目次
建物解体業の市場環境
建物解体業の市場環境を以下のようにまとめます。
解体工事業界の市場規模
解体工事業の市場規模は、国土交通省の「建設工事統計調査」に基づいており、年度によって増減が見られますが上昇傾向です。2021年度は約9915億円を超えています。
需要の増加要因
1. 建物の老朽化
_建物の老朽化により建て替えが必要_ となり、解体工事の需要が高まります。特に高度経済成長期に建てられた建物が老朽化を迎え、建て替え時期に来ています。
2. 自然災害
_自然災害による被害_ が増えており、地震や水害、土砂崩れなどによる建て替え需要が高まります。
3. 空家対策
_空家対策_ が進められており、空き家の解体工事需要が高まっています。日本では少子高齢化や人口の減少に伴い空き家率が増加しており、2030年には約30%になる予想があります。
M&Aの動向
1. M&Aの増加
_M&A件数の増加_ は、業界需要の高まりや団塊世代の大量退職・若手人材不足による人材確保目的などから進んでいます。関連事業者によるM&Aが活発で、元請けから下請けへのM&Aも増えています。
2. 企業の集約化
_企業の集約化_ が進んでおり、大手企業が中小企業を買収し、技術力や資本力を持つことで市場競争力を強化しています。後継者不足や環境規制の強化もM&Aの一因です。
将来性
解体業界は将来的に高まる需要が期待されています。特に老朽化した建物の解体と空き家対策が重要な要因となります。
建物解体業のM&Aの背景と動向
近年、建物解体業界では、M&A(合併・買収)が活発化しています。以下にその背景と動向をまとめます。
### 背景
1. 都市開発と老朽化:
– 都市開発や建物の老朽化に伴い、建物解体業に対する需要が増加しています。
2. 高齢化と後継者不足:
– 業界の高齢化と後継者不足が深刻です。多くの中小企業が経営者の高齢化による事業承継問題に直面しており、大手企業や資本力のある業者がこれらの企業を買収しています。
3. 環境規制の強化:
– アスベスト除去や廃棄物の適正処理などの環境規制が強化され、技術力や資本力を持つ企業がこれらの企業を買収することで、規制を遵守しながら効率的に事業を展開しています。
### 動向
1. 市場拡大と競争力強化:
– M&Aによって既存の事業者を買収し、業務範囲を拡大することで、市場シェアを拡大しています。また、事業規模の拡大により、受注機会が増え、大規模な解体プロジェクトに参加できるようになります。
2. 技術力の獲得と人材確保:
– M&Aによって、技術力やノウハウを持つ企業を買収することで、自社の技術力を高めます。また、優秀な従業員や専門技術を持つ労働者をまとめて確保できるため、新たに人材を採用・育成するコストや時間を削減できます。
3. 事業の多角化と地域密着:
– 地域密着型の事業を強化する目的で、同じ地域の競合会社をM&Aすることで、地域内でのシェアを拡大し、経営効率の向上を実現しています。
4. 資本提携とスケールメリット:
– 資本提携により、両社の経営資源や人的資源を統合することで、より大規模な事業展開が可能となります。また、調達力の向上、人材採用力の強化など、スケールメリットを追求することができます。
5. コスト削減と競合力強化:
– M&Aによって、相手企業の持つリソースを活用することで、コスト削減が実現します。さらに、相互補完性のある強みを持った企業同士が結束することで、競合力の強化が期待できます。
6. ワンストップの受注とノウハウの吸収:
– M&Aで解体工事会社を買収した場合、売り手企業のもつ顧客や取引先との関係、独自技術、ノウハウなども獲得できます。さらに、M&A後は互いのリソースを相互活用することで、シナジー創出にも期待できます。
建物解体業のM&A事例
以下に、建物解体業のM&A事例をまとめました。
– ベステラによる矢澤のM&A:
– ベステラは、アスベスト・ダイオキシン対策工事を手掛ける矢澤を子会社化しました。
– 実行時期:2021年12月
– スキーム:株式譲渡
– 取引価額:非公開
– 目的:環境関連工事への対応力向上。
– 鈴木商会による木村工務店のM&A:
– 鈴木商会は、解体工事を手掛ける木村工務店を子会社化しました。
– 実行時期:2021年7月
– スキーム:株式譲渡
– 取引価額:非公開
– 目的:解体から廃棄物処理まで一気通貫での提供体制構築。
– 新日本建設による冨士工のM&A:
– 新日本建設は、解体工事業を含め幅広く工事業を手掛ける冨士工を子会社化しました。
– 実行時期:2021年10月
– スキーム:株式譲渡
– 取引価額:150億円
– 目的:新たな収益機会の確保、開発事業における自社プロジェクトの施工能力拡大。
– 関西タクトによる尾藤建設のM&A:
– 関西タクトは、解体・仮設・土木・建築などの鉄道関連工事事業を展開する尾藤建設と資本業務提携を実施しました。
– 実行時期:2019年4月
– スキーム:資本業務提携
– 取引価額:非公開
– 目的:舗装・港湾・解体工事の技術活用によるサービス拡大。
– 三木資源によるウエストのM&A:
– 三木資源は、解体工事のウエストを傘下に収めました。
– 実行時期:2023年2月
– スキーム:株式譲渡
– 取引価額:8,500万円
– 目的:徳島県内での鉄スクラップ事業の先細りを見据えた新たな商材や商圏の開拓。
– 木村工務店によるホリイのM&A:
– 木村工務店は、総合解体工事施工・管理を行っているホリイの事業を承継し、経営統合を実施しました。
– 実行時期:2023年3月
– スキーム:株式譲渡
– 取引価額:非公開
– 目的:更なる利便性向上を追求と、資源循環のインフラとしての地域貢献。
– カシワバラ・コーポレーションによる小椋組のM&A:
– カシワバラ・コーポレーションは、小椋組の全株式を取得し、同社を完全子会社化しました。
– 実行時期:2024年7月1日
– スキーム:株式譲渡
– 取引価額:非公開
– 目的:老朽化したプラント設備の解体と再建の需要増加に対応するためのもの。
建物解体業の事業が高値で売却できる可能性
建物解体業の事業が高値で売却できる可能性について、以下のポイントをまとめます。
– 後継者問題の解決後継者問題を解決できる: M&Aによる事業承継は、後継者不在に悩む中小企業にとって大きなメリットです。解体工事会社も、第三者(買い手企業)へ自社を売却することで事業承継を実現できます。
– 従業員の雇用先の確保従業員の雇用先を確保できる: 事業承継問題を抱える会社にとって、従業員の処遇が懸念材料になりやすいです。M&Aによって買い手企業へ従業員を引き継ぐことができ、大手企業であれば労働条件がさらによくなる可能性もあります。
– 解体工事会社の売却価格解体工事会社の売却価格の算定: 売却価格の算定はバリュエーションの作業を通じて行われます。所有している設備や専門的知識を持つ人材の有無、実績などが主な評価対象となります。具体的な数字を提示することは不可能ですが、過去の事例を見ると数億円以上の価格になる場合が多いです。
– 利益率の重要性利益率を重視すべき理由: 解体業での利益率は10%〜30%が多く、平均利益率は20%前後です。利益率を重視することで、提供サービスの質と金額設定のバランスが重要になります。
– 節税対策としての解体税金の面での解体の利点: 解体してから売却した方がお得になることがあります。土地の売却に関しては、いくつかの項目で経費計上が認められ、解体費用も経費として認められます。
これらのポイントを考慮することで、建物解体業の事業が高値で売却される可能性を高めることができます。
建物解体業の企業が会社を譲渡するメリット
建物解体業の企業が会社を譲渡するメリットをまとめます。
### 売却側のメリット
– 後継者問題を解決できる: M&Aによる事業承継では、後継者問題を解決できます。解体工事会社のみならず、後継者不在に悩む中小企業が増えています。後継者不在のために廃業する会社も多く、M&Aであれば第三者(買い手企業)へ自社を売却することで事業承継を実現できます。
– 従業員の雇用先を確保できる: 事業承継問題を抱える会社にとって、従業員の処遇が懸念材料になりやすく、廃業となれば従業員は職を失うことになります。M&Aによって買い手企業へ従業員を引き継ぐことができ、大手企業であれば労働条件がさらによくなる可能性もあります。
– 将来的な不安を解消できる: 中小規模の解体工事業者は、将来的な不安を抱えているケースも珍しくありません。ゼネコン・施工管理会社の下請けであることが多いため、元請けからの受注が減れば経営が傾いくリスクもあります。M&Aによる傘下入りで、経営基盤が強化でき、リソースを相互活用できます。
– 個人保証や担保を解消できる: 中小企業の場合、金融機関からの融資を受けるために経営者が個人保証や担保を負っているケースが非常に多いです。M&Aによって自社を売却する場合は包括承継スキームであれば、個人保証や担保も買い手側が引き継ぐことになります。
– 売却価格の算定が可能: M&Aでは、解体工事会社の売却価格の算定はバリュエーションの作業を通じて行われます。所有している設備・専門的知識を有している人材の有無・実績などが主な評価対象となります。
### 買収側のメリット
– 人材を確保できる: 解体工事業界では人材不足が課題のひとつとなっており、特に技術・経験をもつ職人の確保が重要視されています。M&Aで解体工事会社を取得すれば、有資格者や優秀な人材をまとめて確保できる点が買収側企業にとって大きなメリットといえます。
– 規模の拡大によって発注コストを抑えられる: 解体工事に必要な資材・機材や、残業廃棄物の処理など、小規模事業者の場合は大手企業に比べると量が少ないため、単価は割高なことがほとんどです。M&Aで同業者あるいは関連性の高い事業者を買収すれば、事業規模の拡大によって発注コストの削減が可能です。
– ワンストップの受注が可能になる: 近年はさまざまな業種でワンストップで事業を展開する企業が増えてきました。解体工事業界においても、関連事業を行う企業とM&Aや提携することで、建設工事や解体工事、廃棄物処理までを一貫して受注する企業も増えてきています。ワンストップでの受注手合い性が構築できれば、収益拡大を見込むことができ、事業のさらなる成長にも期待できます。
– 顧客・取引先・ノウハウなどを吸収できる: M&Aで解体工事会社を買収した場合、売り手企業のもつ顧客や取引先との関係、独自技術、ノウハウなども獲得できます。特に顧客の獲得やノウハウ構築は時間がかかるものです。しかし、M&Aを活用すればノウハウや顧客は売り手企業ごと獲得でき、さらにM&A後は互いのリソースを相互活用することで、シナジー創出にも期待できます。
建物解体業の事業と相性がよい事業
建物解体業の事業と相性がよい事業を以下にまとめます。
### 1. 廃棄物処理業
解体工事の廃棄物処理が必須なため、廃棄物処理業と解体工事業の統合は自然な進展です。廃棄物処理業が解体工事業を買収することで、廃棄物の収集運搬から最終処分までの一貫したサービスを提供できるようになります。
### 2. 建設コンサルタント業
建物の老朽化や建て替えの需要が高まっているため、建設コンサルタント業と解体工事業の統合は有効です。建設コンサルタントが解体工事の計画や設計を手掛け、解体工事業が実行することで、効率的なプロセスが実現します。
### 3. 土木工事業・建築工事業
地方では多くの解体業者が土木工事業や建築工事業と兼業しているため、これらの業種との統合は自然な進展です。土木工事業や建築工事業が解体工事を請け負うことで、更地の状態から新しい建物までの一貫したサービスを提供できます。
### 4. 産業廃棄物処理業
解体工事で出た廃棄物の収集運搬が必要なため、産業廃棄物処理業と解体工事業の統合は有効です。産業廃棄物処理業が解体工事業を買収することで、廃棄物の収集運搬から最終処分までの一貫したサービスを提供できるようになります。
### 5. ハウスメーカー・工務店
建て替えに伴う解体工事が多く、ハウスメーカー・工務店との統合が有効です。ハウスメーカー・工務店が解体工事を請け負うことで、建て替え工事の効率化が図れます。
建物解体業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、建物解体業の企業がM&Aを依頼する際におすすめの理由として、まず第一に譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点が挙げられます。これにより、コストを気にせずに安心してご相談いただけます。また、豊富な成約実績を誇っており、多くの企業様にご満足いただいております。さらに、建物解体業の業界にも深い知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確なサポートを提供することが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。