JSRのTOB受け入れについて

JSRは2023年6月26日、官民ファンドである産業革新投資機構(JIC、東京都港区)によるTOB(株式公開買い付け)を受け入れると発表いたしました。成長資金を確保し国際競争力を高めるとともに、半導体材料業界の再編加速につなげるねらいがございます。JICはTOBにより全株式の取得を目指しており、買付代金の総額は最大9039億円とされております。

買付予定の開始は2023年12月下旬をめどとしており、国内外の競争当局などの承認を得たうえで正式に行われる予定です。もしTOBが成立いたしましたら、JSRは東証プライム市場から上場廃止となります。

TOB主体と買付価格

今回のTOB主体は、JICの傘下企業が設立したJICC‐02(東京都港区)でございます。買付価格は1株につき4350円となり、これはTOB公表前営業日の終値3234円に34.51%のプレミアムを加えた水準です。買付予定数は2億779万7073株で、買付予定数の下限は所有割合66.67%にあたる1億3853万1400株と発表されています。JSRは本TOBに賛同の意向を示しており、株主に対して応募を推奨しております。

JSRの沿革と事業方針

JSRは1957年に政府と民間の出資で合成ゴムの国産化を目的とする国策会社「日本合成ゴム」として発足いたしました。その後、1969年に純民間会社へ移行し、1970年代に半導体材料事業に進出。フォトレジスト(感光樹脂)分野において世界的に有数のメーカーへと成長を遂げています。

東証への上場は1970年に2部、1971年には1部に指定替えとなり、2022年4月からは東証プライム市場に移行しております。創立40周年を迎えた1997年には、社名を現在の「JSR」へ変更。2022年には、祖業の合成ゴム事業をENEOSに売却し、半導体材料事業に一層注力する姿勢を鮮明にいたしました。

半導体市場をめぐる背景

半導体は経済安全保障推進法において特定重要物資の一つに指定されております。トヨタ自動車やソニーグループなどの出資で次世代半導体の国産化を目指す新会社「ラピダス」(東京都千代田区)が設立されるなど、政府も多額の資金支援を行っている分野です。こうした状況下で、半導体の材料分野における技術開発競争はますます激化し、企業同士の再編が活性化していると考えられます。

追記事項

  • 2023/08/30 公開買付代理人に野村証券を選定したと発表。
  • 2023/12/19 TOB開始が2024年2月下旬以降になると発表。
  • 2024/03/18 TOBを3月19日から4月16日まで実施すると発表。決済の開始日は4月23日とされております。

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