目次
チラシ印刷業の市場環境
世界の商業印刷市場規模は、2023年に7,667億米ドルに達しました。市場は2024年から2032年にかけて1%の成長率(CAGR)を示し、2032年までに8,419億米ドルに達すると予測されています。
市場の推進要因には、以下の要素が含まれます。
– 需要の高まり:小売業や飲食品業界などの分野からの需要が増加しています。
– 高品質印刷包装材料:広告やブランドプロモーションのための高品質な印刷包装材料への嗜好が高まっています。
– 植物油由来の植物性インク:性能の向上と揮発性有機化合物(VOC)の低減により、植物油由来の植物性インクの使用量が増加しています。
アジア太平洋地域の重要性:
– 市場シェア:アジア太平洋地域は市場をリードし、最大の商業印刷市場シェアを占めています。
– 成長率:アジア太平洋地域は予測期間中に2.30%のCAGRで成長すると予想されています。
技術の進歩:
– リソグラフ印刷:高品質で費用対効果の高いソリューションを提供するため、テクノロジーセグメントの市場シェアの大部分を占めています。
– カスタマイズのトレンド:技術の進歩とカスタマイズのトレンドは、商業印刷市場を再形成しています。
セグメントの重要性:
– パッケージング:製品パッケージでの商業印刷の利用が高まっており、市場で依然として支配的なセグメントです。
– マーケティングと広告:マーケティングと広告のニーズの高まりが、商業印刷市場の主な推進力です。
チラシ印刷業のM&Aの背景と動向
近年、チラシ印刷業界におけるM&A(合併・買収)の動向は、デジタル化の進展と競争激化の影響を受けています。
### 背景
デジタル化の進展
印刷業界は、従来の紙媒体が主流であったが、デジタルコンテンツの需要が増加しています。オンライン媒体や電子書籍などの需要の変化により、印刷関連サービス業界も従来の印刷物に加え、デジタルコンテンツの制作や配信などのサービスを提供するようになっています。
競争激化
印刷業界は、大手企業が多く、中小企業は競争に苦しんでいます。中小企業同士がM&Aを行うことで、生産性の向上や事業拡大を図ることが期待されています。
### 動向
同業他社のM&A
中小企業同士のM&Aが増加しています。例えば、大王製紙が三浦印刷をTOBにより子会社化し、顧客層や印刷領域が異なるため、シナジー効果が見込まれています。
デジタルコンテンツへの対応
デジタルコンテンツの制作や配信に特化した企業とのM&Aも増加しています。例えば、デジタル印刷会社とグラフィックデザイン会社の合併により、新たな市場を開拓しました。
海外企業とのM&A
海外企業とのM&Aも増加傾向にあります。例えば、朝日印刷がマレーシアのHarleigh Sdn.Bhd.およびShin-Nippon Industries Sdn.Bhd.の株式65.0%を取得し、子会社化しました。
### 成功事例
市場シェアの拡大
M&Aにより、高い確率で市場シェアを拡大することが可能です。例えば、大日本印刷がシミックCMOの株式の過半数を取得し、ヘルスケアソリューション部門の開発を進めています。
コストメリット
資材などの購入を共通化することでコストメリットが生み出され、収益の改善が可能です。例えば、プリントネットがウイズプリンティングの印刷・製本事業を譲り受け、関西地区におけるサービス強化および運送コスト低減を目指しています。
チラシ印刷業のM&A事例
### 印刷業界のM&A事例
印刷業界では、既存事業強化や海外進出を目的としたM&Aが増えています。
#### 1. 大王製紙と三浦印刷
大王製紙株式会社はTOBにより、三浦印刷株式会社の株式を取得し子会社化することに成功しました。大王製紙は、傘下企業にダイオープリンティングを持ち、同社はスーパーや通販会社に対してチラシ等の販売をしています。一方の三浦印刷は、上場企業や金融機関などのパンフレットやカタログを中心に制作している印刷会社です。
#### 2. 日本創発グループと飯島製本
日本創発グループは、日本最大級の規模を誇る製本企業の飯島製本を、株式交換により完全子会社としました。このM&Aは、お互いが持つ設備や知識を活用することで製品価値を高め、ワンストップサービスを強化し、顧客の要望する製品への対応力を向上させることにより、お互いの企業価値を向上させるのが狙いです。
#### 3. 大日本印刷とシミックCMO
大日本印刷は、シミックCMOの株式の過半数をM&Aにより取得しました。大日本印刷は印刷業で培った技術を転用し、近年はAIを用いた再生医療分野に積極的に参入しています。一方、シミックCMOは国内を中心に6つの製造拠点を持ち、製薬会社等から注射剤や固形製剤等を受託生産している会社です。
#### 4. プリントネットとウイズプリンティング
プリントネット株式会社は、株式会社ウイズプリンティングの印刷・製本事業を、事業譲渡により譲り受けました。プリントネット株式会社は、インターネット印刷通販事業を営み、全国に5つの拠点を持つ企業です。一方、ウイズプリンティングは大阪で印刷、製本を行っていましたが、スマートフォンの普及やデジタル化の影響で業績が悪化し、民事再生の手続きを申請していました。
#### 5. 西川印刷によるバッハベルクの買収
西川印刷は、バッハベルクの全ての株式を取得し、子会社化しました。西川印刷はKYORITSUのグループ会社であり、KYORITSUはグループ経営戦略策定・管理を行う企業です。対象会社のバッハベルクは、テレビショッピング番組・CM・WEB動画・商品案内ビデオ制作などを行う企業です。
#### 6. 朝日印刷によるKinta Press & Packaging(M)Sdn.Bhd.の買収
朝日印刷は、Kinta Press & Packaging(M)Sdn.Bhd.の株式を取得し、子会社化しました。朝日印刷は、印刷・包装資材の製造、販売を行う企業です。対象会社のKinta Press & Packaging(M)Sdn.Bhd.は、産業用包装材、箱、ラベルなどを取り扱う印刷会社です。
#### 7. 凸版印刷によるDECOTEC PRINTING, S.A.U.の買収
TOPPAN EUROPE GmbHは、スペインのDECOTEC PRINTING, S.A.U.の株式を過半数取得し、子会社化することに成功しました。凸版印刷は、日本最大級の印刷会社であり、DECOTEC PRINTINGはカタルーニャ州の建装材メーカーで、家具や床などに用いる印刷紙を製造しています。
#### 8. 凸版印刷によるInterFlex Groupの買収
凸版印刷は、Interflex Investment Partners, LLCの100%子会社で、食品などの軟包装事業を展開している企業であるInterFlex Groupを子会社化することに成功しました。これにより、凸版印刷は、米国で生産する世界トップシェアの透明蒸着バリアフィルム「GL BARRIER」と、InterFlex Groupが持つ製袋などのコンバーティング拠点を合わせて、欧米市場で包装材料供給から最終製品までワンストップで提供できるようになりました。
#### 9. ナカバヤシによる八光社の買収
ナカバヤシは八光社を買収しました。ナカバヤシはビジネス印刷物を得意とし、ラベル印刷も手掛ける印刷会社で、八光社はラベル印刷を得意分野とし、需要が高まっている小ロットのラベル印刷にも対応しています。
#### 10. 共立印刷による西川印刷の買収
共立印刷は西川印刷を買収しました。共立印刷は、関東を拠点に事業を手掛ける総合印刷会社で、西川印刷は九州を拠点とした印刷会社でダイレクトメールのほか、情報に基づいて内容を変更しながら印刷する(バリアブル印刷)設備・技術力を備えています。
#### 11. 光村印刷による新村印刷の買収
光村印刷は新村印刷の全株式を取得して、完全子会社化することを公表しました。新村印刷は、商業印刷や証券印刷等の印刷事業を主とする印刷会社で、包装・パッケージ分野においても強みを持っており、高品質な製品生産により一定数のシェアを維持しています。
チラシ印刷業の事業が高値で売却できる可能性
印刷業界のM&A動向を分析すると、チラシ印刷業の事業が高値で売却できる可能性はあるものの、具体的な条件や要因が多く影響します。以下に大切なポイントをまとめます。
– 市場規模の縮小: インターネットの普及により、紙媒体の印刷需要が減少しています。
– M&Aの目的: 海外進出や事業領域の拡大を目指す動きがあり、M&Aはこれらの目的に活用されています。
– 企業価値評価: M&Aの取引価格には、売上高や従業員などの要素が影響します。企業価値評価を行うと大まかな目安を付けることができます。
– 売却メリット: 売却側は買い手の資本力を活用して経営安定、後継者問題の解決、従業員の雇用維持、経営者の個人保証や借入金の解消、売却益の獲得などが期待できます。
– 買収メリット: 買い手は新たな技術の獲得、スムーズな新規事業立ち上げ、設備投資の低減、事業規模の拡大が期待できます。
– 価格相場: 大規模であれば億単位、小規模であれば数千万円程度の取引価格になることが多いです。
– 特定の強みを持つ企業: 資格や高い技術力を持つ人材を抱えているか、特定分野で大きなシェアを誇っているか、魅力的な取引先を抱えているかなどが売却価格に影響します。
これらの要因を考慮すると、チラシ印刷業の事業が高値で売却される可能性はあるものの、具体的な価格は企業価値評価や取引先の状況に大きく依存します。
チラシ印刷業の企業が会社を譲渡するメリット
印刷会社がチラシ印刷業を譲渡するメリットは以下の通りです:
– 従業員の雇用を確保できる:事業承継を行えば、従業員の雇用を守ることができます。経営不振や倒産を避けることで、従業員が職を失うことを防ぐことができます。
– 経営者利益を確保できる:事業売却による売却益を得ることができます。廃業を免れ、莫大な負債を抱えずに事業を他社に引き継ぐことができます。
– 後継者問題を解消できる:後継者がいなくても、他社に効率的に事業を引き継ぐことができます。後継者問題が解消され、事業の継続が保証されるため。
– 優秀な人材を確保できる:売り手企業の人材も引き継がれ、業務に適した優秀な人材を確保できます。新規事業立ち上げに必要な人材を迅速に確保することができます。
– 新規事業を簡単に開始できる:事業承継を行えば、莫大な資金や時間を節約し、新規事業を迅速に開始できます。買収金額のみで事業を開始できるため。
– コストやリスクを抑えながら事業に参入できる:既存の設備や人材を活用できるため、コストやリスクを抑えながら事業に参入できます。デジタル化推進や生産性向上も可能です。
チラシ印刷業の事業と相性がよい事業
チラシ印刷業の事業と相性がよい事業は以下の通りです。
1. 出版印刷:
– 書籍や雑誌の印刷:チラシ印刷と同様に、出版印刷も宣伝や情報提供に役立つ印刷物を扱います。出版印刷は、出版社や新聞社が発行する商業出版物を扱う分野です。
2. 包装資材の製造:
– パッケージやプロダクトの印刷:チラシ印刷と同様に、包装資材やパッケージの印刷も行われます。具体的には、名刺や封筒などの小物の印刷も含まれます。
3. 商業印刷:
– チラシやパンフレットの印刷:チラシ印刷業と最も相性がよい事業です。チラシやパンフレットなどの宣伝用印刷や業務用印刷を扱います。
4. オンデマンド印刷:
– 写真やメニュー・クーポンの印刷:オンデマンド印刷は、需要に応じて印刷する方式で、写真やメニュー・クーポンの印刷なども行います。
5. 電子部品や布地の印刷:
– 紙以外への印刷:市場規模の縮小に対応するため、紙以外への印刷やインキへの工夫が行われています。
これらの事業は、チラシ印刷業と相性がよい事業であり、各分野で活用することで、事業の拡大や競争力の向上が期待できます。
チラシ印刷業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、譲渡企業様から手数料を一切いただかないため、コストを抑えたM&Aを実現できます。また、豊富な成約実績を誇り、これまで多くの企業様にご満足いただいております。さらに、チラシ印刷業の業界にも知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確なサポートが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。