業務委託業の市場環境

業務委託業の市場環境についてのまとめ

2023年度の人材関連ビジネスの主要3業界(人材派遣業、ホワイトカラー職種の人材紹介業、再就職支援業)の市場規模は、事業者売上高ベースで前年度比6.3%増の9兆7,156億円でした。特に、人材派遣業市場は5.9%増となり、ITエンジニアなどのIT関連職種や介護職等の領域で需要の高まりが顕著でした。

人手不足感の強まりにより、企業からのサービス需要が高まっており、人材派遣業が堅調に推移しています。ただし、事業者によっては新型コロナウイルスに関わる業務の受注が終了したことにより、受注数の減少で2023年度は減収となったケースもありました。

2024年度の人材関連ビジネスの市場規模は、事業者売上高ベースで前年度比5.6%増の10兆2,602億円の見込みです。この市場規模の増加は、継続する人手不足を背景に、引き続きサービス需要が高まっている人材派遣業とホワイトカラー職種の人材紹介業が牽引する形となります。

フリーランスの活用も重要な要素です。2021年には、業務委託を活用する「老舗企業」が増加し、システム開発の需要が拡大したため、業務委託案件の発生する企業数は約5割増となりました。新型コロナウイルス感染拡大で需要が伸長した「EC関連」の案件発生企業数も増加しました。

また、2023年には57.6%の企業が業務委託活用を加速し、新卒採用よりも即戦力の業務委託人材を求める動きも進んでいました。この理由として、終身雇用が難しくなるためや、副業での働き方が加速するためなどが挙げられました。

さらに、2023年のフリーランスエージェント市場は前年比142.8%の成長を遂げ、2,063億円の規模に達しました。ITフリーランス人材の人口も増加傾向で、DX推進やリモートワークの普及、副業解禁など労働市場の柔軟化が背景にあるとされています。

これらの動向から、業務委託業の市場環境は、人手不足感やDX推進、リモートワークの普及などにより、さらに拡大する可能性があります

業務委託業のM&Aの背景と動向

アウトソーシング業界のM&A動向と事例

近年、アウトソーシング企業はサービス提供分野の拡大やサービスの高度化、人材獲得・採用強化を目的として活発なM&Aを展開しています。以下に、主要な背景と動向をまとめます。

– BPOの普及とM&Aの活発化:
– BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)が一般化し、プロセスの企画・設計から実施・保守までをアウトソーシング企業に委託することが増えています。
– M&Aの目的:
– サービス提供範囲の拡大:
– 自社とは異なる分野に強みを持つ企業を統合し、サービス提供範囲の拡大を図る。
– 人材力強化:
– 人材紹介会社の買収やRPA・ロボティクス事業の取り込みを目的とした開発企業の買収。
– データ・ノウハウの増強:
– 蓄積されたデータ・ノウハウを活用してサービスの品質と価値を高める。

– 地域拡大とグローバル市場への進出:
– 海外拠点の拡大:
– 海外を含めた他地域の同業者を買収して拠点を拡大する動きが活発です。
– 地域のシェア拡大:
– 地域特有のシェア拡大を目的とした買収例も見られます(例:エス・エス産業の愛知・九州エリア対応力強化)。

– M&Aの手法と目的:
– 全株式取得:
– 例:アイルランドのCpl Resources plcの全株式買付(取得価額約389億円)。
– 現地子会社による全株式取得:
– 例:豪州HorizonOne Recruitment Pty Ltdの現地子会社による全株式取得。

– M&Aの需要の拡大:
– 大企業のM&A:
– 事業規模やエリアの拡大・市場でのシェア獲得、破綻企業の再生などを目的とする。
– 中小企業のM&A:
– 事業承継目的が最も多い(例:後継者不在問題の解決)。
– M&A仲介会社が活用されるケースが多い(理由:効率的な候補者探しや友好的なM&A成立を前提とした交渉)。

これらの動向から、アウトソーシング企業のM&Aはサービス提供の拡大、人材の強化、データ・ノウハウの増強を目的として、地域拡大やグローバル市場への進出を図るものと言えます。

業務委託業のM&A事例

業務委託業のM&A事例

– ポールトゥウィン・ピットクルーホールディングスによるM&A:
吸収合併: ポールトゥウィン・ピットクルーホールディングスは、MIRAIt Service Designを存続会社として、ソフトワイズ、MSD Secure Service、盛達テクノロジーの4社を吸収合併しました。

– インバウンドテックによるOmniGridのM&A:
株式譲渡: インバウンドテックは、音声予約システム開発・運営、音声通話システム開発・運営、レンタルサーバー事業などを手掛けるOmniGridの株式65%を取得しました。

– 日本PCサービスによるミナソルのM&A:
株式譲渡: 日本PCサービスは、コールセンター事業を手掛けるミナソルの全株式を取得しました。

– インバウンドテックによるシー・ワイ・サポートのM&A:
株式譲渡: インバウンドテックは、コールセンター事業を行っているシー・ワイ・サポートを子会社化しました。

– MSDホールディングスによるSDホールディングスのM&A:
株式譲渡: MSDホールディングスは、ネクスト・セキュリティのコールセンターとして、24時間体制でサービスを行ってきたRiMIC事業を引き継ぐSDホールディングスを子会社化しました。

– レカムビジネスソリューションズによるマスターピース・グループのM&A:
株式譲渡: レカムビジネスソリューションズは、中国国内向けコールセンターサービスの最大手企業の一つであるマスターピース・グループを子会社化しました。

– freeeによるパーソルワークスデザインのクラウド経営管理BPO事業のM&A:
事業譲渡: freeeは、コールセンター等を担うパーソルワークスデザインのクラウド経営管理BPO事業を譲り受けました。

– ラストワンマイルによるブロードバンドコネクションのM&A:
株式譲渡: ラストワンマイルは、コールセンター、ライフライン事業などを行うブロードバンドコネクションを子会社化しました。

– ライクによるライクスタッフィングとライクワークス2社のM&A:
吸収合併: ライクは、コールセンター事業や総合人材サービス事業を行うライクスタッフィングとライクワークス2社を吸収合併しました。

– NCS&Aによるフューチャー・コミュニケーションズのM&A:
株式譲渡: FCホールディングスは、コールセンター事業および人材派遣事業を展開しているフューチャー・コミュニケーションズを子会社化しました。

– CRGインベストメントによるママスクエアのM&A:
第三者割当増資: CRGインベストメントは、コールセンターの運営や各種BPOサービスを展開しているママスクエアと資本業務提携を行いました。

– インパクトホールディングスによるジェイエムエス・ユナイテッドのM&A:
株式譲渡: インパクトホールディングスは、コールセンター・バックオフィスなどの運営サービスを行うジエムエスユナイテッドを子会社化しました。

業務委託業の事業が高値で売却できる可能性

業務委託業の事業が高値で売却できる可能性について、以下のポイントをまとめます。

企業価値の算定: 企業価値を算出する手法として、マーケットアプローチ、インカムアプローチ、コストアプローチがあります。具体的には、成長市場で事業を行っていて、市場シェアが高い場合、DCF法では高い金額が算定されます。
売上高・収益・市場シェア: 企業の業績が会社売却価格に強い影響を与えます。売上高や利益額が高いと、純資産法での計算結果も高まります。
技術力・ノウハウ・特許: 技術力やノウハウ、特許などの資産が高いと、買収側が得られるシナジー効果が高まり、価格を高めるポイントとなります。
候補先の選定: 同業他社に候補を絞って検討することで、買収側が得られるシナジー効果を考慮し、高値での売却が可能です。
価格交渉戦略: 売手側が主導権を握って交渉を行い、買手側の価格交渉に対応することで、高値での売却が可能です。
売却タイミング: 業界再編が行われている場合や、買収に積極的な企業が多い場合、高額での会社売却の可能性が高まります。

これらのポイントを考慮することで、業務委託業の事業が高値で売却される可能性が高まります。

業務委託業の企業が会社を譲渡するメリット

会社譲渡のメリット

1. 資金の獲得 会社譲渡により、売却の対価として資金が得られることが最大のメリットです。これは、運転資金として活用するほか、負債の返済や新規事業への投資にあてられます。

2. 組織再編 事業ポートフォリオを整理し、注力事業や黒字事業のみを残して事業売却を実施すると、コア事業に自社のリソースを集中させることができます。これにより、損失を防ぎ、主力事業に集中することで経営の安定化が期待できます。

3. 後継者問題の解決 会社譲渡は、後継者問題を抱えている中小企業にとって大きなメリットです。買収側によって経営が維持され、スムーズな事業承継が実現します。

4. 経営資源の獲得 他社から経営権や事業を買収すれば、事務所や設備、人材、ノウハウ、技術、許認可などの知的財産も含めて経営資源を獲得できます。これにより、既存事業の拡大や新規事業の立ち上げ、新商品の開発などが進められます。

5. 負債や担保の解消 会社譲渡・株式譲渡を実施した場合、その会社が持つ資産・負債などをすべて譲受・買収側に引き継ぐことができます。これにより、個人保証や担保から解放されるのが嬉しいメリットです。

6. 企業の存続と発展 会社譲渡により、大手企業の傘下・グループ企業に入れられるため、資本力や経営資源をフル活用して企業を存続させたり、収益力を向上させて発展させたりできます。

7. 経営の重圧から解放 会社運営を続けていくためには安定的に売上や利益を確保しなければならず、経営者は資金繰りや事業計画など多くの考えるべき事項を抱えています。会社売却により、経営の重圧や精神的ストレスから解放されることがメリットです。

業務委託業の事業と相性がよい事業

業務委託業の事業と相性がよい事業は以下の通りです。

– ITエンジニア: ITエンジニアは、ITシステムの設計やプログラミングに関わる人たちのことを指します。エンジニアの仕事は「プロジェクトベース」であることが多く、「このシステムをいつまでに納品すればいい」といったような形で受注しやすいからです。特に、在宅での仕事も可能なため、システム設計やプログラミングのスキルがある場合は業務委託で働きやすいでしょう。
– コンサルタント: コンサルタントは、高い知見や専門知識に基づく提案を行う職種です。各企業が抱える問題の解決や、ITの導入に関するアドバイス、財務面に関する改善策の提案などが含まれます。社内にいる人間の視点からでは見えない部分についての指摘ができるため、業務委託のコンサルタントは重宝されることも多いでしょう。
– ライター: ライターは、依頼された記事や文章を納品すれば問題ないため、働く時間も場所も自由となります。ただし、専門的なスキルや知識がなければライターは務まりません。例えば、コピーライターならばユーザーの心に響くようなコピーライティング能力が必要ですし、WebライターならばSEOスキルが求められるため、そういった点に問題がないか、業務委託として働こうとする前にしっかり確認するようにしてください。
– 翻訳・通訳: 翻訳や通訳といった仕事も、業務委託で受けやすいと言えます。継続的に何かをするわけではなく、案件単位で完結しやすいからです。特に、複数の言語に精通していれば、国内のみならず世界中から案件を受けることもできます。

これらの事業は、業務委託の特徴である「自由な働き方」や「自身の得意分野の業務を行える」点で適しています。また、高報酬も期待できるため、収入アップを目指す人にとっては有効な選択肢となります。

業務委託業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由

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