目次
宿泊施設運営業の市場環境
宿泊施設運営業の市場環境
2024年における宿泊施設運営業の市場環境は、複数の要因によって影響を受けています。
– インバウンド需要の増加:訪日外国人観光客の急激な回復により、宿泊需要が高まり続けています。2024年4月の宿泊客数は前年同月比10.1%増、延べ約5190万人泊に達しました。
– 経費の増加:人手不足や物価高騰により、経費が増加しています。特にフロントや調理スタッフなどの確保が難しく、宿泊予約や客室稼働率に制限を設ける必要があります。
– 価格の見直し:需要急増に合わせて客室単価の見直しや価格引き上げが行われています。都市部のビジネスホテル業態などを中心に、前年度比20%超の大幅な増収を見込む企業も多く見られます。
– 人手不足の対策:外国人材の登用や受付の自動化が推進されていますが、人手不足への対応が24年度における旅館・ホテル市場の成否を分けるポイントとなっています。
– ホテル投資の活発化:訪日外国人観光客数の本格的な回復や円安による消費・投資への優位性により、ホテル投資が活発化しています。2024年の日本ホテル投資市場は、好調な市場環境とホテルパフォーマンスの回復を見込まれています。
– 新規供給の抑制:新規供給が東京、大阪、京都、沖縄の4都市に集中しており、2023-2026年における日本のホテル新規供給は既存ストックと比較しても低水準です。
これらの要因により、宿泊施設運営業は競争が激しくなり、価値提供と施設の差別化が不可欠となっています。
宿泊施設運営業のM&Aの背景と動向
宿泊施設運営業のM&Aの背景と動向は以下の通りです。
– インバウンド需要の増加と、外国人旅行者の数の増加により、宿泊施設の需要が高まり、M&Aが活発に行われています。
– 東京オリンピックの開催と、2018年6月に施行された住宅宿泊事業法により、M&Aが盛んに行われています。
– 競争激化と、価格競争が激しく、収益性の向上が課題となっています。M&Aによって、競合他社を吸収し、収益性を高めることが目指されています。
– 人手不足と、人材不足が解消されるため、大手企業やファンドによるM&Aが増加しています。
– シナジー効果の創出と、異業種からの参入により、サービスの見直しや新たなサービスの開発が進められています。
– 大手企業による地方ホテルの再生と、資本力やノウハウを持つ企業が買収し、事業の再生を図る動きが進行中です。
– 中国企業の進出と、施設の改修や中国人向けの日本ツアーの実施によるインバウンドの獲得が目的に、中国企業によるM&Aが多く見られます。
宿泊施設運営業のM&A事例
以下に宿泊施設運営業のM&A事例をまとめました。
### 1. ベストワンドットコムとえびす旅館のM&A
– えびす旅館の子会社化: 2018年12月、ベストワンドットコムがえびす旅館の株式を取得し、子会社化しました。えびす旅館は京都でホテル・旅館・簡易宿泊所を運営し、売上高約3千9百万円、営業利益約2百4十万円でした。
### 2. HMIホテルグループと三日月ホテルのM&A
– 三日月ホテルの事業承継: 2021年11月、HMIホテルグループが「勝浦スパホテル三日月」と「鴨川スパホテル三日月」を事業承継しました。HMIホテルグループはホテル・旅館経営や旅行業務・交通事業を行っています。
### 3. ハウステンボスとウォーターマークホテル長崎のM&A
– ウォーターマークホテル長崎の完全子会社化: 2021年4月、ハウステンボスがウォーターマークホテル長崎を完全子会社化しました。ウォーターマークホテル長崎はハウステンボス園内に立地するホテルで、HISグループ傘下で運営されていました。
### 4. ベルーナとカラカミのM&A
– 定山渓ビューホテルの資産譲渡: 2023年3月、ベルーナがカラカミから北海道札幌市にある定山渓ビューホテルの資産を譲受しました。定山渓ビューホテルは巨大スパ・リゾートで、多様な客室やレストラン、プール、会議室を有しています。
### 5. 霞ヶ関キャピタルとメゾンドツーリズム京都のM&A
– ホテル京都木屋町の取得: 2021年4月、霞ヶ関キャピタルがメゾンドツーリズム京都の全株式を取得し、子会社化しました。ホテル京都木屋町は霞ヶ関キャピタルが取得目的にしたホテルです。
### 6. サンフロンティア不動産とホテル大佐渡のM&A
– ホテル大佐渡の完全子会社化: 2021年3月、サンフロンティア不動産がホテル大佐渡の株式を取得し、完全子会社化しました。ホテル大佐渡は佐渡島の景勝地に位置し、日本海を望む雄大な景観が特徴のホテルです。
### 7. ベルーナとKarakami HOTELS&RESORTSのM&A
– 定山渓ビューホテルの権利義務取得: 2021年5月、ベルーナがKarakami HOTELS&RESORTSから定山渓ビューホテルの権利義務を取得しました。ベルーナは将来国内外からの宿泊客が増えることを見込み、Karakami HOTELS&RESORTSは安定した経営基盤の確保と経営資源の選択と集中のためM&Aを行いました。
### 8. NAPとファーストキャビンのM&A
– ファーストキャビンのフランチャイズ契約取得: 2020年7月、NAPがファーストキャビンのホテル事業に関するフランチャイズ契約と知的財産権を取得しました。NAPは新日本建物の子会社で、ファーストキャビンはカプセルホテルのフランチャイズ本部を手掛けています。
### 9. 穴吹興産と祖谷渓温泉観光のM&A
– 祖谷渓温泉観光のブランド取得: 2020年、穴吹興産が祖谷渓温泉観光のブランドを取得しました。祖谷渓温泉観光は徳島県で「和の宿 ホテル祖谷温泉」を運営し、穴吹興産は不動産ソリューションやホテル・テナントビル運営などを行っています。
### 10. アゴーラ・ホスピタリティー・グループと難波・ホテル・オペレーションズのM&A
– 難波・ホテル・オペレーションズの完全子会社化: 2019年、難波・ホテル・オペレーションズがアゴーラ・ホスピタリティー・グループに株式を売却し、完全子会社化しました。アゴーラ・ホスピタリティー・グループはホテルアライアンスの構築を主力事業としています。
宿泊施設運営業の事業が高値で売却できる可能性
宿泊施設運営業の事業が高値で売却できる可能性については、以下のポイントが重要です。
1. 営業利益の倍率:
– 通常年間営業利益の2~6倍ほどで売却できることが多いです。
– 年間営業利益が500万円でしたら、1000万円~3000万円が売却額の相場です。
2. 施設の特性:
– 歴史やブランドがあり、外部プラットフォームに多額の広告費を支払わなくても十分集客ができている施設は、相場よりも高い価格で売却ができます。
– 営業エリアにおいて宿泊施設が供給過多になっていない地域の施設は、高い価格で売却ができます。
– ホテルスタッフの教育が行き届いており、インバウンドに対応できるように語学力があるスタッフも常駐している施設は、高い価格で売却ができます。
3. 売却の流れと手数料:
– M&A仲介会社を使用すると最低300~500万円の仲介手数料がかかるため、小規模な施設の売却は盛んに行われません。
– 私たち会社即売.comはM&A仲介会社のように会社売買における手数料で利益を上げている訳ではなく、買取させて頂いた会社を引き続き経営することで利益を創出することを目的としています。
4. 具体的な例:
– ドッグランも完備!ペットと一緒に過ごせるきれいなホテル(売却価格2300万円)。
– 新鮮な魚介料理と天然温泉を提供し続ける老舗旅館(売却価格1300万円)。
これらのポイントを考慮することで、宿泊施設運営業の事業が高値で売却される可能性を高めることができます。
宿泊施設運営業の企業が会社を譲渡するメリット
宿泊施設運営業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです。
– 従業員の雇用を守ることができる・事業が廃業となってしまうと、従業員も解雇となりますが、M&Aを活用してホテル・旅館を譲渡できれば従業員の雇用を守ることが可能です。
– 経営基盤の強化・自社よりも資本力やブランド力がある企業とM&Aを実施すれば、経営基盤を強化できます。例えば買い手の経営基盤を活用することで、事業拡大が可能となり、収益性や顧客数の増加につながる。
– 後継者問題の解決・経営者の高齢化や後継者不足により、事業承継が難しい状況に陥る場合があります。M&Aを行えば、親族ではない第三者を後継者にでき、自社のホテル事業を譲渡できます。
– 創業者利益の獲得・M&Aを活用して会社または事業を譲渡することで、創業者利益の獲得が期待できます。特に中小規模のホテル・旅館の場合は、創業者が会社の個人保証人になっているケースもありますが、ほとんどのケースでは譲受側が個人保証を引き継いでくれます。
– 新規事業や事業拡大のための時間・コストの節約・M&Aを活用することで、譲受側は譲渡側の営業基盤(ブランド力や顧客など)をそのまま引き継げるため、事業の立ち上げと成長にかかる時間やコストを削減できます。
– 経営資源や優秀な人材を獲得・M&Aを通じて、希少な経営資源や質の高い人材を獲得できる可能性があります。
宿泊施設運営業の事業と相性がよい事業
宿泊施設運営業の事業と相性がよい事業は以下の通りです。
### 宿泊部門
– 宿泊予約: 宿泊客の予約受付、予約管理を担当し、電話やメールへの対応や各種予約サイトの管理を行います。丁寧で迅速な対応が求められます。
– フロントスタッフ: ホテルのフロントとロビーを預かり、宿泊客の到着時の出迎えや案内業務、出発時の見送りや清算業務を主な仕事とします。施設案内だけでなく、ホテル周辺の情報や交通情報など、幅広い知識が求められます。
– ルームサービス: 宿泊客から料理や飲料の注文を受け、客室に運ぶ職種です。質の高い接客スキルが求められます。
### 料飲部門
– レストラン: ホテル内に設置してあるレストランの飲食代金を計上し、宿泊客の利用だけでなく、宿泊せずとも利用できるレストラン・バーを持つことで、安定して売上をつくることができます。
### 宿泊部門の売上向上
– 稼働率の向上: 宿泊部門の売上向上で重要なのは、稼働率の向上です。高稼働率を維持することで、安定して売上を上げることができます。
### 宿泊部門の新しいビジネスモデル
– 賃貸の部屋を客室としたホテルチェーン: 賃貸の部屋を客室としているホテルは、「ホテル」のイメージがつきづらく、集客に苦戦することが多く起こります。しかし、フランチャイズ本部と契約を交わすことで、AIに適正価格の設定をさせたり、収益の管理システムが使えるようになることで、経営を軌道に乗せることができます。
### ホテル運営委託
– 専門知識の活用: 運営会社には豊富なホテル運営のノウハウがあり、マーケティングから人材育成、施設管理に至るまで、様々な専門的な知見を活用できます。
– 効率的な運営: 託先の運営会社がスケールメリットを生かしてホテル業務を効率化し、必要人員の最適化による人件費削減や、間接業務の集約などで運営コストを抑制できます。
– リスクの軽減: ホテル運営に伴う様々なリスクを、専門の運営会社に移転することができ、需要変動リスクや人的リスク、災害・事故によるリスクなどを委託先に分散できます。
宿泊施設運営業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、宿泊施設運営業の企業がM&Aを依頼する際におすすめの理由がいくつかあります。まず、譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点が大きな魅力です。これにより、コストを気にせずに安心してご相談いただけます。さらに、豊富な成約実績を誇っており、多くの企業様にご満足いただいております。加えて、宿泊施設運営業の業界にも深い知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確なアドバイスを提供することが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。