目次
包装印刷業の市場環境
包装印刷業の市場環境は、以下の要素で特徴づけられます。
– 市場規模と成長率:
– 包装印刷市場規模は2024年に4,052億米ドルと推定され、2029年には5,964億9,000万米ドルに達し、予測期間中(2024-2029年)のCAGRは8.04%で成長すると予測されています。
– 需要と技術進歩:
– 需要は食品、飲食品、化粧品などのエンドユーザー分野からの革新的なパッケージングに対する需要の高まりに支えられており、技術の進歩も市場の成長を後押ししています。
– 競争状況:
– 競争は激しく、主要企業としてMondi PLC、Ahlstrom-Munksjo Oyj、Autajon CS、Huhtamaki Flexible Packaging(Huhtamaki Oyj)、Avery Dennison Corporationなどが挙げられます。各社は戦略的パートナーシップ、研究開発、M&Aを通じて市場でより大きな足跡を残しています。
– 国内市場の動向:
– 日本国内のパッケージ印刷市場規模は2022年度に1兆4,395億1,800万円、前年度比5.2%増と高伸長率を示しました。コロナ禍の需要変動が一旦終了し、景気が回復する中、2023年度も前年度比1.1%増の1兆4,550億円と予測されています。
– 原材料不足の影響:
– 原材料の品不足が顕在化し、ユーザーの前倒し発注が相まって市場は混乱しています。主な原材料として酢酸エチル、OPP、アルミ箔、ナイロンが挙げられ、需要過多が原材料不足を深刻化させています。
– 企業の特徴:
– 大信印刷株式会社は名古屋市に本社を置き、70年以上の実績があり、社内一貫作業でパッケージを作成しています。トキワ印刷株式会社は大阪府に本社を置き、多品種・少量印刷にも対応できる企業です。
これらの要素が包装印刷業の市場環境を形成しています。
包装印刷業のM&Aの背景と動向
包装印刷業のM&Aの背景と動向を以下にまとめます。
### 包装印刷業のM&Aの背景
デジタル化による市場縮小
近年、デジタル技術の進展により、印刷市場が縮小しています。特に中小規模の印刷会社は、従来の経営を続けるだけでは生き残るのが困難です。
経営資源の共有
M&Aにより、売却側と買収側が経営資源や技術を共有することができます。これにより、業務効率化や専門性の向上が可能です。
### 包装印刷業のM&Aの動向
事業規模の拡大
M&Aを通じて、事業規模を拡大することができます。特に中堅印刷会社同士のM&Aは、短期間で事業規模を拡大し、競争力を強化することができます。
地域特化
地方の中堅印刷会社が都心の小規模事業者を買収するケースが増えています。これにより、特定地域に特化する印刷会社を買収し、事業領域を拡大することができます。
海外市場への進出
印刷業界は今後も国内市場が縮小する見込みで、そのために成長中の海外市場へアプローチする事例が増えています。大手印刷会社が海外展開を狙う際にも、M&Aは大いに活用できるでしょう。
### 包装印刷業のM&A事例
オストリッチダイヤによる北越パッケージのM&A
オストリッチダイヤは、北越パッケージから印刷事業を譲り受けました。これにより、パッケージング事業への経営資源の集中が図られました。
凸版印刷によるMajend MakcsのM&A
凸版印刷は、タイで軟包装の製造・販売を手掛けるMejend Makcs社の90%の株式を取得しました。これにより、建装材事業におけるグローバルな生産拠点・販売ネットワークの確立が図られました。
### 包装印刷業のM&Aの成功ポイント
新たな市場開拓
M&Aにより、一般的な印刷物に加え、食品や包装を含むパッケージング等の新たな市場を開拓することができます。
環境問題対応
M&Aを通じて、環境問題への対応や人材育成が可能です。これにより、企業の競争力が向上します。
包装印刷業のM&A事例
包装印刷業のM&A事例をまとめます。
### 1. 朝日印刷とHarleigh(Malaysia)Sdn.Bhd.およびShin-Nippon Industries Sdn.Bhd.のM&A
– 朝日印刷がハレフとシンニッポンを子会社化:朝日印刷がハレフとシンニッポンの株式65.0%を取得し、子会社化しました。
### 2. 共立印刷と西川印刷のM&A
– 共立印刷が西川印刷を完全子会社化:共立印刷が西川印刷の株式すべてを取得し、完全子会社化しました。西川印刷の設備や技術力は、需要に対応する体制整備を進めていた共立印刷との親和性が高く、このM&Aで両企業ともに、需要が高まりつつある印刷サービスに対応可能となりました。
### 3. 光村印刷と新村印刷のM&A
– 光村印刷が新村印刷を完全子会社化:光村印刷が新村印刷の株式すべてを取得し、完全子会社化しました。光村印刷は、新分野に進出するだけでなく、既存の事業とシナジーを創出させ、成長の実現を狙っています。
### 4. オストリッチダイヤと北越パッケージのM&A
– オストリッチダイヤが北越パッケージの印刷事業を譲り受け:オストリッチダイヤが北越パッケージより印刷事業を譲り受けました。オストリッチダイヤでは、各種紙類やプラスチックフィルムの印刷加工、断裁および製本などの事業を展開する企業になりました。
### 5. 凸版印刷によるInterFlex Groupの買収
– 凸版印刷がInterFlex Groupを完全子会社化:凸版印刷がInterFlex Groupを買収し、完全子会社化しました。InterFlex Groupは、食品などの軟包装事業を展開しており、これにより凸版印刷は欧米市場で包装材料供給から最終製品までワンストップで提供できるようになりました。
### 6. 朝日印刷によるKinta Press & Packaging(M)Sdn.Bhd.の買収
– 朝日印刷がKinta Press & Packagingを完全子会社化:朝日印刷がKinta Press & Packagingの株式を取得し、完全子会社化しました。Kinta Press & Packagingは、産業用包装材、箱、ラベルなどを取り扱う印刷会社で、朝日印刷はアジアでの事業拡大を目指しています。
### 7. 西川印刷によるバッハベルクの買収
– 西川印刷がバッハベルクを完全子会社化:西川印刷がバッハベルクの全ての株式を取得し、子会社化しました。バッハベルクはテレビショッピング番組・CM・WEB動画・商品案内ビデオ制作などを行う企業で、西川印刷はデジタルコンテンツ市場への参入強化を図り、グループのネットワークを活かした新規顧客獲得を促進しています。
包装印刷業の事業が高値で売却できる可能性
包装印刷業の事業が高値で売却できる可能性について、以下のポイントをまとめます。
– 市場規模の増加:世界のパッケージ印刷市場規模は、2024年には3165億8000万ドル、2032年には5793億5000万ドルに達する予測されています。国内市場も2022年度に1兆4,395億1,800万円、2023年度に1兆4,550億円に達し、2024年度には1兆4,695億円に達する予測されています。
– 技術革新:パッケージ印刷会社は、エコパッケージやAI、デジタル印刷などの技術革新を取り入れており、これにより競争環境において重要な役割を果たすことができます。
– 需要の高まり:食品・飲料業界の急激な成長が市場の成長を促進しており、印刷されたパッケージはブランドの認知度と保護を高めるため、需要が高まります。
– 競争力の向上:パッケージ印刷会社は、技術革新と持続可能な開発を駆使し、企業の競争力を高めブランド価値を向上させるパートナーとなっています。
– 環境への配慮:パッケージ印刷会社は、環境や社会に配慮した選択を求められており、再生可能な素材の使用やエコパッケージの推進が求められます。
これらのポイントから、包装印刷業の事業が高値で売却できる可能性は高いと言えます。
包装印刷業の企業が会社を譲渡するメリット
包装印刷業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです:
– 経営が安定している大手企業に対し、M&Aにより印刷業を承継すれば、従業員の雇用が維持できるだけでなく、事業をさらに成長できるメリットがあります。
– 得意先の出版社や事業会社に関しても、緊密な関係の印刷業者と取引が継続できます。
– 小規模事業者だけでは苦戦していたIT投資でのデジタル化を推進できることで、印刷業での経営高度化も可能な点もメリットです。
– M&Aでシナジー効果を得られるメリットもあります。生産規模を拡大することで生産性が向上し、大量仕入れも可能なため、原材料費の引下げ、広告宣伝費、人材採用コスト、本社経費なども削減できる可能性が高い。
– 後継者問題の解決が可能です。会社売却により社外の第三者への事業承継を成功させれば、印刷事業という社会的資源の存続と雇用の継続が可能になり、株主としてもまとまった資金を得ることができます。
– M&A市場において買収ニーズが高い印刷会社には、総合化・専門化を進める同業者や関連分野の異業種企業から見れば、こうした特徴を持つ印刷会社のほうが大きなシナジーを期待できるため、買収価値は高くなります。
– 事業再生が可能です。優良な事業部門のみを分割して売却することで、経済的なダメージや関係者への影響を軽減することが可能です。
包装印刷業の事業と相性がよい事業
包装印刷業の事業と相性がよい事業は、以下の通りです。
– 食品・飲料業界: 食品・飲料業界では、印刷された箱やカートンがコスト効率、納期の短縮、高品質な機能を提供し、食品包装ソリューションの需要が高まっています。特に、賞味期限、成分、栄養情報などの詳細を伝えるためにデジタルデータ印刷が急増しています。
– 消費財業界: 消費財業界では、魅力的で消費者に優しいパッケージング ソリューションに対する需要が高まり、企業は革新的なパッケージングと印刷ソリューションを活用しています。
– 医薬品業界: 医薬品業界では、印刷されたパッケージが製品の安全性と情報提供に重要な役割を果たしており、特にラベルやタグの使用がブランドの認知度を高めるために広く採用されています。
– パーソナルケア・化粧品業界: パーソナルケア・化粧品業界では、印刷されたパッケージが製品の特徴を強調し、消費者のニーズを満たすために重要な役割を果たしています。
– 電子商取引業界: 電子商取引の急成長により、オンライン小売業者が顧客の開封体験を向上させるために、パッケージ印刷業者にとって新たな機会が生まれています。
これらの業界では、デジタル印刷技術や3Dプリンティング技術が高品質な印刷を提供し、ブランドの持続可能性目標に沿った効率的な少量生産が求められています。
包装印刷業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
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株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。