目次
外国人材派遣業の市場環境
外国人材派遣業の市場環境は以下の通りです。
– 外国人労働者の採用市場の状況:
– 事業所数と外国人労働者数の増加:
– 令和2年10月末で、外国人労働者を雇用している事業所数は267,243か所、外国人労働者数は1,724,328人にのぼります。
– 令和元年10月末と比較すると、事業所数24,635か所(10.2%)、外国人労働者数65,524人(4.0%)の増加となっています。
– 需要の高い職種・業種:
– 卸売業、小売業:
– 9.2%の増加率で最も高い増加率を示しています。
– サービス業(他に分類されないもの):
– 3.9%の増加率で、製造業や宿泊業、飲食サービス業よりも高い増加率を示しています。
– 採用トレンド:
– リモートワークの普及:
– コロナ禍を契機にリモートワークが普及し、外国に住んでいる人材をリモートで採用する企業が増えています。
– デジタルスキルの需要増加:
– ITやエンジニアリングなどのデジタルスキルを有する外国人労働者の採用が近年増加しています。特に、AIやデータサイエンス、バイオテクノロジーなどの先端技術分野での人材需要が高まっています。
– 外国人労働者の採用サービス:
– 高度外国人材の提供:
– 株式会社グローバルパワーは高度外国人材に特化し、約4万人の登録外国人労働者を持つ派遣会社です。日本語レベルがビジネスレベル以上の外国人労働者を提供しています。
– 多様な国籍と能力を持つ人材の提供:
– 株式会社マンネットは外国人人材紹介、派遣、アウトソーシングに特化した会社で、100カ国2万人以上の会員データベースを持っています。ITエンジニア、ブリッジSE、CAD設計技術者などの派遣に強みがあります。
– 市場の課題:
– 労働時間制限の問題:
– 「2024年問題」と呼ばれる物流・運送業界の労働時間制限が問題となり、ドライバーの労働時間が年間960時間に制限されることで、一人当たりの走行距離が短くなり、長距離でモノが運べなくなると懸念されています。
– 中小企業の課題:
– 中小企業は依然として時間面やコスト面から厳しい状況が続いており、生き残り策を講じることが必須と考えられます。
– 将来の展望:
– DXの推進:
– 中堅・中小派遣会社が新規事業、M&A、DX推進を実施すべきとされています。DXの推進により、生産性向上や社員育成が可能となります。
– 外国人労働者の活用:
– 外国人労働者の採用が活発化し、特定技能2号の対象分野が拡大し、外国人分野での動きも活発となっています。
外国人材派遣業のM&Aの背景と動向
外国人材派遣業のM&Aの背景と動向を以下のようにまとめます。
外国人材派遣業のM&Aは、近年労働市場の変化に伴い、注目されています。具体的には、以下の点が重要です。
– 労働市場の変化: 人材不足や労働環境の改善が求められ、人材派遣業が需要を維持するためにM&Aが増加しています。
– 業界の競争激化: 人材不足や市場の変化により、競争が激化し、M&Aが活発に行われています。
– M&Aによる統合の効果: 業界内の競争力を高め、業務の効率化やコスト削減が可能となり、企業価値の向上に寄与します。
– リスクの管理: M&Aには統合に伴う人員削減や業務の再編成などのリスクがあり、社員や取引先への説明や配慮が重要です。
– 成功事例: IT関連企業との合併による業務拡大や海外進出によるグローバル展開が成功事例として挙げられます。
– M&Aの手法: 株式譲渡や会社を丸ごと買収する手法が多く採用されています。
– 技術者・エンジニア派遣業界の特徴: 人材の価値が技術者・エンジニアをどれほど抱えているかで左右され、M&Aが活発に行われています。
– 大手企業の買収: 大手の独立系人材派遣企業が外販需要の見込めない資本系人材派遣企業を買収する事例が多く見られます。
– 後継者問題の解消: 人材派遣業界では経営者が高齢化しており、後継者不在の問題を抱える企業も多く、M&Aが解消策として挙げられます。
– 従業員の雇用維持: M&Aにより従業員の雇用を維持し、待遇がよくなる可能性も期待されます。
– 優秀な人材の獲得: 人材派遣会社を買収することで経験豊富な従業員をまとめて自社に取り込むことができます。
これらの点が外国人材派遣業のM&Aの背景と動向を形成しています。
外国人材派遣業のM&A事例
外国人材派遣業のM&A事例を以下にまとめます。
### 1. メイホーホールディングスがエムアンドエムの人材派遣事業をM&Aした事例
メイホーホールディングスは、2022年11月にエムアンドエムが手掛ける人材派遣事業をスタッフアドバンスを通じて譲受しました。エムアンドエムは岩手県で人材派遣事業や業務請負事業を行っており、スタッフアドバンスは福島・山形・宮城で人材派遣業を展開しています。このM&Aにより、メイホーホールディングスは東北エリアでの事業規模とシェアを拡大することを目指しています。
### 2. ピアズがウィルの全株式をM&Aした事例
ピアズは2022年5月にウィルの全株式を取得し、同社を子会社化しました。ウィルは通信業界に特化した人材派遣事業やセールスプロモーション事業を行う企業で、ピアズはウィルの採用力を活かしてセールスプロモーション事業での人材確保や研修講師・オンラインオペレーターの確保を図ることを目指しています。
### 3. iDAがリンクスタッフィングの国内人材派遣事業をM&Aした事例
iDAは2021年11月にリンクアンドモチベーションの子会社であるリンクスタッフィングが手掛ける人材派遣事業を吸収分割方式で譲受しました。リンクスタッフィングは営業・販売職に特化した国内人材紹介・派遣事業を行っており、iDAはこの事業を強化し、高収益体制の確立を目指しています。
### 4. グロップエスシーがジーエスケーとグランドスタッフをM&Aした事例
グロップエスシーは2021年5月にジーエスケーとグランドスタッフの2社をインターライフホールディングスから譲受しました。ジーエスケーとグランドスタッフは人材派遣業を行っており、この売却はインターライフホールディングスのグループ内事業再編の一環で行われました。
### 5. ウィルグループによるDXHUBへの事業売却
ウィルグループは2024年7月に外国人向けモバイルサービス「ENPORT mobile」に関する事業を吸収分割方式によりDXHUBに承継させました。ウィルグループは既存事業とのシナジーが乏しいため、この事業の分割を決定しました。
### 6. ライクによるデジタルディフェンスのM&A
ライクは2024年7月にデジタルディフェンスの全株式を取得し、連結子会社化しました。デジタルディフェンスは3つの認可保育園を運営しており、ライクは保育事業の成長を目指し、地域に根ざした子育て環境の整備とノウハウの共有による価値向上を図ることを目指しています。
### 7. フルキャストホールディングスとヘイフィールドのM&A
フルキャストホールディングスは2022年5月にヘイフィールドの全株式を取得し、子会社とした。ヘイフィールドは不動産業界に専門特化した人材紹介事業を行っており、フルキャストホールディングスはヘイフィールドグループに登録するスタッフの有資格・専門職へのステップアップを目指しています。
### 8. リンクアンドモチベーションがiDAへリンクスタッフィングを譲渡した事例
リンクアンドモチベーションは2021年11月にリンクスタッフィングの人材派遣事業をiDAへ事業譲渡しました。リンクスタッフィングは営業・販売職に特化した国内人材紹介・派遣事業を行っており、リンクアンドモチベーションは子会社のリンクスタッフィングにおける国内人材紹介事業部門に集中するため、人材派遣事業のM&Aを行いました。
### 9. テンプスタッフがパナソニック エクセルスタッフをM&Aした事例
テンプスタッフは2015年4月にパナソニックが子会社であるエクセルスタッフの株式のうち66.61%を譲渡しました。エクセルスタッフは事務および技術者の人材派遣事業を行っており、テンプスタッフは両社の顧客基盤やネットワークを融合することで成長性や収益性の向上を実現しました。
### 10. ウイルテックがペットショップをM&Aした事例
ウイルテックは2020年11月に岡山市内で展開していたペットショップ1店舗を譲受しました。ウイルテックはIT技術者の人材派遣サービスを運営しており、ペットショップの売却はシステム開発に対するニーズに対応する目的で、高度な技能や経験を持つシステムエンジニアを抱えるパートナー社を買収するためのものでした。
### 11. エン・ジャパンがJapanWorkをM&Aした事例
エン・ジャパンは2019年7月にJapanWorkの51%の株式を2億2,900万円で売却しました。JapanWorkは外国人向け求人一括検索サイトを運営しており、エン・ジャパンはこのサービスを活用して自社の顧客企業に対してさらなる価値提供ができると見込んでいました。しかし、新型コロナウイルスの影響により完全子会社化は中止されました。
外国人材派遣業の事業が高値で売却できる可能性
外国人材派遣業の事業が高値で売却できる可能性について、以下のようにまとめられます。
外国人材派遣業の事業が高値で売却できる可能性は、以下の要素によって大きく影響を受けます。
– 専門性の高い分野: ITや医療分野に特化した派遣会社は、高度なスキルを持つ派遣社員の需要が高いため、企業価値が評価されやすいです。特に、利益の5〜7倍、場合によってはそれ以上の価格で売却されることが珍しくありません。
– クライアント基盤の安定: 大企業や官公庁との長期にわたる安定した取引関係を持つ企業は、安定した収益が期待できるため、売却価格が高くなります。
– 派遣社員の質と数: 専門性が高く即戦力となる人材を多数抱えている企業は、買収側にとって大きな魅力となり、売却価格も上昇します。
– シナジー効果: シナジー効果の期待できる企業へ事業売却すると、さらに人材派遣事業を強化できる可能性が高まります。買い手企業と売り手企業の強みを掛け合わせることで、さらに売り上げを伸ばす相乗効果が期待されます。
これらの要素を考慮すると、外国人材派遣業の事業が高値で売却される可能性は高いと言えます。特に、専門性の高い分野や安定したクライアント基盤を持つ企業は、買収側にとって魅力的なターゲットとなり、売却価格が高くなる傾向があります。
外国人材派遣業の企業が会社を譲渡するメリット
外国人材派遣業の企業が会社を譲渡するメリットをまとめます。
### 1. 事業承継手段として活用できる
M&Aは事業承継手段として活用することも可能で、買収側の企業が引き継ぎ先となり、売却側企業は自社の存続と事業継続が実現できます。株式譲渡を用いるのが一般的で、権利・義務がそのまま買収先へ引き継がれるため、従業員との雇用契約や顧客との関係も維持できるのが大きなメリットです。
### 2. 売却益を獲得できる
株式譲渡の場合は、オーナー(株主が)対価の受け取り先となるので、まとまった現金を得ることが可能です。廃業ではなくM&Aという選択をすれば、人材派遣会社を売却した利益を得ることができます。
### 3. 経営の安定化が図れる
M&A後の経営安定化を見込むことができるうえ、リソースの相互活用によって自社の成長・発展にも期待できる点がメリットです。買収側は売却側より規模が大きいケースがほとんどなので、経営資源を集中させられるのが利点です。
### 4. 事業の選択と集中ができる
M&Aによって不採算事業を切り出して売却すれば、経営資源をコア事業へ集中させることができます。複数事業を展開している企業が注力したい事業がある場合、人材派遣事業のみを売却するという方法があり、株式の移転を伴わないため引き続き会社運営をすることが可能です。
### 5. 事業規模を拡大できる
同業種間のM&Aでは売却側企業のシェアを獲得することができます。新たな派遣先企業(顧客)が増えれば新規求職者の獲得につながり、サービスの質向上や業容拡大も実現可能です。
### 6. 専門性が高く評価される
ITや医療分野など、専門性の高い派遣サービスを提供している企業は、売却価格が高くなる傾向があります。これらの分野では、利益の5〜7倍、場合によってはそれ以上の価格で売却されることも珍しくありません。
### 7. クライアント基盤の評価
長期にわたる安定した取引関係を持つクライアント基盤も評価対象となります。特に、大企業や官公庁との取引がある場合、安定した収益が期待できるため、売却価格が高くなります。
### 8. シナジー効果の期待
シナジー効果の期待できる企業へ事業売却すると、さらに人材派遣事業を強化できる可能性が高まります。買い手企業と売り手企業の強みを掛け合わせることで、さらに売り上げを伸ばす相乗効果が期待できます。
外国人材派遣業の事業と相性がよい事業
外国人材派遣業の事業と相性がよい事業は、以下のような業種が挙げられます。
### 1-1. 身分に基づく在留資格の場合
– 身分に基づく在留資格の場合、労働時間などの制限がなく、自由に働くことが可能です。特定の分野での制限が少ないため、多様な業種で利用可能です。
### 2-2. ニーズにマッチした外国人材を派遣
– ニーズにマッチした外国人材を派遣することで、ミスマッチを防ぐことができます。特に繁忙期や人手不足の時期には、柔軟な対応が可能な派遣が便利です。
### 3-3. 農業と漁業の2業種
– 農業と漁業の2業種においては、派遣での雇用が可能です。需要に応じた雇用ができるため、外国人労働者の人材派遣が認められています。
### 4-4. 特定技能の場合
– 特定技能の場合、農業と漁業の2業種のみが派遣での雇用が可能です。農業と漁業は需要が変動するため、外国人労働者の人材派遣が適しています。
### 5-5. 大手製造業企業への導入
– 大手製造業企業への導入例があり、ミャンマー人の特徴や雇用するメリットが高いとされています。ミャンマー人は日本人と国民性が似ており、若い優秀な人材が多く、人手不足に悩む日本企業からのニーズが高いです。
### 6-6. 外国人受け入れの増加
– 外国人受け入れの増加により、外国人労働者の派遣・請負を行っている事業者が全国で約2万事業者、在籍している外国人労働者の数は約35万人となっています。
### 7-7. 外国人ターゲットの紹介会社
– 外国人ターゲットの紹介会社は、日本の労働人口が減少しているため、拡大していくであろう外国人マーケットにチャンスを見出しています。ベトナムやインドなどの高度IT人材を日本に誘致しようとする紹介会社が急激に増加しています。
### 8-8. 外国人受け入れ体制の不足
– 外国人受け入れ体制の不足により、求職者と面談をすることは容易ですが、推薦できる求人案件が圧倒的に不足しています。日本企業の外国人受け入れ体制がないため、採用基準や選考フローが異なることが多いです。
外国人材派遣業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、外国人材派遣業の企業がM&Aを依頼する際におすすめの理由がいくつかあります。まず、譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点が大きな魅力です。これにより、コストを抑えながらスムーズにM&Aを進めることができます。さらに、豊富な成約実績を持っており、多くの企業様にご満足いただいております。外国人材派遣業の業界にも深い知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確に対応することが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。