目次
アウトソーシング業の市場環境
2024年アウトソーシング業の市場環境
– 収益と成長率:
– ITアウトソーシング市場の収益は2024年に6億9,890万米ドルに達し、2024年から2028年までの年間成長率(CAGR)は16.38%になると予想されています。
– アウトソーシングサービス市場規模は2024年に1兆200億米ドルと推定され、2029年には1兆3,900億米ドルに達すると予測され、予測期間中(2024~2029年)のCAGRは6.40%で成長する見込みです。
– 市場拡大要因:
– 運用経費の最小化重視の高まり、熟練労働力の不足、アウトソーシングサービスへの先端技術の導入が市場拡大に寄与しています。
– BPOサービス全体が拡大基調で推移しており、新型コロナウイルス関連業務の委託実績が官公庁・自治体においてアウトソース機運を高めていることもマーケット拡大にプラスに働いています。
– 主要ベンダーとサービス:
– 主なベンダーは、Accenture, TATA Consultancy Services Limited, Capgemini, Cognizant, HCL Technologies Limitedなどです。
– BPOサービスは、単体のサービスだけでなく、抜本的な事業体制の見直しに不可欠な戦略立案などのコア業務やコンサルティング業務までを一気通貫で提供しています。
– 新興サービスと拠点:
– ITアウトソーシングの主要動向には、最先端技術や人気の技術スタック、ITアウトソーシング新興国などが含まれます。
– BPOセンターの拡大も進んでおり、例えばVaranium Cloud Limitedはマハラシュトラ州サワントワディに2つ目のオフィスとBPOセンターを設立し、データ会計、身元確認、債権回収などのサービスを提供しています。
アウトソーシング業のM&Aの背景と動向
アウトソーシング業界のM&Aは、企業のグローバル化や変革サイクルの高速化、デジタル化の進展、労働人口減少や人材不足、労働形態の柔軟化・テレワークの拡大などを背景として活発化しています。
グローバル化と変革サイクルの高速化により、企業は外部に業務を委託することで、経営資源を有効に活用し、本業となる新製品の開発やマーケティングに注力することができます。アウトソーシングは、企業の経営において重要な役割を果たしており、ノンコア業務やルーチンワーク、専門的な技術や知識が必要な業務を外部委託することで、時間的・費用的なコスト削減が可能です。
デジタル化の進展は、RPA(ロボティクス・プロセス・アウトソーシング)やAIの技術革新により、従来ヒトが担ってきた業務がアウトソーシングされやすくなっています。これにより、より一層コストの削減と業務効率化・品質向上が見込めるアウトソーシング業は今後も拡大すると考えられています。
労働人口減少と人材不足は、アウトソーシング業界の需要拡大の要因となり、企業は外部の人材サービス会社を買収して人材獲得・採用力を強化する動きが活発です。例えば、株式会社アウトソーシングがオランダの人材サービス会社OTTO Holding B.V.を買収し、欧州での人材採用ネットワークを構築しました。
労働形態の柔軟化とテレワークの拡大により、アウトソーシング企業はサービス提供分野の拡大やサービスの高度化を目的として活発なM&Aを展開しています。一般企業がアウトソーシング企業をグループ内に取り込み全体最適化を図ろうとする動きも盛んで、人とAI・ロボットの協働を初めとして、アウトソーシング業のあり方は今後さらに多様化していくと予想されます。
これらの動向から、アウトソーシング業界のM&Aは、企業の競争力向上、サービス提供範囲の拡大、人材力強化、データ・ノウハウの増強を目的として活発化し続けていることがわかります。
アウトソーシング業のM&A事例
アウトソーシング業のM&A事例をまとめます。
### アウトソーシングがサンキョウ・ロジ・アソシエートをM&Aした事例
アウトソーシングはサンキョウ・ロジ・アソシエートおよびSLAグループを子会社化し、営業力や採用力を活かして成長加速と生産性向上を図りました。
### アウトソーシングがISC就職支援センターをM&Aした事例
アウトソーシングはISC就職支援センターの全発行済株式を取得し、自社のリソースを活用して物流系事業の拡大を目指しました。
### アウトソーシングがジーエスケーとグランドスタッフをM&Aした事例
アウトソーシングはジーエスケーとグランドスタッフをインターライフホールディングスから譲受し、グループ内での人材流動化と外国人や高齢者人材の活用を進めました。
### アウトソーシングテクノロジーがDYMと資本業務提携した事例
アウトソーシングテクノロジーはDYMと資本業務提携し、北陸・中国・九州での採用活動を強化しました。
### アシードホールディングスがロジックイノベーションをM&Aした事例
アシードホールディングスはロジックイノベーションの全株式を取得し、物流センターの創設と商品保管業務の拡大を目指しました。
### インバウンドテックがシー・ワイ・サポートをM&Aした事例
インバウンドテックはシー・ワイ・サポートの全株式を取得し、コールセンターサービスやマーケティングリサーチのBPO事業を強化しました。
### アウトソーシングがエス・エス産業をM&Aした事例
アウトソーシングはエス・エス産業の全株式を取得し、愛知・九州エリアの対応力強化と外国人労働者・習熟作業者の活用領域の拡大を目指しました。
### アウトソーシングがCpl Resources plcをM&Aした事例
アウトソーシングはCpl Resources plcの全株式を買付し、優良な顧客基盤や幅広い人材サービスの取り込みを目指しました。
### アウトソーシングがHorizonOne Recruitment Pty LtdをM&Aした事例
アウトソーシングはHorizonOne Recruitment Pty Ltdの全株式を現地子会社が取得し、公共系アウトソーシング分野の事業拡大を目指しました。
アウトソーシング業の事業が高値で売却できる可能性
アウトソーシング業の事業が高値で売却できる可能性は、以下の点にあります。
– 優秀なエンジニアの在籍: SES業界では、優秀なエンジニアが多く在籍する企業ほど、高い金額で売却できる可能性があります。優秀なエンジニアが多く在籍する企業は、自社サービスを開発する事業会社や大手のSIer企業、SES会社など多くの企業からニーズがあります。
– エンジニアのスキルとマッチする買い手: 在籍エンジニアと買い手の求めるスキルがマッチすると、高い価格でSES事業を売却できる可能性があります。実際に行われたSESの事業・会社の売却事例を見れば、SESの会社・事業を売却する際の相場や手法をイメージしやすくなります。
– 企業価値の評価: 企業価値評価を行えば、自社売却時の取引価格を推定できます。企業価値は株主価値と債権者価値を合計し、株主価値は「株主に帰属するキャッシュフローの現在価値合計額」を指し、債権者価値は「債権者に帰属するキャッシュフローの現在価値合計額(≒純有利子負債額)」を指します。
– 営業利益の加算: SES事業会社の売却相場は、時価純資産額に数年分の営業利益を加算することで簡易的に目安の金額を算出できます。加算する数年分の営業利益のことを営業権(のれん代とも言う)と言い、SES事業会社の売却では3〜5年分で計算することが一般的です。
– 競合度合いと市場成長性: 最終的なSES事業・会社の売却価格は、競合度合いや業種、市場の成長性などをベースに算出した「企業価値」や「事業価値」を基準に決定します。
アウトソーシング業の企業が会社を譲渡するメリット
アウトソーシング業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです:
– 現金の獲得: 会社を売却することで、相応の現金を獲得することができます。
– 事業の選択と集中: 特定の事業のみを売却することで、存続させたい事業をそのまま継続し、新たな事業を始めることが可能です。
– 財務の健全化: 事業譲渡で得た資金を負債にあてることで、財務面が改善されます。
– 後継者不在の解決: 経営者の引退にあたって、事業を他社に譲渡することで事業承継が実現し、売却益が得られるため、経営者への退職金とすることも可能です。
– 組織再編の実現: 一部の事業のみを譲渡することで、会社の独立性を保ったまま組織再編を行うことができます。
– リスクの低減: 負債や簿外債務を含めて引き継ぐリスクが低く、不要な資産や負債を除外することが可能です。
– 節税効果: のれん相当額を5年償却の損金扱いが可能で、法人税の節約につながります。
– 新規事業の進出: 軌道に乗っている事業を買い取れば、手間・時間を大幅に削減することが可能です。
アウトソーシング業の事業と相性がよい事業
アウトソーシング業の事業と相性がよい事業は以下の通りです。
### 1. IT関連の事業
– システム開発: IT業界では、システム開発業務やSaaSベンダーなどのITビジネスで、アウトソーシングが広く行われています。バックオフィス関連の業務や特定のシステム開発業務、カスタマーサポート、インサイドセールスなどが含まれます。
– IT管理: IT管理業務、社内ヘルプデスク、社内ネットワーク構築や運用・保守、セキュリティ構築・維持などが含まれます。
### 2. 商品の製造・販売
– OEM事業: 商品の製造・販売をメインビジネスとする企業では、OEM事業の展開が盛んに行われています。製品企画・開発は自社で行い、製造のみをアウトソーシングすることが多くあります。
### 3. 店舗型ビジネス
– 原価管理: 実店舗の運営を要するサービス業・飲食業などのビジネスにおいて、複数の店舗における原価管理や在庫管理といった日常的に発生する業務をまとめてアウトソーシングすることが多くあります。
### 4. バックオフィス業務
– 採用業務: 人事・総務・経理などの部門で、採用業務や勤怠管理、年末調整、経費処理などのバックオフィス業務が含まれます。
これらの業界・業種は、アウトソーシングのメリットを最大限に活用することができます。
アウトソーシング業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
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株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。