目次
希少金属・レアアース採掘業の市場環境
レアアース採掘業の市場環境は、複雑な要因によって左右されています。以下に大切なポイントをまとめます。
– 中国の依存度: 中国は世界の37%のレアアースを埋蔵しており、産出量も世界一位です。多くの国々が中国に依存しているため、中国の生産・輸出動向が市場に大きな影響を与えています。
– 需要の増加: 技術革新やクリーンテックへの移行により、レアアースへの需要は年々増加しています。しかし、主要な産出国が生産や輸出を制限すると、レアアースの不足や価格高騰が起こります。
– 価格変動: レアアース市場は価格変動のリスクが高いです。2023年12月から2024年1月にかけて、中国のレアアース価格が下落し、海外市場でも心理が悪化しています。
– 環境への影響: レアアース採掘や生産は環境への負荷も問題となっています。採掘に伴う環境破壊だけでなく、レアアース鉱石が放射性物質を含んでいることも問題です。
– 技術開発とリサイクル: 日本では、レアアースの採掘法の確立に向けた技術開発が進められています。リサイクル技術の開発も進められていますが、コストの問題から進んでいないのが現状です。
– 政府の支援策: 日本政府は、レアアースの採掘や生産、精錬を行う権利を確保するため、外国企業と共同探鉱を実施しています。また、精錬所の支援や備蓄対策も検討されています。
これらの要因を踏まえると、レアアース採掘業の市場環境は、価格変動や環境への影響、技術開発の進展など、多岐にわたる課題と機会が存在しています。
希少金属・レアアース採掘業のM&Aの背景と動向
希少金属・レアアース採掘業のM&Aの背景と動向についてまとめます。
### 背景
1. 技術力の獲得と事業拡大技術力の獲得や事業拡大を目的として, 希少金属・レアアース採掘業の企業同士がM&Aを行うケースが増えています。金属加工業で使われる技術は非常に多く、同じ加工技術で何種類もの機器や製品を製造することができます。
2. 国家安全保障と地政学的影響国家安全保障上の懸念が高まり、重要な鉱物資源に対する外国資本の投資を強く規制する動きが見られます。例えば、カナダ政府は自国の重要鉱物資源に対する外国資本の投資を強く規制し、特にレアアースのサプライチェーン全体の90%を支配する中国に対し、直接対決を挑んでいく構えです。
3. 中国のレアアース支配と米国の反応中国がレアアースのサプライチェーンを支配し, 時にその強みを地政学的な脅しの道具として利用してきたことが問題視されています。米国のUSA Rare Earthは、米国での磁石の生産を段階的に拡大し、主に顧客として米国メーカーと商談を進めることに注力しています。
### 動向
1. M&Aの活発化M&Aが活発に行われている, 特に金属加工業では技術力の獲得や事業拡大を目的としてM&Aが多く行われています。金属加工業で使われる技術は非常に多く、同じ加工技術で何種類もの機器や製品を製造することができます。
2. レアアースのサプライチェーン対策レアアースのサプライチェーンに対する対策が進められている, 米国のUSA Rare Earthは2027年までに5億米ドル超を投じ、採鉱や抽出、精製を強化し、EVや各種エレクトロニクス製品に向けた高性能希土類磁石の供給を開始する予定です。
3. カナダ政府の介入カナダ政府が自国の重要鉱物資源に対する外国資本の投資に介入, 中国企業が購入することになっていたカナダ産レアアースの契約が、カナダ政府の介入により破棄されました。サスカチュワン研究評議会は、オーストラリアの鉱山開発会社バイタル・メタルズが持つレアアースを総額300万カナダドルで購入し、中国企業への売却を阻止しました。
これらの動向は、希少金属・レアアース採掘業におけるM&Aの重要性と、国家安全保障や地政学的影響がどのように関係しているかを示しています。
希少金属・レアアース採掘業のM&A事例
希少金属・レアアース採掘業のM&A事例
1. アルコニックスによるソーデナガノのM&A
– レアメタル、レアアース製品の輸出入販売を行うアルコニックスが、金属精密プレス部品製造を行うソーデナガノの全株式を取得しました。
2. 豊田通商によるインド分離精製工場の建設
– レアアース供給契約締結を目指し、インド法人のToyotsu Rare Earths India Pvt. Ltd.(TREI)において分離精製工場の建設を着工しました。
3. 三菱商事によるレアアース供給
– レアアース供給プロジェクトに参加し、豪ライナス社(Lynas Corporation Ltd.)と日本向けレアアース供給契約を締結しました。
4. 古河機械金属による山石金属のM&A
– 粉末冶金技術の強化を目指し、各種金属粉全般・粉砕委託加工を行う山石金属を子会社化しました。
5. フジオーゼックスによるマルヨシ製作所のM&A
– 事業の拡大を目指し、金属ロール・シャフト等の製造を行うマルヨシ製作所を子会社化しました。
6. 三陽工業による太田工業所の買収
– 製造業の強化を目指し、鉄・ステンレスのパイプ材加工を行う太田工業所を子会社化しました。
希少金属・レアアース採掘業の事業が高値で売却できる可能性
レアアース採掘業の事業が高値で売却できる可能性について、以下のポイントをまとめます。
– レアアースの需要と供給のバランス:レアアースはハイテク産業に欠かせない材料ですが、産出量が少なく、安定的な供給が難しいことが特徴です。中国が世界のレアアース生産の70%、精錬加工の90%を占めるため、中国の生産と輸出状況が市場に大きな影響を及ぼしています。
– 価格の変動:レアアース価格は市場や国際情勢の動向によって変動しやすいです。中国国内の政策や冬季の石炭供給不足などが価格の上昇に寄与しています。一方で、過剰供給や需要低迷も価格下落の要因となります。
– 日本での採掘計画:日本はレアアースの供給をほぼ輸入に依存していますが、2022年10月に政府は小笠原諸島・南鳥島沖のレアアース泥の採掘に乗り出すと発表しました。2023年度に技術開発に着手し、5年以内の試掘を目指しています。
– 環境への影響:レアアース採掘や製錬には環境への負荷が問題となります。採掘に伴う環境破壊だけでなく、レアアース鉱石が放射性物質を含んでいることも懸念されています。
– 技術開発と国際協力:政府はレアアースの採掘や生産、精錬を行う権利を確保するため、オーストラリアのライナス社への出融資を実施しています。また、北米とアフリカで外国企業と共同探鉱を実施しています。これにより、供給リスクを分散するための国際協力が進められています。
これらのポイントを考慮すると、レアアース採掘業の事業が高値で売却できる可能性はあるものの、技術開発と環境への影響が大きな課題となります。日本での採掘計画や国際協力が進められている中で、安定した供給と環境への配慮が重要な要素となります。
希少金属・レアアース採掘業の企業が会社を譲渡するメリット
希少金属・レアアース採掘業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです:
– 売却益の獲得: M&Aを通じて会社を売却すると、売却益を得られることができます。特に資源価格が高騰している時期や、将来の資源需給が逼迫すると予想される場合、資源を保有する鉱業会社は大きな価値を持つ可能性があります。
– 後継者問題の解消: 鉱業は専門性が高く、後継者問題は一般的な産業よりも深刻な問題となります。M&Aによって他の企業に経営を任せることで、後継者問題を解消できます。さらに、売却先の企業が鉱業に関する専門知識や経験を持っていれば、会社の成長を支え、長期的な経営の安定化に寄与する可能性があります。
– 従業員の雇用継続: 鉱業会社の売却は、従業員の雇用を保護する重要な手段にもなりえます。資金不足や後継者不足で会社を続けていくことが難しくなった場合、会社の廃業か精算を選択するしかありません。しかし、M&Aで会社を売却することで、従業員の雇用はそのまま維持されるので、従業員を守ることが可能です。
希少金属・レアアース採掘業の事業と相性がよい事業
レアアース採掘業の事業と相性がよい事業を以下にまとめます。
1. 電気自動車・風力発電用モーター製造:
– レアアースは電気自動車や風力発電用モーターの磁石の原料として使用されています。磁石の需要は今後も拡大が見込まれており、レアアースの安定供給が重要です。
2. 永久磁石製造:
– ネオジム・プラセオジム(NdPr)などのレアアース材料は、永久磁石の原料として使用されています。これらの磁石は脱炭素化に向けての需要が高まり、レアアースの重要性が増しています。
3. リサイクル技術の開発:
– レアアースの価格変動を最小限に抑えるため、リサイクル技術の開発が進められています。コストの問題などから進展が遅れているが、将来的には重要な役割を果たす可能性があります。
4. 精錬所支援・備蓄:
– 政府はレアアースの鉱石を分離精製する事業への支援を検討しています。支援した事業に対してレアアースを備蓄対象鉱種に指定すれば、安定した供給につながることが期待されています。
5. 海洋資源開発:
– 日本では、南鳥島沖でレアアース泥の採掘に乗り出す計画があります。技術開発を進め、5年以内の試掘を目指しています。これにより、国内での供給を確保し、供給リスクを分散することが期待されています。
6. 国際協力と支援:
– 政府は、オーストラリアのライナス社への出融資や北米とアフリカでの共同探鉱を実施して、供給リスクを分散しています。これにより、レアアースの安定供給を確保するための国際協力が進められています。
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株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。