目次
倉庫建設業の市場環境
倉庫建設業の市場環境は、複数の要因によって影響を受けています。以下に大切なポイントをまとめます。
– 大量供給と需要のバランス:
– 首都圏を中心に大量の物流施設が供給されており、需要も過去最大のレベルに達しています。ただし、空室率は8.2%に収まり、供給と需要のバランスが難しい状況です。
– 建設費の高騰:
– 建築費指数は2021年1月以降急激に上昇しており、仮設費や経費などを含めた全建設コストは20~23%上昇しています。原材料不足やエネルギー価格の高騰、人件費の高騰が主な原因です。
– 労働規制の影響:
– 建設業界では、時間外労働の上限規制が2024年4月に強化され、人手不足や長時間労働の規制が懸念されています。これにより、工期に影響が出る可能性があり、特に大規模なプロジェクトでは受注が絞られる可能性があります。
– 資材・設備の納期遅延:
– 半導体や原材料の不足により、資材や設備の納期が遅延しており、工期に影響を与えています。例えば、キュービクルの納期遅れが自動化設備の導入計画に影響を与えるケースもあります。
– 企業の対応:
– 企業は、物流コストの増加や人件費の増加に対応するため、運送費の値上げや配送スケジュールの見直しなどの対応策を講じています。ただし、特に対応しない企業もあり、市場環境の不安定さが続きます。
これらの要因により、倉庫建設業は今後も難しい状況が続く可能性があります。
倉庫建設業のM&Aの背景と動向
倉庫業界のM&Aは、近年日本で注目されており、特にEC市場の拡大と物流ニーズの増加が背景にあります。以下に、倉庫業界のM&Aの背景と動向をまとめます。
### 背景
– EC市場の拡大: アマゾンや楽天などの影響で、倉庫スペースへの投資が増加し、人手不足や輸送コスト上昇による物流効率化がM&Aの動機となっています。
– 物流ニーズの増加: 荷主企業が保管だけでなく、在庫管理、流通加工、配送までを一貫して担える物流パートナーを求めています。
– 技術革新: IoT、AI、ロボティクスなどの新技術が倉庫業に大きな変革をもたらしており、これらの技術を持つ企業との合併や買収が進んでいます。
### 動向
– 大手物流企業による買収: 大手物流企業が中小規模の倉庫会社を買収や合併し、事業規模を拡大させるケースが増えています。
– 中小企業M&Aの増加: 倉庫業界の競争が激しいことから、中小規模の倉庫会社の売り案件が増加しています。
– 海外とのネットワーク強化: 国外の物流会社を買収する動きも見られ、海外とのネットワークを強化するために進められています。
### メリット
– 事業規模の拡大: 事業規模の拡大が図れることで、コスト削減や新規販路の獲得、新規顧客の獲得など、さまざまなシナジー効果が得られます。
– 人材の確保: M&Aによる包括承継であれば従業員も引き継ぐため、必要かつ優秀な人材を確保することが可能です。
– 技術の取得: 特定の倉庫業者が持つ先進的な技術や運営ノウハウを吸収することで、業務運営を改善し、さらなる成長を促進することができます。
– リスク分散: 事業の多角化を進めることで、特定の市場や地域のリスクを軽減することができます。
– スケールメリット: 大規模な運営を実現することで、コスト削減や資源の最適化が可能になり、全体の効率を高めることができます。
### 事例
– NIPPON EXPRESSホールディングスによるグルーヴノーツの株式取得: AIや量子コンピュータを活用したクラウドプラットフォーム「MAGELLAN BLOCKS」を提供するグルーヴノーツの株式を取得し、資本業務提携契約を締結しました。
– 三井倉庫のソニーサプライチェーンソリューションの買収: ソニーの物流子会社であるソニーサプライチェーンソリューション株式会社の株式66.6%を取得し、三井倉庫ロジスティクス株式会社を設立しました。
– セイノーホールディングスによる丸久運輸のグループ化: 関東圏で倉庫業を営む丸久運輸の全株式を取得し、完全子会社化しました。
以上のように、倉庫業界のM&Aは、市場規模の拡大、技術革新、人材確保、リスク分散、スケールメリットの享受など、多くのメリットをもたらしています。
倉庫建設業のM&A事例
### 倉庫建設業のM&A事例
#### 三井倉庫のソニーサプライチェーンソリューションの買収
– 三井倉庫は、ソニーの物流子会社であるソニーサプライチェーンソリューション株式会社(現・三井倉庫サプライチェーンソリューション株式会社)の株式66.6%を取得し、三井倉庫ロジスティクス株式会社を設立しました。
#### セイノーホールディングスによる丸久運輸のグループ化
– セイノーホールディングスが、関東圏で倉庫業を営む丸久運輸の全株式を取得し、完全子会社化しました。
#### SBSホールディングスによる東洋運輸倉庫の合併
– SBSホールディングスが、老舗の倉庫業者である東洋運輸倉庫を吸収合併しました。特に、優良な顧客基盤と質の高い倉庫資産の獲得が戦略的なM&Aの好例です。
#### 坂出ユタカサービスによる坂出事業所のM&A
– 坂出ユタカサービスが、J-オイルミルズの坂出事業所より事業を譲り受けました。目的は選択と集中、効率化の実現で、20億円で事業譲渡が行われました。
#### 日新による日新エアカーゴのM&A
– 日新が、航空貨物混載運送取扱業や倉庫流通加工業を行う日新エアカーゴを吸収合併しました。
倉庫建設業の事業が高値で売却できる可能性
建設会社の売却において、倉庫建設業の事業が高値で売却される可能性はあるが、具体的な条件やポイントを以下にまとめます。
### 技術・特許などの無形資産を持っている
最新の技術を有している会社は高値で売却できる可能性があります。特に、特許工法を有している会社は、その強みを生かして高値で売却できる可能性が高くなります。
### 入札実績・受注実績を持っている
入札参加資格を持っていて実際に入札・受注した実績を持っている建設会社は、そうでない会社より高値で売却できる可能性があります。公共工事を遂行する能力があると認められた会社に資格が与えられる仕組みがあるため、入札実績が評価される。
### 安定した取引先・下請け先を持っている
取引先や下請け先との安定した関係がある会社は経営の安定性が評価され、高値で売却できる可能性があります。多くの建設会社が下請け・孫請けといった多重下請けを行っているため、安定した取引先関係が重要。
### 人材・土地・機材・設備などの有形資産を持っている
人材や設備といった有形資産も重要です。建設機材をレンタルしている会社も多いですが、自社で保有している機材や設備があれば、その資産価値の分だけ売却額が上乗せされます。
### 財務・税務面がきちんとしている
財務や税務の管理がきちんとしていることは、会社を高値で売却するための必要条件です。買い手は買収前にデューデリジェンスと呼ばれる会社の調査を行うので、税務や税務に問題があると発覚すれば、売却価格を下げられたり交渉を打ち切られたりするケースもあります。
### 専門家に相談する
専門家に相談することで、会社の価値を正確に評価し、高値で売却するための戦略を立てることができます。特に、技術や特許などの無形資産を持っている場合、専門家の助言が不可欠です。
### コンプライアンス違反がない
コンプライアンス違反がないことが重要です。買収前に経営事項審査・競争参加資格審査の評価が高いことを確認することで、高値で売却するための信頼性を高めることができます。
これらの条件を満たすことで、倉庫建設業の事業が高値で売却される可能性が高まります。
倉庫建設業の企業が会社を譲渡するメリット
倉庫建設業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです。
### 売り手のメリット
– 後継者問題の解消: 会社を売却することで、後継者を探す必要がなくなるため、経営者の体調が急激に悪化しても後継者探しが困難な状況が避けられます。
– 資金回収が可能: 倉庫を売却することで、倉庫自体の価格だけでなく、将来得られる収入を加味した金額を獲得できるため、投資した分の資金回収ができる確率が高くなります。
– 従業員の雇用維持・負債の解消: M&Aによる会社売却で、従業員の雇用は維持されます。また、負債も全て売却先に引き継がれ、経営者の個人保証や担保などは全て解消されます。
– 経営資源の共有: 大手の傘下に入ることで、経営資源を共有し、経営の安定を図ることができます。
– 取引・雇用契約の維持: 株式譲渡や合併により、取引・雇用契約を維持することが可能です。
– 創業者利益の獲得: 株式譲渡により、創業者は利益を獲得することができます。
### 買い手のメリット
– 拠点の確保: 倉庫を買収することで、拠点を確保し、事業の拡大を図ることができます。
– 自社にはないサービスの獲得: 倉庫業を行うことで、自社にはないサービスの獲得が可能です。
– スケールメリットの獲得: 同業者を買収することで、スケールメリットを獲得し、コスト削減や新規販路の獲得が可能です。
倉庫建設業の事業と相性がよい事業
倉庫建設業の事業と相性がよい事業を以下にまとめます。
### 倉庫建設業と相性がよい事業
1. 物流業
– 倉庫建設業と物流業は密接に関連しており、倉庫の建設が物流の効率を向上させるため、相性がよいです。特に、自動倉庫や冷蔵倉庫の建設が物流業の効率を大幅に向上させることができます。
2. 食品産業
– 食品産業では、HACCP対応の冷蔵倉庫や冷凍倉庫の建設が求められます。これらの倉庫は食品の輸出を拡大させるために必要であり、倉庫建設業と食品産業の相性がよいです。
3. 農林水産業
– 農林水産業においても、倉庫の建設が農産物や水産物の輸出を支援します。特に、冷蔵倉庫や冷凍倉庫の建設が農林水産物の品質を維持するために重要です。
4. 自動化技術
– 倉庫の自動化技術は、倉庫の効率を大幅に向上させるため、相性がよい事業です。特に、自動倉庫の建設が倉庫の管理を効率化させるために役立ちます。
5. ITサービス
– ITサービスは、倉庫の管理システムや物流管理システムの提供が求められます。これらのシステムは倉庫の効率を向上させるために重要であり、倉庫建設業とITサービスとの相性がよいです。
6. 輸送業
– 輸送業は、倉庫の建設と密接に関連しており、倉庫の建設が輸送の効率を向上させるため、相性がよいです。特に、倉庫と輸送業の連携が物流の効率を大幅に向上させることができます。
7. 倉庫管理サービス
– 倉庫管理サービスは、倉庫の管理を効率化させるために役立ちます。特に、倉庫の整理整頓や品物の管理が求められます。
8. 安全対策サービス
– 倉庫の安全対策サービスは、倉庫の安全を確保するために重要です。特に、危険物の保管が求められる倉庫では、安全対策サービスが必要です。
9. 環境対策サービス
– 倉庫の環境対策サービスは、倉庫の環境負荷を軽減するために役立ちます。特に、エネルギー効率の向上やリサイクルシステムの整備が求められます。
10. 法律・規制コンサルティング
– 倉庫の建設には多くの法律や規制が関わるため、法律・規制コンサルティングが必要です。特に、建設する倉庫によって異なる法律が関係するため、専門家のアドバイスが必要です。
これらの事業は、倉庫建設業と密接に関連しており、相性がよいです。特に、物流業や食品産業、農林水産業、自動化技術、ITサービス、輸送業、倉庫管理サービス、安全対策サービス、環境対策サービス、法律・規制コンサルティングが重要です。
倉庫建設業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
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株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。