目次
特許事務所の市場環境
特許事務所の市場環境は、以下の要素で構成されています。
– 収入と生産性の減少特許事務所全体として、収入額と一人当たりの生産性が減少している。特に収入額は約5千万円減少しており、一人当たりの生産性も半分以下に低下しています。
– 大手特許事務所の微増傾向大手特許事務所の売上は微増傾向にある。収入額は前年比104%、103%と増加している。
– 国内出願件数の減少国内特許出願件数は減少傾向にあり、約40万件で推移しています。特許庁からの行政指導の影響もあるかもしれません。
– 国際出願件数の増加国際出願件数は増加しており、特にPCT国際出願の件数は5,644件増加しています。日本企業のグローバル化が進展しており、国外における知財戦略の重要性が増加しています。
– 弁理士の増加と競争激化弁理士の数は増加しており、弁理士1万人時代が予測されています。弁理士1人当たりの出願件数は40件に低下していますが、競争は激化する予測されています。
– AIの影響AI技術の進出は特許業務に影響を与えているが、全ての業務がAIに取って代わられることはない。特に商標出願業務や調査・翻訳作業がAIの得意とする分野です。
これらの要素が特許事務所の市場環境を形作っています。
特許事務所のM&Aの背景と動向
特許事務所のM&Aの背景と動向についてまとめると、以下の点が重要です。
– 競争激化: 特許事務所業界では、国内特許出願件数の減少や企業の自社出願率の増加、海外出願数の増加により、業界内での競争が激化しています。
– M&Aと事業承継: 顧客の獲得やスケールメリットによる安定的な経営を目的とした特許事務所のM&Aや、高齢化または業績悪化による事業承継が増えつつあります。
– コンフリクトの問題: 同じ技術分野の特許事務所がM&Aをしようとすると、コンフリクトの問題が発生しやすいため、違う技術分野の特許事務所とのM&Aが求められます。
– 他士業との連携: 特許事務所同士だけでなく、他の士業事務所とのM&Aも注目されています。特に、中小企業との関係性が強い会計事務所との連携が模索されています。
– 知的財産の価値評価: M&A取引において、特許の所有権、有効性、実施可能性、譲渡可能性が取引額に大きな影響を与えるため、知財デューデリジェンスが不可欠です。
– 特許分析の重要性: 特許分析はM&A取引の成功を予測できるため、特許の品質やビジネスとの関連性が重要です。
– 商標デューデリジェンス: 商標権の確認と検証もデューデリジェンスに不可欠で、コストのかかるサプライズを回避するのに役立ちます。
これらの点が特許事務所のM&Aの背景と動向を理解するために重要です。
特許事務所のM&A事例
特許事務所のM&A事例を以下にまとめます。
### M&A事例の特徴
– 特許の理解とマッチング: 特許に詳しい弁理士との連携により、特定の技術を持つ企業を探し出すことができました。
– シナジー効果の発揮: M&Aにより、同一製品の部品を製造する2社の技術を組み合わせることで、付加価値の高い特許を見つけ出しました。
– 特許ポートフォリオの構築: 他社から特許や技術を購入、またはライセンス契約を結び、特許紛争に対抗するための特許ポートフォリオを構築しました。
### M&Aの成功要因
– 専門的な知見: 弁理士や多くの専門家と協力することで、最適な相手先を探すことができました。
– 技術の理解: 自社の技術を理解しながら、相手先の技術の詳細内容や強みを理解し、新しい何かを見出すことが重要です。
– クロスライセンス契約: 相互に特許を許諾しあう契約を締結し、事業提携を行うことで、より大きな価値を生み出すことができました。
### M&Aの実際の事例
– 中小機械メーカーのM&A: 大阪にあるロールカッターやスリッターの専門メーカーが、和歌山県にある企業とM&Aを行い、成功しました。
– DVDプレーヤーのM&A: 同一製品の部品を製造する2社の技術を組み合わせることで、付加価値の高い特許を見つけ出しました。
これらの事例から、特許事務所のM&Aにおいては、特許の理解とマッチング、シナジー効果の発揮、特許ポートフォリオの構築が重要な要素であることがわかります。
特許事務所の事業が高値で売却できる可能性
特許権を高値で売却する可能性について、以下のポイントをまとめます。
– 特許権の売却可能性:特許権は一般的な財産権と同様に売買が可能です。
– 特許権の移転手続き:特許権を売却する際には、特許権の名義を売主から買主に変更する必要があります。これには特許庁での移転登録申請が必要です。
– 特許権の価値評価:特許権の価値は、特許権がもたらす利益や市場での取引価格を参考に評価されます。例えば、特許権が年間1000万円の利益を生み出す場合、その価値はその利益を基に評価されます。
– 特許権の売却価格決定:特許権の売却価格は、売手と買手との交渉で決まります。特定の材料や市場での取引情報を参考に、双方が納得する価格が決定されます。
– 特許権の売却ケース:特許権を売却できるケースとしては、他社の事業展開の大きな障壁となる特許権や、他社が是が非でも事業展開したい製品やサービスに関する特許権があります。
これらのポイントを考慮することで、特許権を高値で売却する可能性を高めることができます。
特許事務所の企業が会社を譲渡するメリット
特許事務所の企業が会社を譲渡する際のメリットを以下のようにまとめます:
– 特許権の保護:特許権を保有していることで、その事業や技術を他者に譲渡する際に、高価値を付けることができます。これにより、事業の買い手が見つかりやすくなり、より良い条件での取引が期待できます。
– 事業の選択性:事業譲渡では、売り手側は譲渡する事業を選択できます。経営していくのが手一杯の事業を譲渡して経営に余裕を持たせたり、生活していく資金が得られる最低限の事業だけを残したりと、事業譲渡後の目的に合わせて調節できる。
– 技術の独占:特許権を持っていれば、製品の製造は「特許〇〇号に基づく」として行うことができ、製造業者は特許権者の許可なく同じ技術を用いた製品を勝手に作ることができなくなります。これにより、技術の独占が可能となり、設計者の利益と権利が守られます。
– 市場での競争優位:特許権によってその技術が独占的に保持され、市場での競争優位を確立することが可能です。
– 譲渡利益の得やすさ:特許権を譲渡してもらうことで、対価を支払って譲り受けた特許により得られる成果がどれくらいかを評価し、利益を生み出すことができます。
– 節税の効果:事業譲渡では「のれん」を一定の期間で償却して損金として計上することができ、結果として節税につながることが期待されます。
特許事務所の事業と相性がよい事業
特許事務所の事業と相性がよい事業を以下にまとめます。
### 特許事務所の事業
1. 特許・実用新案・商標の出願業務
– 国内外の特許、実用新案、商標の出願から登録までの各手続きを行います。
2. 権利化業務
– 特許、実用新案、商標の権利取得、権利維持、権利活用のサポートを行います。
3. 係争関連業務
– 特許権に関する係争相談、権利調査・包袋調査、鑑定(有効性と抵触性)、判定請求、無効審判請求、審決取消訴訟などを行います。
4. 技術契約業務
– 特許権・実用新案権・商標権・意匠権に関する譲渡契約及び移転登録、実施契約及び実施権設定登録を行います。
5. コンサルティング業務
– 技術的・法律的な専門知識やビジネスの知見に基づくコンサルティング、出願前の知的財産戦略の立案、出願後の知的財産ポートフォリオの管理、ライセンス契約、権利移転等に関するコンサルティング業務を行います。
6. 知財戦略の立案
– 企業買収・合併や製品上市の際に必要となる知的財産権の調査・デュー・ディリジェンスや、国内外の知的財産検索分析データベースを駆使して知的財産の情報に関する調査・技術トレンド・競合状況の分析を行います。
### 相性がよい事業
1. IT系スタートアップ企業
– 特許取得はIT系スタートアップ企業にとって非常に相性のいいものです。特許権を行使して競合を排除し、独占を狙うことができます。
2. 新技術・ビジネスモデル
– 新しい技術やビジネスモデルで急成長を狙うスタートアップにとって、特許は非常に相性のいいものです。特許取得は営業・マーケティングへの貢献や資金調達に際してのバリュエーションへの影響、大企業と提携する際の信用力の獲得など、広報的な効果も生かしやすいものです。
3. グローバルなビジネス展開
– グローバルなビジネス展開のニーズに応えるため、特許事務所は国際的な経験を持ち、外国出願も意識しています。
4. スタートアップの知財支援
– スタートアップ企業は新しい技術やビジネスモデルにチャレンジしているところが多く、知財を活用して成長を加速させることができます。特許事務所はスタートアップ企業を積極的に支援しており、知財部の業務を含めてサポートを行います。
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株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。