目次
建築設計業の市場環境
2024年における建築設計業の市場環境について、以下の要点をまとめます。
– 市場環境の変化:
– 総合的な市場環境の改善:
– 2024年は、先立後破、扩大内需等政策支持の下で、市場環境が改善されることが期待されています。
– 業界の低速成長期:
– 2022年以来、業界は地缘政治、経済、社会的な要因の影響を受け、低速成長期に入っています。
– 業界の現状:
– 収益の減少:
– 2022年は、工程設計収益が2%減少、新契約額が0.9%減少で、20年来初めての減少を記録しました。
– 業界の分化:
– 建築設計業は、電力、公路、水利設計業が好調な成長を続けている一方、他の分野は成長乏力です。
– 政策の影響:
– 中央政策の影響:
– 中央経済工作会議では、2024年の経済発展を「稳中求進、以進促稳、先立後破」と定め、九つの重点工作を発表しました。
– 地方政府の財政政策:
– 地方政府は、財政政策を積極的に実施し、市政設計業の市場が少し改善される可能性があります。
– 業界の展望:
– 建築設計業の展望:
– 建築設計業は、2025年以降に新契約額と収益が回復する可能性があります。
– 市政設計業の展望:
– 市政設計業は、市政管網の改造や県・鄉・鎮の基礎施設補短板が好機会です。
– 交通・水利設計業の展望:
– 交通・水利設計業は、中央資金主導の重大プロジェクトが進展し、設計収益が増加する可能性があります。
– 電力設計業の展望:
– 電力設計業は、「双碳」目標の下で、設計収益が増加する可能性があります。
– 技術の進歩:
– CAD・BIM技術の進歩:
– 計算機支援設計(CAD)と建築情報モデル(BIM)技術の進歩により、設計効率と設計品質が向上しています。
– VR・AR技術の進歩:
– 虚擬現実(VR)と増強現実(AR)技術の進歩により、設計がより生動的で沉浸感のあるものになります。
– 競争格局:
– 競争激烈:
– 建築設計業は競争激烈で、企業は設計水準を上げ、ブランド知名度を高める必要があります。
これらの要点をまとめると、建築設計業は市場環境が改善する一方で、業界の分化や政策の影響が大きく、技術の進歩が重要な要素となっています。
建築設計業のM&Aの背景と動向
建築設計業のM&Aの背景と動向は以下の通りです。
### 背景
1. 後継者問題の解決
– 後継者がいない設計事務所が増加:多くの設計事務所が後継者がいないため、M&Aは事業承継の解決策として注目されています。
2. 廃業や倒産を回避
– 経営難や後継者不足で廃業や倒産を回避:設計事務所が経営難や後継者不足で廃業や倒産を回避するためにM&Aを検討しています。
3. 人材確保
– 技術・知識・経験の豊富な人材を獲得:M&Aにより、技術・知識・経験の豊富な人材を獲得し、人材不足を解消することが目指されています。
4. 業界再編
– 建築業界での業界再編:建築設計/検査会社のM&Aは、建設業界での業界再編の一環として行われています。公共工事の入札参加や商業エリア拡大、人材不足の解消が目的です。
5. 海外市場への進出
– 海外市場への進出のためのM&A:国内の需要が減ると予想されるため、海外市場への進出を図る企業もM&Aを活用しています。
### 動向
1. M&Aの増加
– 近年、設計事務所のM&Aが増加:後継者問題や経営難を理由に、設計事務所のM&Aが増加しています。
2. 成功事例
– 池下設計と蒼設備設計のM&A:マイスターエンジニアリンググループが株式会社蒼設備設計の株式を株式会社池下設計に譲渡した成功事例があります。
3. 統合の重要性
– 統合による文化の調整が重要:同業他社との統合による文化の調整が非常に重要で、統合後のビジョンを明確にすることが重要です。
4. デューデリジェンス(DD)の重要性
– DDの重要性:M&Aの成功を確実にするために、財務状況や事業の実態を詳細に調査し、リスクやチャンスを分析するDDが欠かせません。
5. PMIの役割
– PMIの役割:買収後の統合計画の立案と実行を行うPMIは、効率的な業務プロセスや人材マネジメントの変革を推進し、事業継承を成功させるための重要な役割を果たします。
建築設計業のM&A事例
建築設計業のM&A事例を以下にまとめます。
### ビジネス・ワンHD×ナカケン
ビジネス・ワンHDは不動産や賃貸、ソフトウェアなど6事業を展開する企業で、今回の株式取得により、ナカケンの建築設計・施工ノウハウを活用してグループ内の建設関連ニーズに対応できるようになります。
ビジネス・ワンHDは2024年10月18日に、福岡県福岡市に拠点を置くナカケンの株式を取得し、連結子会社化しました。
### オープンハウス×三栄建築設計
オープンハウスグループは、三栄建築設計を公開買付け(TOB)により完全子会社化する方針を発表しました。買付価格は1株あたり2,025円、総額は約429億円で、三栄建築設計もTOBに賛同しています。
同社は主に戸建住宅やマンションの分譲を手がけており、オープンハウスグループはこれにより販売力と供給力を活かした戸建事業の強化、商品ラインナップの充実、コスト競争力の向上を図ります。
### TAKUMINOホールディングス×ゼット企画設計
TAKUMINOホールディングスはゼット企画設計の全ての株式を取得し子会社化しました。ゼット企画設計は「株式会社ZET企画設計」と商号変更しました。
TAKUMINOホールディングスは、建設関連事業を展開するグループの持株会社で、今回のM&Aによりグループで展開している鉄骨製作の設計部門を強化し企業の成長を目指します。
### 住友林業×クレセント社
住友林業は、アメリカにおける住宅・不動産事業のさらなる拡大・発展を目的に、クレセント社とのM&Aを実施しました。持分取得にかかった費用は約393億円です。
本件のM&Aにより、住友林業はアメリカにおける集合住宅事業と商業施設開発の優良プラットフォームを獲得することに成功しました。
### 長谷工コーポレーション×総合地所
長谷工コーポレーションは、新築マンションの施工事業やマンション管理事業を展開する大手ゼネコンで、総合地所とのM&Aによりサービスのさらなる充実を目指しました。
両社のM&Aにより、長谷工コーポレーションの560千戸を超える施工実績と、総合地所が有するデベロッパーとしての経験・ノウハウが融合し、より顧客ニーズに合った設計・工法の提案が可能となりました。
### 戸田建設×佐藤工業
戸田建設は、東北エリアの強固な事業基盤を確立し、市場シェアを拡大する目的で佐藤工業とのM&Aを実施しました。
佐藤工業は福島県内で豊富な施工実績を有する名門建設会社で、戸田建設は建築・土木の一式工事に関する調査から施工までを総合的に手がける準大手ゼネコンです。
### 不二サッシ×日本防水工業
不二サッシは、「建築材料の製造・販売・施工事業」や「各種アルミニウム製品の製造・販売・施工事業」などを展開する会社で、日本防水工業とのM&Aにより外装すべてを網羅するトータルリニューアル工事の施工体制を確立しました。
M&Aが完了した後は、お互いの技術力を組み合わせることで、より顧客にとって価値が高い工事を提供できるように努めました。
### サンユー建設×行方建設
サンユー建設は、建設事業や不動産事業、金属製品事業を主要事業とする会社で、行方建設とのM&Aによりグループ全体の競争力・収益力を強化しました。
両社は同じ建設業界に属するものの、得意分野・役割が異なりますが、M&Aにより大きなシナジー効果が見込まれています。
### BDPによるPattern Designの買収
BDPは、イギリスにある建築設計会社であるPattern Designの株式すべてを取得しました。本件M&Aの取得価額は約3億円で、スポーツセクター市場の設計・エンジニアリング分野に関する事業拡大を目指しました。
買収側は、日本工営の海外子会社として、アストラゼネカ本社の建築設計や、グーグル欧州本社ビルの設計・監理業務などを手掛けてきました。
建築設計業の事業が高値で売却できる可能性
建築設計業の事業が高値で売却できる可能性を以下にまとめます。
1. 企業価値の評価
建築設計業の企業価値は、技術や特許などの無形資産、入札実績や受注実績、安定した取引先や下請け先、人材や土地や機材や設備などの有形資産、財務や税務面の健全さなどに左右されます。
2. 顧客基盤の強化
安定した顧客基盤を確保することが重要です。顧客や取引先を引き継ぐことが期待されるため、安定した顧客基盤を構築することが高値での売却を促進します。
3. 人材の確保
優秀な人材を確保することが企業価値を高める要因です。特に、技術や資格を持つ建築士や一級建築施工管理技士が在籍する設計事務所は、高値で売却できる可能性が高まります。
4. 経営リスクの分散
設計事務所をM&Aで売却することで、経営リスクの分散が可能となります。資本力の強化やビジネスモデルの多様化が期待できます。
5. 企業価値の算出方法
企業価値は、コストアプローチ(時価純資産法)、インカムアプローチ(DCF法)、マーケットアプローチ(類似会社比較法)の3つの方法で算出されます。
これらの要素を踏まえると、建築設計業の事業が高値で売却できる可能性は高いと言えます。
建築設計業の企業が会社を譲渡するメリット
建築設計業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです:
1. 新たな経営陣による成長戦略の実現:
– _新たな経営陣が就任し、企業の成長戦略が実現される可能性があります。_
– 新たな経営陣は自身の経験やネットワークを活かし、企業の業績向上や新規事業の展開など、より効果的な経営戦略を打ち出すことができます。
2. 資金調達の容易化:
– _一定の資金を手に入れることができます。_
– この資金を利用して、新たな事業の展開や設備投資、人材育成など、企業の発展に必要な投資を行うことができます。
3. 事業の継続性の確保:
– _事業継続性を確保することができます。_
– 譲渡先の企業が、既存のビジネスを引き継ぎ、継続的に運営していくことで、顧客や取引先との信頼関係を維持し、企業価値を維持することができます。
4. 後継者不在の解決:
– _後継者不在の問題を解決することができます。_
– 後継者が不在の状況が続くと、経営者の体調不良などにより、事業承継を行う前に経営を続行できなくなるおそれがあります。建設会社を売却すれば、後継者が不在でも事業承継を実現し、買い手企業のもとで事業を存続できます。
5. 経営の安定化と成長性の向上:
– _大手企業へのグループ入りによる経営の安定化と成長性の向上が期待できます。_
– M&A後は、買い手企業が有するノウハウや集客ルート、技術力、資金力、知名度といった経営資源を活用して事業を運営できることが一般的です。
6. 売却利益の確保:
– _売却利益を確保することができます。_
– 建設会社を売却すると、基本的に現金を対価として受け取れます。相応に大きな額の現金を確保できれば、リタイア後の余裕ある生活を実現できる可能性があります。また、新規事業に資金を充てることも可能です。
7. 自社の設計力を高めたい企業のためのM&A:
– _自社の設計力を高めたい企業が買い手になっています。_
– ゼネコン、組織設計、デベロッパー、ハウスメーカー、建設会社などが設計事務所をM&Aして、設計ノウハウやマンパワーを獲得する事例が多いです。
8. 従業員の雇用が守られる:
– _従業員の雇用が守られることが期待できます。_
– M&Aによって売却・事業継承すると、社員の雇用は買い手側に引き継がれることになります。従業員はより安定した環境で働くことができます。
9. 自社を成長させることができる:
– _自社を成長させることができます。_
– M&Aによって買い手側の傘下に入れば、彼らのもつ経営資源を活用しながら自身の設計事務所は成長することができます。
10. 次の事業に集中できる:
– _次の事業に集中できることが期待できます。_
– M&Aを実施すれば、外部の会社のノウハウを利用しオーナーの能力に依存しなくても経営が成立します。また、将来の営業利益を獲得するため、それらを利用して次の事業に集中することができます。
建築設計業の事業と相性がよい事業
建築設計業と相性がよい事業を以下にまとめます。
### 1. 建築設計業と相性がよい事業
#### 1.1. 建築関連サービス
– 建設業: 施工会社との連携が重要で、設計図の正確性と施工会社の工法の調整が必要です。
– インテリアデザイン: 建築物の内部空間のデザインを担当し、施主のニーズに合わせた空間設計を行います。
– ランドスケープデザイン: 建築物周辺の環境設計を担当し、自然との調和を考慮した設計を行います。
#### 1.2. 技術支援サービス
– BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング): 建築プロジェクトの設計、施工、管理を支援する技術で、設計者や建設業者が建物の3次元モデルを共有し、情報を統合管理することができます。
– デジタルツイン: 物理空間のデジタルモデルをリアルタイムで反映する技術で、建築物のパフォーマンスをモニタリングし、運用効率を向上させることができます。
#### 1.3. 設備関連サービス
– 給排水・空調・電気設備設計: 建築物の設備設計を担当し、給排水、空調、電気設備の設計を行います。
– エネルギー効率向上サービス: 省エネルギー性能を高めるための設計や技術を提供します。
#### 1.4. マネジメントサービス
– プロジェクトマネジメント: 建築プロジェクトの計画、実行、監理を担当し、プロジェクトの進行を管理します。
– 工事監理: 施工会社の施工内容を確認し、設計図書通りに施工しているかを監理します。
### 2. 建築設計業と相性がよい技術
– BIM: 建築プロジェクトの設計、施工、管理を支援する技術で、設計者や建設業者が建物の3次元モデルを共有し、情報を統合管理することができます。
– デジタルツイン: 物理空間のデジタルモデルをリアルタイムで反映する技術で、建築物のパフォーマンスをモニタリングし、運用効率を向上させることができます。
### 3. 建築設計業と相性がよい資格
– 一級建築士: 建物の基本設計、実施設計業務を担当し、建築基準法を満たす設計を行います。
– 構造設計一級建築士: 建築物の構造設計を担当し、構造シミュレーションや構造設計を担います。
– 設備設計一級建築士: 建築物の設備設計を担当し、給排水、空調、電気設備の設計を行います。
これらの事業や技術、資格は、建築設計業と相性がよいものです。
建築設計業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、建築設計業の企業がM&Aを依頼する際におすすめの理由をいくつかご紹介いたします。まず、譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点が大きな特徴です。これにより、コストを気にせずに安心してご相談いただけます。次に、豊富な成約実績を誇っており、多くの企業様にご満足いただいております。さらに、建築設計業の業界にも深い知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確なサポートが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。