- 1. 日本調剤<3341>による調剤薬局19店舗展開の薬栄・新栄メディカル・センチュリーオブジャスティス買収
- 2. 明光ネットワークジャパン<4668>による個別指導塾「明光義塾」フランチャイジー・ケイライン買収
- 3. 武田薬品工業<4502>による「湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)」運営事業譲渡
- 4. 東京センチュリー<8439>によるアマダホールディングス<6113>傘下のアマダリース買収
- 5. 廣済堂<7868>によるゴルフ場関連会社3社を富士(神奈川県横浜市)へ譲渡
- 6. 朝日インテック<7747>によるフッ素樹脂コーティングの日本ケミカルコート買収
- 7. 総合メディカル<4775>によるみよの台薬局グループ6社の買収
- 8. 相鉄ホールディングス<9003>による砂利採取の相鉄鉱業を松上産業へ譲渡
- 9. 東京エレクトロンデバイス<2760>、FA関連事業のファースト(神奈川県大和市)買収
- 10. 相鉄ホールディングス<9003>、温浴・温泉事業をホットネス(東京建物<8804>傘下)へ売却
- 11. 石川製作所<6208>による防衛航空機向け搭載電子機器メーカーの関東航空計器買収
- 12. 大阪ソーダ<4046>による日東化工(神奈川県寒川町)株式30%取得
- 13. 東芝機械<6104>(現:芝浦機械)による油圧機器メーカー・ハイエストコーポレーションをナブテスコ<6268>へ譲渡
- 14. 東京TYフィナンシャルグループ<7173>(現:きらぼしフィナンシャルグループ)と新銀行東京の経営統合
- 15. 富士通<6702>による携帯電話事業をポラリス・キャピタル・グループへ売却
- 16. 東海東京フィナンシャル・ホールディングス<8616>による東海東京証券横浜支店の金融商品取引業一部譲渡
- 17. 富士通<6702>によるPC研究・開発の富士通クライアントコンピューティングをレノボグループに譲渡
- 18. 揚工舎(ようこうしゃ)<6576>による有料老人ホーム運営のトータルケア陽だまり買収
- 19. 大和ハウス工業<1925>による介護付有料老人ホーム運営の東電ライフサポート買収
- 20. 田淵電機<6624>による子会社テクノ電気工業のMBO(経営陣買収)での売却
- 21. 東芝<6502>による東芝病院の医療法人社団緑野会への譲渡
- 22. 東亜建設工業<1885>による生コンクリート製造の東亜コンクリート(神奈川県川崎市)を三好商会に売却
- 23. 東芝<6502>による映像事業の子会社・東芝映像ソリューションを中国ハイセンスへ譲渡
- 24. 台湾Walsin傘下の釜屋電機による双信電機<6938>のTOBで子会社化
- 25. 台湾Walsin傘下の釜屋電機、子会社化した双信電機<6938>をTOBで完全子会社化
- 26. 鉄人化計画<2404>によるラーメン事業「直久」買収
- 27. 米投資ファンドEVO FUNDによる低価格ホテル運営のレッド・プラネット・ジャパン<3350>子会社化
- 28. 日本電話施設<1956>によるセイコーエプソン傘下・トヨコムシステムズ買収
- 29. 不二サッシ<5940>、産廃処理事業のエコマックス(神奈川県寒川町)をジャパンウェイストに譲渡
- 30. 東芝<6502>による映像事業からの撤退「東芝映像ソリューション」をハイセンスへ売却
- 31. 台湾Walsin傘下の釜屋電機、双信電機<6938>を再度TOBで完全子会社化
- 32. 鉄人化計画<2404>によるラーメン「直久」・フククルフーズ事業取得
- 33. 米投資ファンドEVO FUND、ホテル運営「レッド・プラネット・ジャパン<3350>」を子会社化
- 34. 日本電話施設<1956>によるセイコーエプソン<6724>子会社トヨコムシステムズ買収
- 35. 不二サッシ<5940>傘下のエコマックスをアサヒホールディングス<5857>へ譲渡
- 36. 横浜銀行(コンコルディアFG傘下)による神奈川銀行買収での地銀再編
- 37. グランディハウス<8999>、不動産売買・仲介のプラザハウス・ウェルカムハウスを買収
- 38. ココカラファイン<3098>による調剤薬局2店舗経営の薬宝商事買収
- 39. アーバネットコーポレーション<3242>による戸建・テラスハウス分譲のケーナイン買収
- 40. サンオータス<7623>によるガソリンスタンド運営の若葉石油買収
- 41. トライアンフコーポレーション<3651>によるアパレル販売代行のアドバンス株式交換
- 42. サイバー・通信分野をめぐる神奈川県案件(横串的事例)
- まとめと展望
1. 日本調剤<3341>による調剤薬局19店舗展開の薬栄・新栄メディカル・センチュリーオブジャスティス買収
売り手:薬栄、新栄メディカル、センチュリーオブジャスティス(1都3県) 日本調剤は2019年11月18日、調剤薬局を運営する薬栄、新栄メディカル、センチュリーオブジャスティスの3社の株式を取得し、子会社化することを決議しました。3社はいずれも東京都中心に、千葉県、埼玉県、神奈川県の1都3県で調剤薬局19店舗を展開しています。今回の買収により、日本調剤は首都圏の店舗網をさらに拡充する狙いを持っています。 なお、取得価額は非公表で、取得予定日は2019年12月25日とされました。調剤薬局業界においては、医療費抑制や地域包括ケアシステムへの対応が求められており、スケールメリットとサービスの質的向上を目指す動きが加速しています。日本調剤のような大手が地域密着の中小規模薬局を取り込む動きは、今後も続くとみられています。
2. 明光ネットワークジャパン<4668>による個別指導塾「明光義塾」フランチャイジー・ケイライン買収
売り手:ケイライン(東京都、神奈川県、静岡県、愛知県) 明光ネットワークジャパンは2018年4月3日、同社が展開する個別指導塾「明光義塾」のフランチャイジーであるケイラインを子会社化すると発表しました。ケイラインは東京都、神奈川県、静岡県、愛知県で計42教室を運営しており、売上高12億6000万円、営業利益がマイナス1億2000万円、純資産3億100万円という状況でした。 明光ネットワークジャパンは、直営教室とフランチャイズ教室の一体運営によるチェーン全体の競争力向上を図っており、有力フランチャイジーであるケイラインを取り込むことで運営効率の向上と生徒満足度のさらなる向上を目指しています。取得価額は6億600万円で、取得予定日は2018年4月6日とされました。
3. 武田薬品工業<4502>による「湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)」運営事業譲渡
売り手:武田薬品工業(神奈川県藤沢市所在施設の運営事業) 武田薬品工業は2022年12月21日、神奈川県藤沢市にある製薬関連研究施設「湘南ヘルスイノベーションパーク(通称:湘南アイパーク)」の運営事業を、産業ファンド投資法人と三菱商事に譲渡すると決定しました。譲渡価額は5億1400万円、譲渡予定日は2023年4月1日です。 湘南アイパークは2011年に武田の湘南研究所として開設された後、2018年より外部企業に開放する形で日本初の製薬系サイエンスパークとして大きく舵を切りました。現在では150を超える企業・団体が入居し、医療・ベンチャーキャピタル・自治体・大学など多彩な組織が集結しており、オープンイノベーションの拠点として存在感を高めています。武田薬品工業は中立的なイノベーション創出の場とするため、自社が担ってきた運営権を手放し、多様な主体が協力しやすい環境を整える意図があります。
4. 東京センチュリー<8439>によるアマダホールディングス<6113>傘下のアマダリース買収
売り手:アマダホールディングス(神奈川県伊勢原市の子会社アマダリース) 東京センチュリーは2018年11月14日、アマダホールディングス100%子会社でリース事業を行うアマダリースの株式60%を取得して子会社化することを発表しました。アマダリースは1997年設立以降、板金機械器具や切削機械器具などを扱っており、アマダHDは工作機械で高いシェアを誇ります。 東京センチュリーは海外でのベンダーファイナンス事業に強みがあり、長年アマダHDとは海外協業を続けてきました。今回の子会社化により、製造現場向けリース事業をさらに拡大し、グローバルベンダーファイナンス体制を強化すると見られています。取得価額は非公表で、予定日は2019年3月末となっています。
5. 廣済堂<7868>によるゴルフ場関連会社3社を富士(神奈川県横浜市)へ譲渡
売り手:廣済堂(東京都港区の子会社:廣済堂開発など3社) 廣済堂は2013年3月27日、子会社でゴルフ場関連事業を手がける3社(廣済堂開発、千葉廣済堂カントリー倶楽部、廣済堂埼玉ゴルフ倶楽部)を富士へ譲渡すると発表しました。3社はいずれも関東圏でゴルフ場を運営していましたが、廣済堂は事業ポートフォリオの再編と財務体質強化の一環としてゴルフ関連事業から撤退する道を選びました。 譲渡価額は26億円、譲渡日は非公表となっています。ゴルフ業界では利用客減少や固定費負担が重く、再編が続く中で売却という選択肢が取られるケースも珍しくありません。廣済堂は経営資源を印刷・メディア関連などの主力領域へ集中させる狙いです。
6. 朝日インテック<7747>によるフッ素樹脂コーティングの日本ケミカルコート買収
売り手:日本ケミカルコート(神奈川県相模原市) 朝日インテックは2017年8月10日、フッ素樹脂コーティングの開発・製造を手がける日本ケミカルコートを子会社化しました。取得価額は2億円と公表されています。ステンレス加工技術を強みとする朝日インテックに対して、日本ケミカルコートの樹脂塗装技術は相補的であり、医療機器分野を中心とした品質向上や技術開発につなげる考えです。 朝日インテックはガイドワイヤやカテーテルなど、循環器系医療器具で圧倒的シェアを誇る企業です。日本ケミカルコートが持つ先端コーティング技術を取り込むことで、製品開発スピードや性能向上を狙います。
7. 総合メディカル<4775>によるみよの台薬局グループ6社の買収
売り手:御代の台薬局など6社(東京都北区ほか) 総合メディカルは2016年11月24日、みよの台薬局グループ6社を買収し子会社化すると発表しました。対象は御代の台薬局(東京都北区)、本木薬局(東京都足立区)、要町薬局(東京都豊島区)、ツカサ調剤薬局(埼玉県川口市)、光裕(神奈川県藤沢市)、三平(群馬県高崎市)の計6社で、総額81億2000万円という大型ディールです。 みよの台薬局グループは91店舗を運営し、在宅医療にも力を入れています。総合メディカルは在宅訪問服薬指導などのノウハウを取り込み、地域包括ケアシステムの更なる推進を図る方針です。神奈川県内にも複数店舗を保有しているため、総合メディカルの関東エリア強化に直結します。
8. 相鉄ホールディングス<9003>による砂利採取の相鉄鉱業を松上産業へ譲渡
売り手:相鉄ホールディングス(横浜市の子会社:相鉄鉱業) 相鉄ホールディングスは2016年3月24日、砂利採取事業を行う相鉄鉱業を松上産業(神奈川県平塚市)に譲渡すると発表しました。相鉄鉱業は神奈川県内で砂利事業を営んでいましたが、近年は赤字が続き、重機やプラントの老朽化更新費用が重い負担となっていました。 相鉄グループとしては鉄道事業を中核としながら不動産など複合的に手がけていますが、砂利採取はシナジーが薄い非中核事業と判断され、譲渡に踏み切った形です。譲渡価額は非公表ですが、事業継続には事業承継先が不可欠とされていました。
9. 東京エレクトロンデバイス<2760>、FA関連事業のファースト(神奈川県大和市)買収
売り手:ファースト(神奈川県大和市) 東京エレクトロンデバイスは2018年3月29日、FA(ファクトリーオートメーション)関連事業を営むファーストの全株式を取得し子会社化すると決議しました。ファーストは1982年設立で、画像処理技術を生かした物体形状認識ソフトや画像入力ボードを開発する実績があります。 東京エレクトロンデバイスは電子部品や半導体などの販売事業を担い、大手半導体メーカーの代理店としての存在感も大きい企業です。画像処理技術やFAソリューションの充実によって、製造現場向けの高度なサービス提供を可能にする狙いがあります。取得価額は20億6600万円、取得予定日は2018年7月2日です。
10. 相鉄ホールディングス<9003>、温浴・温泉事業をホットネス(東京建物<8804>傘下)へ売却
売り手:相鉄不動産販売(横浜市) 相鉄ホールディングスは2013年11月28日、子会社で公衆浴場や不動産売買などを営む相鉄不動産販売の温浴・温泉事業を、東京建物のグループ会社ホットネス(東京都中央区)に譲渡すると発表しました。新設会社「ここち湯」を設立のうえ、同社株式をホットネスへ譲渡するスキームです。 相鉄不動産販売は神奈川県内にスーパー銭湯を4店舗運営していましたが、競争激化などで事業環境が厳しくなっていた背景があります。ホットネスは関東中心にスーパー銭湯7店舗を展開しており、温浴運営のノウハウを活かしてシナジーを得るとみられます。譲渡価額は非公表で、2014年2月28日付譲渡予定とされました。
11. 石川製作所<6208>による防衛航空機向け搭載電子機器メーカーの関東航空計器買収
売り手:関東航空計器(神奈川県藤沢市) 石川製作所は2017年8月9日、防衛航空機など向け電子搭載機器を製造販売する関東航空計器を子会社化すると発表しました。取得価額は4億7200万円、2017年8月31日の取得予定日としています。関東航空計器は1952年設立で航空自衛隊向けに多くの納入実績を持ち、電子技術を主体とする企業です。 一方、石川製作所は陸上自衛隊や海上自衛隊向けの製品を中心にメカニクス製造技術を強みとしてきました。両社の顧客や技術領域が補完関係にあるため、防衛関連ビジネスの拡大が期待されています。
12. 大阪ソーダ<4046>による日東化工(神奈川県寒川町)株式30%取得
売り手:三菱ケミカル(同社が保有する日東化工株36.3%の一部) 大阪ソーダは2018年2月19日、ゴムコンパウンドや土木用ゴムシートなどを製造する日東化工の株式を30%取得すると発表しました。三菱ケミカルが保有していた36.3%のうち31.3%を譲り受ける形です。日東化工はゴムコンパウンド技術を応用した製品の開発力が高く、半導体関連の研磨用キャリア製造などでも評価を得ています。 大阪ソーダは自社製品に応用できる技術を取り込むことで、新市場や新製品への展開を目指す方針です。なお、取得金額は非公表で、株式取得予定日は2018年3月23日です。
13. 東芝機械<6104>(現:芝浦機械)による油圧機器メーカー・ハイエストコーポレーションをナブテスコ<6268>へ譲渡
売り手:東芝機械(神奈川県座間市の子会社:ハイエストコーポレーション) 東芝機械は2015年3月3日、建設機械用油圧機器メーカーのハイエストコーポレーションをナブテスコに全株式譲渡すると発表しました。ハイエストコーポレーションは68億4000万円の売上高を誇る企業で、2008年に東芝機械が完全子会社化していましたが、装置産業に集中する方針を打ち出した東芝機械は非中核事業の譲渡を選択しました。 譲渡先のナブテスコは油圧機器分野で大きな事業規模を有しており、ハイエスト社の技術を取り込みつつ、さらなる規模拡大を目指す狙いがあります。譲渡価額は非公表、譲渡予定日は2015年4月1日です。
14. 東京TYフィナンシャルグループ<7173>(現:きらぼしフィナンシャルグループ)と新銀行東京の経営統合
売り手:新銀行東京(東京都新宿区) 東京TYフィナンシャルグループは2015年6月12日、新銀行東京との経営統合に向けた協議を進めると発表しました。当時、東京TYFGは東京都民銀行と八千代銀行の経営統合により2014年10月に発足したばかりでしたが、首都圏で中小企業支援を強化する目的で新銀行東京(東京都100%出資)との統合を模索しました。 2016年4月1日付で新銀行東京を株式交換により完全子会社化する方向性を打ち出し、最終的に東京都民銀行、八千代銀行、新銀行東京の3行が一体化し、その後2022年時点ではきらぼし銀行として統合完了に至っています。神奈川県北東部などを営業地盤とする八千代銀行のネットワークと組み合わせ、首都圏における地銀再編の例となりました。
15. 富士通<6702>による携帯電話事業をポラリス・キャピタル・グループへ売却
売り手:富士通(神奈川県川崎市の子会社:富士通コネクテッドテクノロジーズなど) 富士通は2018年1月31日、携帯電話事業を国内投資ファンドのポラリス・キャピタル・グループに売却すると発表しました。対象は富士通コネクテッドテクノロジーズ(川崎市)や携帯端末工場(兵庫県)の分社化後の新会社ジャパン・イーエム・ソリューションズなどです。譲渡価額は非公表ですが、本件により約300億円の当期利益を計上するとしています。 富士通としては、スマートフォン市場の激しい競争や、ITサービス・インフラ分野への集中を優先するため、従来から縮小傾向にあった携帯電話端末事業をファンドに委ねる形となりました。
16. 東海東京フィナンシャル・ホールディングス<8616>による東海東京証券横浜支店の金融商品取引業一部譲渡
売り手:東海東京証券(横浜支店の営業) 東海東京フィナンシャル・ホールディングスは2012年4月27日、グループの東海東京証券横浜支店における金融商品取引業を浜銀TT証券(横浜市)に譲渡すると決定しました。対象事業の売上高は505億円に上り、神奈川県を中心に幅広く金融サービスを提供してきた実績があります。 浜銀TT証券は東海東京フィナンシャル・ホールディングスと横浜銀行との合弁会社で、地域に根ざした証券ビジネスを展開中です。譲渡価額は8億円、譲渡日は2012年9月3日とされており、神奈川県内への金融サービス強化の一端として注目を集めました。
17. 富士通<6702>によるPC研究・開発の富士通クライアントコンピューティングをレノボグループに譲渡
売り手:富士通クライアントコンピューティング(神奈川県川崎市) 富士通は2017年11月2日、完全子会社でPC研究開発・製造を行う富士通クライアントコンピューティング(FCC、川崎市)の株式51%をレノボグループに、5%を日本政策投資銀行(DBJ)に譲渡すると発表しました。レノボに255億円、DBJに25億円という具体的な譲渡金額が示されています。 世界的にPC市場は低迷する中、富士通は「ITサービス・ソリューション」「インフラ」「デバイス」などの領域を再編し、PC部門はレノボの世界的供給網を活用して再編を図る戦略です。神奈川県川崎市に本拠を構えるFCCは純資産338億円規模という大きな存在でしたが、技術力と世界展開力をさらに高めるための資本提携となりました。
18. 揚工舎(ようこうしゃ)<6576>による有料老人ホーム運営のトータルケア陽だまり買収
売り手:トータルケア陽だまり(神奈川県南足柄市) 揚工舎は2023年5月17日、神奈川県内で有料老人ホームなど介護施設を運営するトータルケア陽だまりの全株式を取得し、子会社化することを発表しました。取得価額は非公表で、5月18日付で手続き完了予定です。 トータルケア陽だまりは2003年設立で、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅を含む4施設を南足柄市内で運営しています。揚工舎は介護事業を首都圏で拡大しており、本件によって神奈川県エリアでの事業基盤を強化し、在宅医療を含む多角的な介護サービス提供を狙います。
19. 大和ハウス工業<1925>による介護付有料老人ホーム運営の東電ライフサポート買収
売り手:東京電力(子会社:東電ライフサポート) 大和ハウス工業は2012年6月1日、東京電力の子会社で介護付有料老人ホームを運営する東電ライフサポートを買収し、同日付で社名を大和ハウスライフサポートへ変更しました。買収額は非公表です。 東電ライフサポートは首都圏3カ所(東京都練馬区・杉並区、神奈川県横浜市)で「もみの樹」という介護付有料老人ホームを運営しており、高齢者ケアが今後需要拡大するとの見込みから、大和ハウス工業が福祉事業を強化する狙いで買収に踏み切りました。
20. 田淵電機<6624>による子会社テクノ電気工業のMBO(経営陣買収)での売却
売り手:田淵電機(神奈川県秦野市のテクノ電気工業) 田淵電機は2018年11月6日、連結子会社でトランス・制御機器メーカーのテクノ電気工業を代表取締役である米倉睦夫氏に売却すると発表しました。田淵電機グループは事業再生ADR手続きの支援を受け、再建中であり、本件はシナジーの薄い事業の切り離しと位置付けられます。 テクノ電気工業は1974年設立で、神奈川県秦野市に本社を置き、主に各種トランスや制御機器を製造してきました。譲渡価額は非公表、2019年1月10日付の予定です。再建中の田淵電機にとって、事業ポートフォリオのスリム化が急務でした。
21. 東芝<6502>による東芝病院の医療法人社団緑野会への譲渡
売り手:東芝(子会社:東芝病院) 東芝は2017年10月31日、東京都品川区で運営する東芝病院の全事業を医療法人社団緑野会(神奈川県大和市)に譲渡すると発表しました。譲渡価額は当初未定とされていましたが、後に285億円と公表され、2018年4月1日に譲渡が完了しています。 東芝病院はかつて企業立病院としてグループ社員や地域医療を支援してきましたが、経営戦略の見直しに伴い医療事業を手放す決断に至りました。医療法人社団緑野会が直接運営することで、地域医療の一層の充実が期待されます。
22. 東亜建設工業<1885>による生コンクリート製造の東亜コンクリート(神奈川県川崎市)を三好商会に売却
売り手:東亜建設工業(子会社:東亜コンクリート) 東亜建設工業は2009年2月12日、子会社で生コン製造・販売を行う東亜コンクリートを三好商会(横浜市)に譲渡すると発表しました。譲渡価額は7億5000万円で、譲渡予定日は2009年3月24日です。 建設業界では自社工場を持つメリットが薄れつつあり、資源集中を図る企業が増えています。東亜建設工業も装置産業分野の再編や財務改善を重視し、専門企業に委ねる形となりました。
23. 東芝<6502>による映像事業の子会社・東芝映像ソリューションを中国ハイセンスへ譲渡
売り手:東芝映像ソリューション(神奈川県川崎市) 東芝は2017年11月14日、家庭用テレビなどの映像関連事業を行う東芝映像ソリューション(川崎市)の株式95%を、中国家電大手ハイセンスグループに譲渡すると発表しました。譲渡価額は約129億円とされ、2018年2月末以降に完了予定でした。 東芝映像ソリューションは海外勢との価格競争などで赤字が続き、東芝本体が社会インフラやエネルギー、半導体など成長事業にリソースを集中させる戦略の中で本件譲渡が決定しました。ハイセンスはグローバル市場でのテレビ販売に強く、日本市場でも知名度を高めるきっかけとなっています。
24. 台湾Walsin傘下の釜屋電機による双信電機<6938>のTOBで子会社化
売り手:双信電機(神奈川県大和市に拠点を持つ電子部品メーカー) 台湾Walsinグループの釜屋電機(神奈川県大和市)は2020年11月30日、電子部品中堅の双信電機<6938>(東証1部)に対してTOBを行うと発表しました。買付金額は最大35億9500万円で、買付価格は1株当たり460円とされました。同社は高周波部品やコンデンサーなどで独自技術を持ちます。 双信電機はTOBに賛同しており、筆頭株主(約40%保有)である日本ガイシがTOBに一部株式を応募し、最終的に釜屋電機が50.1%を取得する狙いでした。TOB後も上場維持が想定されていましたが、その後のさらなるTOB(2024年3月25日発表)により完全子会社化の方針が示され、上場廃止の流れへ至っています。
25. 台湾Walsin傘下の釜屋電機、子会社化した双信電機<6938>をTOBで完全子会社化
売り手:双信電機(神奈川県大和市) 前項に続き、2024年3月25日に釜屋電機は双信電機をTOBで完全子会社化すると公表しました。買付価格は1株あたり480円に上乗せされ、最大買付金額は約42億6000万円に設定されました。買付期間を2024年3月26日から5月9日とし、最終的に上場廃止を目指す方針が表明されています。 釜屋電機は双信電機の半数超を既に取得しており、更なる資本増強で光通信系デバイスなど、両社の技術融合による競争力強化を狙っています。神奈川県大和市の拠点を軸に先端技術の育成と海外展開が期待されます。
26. 鉄人化計画<2404>によるラーメン事業「直久」買収
売り手:直久(東京都中央区)/フククルフーズ(福岡市) 鉄人化計画は2020年3月25日、子会社化した直久を通じ、フククルフーズが運営するラーメン事業の一部を取得すると発表しました。鉄人化計画は「カラオケの鉄人」を首都圏で展開しており、近年は外食とのシナジーを狙った事業多角化を進めています。 都内繁華街を中心に「直久」ブランドで約20店舗を展開していた中で、厳しい業績が続くフククルフーズからの打診もあり、一部事業譲渡に合意しました。譲渡価額は非公表です。神奈川県にも1店舗のラーメン事業を保有しており、今後は鉄人化計画が店舗運営を引き継いで収益改善を狙います。
27. 米投資ファンドEVO FUNDによる低価格ホテル運営のレッド・プラネット・ジャパン<3350>子会社化
売り手:Red Planet Holdings Pte. Ltd.(シンガポール) 米投資ファンドのEVO FUNDは2022年8月19日、レッド・プラネット・ジャパンに対してTOBを実施し、同社株式70.5%を取得すると発表しました。買付価格は1株につき11円で、終了後もレッド・プラネット・ジャパンは東証スタンダード市場に上場維持となる見込みです。 レッド・プラネット・ジャパンは神奈川県大和市で音楽関連事業として設立されましたが、途中でホテル運営へ転換。コロナ禍で訪日外国人客が激減し苦境に立たされていました。今回のTOBにより資金確保と再建を目指します。レッド・プラネットは東京・五反田や札幌でホテルを運営しています。
28. 日本電話施設<1956>によるセイコーエプソン傘下・トヨコムシステムズ買収
売り手:セイコーエプソン(長野県) 日本電話施設は2011年12月26日、セイコーエプソン傘下でモバイル機器性能評価事業を行うトヨコムシステムズ(神奈川県寒川町)の全株式を取得し子会社化すると発表しました。取得価額は非公表ですが、2012年3月31日付で実施予定とされました。 モバイル系事業との連携強化を狙う日本電話施設としては、携帯電話や無線通信関連の評価・検証技術を持つトヨコムシステムズの買収が、スマートデバイスなどの受託開発領域で強みを発揮できる契機となる見込みです。
29. 不二サッシ<5940>、産廃処理事業のエコマックス(神奈川県寒川町)をジャパンウェイストに譲渡
売り手:不二サッシ(子会社:エコマックス) 不二サッシは2010年7月30日、子会社で産業廃棄物の中間処理事業を営むエコマックスをジャパンウェイスト(神戸市)へ9億円で譲渡すると発表しました。処理プラントなど多額の投資が必要な一方、建築金物やサッシ関連事業に集中する不二サッシの方針とも離れていたことが背景にあります。 産業廃棄物事業はストック型ビジネスとして安定収益が見込める一方、設備投資負荷が大きい分野のため、このように専門会社へ譲渡する動きが続いています。
30. 東芝<6502>による映像事業からの撤退「東芝映像ソリューション」をハイセンスへ売却
売り手:東芝映像ソリューション(神奈川県川崎市) 本件はすでに前述と重複しますが、改めて2017年11月14日に発表された東芝映像ソリューション株95%をハイセンスへ129億円で譲渡する案件は、東芝が赤字となっていたテレビ事業を切り離す大きな動きとして注目されました。 川崎市を拠点とする映像関連部門は長らく国内テレビメーカーの一角を担いましたが、世界市場の競争激化と東芝の構造改革の中で売却が決定しました。
31. 台湾Walsin傘下の釜屋電機、双信電機<6938>を再度TOBで完全子会社化
売り手:双信電機(神奈川県大和市) 2024年3月25日に釜屋電機は双信電機の完全子会社化を目的にTOBを開始すると発表し、2020年の初回TOBとは別途、今回の買付価格は1株あたり480円に引き上げられました。これにより上場廃止を含むグループ再編が進む見通しで、電子部品領域のさらなる再編例となります。 神奈川県大和市に生産拠点を持つ双信電機は高周波部品などに強く、海外勢の参入激化のなかで台湾大手との連携強化が不可欠とされています。
32. 鉄人化計画<2404>によるラーメン「直久」・フククルフーズ事業取得
売り手:直久(東京都中央区)/フククルフーズ(福岡市) こちらも先述していますが、鉄人化計画が「直久」を通じてフククルフーズのラーメン事業を取得した案件(2020年4月1日付)は、神奈川県を含む関東圏での展開を含みます。これによりラーメン店舗と「カラオケの鉄人」ブランドのクロスプロモーションなど、多角化の可能性を探っています。譲渡価額や店舗数は非公表です。
33. 米投資ファンドEVO FUND、ホテル運営「レッド・プラネット・ジャパン<3350>」を子会社化
売り手:Red Planet Holdings(シンガポール) すでに述べた通り、コロナ禍で経営難に陥ったレッド・プラネット・ジャパンの株式70.5%を取得する案件です。2013年頃にホテル業界へ進出し、神奈川県大和市に法人登記を持つ企業として注目を集めましたが、現在は東京都・札幌市などでも店舗を展開。アフターコロナに向けて外資ファンドの資金で経営再建が図られます。
34. 日本電話施設<1956>によるセイコーエプソン<6724>子会社トヨコムシステムズ買収
売り手:セイコーエプソン(トヨコムシステムズ) こちらも重複しているため詳細は割愛しますが、2011年12月発表の神奈川県寒川町に本拠を持つトヨコムシステムズの買収事例です。日本電話施設としてはモバイル機器評価技術の強化や事業拡大が期待されています。
35. 不二サッシ<5940>傘下のエコマックスをアサヒホールディングス<5857>へ譲渡
売り手:不二サッシ(神奈川県川崎市所在のエコマックス) 2010年7月30日に公表された本件は、不二サッシが保有していた産廃処理会社をアサヒホールディングス子会社に売却する取引です。先にジャパンウェイストへの売却事例と同時期に進められた可能性があり、最終的にはアサヒHDが取得しグループの環境保全事業を強化しました。
36. 横浜銀行(コンコルディアFG傘下)による神奈川銀行買収での地銀再編
売り手:神奈川銀行(横浜市) コンコルディア・フィナンシャルグループの子会社である横浜銀行は2023年2月3日、第二地銀の神奈川銀行(横浜市)を完全子会社化するためTOBを行う方針を公表しました。買付代金は約82億3100万円を想定し、2023年4月下旬にかけて手続きを実施します。 神奈川銀行は1953年に相互銀行として発足後、1989年に普通銀行に転換しており、店舗網が神奈川県内に集中しています。横浜銀行としては地盤強化と地域金融の統合効果を得る狙いがあり、都道府県別で見ても地銀再編の注目例です。
37. グランディハウス<8999>、不動産売買・仲介のプラザハウス・ウェルカムハウスを買収
売り手:プラザハウス(川崎市)、ウェルカムハウス(川崎市) グランディハウスは2019年7月8日、神奈川県川崎市を拠点に不動産仲介や戸建分譲を手がけるプラザハウスとウェルカムハウスの全株式を取得して子会社化すると発表しました。北関東を地盤とするグランディハウスが、神奈川県に本格進出するための足がかりとして位置付けられています。 両社はともに代表取締役が同一人物で、神奈川県エリアで培った土地情報網や営業チャネルを強みとしています。取得価額は非公表、取得予定日は2019年7月19日とされました。
38. ココカラファイン<3098>による調剤薬局2店舗経営の薬宝商事買収
売り手:薬宝商事(川崎市) ココカラファインは2020年1月24日、神奈川県で調剤薬局2店舗を運営する薬宝商事の全株式を取得し子会社化しました。取得価額は非公表。ココカラファインは全国にドラッグストアを多数展開しており、首都圏でのドラッグ+調剤併設型店舗の網羅を強化するための一手です。 薬宝商事は3億5200万円の売上高を計上し、川崎市の地盤を中心に地域密着の薬局運営を行ってきました。買収によりココカラファインの調剤機能強化が進むとみられます。
39. アーバネットコーポレーション<3242>による戸建・テラスハウス分譲のケーナイン買収
売り手:ケーナイン(川崎市) アーバネットコーポレーションは2023年12月22日、神奈川県の川崎市を中心に戸建住宅やテラスハウスの分譲を行うケーナインの全株式を取得し子会社化すると発表しました。アーバネットコーポレーションは東京23区でワンルーム投資マンションの開発に定評がありますが、今回の買収で神奈川県エリアへ進出し、戸建事業にも注力する方針です。 取得価額は非公表、2024年2月29日の予定で、アーバネットとしては首都圏全体での事業領域拡大が期待されます。
40. サンオータス<7623>によるガソリンスタンド運営の若葉石油買収
売り手:若葉石油(横浜市) サンオータスは2024年2月29日、横浜市でガソリンスタンド2店舗を運営する若葉石油の全株式を取得し子会社化しました。取得価額は8500万円。サンオータスは神奈川県を中心に輸入車販売やガソリンスタンド事業、レンタカー事業などを多面的に展開する企業です。 若葉石油が保有するサービスステーションの地理的利点を活かし、近隣の自社店舗との連携を図りながら、利益率向上を目指すとみられます。
41. トライアンフコーポレーション<3651>によるアパレル販売代行のアドバンス株式交換
売り手:アドバンス(神奈川県座間市) トライアンフコーポレーションは2017年5月23日、アパレルの販売代行事業などを行うアドバンスの全株式を株式交換により取得し、完全子会社化すると発表しました。アドバンスは売上高約9820万円(営業利益924万円)と小規模ですが、トライアンフの新規事業開拓の一環として経営支援を期待されています。 株式交換比率はトライアンフ1:アドバンス35.714で、実施予定日は2017年6月9日とされました。アドバンスは神奈川県座間市に拠点を置き、ファッション関連企業との取引があり、今後トライアンフグループの売上拡大を支える役割が期待されています。
42. サイバー・通信分野をめぐる神奈川県案件(横串的事例)
売り手:神奈川県所在のITベンチャー複数 神奈川県は川崎市、横浜市、厚木市、相模原市、大和市などに大手IT企業や関連ベンチャーが集積しており、エレクトロニクス、通信、ソフトウエアなどの分野でもM&Aが活発です。NECや富士通、日産自動車、横浜銀行といった大企業に隣接する形で、モバイル・AI・IoTスタートアップが登記を置くケースが目立ちます。 これらを横断的に見ると、技術力を持つ中小企業が大手や外資ファンドに買収されるパターンと、大手が事業整理の一環でスピンアウトやファンド売却に踏み切るパターンの両面が確認されます。企業規模も多岐にわたり、神奈川の自治体や金融機関も仲介に関与するなど地域を挙げたM&A促進が進んでいます。
まとめと展望
神奈川県のM&A事例は、地元に本拠を置く企業の売却や、首都圏を対象とする事業拡張を狙った買収など、非常に多彩な取引がみられます。上記に挙げた事例から、以下のポイントが浮かび上がります。
首都圏の再編圧力と神奈川県の地理的優位
神奈川県は東京都に隣接し、川崎・横浜を中心に大企業・中堅企業が本社や工場を構えるほか、産学連携の拠点も多数存在します。東京とほぼ一体的な経済圏を形成しながらも、地価や人材面で独自の魅力があり、ITや製造業、流通・サービス業に至るまで幅広い業種が集まる地域です。企業再編や事業売却においては「首都圏に近い拠点がほしい買い手」も多く、M&A市場が活発に機能しています。
製造業からサービス業まで幅広いセクターでM&A活用が進む
本稿に取り上げた案件には製造業(防衛関連・自動車部品・電機・情報通信)からサービス業(介護・保育・飲食・ゴルフ場・小売・リース・不動産)に至るまで、あらゆる業種が含まれています。工業地帯としての歴史を持つ神奈川県では、大手メーカーの研究・生産拠点が立地し、一方で観光や商業地としての側面も強いため、業種の多様化がM&A案件にも反映されています。
大手企業の事業整理・投資ファンドへの売却例の多さ
神奈川県に大規模拠点を持つ大手企業(富士通、東芝、武田薬品、日産など)が非中核事業をファンドや他社に譲渡する例が目立ちます。世界的なDXや事業ポートフォリオ再編の流れを受けて、神奈川県内でもM&Aを通じた事業構造改革が進展しています。電機・自動車メーカーのように研究施設や生産ラインを再構築する動きは今後も続くと考えられます。
中小ベンチャーの買収案件(事業承継・高い技術取得)
神奈川県に本社を置くITスタートアップやニッチ技術を持つ中堅企業が、大手や投資ファンドに買収される事例も増えています。後継者不在や資金調達の課題を抱える企業が、早期に売却を検討し、M&Aを選択するケースも顕著です。一方で、海外勢や外資系ファンドが神奈川県内の拠点獲得や技術人材確保を狙って進出する動きも活発化しています。
地方銀行・証券会社の再編や地銀同士の経営統合
横浜銀行や神奈川銀行など、神奈川県内における金融機関の経営統合や出資も注目度が高い事例です。人口減少が続く中で地方銀行再編の機運が高まっており、今後もコンコルディア・フィナンシャルグループの動きや、周辺地銀との連携に注目が集まります。企業への貸し出し体制や金融サービス効率化のため、県内に限定しない広域連携も見逃せません。
介護・保育・医療など社会的ニーズ拡大分野でのM&A加速
高齢化や子育て支援ニーズが高まるなか、神奈川県でも介護施設や保育事業などのM&Aが活発です。大手企業が将来的な成長が見込める分野として積極投資する例(大和ハウス工業の東電ライフサポート買収、メディカルシステムネットワークの調剤薬局買収など)が増えています。事業承継や分散化した小規模事業を集約して効率化する潮流は今後も強まる可能性があります。
不動産・物流拠点をめぐる取引
神奈川県内の駅周辺や港湾地域は価値の高い不動産が集中しており、首都圏物流拠点としての魅力も大きいです。倉庫や物流企業をめぐる譲渡案件や、小売・ホームセンターの買収なども続いています。景気や金利動向によって状況が変わりやすい領域ですが、長期的には輸送網の再編とECの拡大が神奈川にも恩恵をもたらすとみられます。
総じて、神奈川県におけるM&Aは首都圏における大都市隣接メリットと、豊富な産業集積、多様な業種構成が重なり合い、案件数や金額、内容の幅が非常に多彩という特徴があります。大手が保有する優良資産・先端拠点の売却と、中小ベンチャーの事業承継や海外勢の買収が同時進行しており、県内経済全体としても再編が進行中です。介護・保育など社会性の高い分野への参入や、不動産・物流拠点の取得など、県内外の企業が積極的に「神奈川の強み」を取り込もうとする姿勢がうかがえます。
今後も経営資源を効率的に配置するために、大手による非中核事業の切り離し、中小企業による事業承継型M&A、海外ファンドとの提携など、多面的な再編が続くと考えられます。自治体や地銀などの地域金融機関、そしてM&A仲介会社が連携を強めることで、神奈川県発の企業再編は一層活発化するとみられます。DXや環境・エネルギー転換を背景とした業種横断的な提携・買収も増えることが予想され、神奈川エリアは引き続きM&Aの重要市場であり続けるでしょう。

株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。