「人口の継続増加」「全国1の出生率」といった優位性のある消費環境を最大限に活かすための子会社化です。
4. LINEによるファイブの資本業務提携
– 新しいM&Aスキームの活用: 2021年3月に施行された改正会社法により定められた新しいM&Aスキームである株式交付が用いられています。
5. GMOインターネットによるOMAKASEの株式交付
– 株式交付の活用: 株式交付によってOMAKASEを子会社化し、買収対価として自社の株式を交付しました。2021年3月に『株式交付制度』が創設されて以来、株式交付が早々に活用された例といえます。
6. クスリのアオキホールディングスによるフクヤの株式譲渡
– 事業のシナジー効果: 未進出であった京都北部エリアへの進出が目的で、フクヤの全ての株式を取得し完全子会社化しました。
これらの事例では、純粋持株会社の特徴として、事業を行わないためM&Aが行いやすくなるメリットが挙げられます。傘下となる事業会社は上下関係のない兄弟会社として各々独立した事業を営むことができるため、被買収企業が新たに傘下へ入る際にも従業員の心理的抵抗が少なく、PMI(Post Merger Integration:M&A後の統合プロセス)も容易となります。
純粋持株会社の事業が高値で売却できる可能性
純粋持株会社の事業が高値で売却できる可能性について、以下のようにまとめます。
純粋持株会社の事業が高値で売却される可能性は、以下の点に依存します。
– 事業の収益構造: 純粋持株会社は、子会社からの株式配当を主な収入源としています。子会社が安定した収益を生成している場合、純粋持株会社の事業価値が高く評価される可能性があります。
– グループ全体の戦略: 純粋持株会社は、グループ全体の戦略立案や経営資源の最適配分に注力します。グループの戦略が明確で、各子会社が効率的に運営されている場合、純粋持株会社の事業価値が高く評価される可能性があります。
– 子会社の事業価値: 純粋持株会社が保有する子会社の事業価値が高く評価されている場合、純粋持株会社の事業価値も高く評価される可能性があります。
– 税制上のメリット: 持株会社を活用することで、相続税や贈与税の課税額を減少させることが可能です。特に、自社株の価値を下げることで相続税負担を軽減させることができます。
これらの要素が整っていれば、純粋持株会社の事業が高値で売却される可能性が高くなります。
純粋持株会社の企業が会社を譲渡するメリット
純粋持株会社が会社を譲渡するメリットは以下の通りです:
– 経営権の移譲が容易: 経営権が移動しない事業譲渡が可能で、譲渡企業が事業を継続したり、貸借対照表に計上されていない簿外債務がある場合にもM&Aを比較的容易に行うことができます。
– 税負担の軽減: 経営権が移動しない事業譲渡であれば、相続税の節税効果が生まれます。自社の株式を持株会社に移転させ、後継者に持株会社を引き継ぐことで、子会社の利益が含み益となり法人税の課税対象になるため、節税効果が生まれます。
– 事業承継のスムーズ化: 持株会社を通じて事業承継を行うことで、経営権の移譲や税負担の軽減が可能となり、スムーズな経営継続が実現できます。既存の会社の株式を持株会社へ移すことで、事業承継の対象となる企業の株式が相続財産の対象から外れます。
– リスクの分散: 持株会社の傘下にある各企業は、それぞれが法人格を持ち、各企業同士が独立した関係を保っています。急激な業績悪化や経営の根幹にかかわるような損害賠償など、想定外のリスクが生じた場合でも、それがグループ内の他企業に波及することはありません。
純粋持株会社の事業と相性がよい事業
純粋持株会社の事業と相性がよい事業は、以下のようなものがあります。
– 他社の株式管理: 純粋持株会社は、他社の株式を保有し、その経営に影響を与えることを主業務としています。他社の株式管理は、純粋持株会社の主な事業です。
– 子会社からの配当収入: 純粋持株会社は、子会社からの配当収入が主な収益源です。子会社からの配当収入は、純粋持株会社の経営の重要な部分です。
– グループの統制: 純粋持株会社は、グループの統制に集中するシンプルなタイプです。グループの統制は、純粋持株会社の主な利益のひとつです。
– 経営効率の向上: 純粋持株会社は、経営機能と事業機能が明確に区別されるため、経営効率が向上します。経営効率の向上は、純粋持株会社のメリットのひとつです。
これらの事業が純粋持株会社の成功に寄与します。
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株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。