目次
技術サービス業の市場環境
日本のサービス産業市場は、2021年以降に回復し、8%のCAGRで成長中です。特に、デジタルテクノロジーの導入により、サービス提供方法が変化しています。
### 主要な市場動向
– デジタルテクノロジーの進展:
– クラウドコンピューティング、ビッグデータ分析、人工知能、機械学習などの技術がサービス産業市場の大きな成長を引き起こしています。世界の情報技術産業の規模は2020年には約5兆米ドルで、今後数年間で約7兆米ドルに達すると予測されています。
– オンラインサービスと電子商取引:
– オンライン食品配達、配車、ホテル、旅行の予約などの予約サービスの出現により、サービス利便性とパーソナライズが強化されています。世界のオンラインフードデリバリー業界の市場規模は2022年には約8,000億米ドルに達し、予測期間中に約2兆米ドルに達すると予測されています。
– 教育およびトレーニングサービスの需要:
– オンライン教育およびトレーニングコースの急増により、サービス業界の成長が大幅に促進されています。世界のeラーニング市場規模は2022年には約2,360億米ドルであり、予測期間中に約6,500億米ドルに成長し、10年間で14%のCAGRで成長すると推定されています。
### 主要な業界
– 情報処理サービス(SI)業界:
– 大手企業向けに高度な情報システムソリューションを提供する企業が多く存在します。代表的な企業には富士通、NEC、日本電気株式会社、NTTデータがあります。特に、NTTデータは年間売上高が2兆5,519億円と、日本のSIer企業の中でもトップクラスに高い売上を記録しています。
– サービス産業の地域貢献:
– サービス産業は日本の経済活動において重要な位置を占めており、2024年7月の「サービス産業動向調査」によると、月間売上高は33.6兆円で、前年同月比で4.0%増加しました。この成長は、物流の需要増加や郵便・運輸サービスの効率化によるものと推測されています。
### 主要な市場動向
– 運輸業や郵便業:
– 売上高は5.7兆円で、前年同月比で6.2%増加しました。この部門の成長は、物流の需要増加や郵便・運輸サービスの効率化によるものと推測されています。
– 教育や学習支援業:
– 売上高は0.3兆円で、前年同月比4.5%減少しました。この減少は、少子化や教育産業の変革が影響していると考えられます。
– 情報通信業:
– 売上高は5.1兆円で、前年同月比4.0%の増加を示しました。この成長は、デジタル化やリモートワークの普及により、インターネットサービスやクラウドサービスの需要が引き続き高まっていることが背景にあります。
– 医療および福祉分野:
– 売上高は5.4兆円で、前年同月比4.3%の増加を示しました。この成長は、高齢化社会が進む中、医療サービスや福祉関連サービスの需要が高まっていることが背景にあります。
### まとめ
日本のサービス産業市場は、デジタルテクノロジーの進展やオンラインサービス、教育およびトレーニングサービスの需要の増加により、多くの産業分野で売上高が増加しています。特に、運輸業や郵便業、情報通信業、医療および福祉分野が成長を示していますが、一部の業界では依然として不透明な状況が続いています。
技術サービス業のM&Aの背景と動向
技術サービス業のM&Aの背景と動向
近年、日本のIT業界ではM&Aが活発に行われています。以下のポイントをとで囲んでまとめます。
### 1. IT業界の課題とニーズ
– 多重請負型構造の改革:IT業界は長い間、「多重請負型」の構造になっていました。下請けや孫請け企業は利益が少なくなり、従業員の待遇もそれ相応になっています。常時必要な技術を持つ下請けであれば、自社にM&Aすることのメリットが大きくなっています。
– 人材不足の慢性化:IT企業においてもその顧客となるユーザー企業においても、IT人材の量や質が慢性的に不足しているのが現状です。優秀なエンジニアの確保が目的の1つになっているケースが多いと考えられます。
### 2. M&Aのメリット
– 事業継続と後継者問題の解決:M&Aにより、事業を継続できる後継者になってくれることが期待されます。また、大手のグループに入ることでの下請けからの脱却も可能です。
– 新技術の獲得と人材確保:M&Aにより、自社にない新技術の獲得や不足している人材を育成することなく確保できるようになります。さらに、自社が持たないマーケットシェアを獲得できるようになります。
### 3. M&A事例
– システム・プロダクトのM&A:システム・プロダクトは特に証券系のソフトウエア開発を得意とし、成長を続けてきました。しかし、二次請けが中心のビジネスモデルであったため、成長に限界がありました。M&Aにより、後継者問題を解決し、金融業務全般に対するソフトウエア開発力の強化などといったシナジー効果も期待されます。
– 富士通による古河インフォメーション・テクノロジー株式会社の買収:富士通は国内最大手のITベンダー企業であり、ICTサービス市場において国内No.1の実績を記録しています。M&Aにより、オーストラリアにおける顧客と事業の展開に向けた基盤を獲得し、ITサービス事業の強化を図りました。
– 日立製作所によるREAN CLOUD LLCの買収:日立製作所は情報・通信システムや電力システムなど、社会インフラ事業を展開する国内最大の総合電機メーカーです。M&Aにより、パブリッククラウド関連のサービスの提供能力を獲得し、米国を中心としてグローバルにクラウド関連サービス事業を更に拡大しました。
### 4. IT業界のM&Aの現状
– 国内大手企業のM&A活性化:国内大手企業はM&Aで布石を打ち始めており、IT企業が良質なサービスを提供できるようになることが期待されます。IT企業はこれからの経済成長のテーマである「生産性」を向上させる上で欠かせない技術を持っています。
### 5. M&Aの活性化のポイント
– クラウド化とDXの進展:クラウド化やDXにより拡大した顧客ニーズに対応するためには、両社の業務システム開発体制の統合による専門性と品質の向上が有効です。M&Aはこのようなニーズに対応するための手段として活用されています。
これらのポイントをとで囲んでまとめました。
技術サービス業のM&A事例
### 技術サービス業のM&A事例
2023年9月: workhouse株式会社が株式会社グラッドキューブに事業譲渡し、AI関連開発事業への投資を行った。
2023年9月: 株式会社ビー・テックが日本システム株式会社に株式譲渡し、サーキュラーエコノミー(CE)実現のため、キッティング技術やIT端末の保守サポートの実績を持つ企業を買収した。
2023年8月: 株式会社ビジネスサービスがスターティア株式会社に株式譲渡し、ITインフラ関連事業のスケールメリットを追求した。
2023年8月: 株式会社電創が株式会社コアコンセプト・テクノロジー(株式会社カワサキシステム)に株式譲渡し、金融機関や製造業向けシステム開発及び運用、保守を手掛ける企業を買収した。
2023年8月: 株式会社ヒューマンシステムが株式会社SHIFT(株式会社SHIFTグロース・キャピタル)に株式譲渡し、IT人材採用力に強みのある大手が、IT開発領域の更なる強化のために買収を行った。
2023年7月: 株式会社マクロテクノスがアイコム株式会社に株式譲渡し、音響系機器のソフトウェア開発企業を買収し、製品開発力の更なる向上を目指した。
2023年6月: 株式会社トラストブレインが株式会社SHIFT(バリストライドグループ株式会社)に株式譲渡し、IT人材採用力に強みのある大手が、医療業界の開発領域の更なる強化のために買収を行った。
2023年6月: 株式会社ネットワークテクノスが株式会社SHIFT(ALH株式会社)に株式譲渡し、IT人材採用力に強みのある大手が、事業エリア拡大のために買収を行った。
2023年6月: 中村牧場株式会社が株式会社システム ディに株式譲渡し、新規事業展開のためにAI人材育成やコンサルティングを手掛けている会社を買収した。
2023年5月: 株式会社クレイトソリューションズが株式会社SHIFT(株式会社SHIFTグロース・キャピタル)に株式譲渡し、ERP、金融、情報通信業界の開発領域の更なる強化のために買収を行った。
2023年5月: 株式会社ピージーシステムが株式会社コアコンセプト・テクノロジーに株式譲渡し、山口県、広島県といった地方拠点の拡大とリソースの確保による事業拡大を目指した。
2023年5月: 株式会社クロスウェブがヤマシタヘルスケアホールディングス株式会社に株式譲渡し、九州にて医療機器販売等、医療機関へ総合的なサービスを提供している企業が、同じく九州にて医療機関に密着したネットワーク及びシステムインフラ構築を行っている企業を買収した。
2023年5月: 株式会社シムテックが株式会社SHIFT(株式会社SHIFTグロース・キャピタル)に株式譲渡し、通信領域を中心とした金融、官公庁、流通など幅広い業界の開発業務に強みを持つ企業を買収した。
2023年3月: 株式会社アルトワイズが株式会社プロジェクトカンパニーに株式譲渡し、テクノロジー領域に精通したエンジニア人材を拡充するために、SES事業運営会社を買収し、DX支援の強化を狙った。
2023年3月: beepnow systems株式会社がバルテス株式会社(バルテス・モバイルテクノロジー株式会社)に事業譲渡し、WEB、モバイルアプリ開発サービス事業領域の強化のために受託開発事業を事業譲受した。
2023年3月: EQIQ株式会社が株式会社SHIFT(株式会社SHIFTグロース・キャピタル)に会社分割し、IT人材採用力に強みのある大手が、スタートアップやテック業界に特化したバイリンガル人材紹介に強みを持つWAHL+CASE事業を承継した。
2023年3月: 株式会社B.C.Membersが株式会社フリースタイルに株式譲渡し、UX/UI事業に強みを持つ企業を買収し、ゲーム開発事業の成長と受託開発のニーズの拡大を狙った。
2023年1月: 株式会社キャリアシステムズが株式会社SHIFTに株式譲渡し、IT人材採用力に強みのある大手が、IT開発領域の更なる強化のために買収を行った。
2022年10月: つくばソフトウェアエンジニアリング株式会社が株式会社SYSホールディングスに株式譲渡し、総合情報サービス事業のさらなる拡充のため、映像編集ソフトウェアを主力としたソフトウェア受託開発事業に強みを持つ企業を買収した。
2022年10月: 株式会社プラグインが株式会社アイリッジに株式譲渡し、東京本社の企業が北海道において業務システムの受託開発事業を運営する企業を買収し、エリア拡大、ニアショア拠点展開を狙った。
### 近しい事例
2023年10月30日: 株式会社タスキが株式会社大洋クラウドサービスの全株式を取得し、建設業界のDX化を進めるためにSaaS事業やIoTレジデンスなどの不動産開発、アセットマネジメント等を展開している大洋クラウドサービスのDX事業と、OutSystemなどのIT開発事業を買収した。
2023年11月: コプロ・ホールディングスがピー・アイ・シーのSES事業を譲受し、高スキルのITエンジニアの獲得及びSES事業の更なる拡大のため。
2023年8月: 綱屋がグローブテック・ジャパンの全株式を取得し、サイバーセキュリティ製品/サービスやクラウドサービスの開発・製造等の事業を運営する綱屋が、IT技術者派遣、受託開発、製品販売等のグローブテック・ジャパンの全株式を取得し、子会社化した。
2023年6月: SHIFTグロース・キャピタルがクレイトソリューションズの株式を取得し、各種システム開発の一括受託、コンサルティングサービス、システムエンジニアリングサービスを提供するクレイトソリューションズの株式を取得し、ERP領域を中心とした開発力強化に取り組んだ。
2023年5月: SHIFTグロース・キャピタルがEQIQのWAHL+CASE事業を会社分割により承継し、人事支援サービスにバイリンガルエンジニアや最先端技術をもったエンジニアの紹介のサービスを加えることで採用力の強化・顧客への提供ソリューションの拡大を目指した。
2023年1月: ゼネテックがログインの株式を譲受し、高スキルのITエンジニアの獲得及びSES事業の更なる拡大のため、システム受託開発、技術者派遣、SES事業を展開するログインの株式を譲受により子会社化した。
2022年10月: アイフリークモバイルがグラングループから技術開発部門の一部を譲受し、多様な人的資源を確保し、IT技術者集団としてより強固で効率的な事業体制の推進を行った。
2022年4月: テモナがサックルの株式を取得し、サブスクリプションビジネスに特化したBtoC事業者向けクラウド型システム「サブスクストア」を中心にクラウド型システムを提供するテモナが、クリエイティブ事業(システム受託開発)、SES事業、プログラミング学習事業を行うサックルの株式を取得し子会社化した。
2022年2月: Branding EngineerがTSRソリューションズの株式を取得し、ITエンジニアを双方の顧客に紹介できるクロスセルの実現を見込み、さらに、TSRのベテランITエンジニア人材と、Branding Engineerの若手ITフリーランスエンジニアとのチーム組成を行うことで、DX化の推進など幅広いニーズに対しより高付加価値の提案実現を目指した。
技術サービス業の事業が高値で売却できる可能性
技術サービス業の事業が高値で売却できる可能性は、以下の点にあります。
– 技術者不足の問題: IT業界では、特にシステム開発やプラットフォーム開発において、高い技術力を持つエンジニアが多数必要です。技術者不足が大きな問題となっているため、事業の継続が難しい場合があります。
– のれん代の価値: IT企業のノウハウや技術力などの「のれん」分の価値を含めた対価を受け取ることが可能です。特に将来性が高いIT企業はのれん分が大きくなるため、事業売却の方が大きな利益を得られるケースが多いです。
– 買い手のニーズ: SES業界では、優秀なエンジニアが多く在籍する企業は引き合いが強く、多くの企業からニーズがあります。在籍エンジニアと買い手の求めるスキルがマッチすると、高い価格でSES事業を売却できる可能性があります。
– 相場の算定: SES事業の売却相場は、時価純資産額に数年分の営業利益を加算することで簡易的に目安の金額を算出できます。加算する数年分の営業利益のことを営業権(のれん代とも言う)と言い、SES事業会社の売却では3〜5年分で計算することが一般的です。
これらの点を考慮すると、技術サービス業の事業が高値で売却できる可能性は高いです。
技術サービス業の企業が会社を譲渡するメリット
技術サービス業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです:
– 従業員の雇用確保:M&Aにより他社に売却することで、従業員の雇用を確保できます。
– 後継者問題の解決:M&Aによって第三者である企業に会社を売却すれば、後継者問題が解決でき、専門性の高い技術も引き継がれます。
– 売却・譲渡益の獲得:会社を廃業した場合は、廃業後の整理にも資金がかかりますが、M&Aによる売却であれば資金の負担が必要なく、売却・譲渡益が得られます。
– 経営安定:大手資本下に入ることで、安定した経営が可能となり、成長戦略を実施することもできます。
– 個人保証・債務・担保の解消:M&Aによる第三者への会社売却であれば、これらの負担を解消することが可能です。
– 事業の継続:親族や従業員に後継者がいなくても第三者を引き継ぎ先とした事業承継が可能になり、従業員が職を失うことはありません。
– 資金の獲得:第三者に事業を売却することで資金(売却益)を得られることが挙げられます。
– 特定の事業の選択性:特定の事業だけを選んで売却することが可能で、売却したい特定の事業だけを選ぶことができます。
– 経営資源の集中:特定の事業のみを譲渡し、譲渡により獲得した対価をその他の事業に充てて事業拡張を図ることができます。
技術サービス業の事業と相性がよい事業
技術サービス業の事業と相性がよい事業は以下の通りです。
– 学術研究、専門・技術サービス業:この大分類には、主として学術的研究などを行う事業所、個人又は事業所に対して専門的な知識・技術を提供する事業所で他に分類されないサービスを提供する事業所が含まれます。具体的には、学術的研究、試験、開発研究を行う事業所、法律、財務及び会計に関する事務や相談、デザイン、文芸・芸術作品の創作、経営戦略など専門的な知識サービスを提供する事業所、広告に係る総合的なサービスを提供する事業所、獣医学的サービス、土木建築に関する設計や相談のサービス、商品検査、計量証明、写真制作などの専門的な技術サービスを提供する事業所が含まれます。
– 専門サービス業:この中分類には、法務に関する事務、助言、相談、その他の法律的サービス、財務及び会計に関する監査、調査、相談のサービス、税務に関する書類の作成、相談のサービス及び他に分類されない自由業的、専門的な知識サービスを提供する事業所が分類されます。具体的には、管理、補助的経済活動を行う事業所、興信所、翻訳業、通訳業、不動産鑑定業などが含まれます。
– 技術サービス業:この中分類には、獣医学的サービス、土木建築に関する設計や相談のサービス、商品検査、計量証明、写真制作などの専門的な技術サービスを提供する事業所が分類されます。具体的には、獣医業、土木建築サービス業などが含まれます。
これらの事業は、技術サービス業の事業と相性がよい事業であり、技術サービス業の事業と連携することで、より多様なサービスを提供し、競争力を高めることができます。
技術サービス業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、技術サービス業の企業がM&Aを依頼する際におすすめの選択肢です。その理由は、まず第一に譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点です。これにより、コストを気にせずに安心してご依頼いただけます。さらに、豊富な成約実績を誇っており、多くの企業様にご満足いただいております。加えて、技術サービス業の業界にも深い知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確に対応することが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。