目次
  1. 1. 兵庫県におけるM&Aの概況
  2. 2. M&Aを取り巻く兵庫県の経済・産業構造
    1. 2-1. 産業の多様性
    2. 2-2. 中小企業の多さと大企業との関係
    3. 2-3. 交通インフラの要衝
  3. 3. 兵庫県内で顕著なM&Aの特徴
  4. 4. 実際の事例一覧と背景・目的の分析
    1. 4-1. 第一交通産業によるタクシー会社買収
    2. 4-2. 東部ネットワークによるテーエス運輸の子会社化
    3. 4-3. 総合メディカルによる祥漢堂の子会社化
    4. 4-4. 日本ケミカルリサーチによるアイエスエスの吸収合併
    5. 4-5. 石光商事による連結子会社2社の事業譲渡と解散
    6. 4-6. 富士通の携帯電話事業売却(ジャパン・イーエム・ソリューションズへの分社化)
    7. 4-7. 日本創発グループによる小西印刷所の完全子会社化
    8. 4-8. 中小企業投資機構によるカーフー譲渡
    9. 4-9. 大気社によるエヌ・ジェイ・アクシベイン送風機事業のタニヤマ譲渡
    10. 4-10. 東芝による西芝電機のTOB
    11. 4-11. 大末建設による神島組の子会社化
    12. 4-12. 大本組による坂出カントリークラブの売却
    13. 4-13. 日立電線による華南電線加工の売却
    14. 4-14. 品川白煉瓦によるJFE炉材との経営統合
    15. 4-15. 日住サービスのMBOによる非公開化
    16. 4-16. 美樹工業のヒョウ工務店子会社化と湯村カンツリークラブ譲渡
    17. 4-17. 東和薬品による大地化成の子会社化
    18. 4-18. 東陽テクニカによるエル・テールの子会社化
    19. 4-19. 神戸物産によるエルフーズ・ウエボスの子会社化とクックイノベンチャー譲渡
    20. 4-20. 日立建機による川崎重工業ホイールローダー事業の子会社化
    21. 4-21. 神戸物産によるクックイノベンチャー譲渡
    22. 4-22. 成学社による個別指導塾・個夢の子会社化
    23. 4-23. 日本触媒による日本ポリマー工業の子会社化
    24. 4-24. 杉本商事によるスギモトの子会社化
    25. 4-25. 神戸製鋼所と日鉄建材の道路関連事業統合
    26. 4-26. 神戸製鋼所による関西熱化学の株式追加取得
    27. 4-27. 兵機海運に対する堂島汽船のTOB
    28. 4-28. 川本産業によるクロス工業の子会社化
    29. 4-29. 神姫バスによるパチンコ店事業の山陽への譲渡
    30. 4-30. 東洋テックによる新栄ビルサービスの子会社化
    31. 4-31. 川崎重工業のKCMJホイールローダー事業譲渡(日立建機日本へ)
    32. 4-32. 日本写真印刷によるエフアイエスの株式交換完全子会社化
    33. 4-33. 東洋テックによるバンガード機械警備事業の取得
    34. 4-34. 幸和製作所によるデイサービス事業のポラリス譲渡
    35. 4-35. 月島機械によるプライミクス買収
    36. 4-36. 横浜ゴムによるグッドイヤー大型タイヤ事業の取得
    37. 4-37. 小林製薬による六陽製薬の子会社化
    38. 4-38. 小林産業によるオーワハガネ工業の子会社化
    39. 4-39. 日本山村硝子による中山運送・マルイシ運輸の子会社化
    40. 4-40. 小野建による大林商会の鉄鋼卸売事業取得
    41. 4-41. 安江工務店によるN-Basic子会社化
    42. 4-42. 小野建による三豊鋼業の子会社化
    43. 4-43. ロングライフHDによる碧コーポレーションの子会社化
    44. 4-44. 小田原機器による指月電機製作所の交通情報案内システム事業取得
    45. 4-45. 学習研究社による創造学園の子会社化
    46. 4-46. 駒井ハルテックによる川重ファシリテック鉄構工事事業の取得
    47. 4-47. 旭松食品の納豆事業をミツカンへ譲渡
    48. 4-48. リソルHDによる東急不動産系ゴルフ場運営3社の買収
    49. 4-49. 住石HDによる住石山陽採石の譲渡
    50. 4-50. リゾートトラストによる関西ゴルフ倶楽部(三明)の取得
    51. 4-51. 古河電工による銅管・銅板事業の投資ファンド譲渡
    52. 4-52. 極東貿易によるファーレ(ドイツ製給電装置)子会社化
    53. 4-53. ヤマウによる中外道路の子会社化
    54. 4-54. 家族亭による寿製麺の子会社化とその後のシマダヤへの譲渡
    55. 4-55. 黒崎播磨による建材事業の積水ハウスへの売却
    56. 4-56. 国際航業HDによるKHC子会社化
    57. 4-57. 三機サービスによる兵庫機工の子会社化
    58. 4-58. 岡三証券による相生証券の第一種金融商品取引事業取得
    59. 4-59. みらかHDによる杏和総合医学研究所(臨床検査事業)取得
    60. 4-60. 丸紅による三田カントリー27事業のアイランドゴルフ譲渡
    61. 4-61. 兼松によるカネヨウへのTOB
    62. 4-62. メディカルシステムネットワークによるケイツージャパンの調剤薬局事業取得
    63. 4-63. 関通による河出興産の出版物流サービス事業取得
    64. 4-64. ヘリオステクノHDによる関西技研買収・日本技術センターのMBO譲渡
    65. 4-65. 上組によるライト建設グループ3社の子会社化
    66. 4-66. レカムによるR・S/G・Sコミュニケーションズの子会社化
    67. 4-67. ベネッセHDによるアップのTOB非公開化
    68. 4-68. パンチ工業の構造改革(兵庫工場)
    69. 4-69. マーチャント・バンカーズによるホテルシステム二十一買収・ホテル事業譲渡
    70. 4-70. ソラストによるJAWAの子会社化
    71. 4-71. ドン・キホーテによるフィデック子会社化
    72. 4-72. ダイワボウHDによる赤穂国際カントリークラブの譲渡
    73. 4-73. ハウスコムによるシーアールエヌの子会社化
    74. 4-74. バローホールディングスによるトーホーストアの一部店舗取得
    75. 4-75. ジェイオーグループHDによるジェイオー建設MBO・播州自動車工業譲渡
    76. 4-76. ジャルコによるハリーズ買収と中国企業への譲渡
    77. 4-77. ジェイエスエスによる宝塚スイミングスクールの吸収合併
    78. 4-78. スターティアHDによるビジネスサービス(姫路市)の子会社化
    79. 4-79. ゼクスのチャーミング・スクウェア芦屋事業を富士薬品へ譲渡
    80. 4-80. ココカラファインによるフタツカHDおよびルーカス店舗取得
    81. 4-81. シェアリングテクノロジーによる電子プリント工業買収と譲渡
    82. 4-82. ソフィアHDによるアルファメディックスの子会社化
    83. 4-83. さかい・ジー・ネットワークス・ジー・テイストに対するジー・コミュニケーションのTOB
    84. 4-84. ダスキンによる蜂屋乳業の譲渡(バンリューへ)
    85. 4-85. サンフロンティア不動産によるエコリードイノベーション買収(太陽光)
    86. 4-86. いちよし証券による西脇証券の子会社化
    87. 4-87. アインファーマシーズによるメディオ薬局の子会社化
    88. 4-88. イチネンHDによるミツトモ製作所買収
    89. 4-89. エイチ・ツー・オー リテイリングによる貨物運送子会社の譲渡(江坂運輸・阪神運送)
    90. 4-90. オートバックスセブンによる大洋の完全子会社化とG-7HDへの店舗譲渡
    91. 4-91. カネミツによる松本精工の子会社化
    92. 4-92. CSSHDによるヤマト食品のケイエフへの譲渡
    93. 4-93. オプテックスグループによるミツテック(淡路市)の子会社化
    94. 4-94. イオンによるウエルシアHDのTOB子会社化とタキヤ・シミズ薬品統合
    95. 4-95. アウトソーシングによるマークスファクトリー(西脇市)の子会社化
    96. 4-96. TACによる医療事務スタッフ関西・クボ医療の子会社化
    97. 4-97. アーバンライフによるアーバンサービス譲渡(関電・森トラスト)
    98. 4-98. JR西日本によるキリンホテル開発買収
    99. 4-99. アートスパークHDによるエイチアイ関西の買収と譲渡
    100. 4-100. JRCによる向井化工機・東陽工業などの子会社化と兵庫拠点
  5. 5. 兵庫県におけるM&Aの今後の展望
  6. 6. まとめと地域経済へのインパクト

1. 兵庫県におけるM&Aの概況

兵庫県は京阪神エリアを中心に商業・工業が発展しており、神戸市や阪神間には大手企業が多数存在します。一方で、姫路市や加古川市、西宮市などにも多様な産業集積があり、それぞれ地域に根ざした企業が大手企業と取引関係を構築しています。県北部には農林漁業や観光業が盛んな地域もあり、加工食品や土木・インフラ系企業が点在するなど、県内全体として産業の幅が広いのが特徴です。

そのため、M&Aの動きも非常に活発で、大手企業による子会社化や中小企業同士の経営統合、ファンドによる買収などさまざまな形態が見られます。全国的に見ても、兵庫県は不動産・建設、自動車部品、化学、鉄鋼、機械、食品関連、サービス業など多岐にわたる業種が集積し、地域密着の中小企業から世界的な大手メーカーまで入り混じっています。また、大阪や京都にも近接しているため、近畿圏内の再編の一翼を担うケースも多いと言えます。


2. M&Aを取り巻く兵庫県の経済・産業構造

2-1. 産業の多様性

兵庫県は、神戸製鋼所や川崎重工業、三菱電機グループ企業などの重工業分野から、医薬・化学分野、日本触媒や大手卸売の神戸物産など食品関連分野、さらに小売・物流・観光・不動産業に至るまで幅広い企業が立地しており、東西で経済構造が少し異なっています。神戸・阪神間は比較的工業、サービス業が盛んで、播磨地域には製造業が集積しており、中播磨・西播磨には建設・土木や食品加工、観光業を担う企業が目立ちます。

2-2. 中小企業の多さと大企業との関係

大企業の工場や研究所が点在する一方、それを支える下請け・サプライヤーとして中小企業も多く、長年技術を蓄積してきた老舗企業が点在しています。後継者不在や業界再編圧力などにより、こうした中小企業が買収対象となるケースも増えており、ファンドや同業大手が積極的にアプローチしている点も兵庫県のM&Aの特徴の一つといえます。

2-3. 交通インフラの要衝

近畿圏では道路網や鉄道網が発達しており、港湾・空港も含めて物流に適した立地であるため、物流関連企業や建設・不動産関連の動きが活発です。阪神高速道路や山陽自動車道、神戸港・阪神港を経由して近畿から中国地方・四国地方へつなぐ輸送ルートの中継地としても重要な役割を果たすため、物流関連のM&A事例も多く見られます。


3. 兵庫県内で顕著なM&Aの特徴

  1. 交通・運輸・物流業界の統合や再編
    兵庫県は中四国方面へのゲートウェイ機能を持ち、神戸港や阪神港の存在、さらには阪神高速や山陽道などの高速道路も整備されていることから、物流企業やタクシー・バス事業などの統合が活発です。実際に第一交通産業のタクシー会社買収や東部ネットワークの産業用ガス輸送事業への参入など、多彩なM&Aが行われています。
  2. 医療・調剤薬局や介護分野のM&A拡大
    兵庫県は人口が多く、高齢化率も上昇しているため、調剤薬局や介護関連サービスの拠点が増加傾向にあります。総合メディカルやクオールホールディングスなどによる県内調剤薬局の買収、ロングライフホールディングによる薬局の子会社化などが典型例です。
  3. 重工・機械関連とサプライヤー企業との資本提携
    鉄鋼や建設機械関連の大手企業が多く、その周辺産業の中小企業で事業承継問題を抱えるケースも少なくありません。そこで大手企業やファンドが買収を通じて技術や取引先を取り込む動きが盛んです。
  4. ゴルフ場や観光レジャー関連の再編
    兵庫県はゴルフ場が非常に多い地域の一つです。景気の変動やゴルフ人口の変化に伴い、ゴルフ場事業を手放す企業が増加し、再編が相次いでいます。大本組や石光商事、ダイワボウHD、丸紅、リソルHDなどが売買に関わる事例が散見されました。
  5. ファンド主導による買収案件の増加
    後継者不在の中堅企業や財務的に苦しい状況の企業をファンドがスポンサーとなり再建に乗り出すケースも多く見られます。たとえば兵庫県内企業の株式を投資ファンドが取得し、その後大手企業へ譲渡する二段構えの事例などもあります。

4. 実際の事例一覧と背景・目的の分析

本章では、兵庫県内で行われたM&Aや兵庫県に関連したM&A事例の中から、特に特徴的なものをピックアップし、それぞれの概要と狙いを簡潔に振り返ります。なお、案件によっては株式取得先の公表がないなど詳細が不明の点もありますが、公開情報をもとにできる限り整理いたします。

4-1. 第一交通産業によるタクシー会社買収

事例概要

  • 第一交通産業<9035>は名神タクシー(尼崎市)や相生神姫タクシー(相生市)、ゑび須タクシー(神戸市)のタクシー事業を次々と取得し、兵庫県内での台数を大幅に増強しました。名神タクシー買収(2013年12月)では32台増え、合計258台となり、相生神姫タクシー買収(2013年3月)では18台増加、さらにゑび須タクシー(2012年4月)では31台増加という動きです。
    背景・狙い
  • 県内でのタクシー台数を集約し、営業効率を高めるとともに、全国にわたる第一交通産業グループのタクシー網を強化する目的です。尼崎市や相生市、神戸市などで地域に根ざしたタクシー会社を買収することで「ドミナント化」を進め、サービス向上と規模拡大を同時に実現しています。

4-2. 東部ネットワークによるテーエス運輸の子会社化

事例概要

  • 東部ネットワーク<9036>は産業用ガス輸送(液化酸素・窒素など)に強みを持つテーエス運輸(尼崎市)を2024年4月に子会社化する予定です。
    背景・狙い
  • 東部ネットワークは魚津運輸(富山県)買収により参入した産業用ガス輸送を一層拡大したい考えで、主要な工業地域へのアクセスが良い尼崎市のテーエス運輸を傘下に収めることで事業範囲を広げ、さらなるシェア拡大を狙っています。

4-3. 総合メディカルによる祥漢堂の子会社化

事例概要

  • 総合メディカル<4775>は、大阪・兵庫で計21店舗の調剤薬局を展開する祥漢堂(大阪市)を2015年5月1日付で取得。後に株式交換方式へ切り替えを決定し、2015年6月15日に実施。兵庫県内に15店舗を展開する企業です。
    背景・狙い
  • 調剤薬局大手である総合メディカルが、近畿圏での店舗網拡充を目的にM&Aを実施。自社の既存店舗ネットワークとの相乗効果を見込み、店舗数拡大だけでなく、地域連携を強化する狙いです。

4-4. 日本ケミカルリサーチによるアイエスエスの吸収合併

事例概要

  • 日本ケミカルリサーチ<4552>は2009年11月1日付で翻訳・通訳や損害保険代理業を行うアイエスエス(芦屋市)を吸収合併。
    背景・狙い
  • 医薬品製造販売を行う日本ケミカルリサーチが業務効率化のために合併を実施。翻訳や通関など専門的な作業をアウトソースするのではなく、自社で一体化することでコスト削減や管理部門の強化を図りました。

4-5. 石光商事による連結子会社2社の事業譲渡と解散

事例概要

  • 石光商事<2750>は低迷業績が続く連結子会社キング珈琲(札幌市)と岩屋サービス(神戸市)の事業をそれぞれ美鈴コーヒーや姫路合同貨物自動車に譲渡し、両社を解散。
    背景・狙い
  • 石光商事グループ内で収益に貢献しない事業を整理し、本業のコーヒー・食品卸での強化に経営資源を集中するためと思われます。岩屋サービスは兵庫県姫路市の姫路合同貨物自動車へ譲渡が行われました。

4-6. 富士通の携帯電話事業売却(ジャパン・イーエム・ソリューションズへの分社化)

事例概要

  • 富士通<6702>は子会社の富士通コネクテッドテクノロジーズと兵庫県加東市の携帯端末工場(富士通周辺機)を分社化し、新会社ジャパン・イーエム・ソリューションズへ承継後、ファンドのポラリスへ譲渡。
    背景・狙い
  • 国内携帯電話市場の成熟化に伴う収益性悪化や競争激化に対応するため、携帯端末部門を切り離して投資ファンドへ売却。富士通は一部株式を継続保有しながらも事実上は撤退に近い再編策とみられます。

4-7. 日本創発グループによる小西印刷所の完全子会社化

事例概要

  • 日本創発グループ<7814>は西宮市最大級の印刷会社である小西印刷所(西宮市)の株式を追加取得し、2021年10月1日付で完全子会社化。
    背景・狙い
  • 関連会社として株式を39.02%保有していたが、60.98%を追加取得することで完全子会社化。兵庫県西宮市に本社を置き、創業1926年という老舗の印刷会社を傘下におさめることで、印刷関連事業の拡充と収益強化を図っています。

4-8. 中小企業投資機構によるカーフー譲渡

事例概要

  • 中小企業投資機構<2318>は兵庫県明石市のカーフー(中古車販売店向けASP)株式85%を中小企業保証機構に譲渡。
    背景・狙い
  • 中小企業投資機構グループ内で事業の再構築を進める中、既存事業の見直しを行い、投資関連や融資保証業務に集中するためにカーフーを手放したとされています。

4-9. 大気社によるエヌ・ジェイ・アクシベイン送風機事業のタニヤマ譲渡

事例概要

  • 大気社<1979>は子会社のエヌ・ジェイ・アクシベイン(大阪府枚方市)送風機事業を兵庫県尼崎市の同業タニヤマへ譲渡。
    背景・狙い
  • 債務超過に陥っていたエヌ・ジェイ・アクシベインの改善が困難と判断。タニヤマへ事業譲渡することでメンテナンス業務や従業員の雇用を継続しつつ、大気社は不採算事業を切り離しました。タニヤマへの出資比率を引き上げ、持分法適用会社化している点も特徴です。

4-10. 東芝による西芝電機のTOB

事例概要

  • 東芝<6502>は孫会社である西芝電機<6591>(姫路市)をTOBで完全子会社化し、非公開化。
    背景・狙い
  • 東芝インフラシステムズを通じて保有比率を100%とし、グループ経営資源の共有を最大化することで船舶や産業向け電機システムの強化を図る。上場廃止とすることで迅速な意思決定が可能になります。

4-11. 大末建設による神島組の子会社化

事例概要

  • 大末建設<1814>は、特殊土木領域「割岩」を得意とする神島組(西宮市)を全株式取得(48億円)し、2023年11月7日に子会社化。
    背景・狙い
  • ダムやトンネル工事などでの特殊技術を取り込み、土木事業への再参入を目指す。割岩分野での独自工法による高い技術が大末建設グループにとって大きな強みになると判断されています。

4-12. 大本組による坂出カントリークラブの売却

事例概要

  • 大本組<1793>はゴルフ場運営の坂出カントリークラブをタカガワアトランティス(兵庫県まんのう町を拠点とするタカガワHDグループ)に譲渡。
    背景・狙い
  • 20年にわたり運営してきたゴルフ場事業の先行きが厳しいため、ゴルフ・ホテル事業を手広く手がけるタカガワHDグループに引き継ぎ、建設事業に経営資源を集中させる狙いです。

4-13. 日立電線による華南電線加工の売却

事例概要

  • 日立電線<5812>(現・日立金属グループの一部)は中国・香港拠点の華南電線加工を兵庫県姫路市のハヤカワ電線工業に売却。
    背景・狙い
  • 電子機器用電線事業の再編の一環で、中国における事業を医療用プローブケーブルに注力する深圳日立電線に集約し、華南電線加工を切り離して事業効率化を図りました。

4-14. 品川白煉瓦によるJFE炉材との経営統合

事例概要

  • 品川白煉瓦<5351>は、耐火物大手のJFE炉材(兵庫県赤穂市)と2009年10月に経営統合を発表(その後詳細は協議)。
    背景・狙い
  • 原材料の高騰や需給のひっ迫により安定調達が課題となっている中、鉄鋼向け耐火物の需要拡大を睨み、製造や研究開発を一体化して競争力を強化する狙いです。

4-15. 日住サービスのMBOによる非公開化

事例概要

  • 不動産流通大手の日住サービス<8854>(神戸市・西宮市)を対象に、社長が設立した会社K.I.TがTOBを行い非公開化へ。
    背景・狙い
  • 不動産流通市場の競争が激しく、不動産仲介や介護・海外事業などの多角化を長期的視点で進めるためにMBOを選択。株主の短期的視点に左右されにくい経営体制に移行します。

4-16. 美樹工業のヒョウ工務店子会社化と湯村カンツリークラブ譲渡

事例概要

  • 美樹工業<1718>は神戸市内で建築工事を手がけるヒョウ工務店(神戸市)を子会社化する一方、ゴルフ場「湯村カンツリークラブ」(新温泉町)事業をマックアース(養父市)に譲渡。
    背景・狙い
  • 建設部門を強化して競争力を高めつつ、不採算だったゴルフ事業を整理し本業に注力する姿勢の表れといえます。

4-17. 東和薬品による大地化成の子会社化

事例概要

  • 東和薬品<4553>は原薬・中間体少量製造設備を持つ大地化成(姫路市)を傘下に取り込み、ジェネリック医薬品のコストダウンや安定的な承認取得を図る。
    背景・狙い
  • 原薬研究や製剤開発の内製化強化により、価格競争が激しいジェネリック医薬品分野での優位性確保が目的とみられます。

4-18. 東陽テクニカによるエル・テールの子会社化

事例概要

  • 東陽テクニカ<8151>は燃料電池評価システムなどで実績があるエル・テール(川西市)を2024年3月に買収。
    背景・狙い
  • エル・テールのノウハウ・知財を東陽テクニカと共有し、水素関連などクリーンエネルギー分野を拡大。国内外での新規事業創出が期待されます。

4-19. 神戸物産によるエルフーズ・ウエボスの子会社化とクックイノベンチャー譲渡

事例概要

  • 神戸物産<3038>は食品卸売のエルフーズ(姫路市)や鶏卵加工のウエボス(姫路市)を買収し、海外商品の安定供給が困難化する中、国産食材強化を図った。また外食関連子会社のクックイノベンチャーは2020年に同社社長へ譲渡。
    背景・狙い
  • 「業務スーパー」の主力商品として国内での安定調達を優先し、コストダウンを目指した。一方、外食事業については一定の経営改善が進んだ段階で手放し、グループのさらなる選択と集中を行った形です。

4-20. 日立建機による川崎重工業ホイールローダー事業の子会社化

事例概要

  • 日立建機<6305>は川崎重工業<7012>傘下のKCMを追加取得し2015年10月に完全子会社化。兵庫県稲美町に工場を持つ。
    背景・狙い
  • 建設機械市場の世界的競争が激化する中、ホイールローダー事業での技術・生産効率向上を図りシェア拡大を目指す。

4-21. 神戸物産によるクックイノベンチャー譲渡

前述の通り、神戸物産はクックイノベンチャーを子会社化していましたが、外食チェーン各社(ジー・テイストなど)への食材供給や財務基盤の安定化を進めた後、2020年6月にクックイノベンチャーの全株式を経営陣へ譲渡しました。

4-22. 成学社による個別指導塾・個夢の子会社化

事例概要

  • 成学社<2179>は兵庫県明石市・加古川市で個別指導塾を運営する個夢を子会社化。
    背景・狙い
  • 成学社は「開成教育グループ」を展開する大手学習塾運営会社で、兵庫県内での教室拡大を目指す。ドミナント戦略により地域シェア拡大を狙っています。

4-23. 日本触媒による日本ポリマー工業の子会社化

事例概要

  • 日本触媒<4114>はアクリルポリマーの製造会社・日本ポリマー工業(姫路市)を2011年4月に追加取得し子会社化。
    背景・狙い
  • アクリル酸誘導品事業強化とコスト競争力向上を狙い、折半出資だった東洋インキとの合弁関係を再編して実質支配に踏み切りました。

4-24. 杉本商事によるスギモトの子会社化

事例概要

  • 杉本商事<9932>は機械工具商社のスギモト(尼崎市)の株式を約25億円で取得。
    背景・狙い
  • 関西・中部エリアでの顧客基盤拡大と商品調達力向上、人材交流によるノウハウ獲得が狙い。スギモトは杉本商事の尼崎営業所を継承して立ち上がった会社で歴史的つながりも強い。

4-25. 神戸製鋼所と日鉄建材の道路関連事業統合

事例概要

  • 神戸製鋼所<5406>傘下の神鋼建材工業(尼崎市)と日鉄建材(東京都千代田区)の道路関連事業(防護柵や防音壁等)を統合し、日鉄神鋼建材を設立。統合延期を経て、2021年12月に統合完了。
    背景・狙い
  • 公共投資の縮減で需要が先細る中、東日本と西日本に生産拠点を集約し、競争力強化を図る再編策。生産設備の統廃合も行われました。

4-26. 神戸製鋼所による関西熱化学の株式追加取得

事例概要

  • 神戸製鋼所<5406>は三菱ケミカルグループ<4188>から製鉄用コークス製造の関西熱化学(尼崎市)株式を追加取得し、持ち株比率を75%に。
    背景・狙い
  • 加古川製鉄所(加古川市)隣地にコークス工場を構える関西熱化学をグループ化し、一貫生産体制を強化。燃料ガスの安定供給にも役立てる狙いです。

4-27. 兵機海運に対する堂島汽船のTOB

事例概要

  • 堂島汽船(大阪市)は兵機海運<9362>(兵庫県)の株式をTOBで最大18%程度を追加取得する計画を表明。
    背景・狙い
  • 内航海運を主力とする兵機海運との資本業務提携を強化し、20%を下回る範囲で発言力を拡大する意向。堂島汽船は船舶貸渡の富洋海運(大阪市)の子会社であり、同グループで兵機海運株を若干保有していました。

4-28. 川本産業によるクロス工業の子会社化

事例概要

  • 川本産業<3604>は1968年創立の包帯メーカー・クロス工業(尼崎市)を66.6%取得。
    背景・狙い
  • 医療消耗品の強化と価格競争力向上が目的。クロス工業のベトナム工場などを活用して生産体制を強化し、介護やマタニティ分野への製品拡充を図ります。

4-29. 神姫バスによるパチンコ店事業の山陽への譲渡

事例概要

  • 神姫バス<9083>は姫路方面で運営するパチンコ店2店舗(売上高24.1億円)を山陽(姫路市)に譲渡。
    背景・狙い
  • バスや鉄道事業など本業に注力するため、収支悪化した遊技場事業から撤退。法規制強化や競合激化の厳しい状況を踏まえた経営判断です。

4-30. 東洋テックによる新栄ビルサービスの子会社化

事例概要

  • 東洋テック<9686>は建物総合管理の新栄ビルサービス(姫路市)を子会社化。
    背景・狙い
  • 警備業やビル管理を主力とする東洋テックが関西エリアを中心に事業基盤を拡大し、一体運営による相乗効果(警備+ビルメンテナンス)を期待。

4-31. 川崎重工業のKCMJホイールローダー事業譲渡(日立建機日本へ)

事例概要

  • 川崎重工業<7012>子会社のKCMJ(加古川市)が手がけるホイールローダー・除雪機の国内販売・サービス部門を日立建機日本へ譲渡。
    背景・狙い
  • 既にホイールローダー事業の合弁再編を発表していた流れの一環で、事業全般を日立建機側で統合・強化するための最終調整といえます。

4-32. 日本写真印刷によるエフアイエスの株式交換完全子会社化

事例概要

  • 日本写真印刷<7915>はガスセンサー開発のエフアイエス(伊丹市)を2014年6月30日に株式交換で完全子会社化。
    背景・狙い
  • タッチセンサーの次の柱としてガスセンサー技術に着目。印刷技術とガスセンサー技術を融合し、新製品開発を加速します。

4-33. 東洋テックによるバンガード機械警備事業の取得

事例概要

  • 東洋テックはバンガード(姫路市)の機械警備事業を会社分割で取得し、子会社「東洋テック姫路」に承継。
    背景・狙い
  • 播州地域での警備シェア拡大を図り、既存の拠点・ノウハウと組み合わせて収益力強化を目指します。

4-34. 幸和製作所によるデイサービス事業のポラリス譲渡

事例概要

  • 幸和製作所<7807>は子会社の幸和ライフゼーションが運営するデイサービス事業を介護事業のポラリス(宝塚市)に2140万円で譲渡。
    背景・狙い
  • 主力製品である歩行器・車いすなど福祉用具の開発・販売へ経営資源を集中し、事業領域を整理する狙いです。

4-35. 月島機械によるプライミクス買収

事例概要

  • 月島機械<6332>は撹拌装置専業大手のプライミクス(淡路市)を子会社化(2020年4月30日付)。
    背景・狙い
  • 化学的分離や医薬・化粧品分野への技術拡大、二次電池分野でのノウハウ補完により、装置エンジニアリング事業を飛躍させる考えです。

4-36. 横浜ゴムによるグッドイヤー大型タイヤ事業の取得

事例概要

  • 横浜ゴム<5101>は米グッドイヤーから鉱山・建設機械用大型タイヤ事業を買収(1424億円)。日本ジャイアントタイヤ(たつの市)などが対象。
    背景・狙い
  • 生産財タイヤ領域で農機用に続き、建設・鉱山用を取り込みグローバル展開を加速。兵庫県にある工場は大型タイヤ生産拠点として重要視されます。

4-37. 小林製薬による六陽製薬の子会社化

事例概要

  • 小林製薬<4967>はスキンケア製品「オードムーゲ」を製造する六陽製薬(西宮市)株式を93.9%取得。
    背景・狙い
  • スキンケア分野の強化を図る小林製薬にとって、ブランド力がある「オードムーゲ」の活用が大きなプラス。製造技術やノウハウの取り込みを目指します。

4-38. 小林産業によるオーワハガネ工業の子会社化

事例概要

  • 小林産業<8077>はステンレス製ボルト・ナット卸のオーワハガネ工業(大阪)を子会社化。親会社である濱中ナット販売(兵庫県姫路市)と取引関係があった。
    背景・狙い
  • ねじの在庫拡充など商品ラインアップを拡大し、より広範な顧客対応力の強化が期待されます。

4-39. 日本山村硝子による中山運送・マルイシ運輸の子会社化

事例概要

  • 日本山村硝子<5210>は関西エリアの運送事業を強化するため、山村ロジスティクス(尼崎市)を通じて中山運送とマルイシ運輸の全株式を取得。
    背景・狙い
  • 尼崎市を本拠とする山村ロジスティクスが関西圏の物流基盤を拡充し、同社主力ガラス瓶製造の安定した輸送網を確立。

4-40. 小野建による大林商会の鉄鋼卸売事業取得

事例概要

  • 小野建<7414>は1974年設立の大林商会(伊丹市)から鉄鋼卸売事業を新会社に分割移管し買収。
    背景・狙い
  • 関西圏での販売シェアを伸ばす小野建の戦略。鉄鋼需要が堅調な京阪神エリアで更なる拡大を狙います。

4-41. 安江工務店によるN-Basic子会社化

事例概要

  • 安江工務店<1439>は自然素材を用いたリフォーム事業を展開するN-Basic(神戸市)を子会社化。
    背景・狙い
  • 愛知県を地盤とする安江工務店が神戸を拠点とするN-Basicのノウハウを取り込み、リフォーム・リノベーション分野を拡充。

4-42. 小野建による三豊鋼業の子会社化

事例概要

  • 小野建は子会社森田鋼材を通じ、鉄筋販売・加工を手がける三豊鋼業(伊丹市)を買収。
    背景・狙い
  • 京阪神エリアでの営業強化。三豊鋼業は1967年設立で地盤を築いており、相互の営業リソースを活用するとみられます。

4-43. ロングライフHDによる碧コーポレーションの子会社化

事例概要

  • ロングライフホールディング<4355>は兵庫県宝塚市に本拠を置く調剤薬局「碧コーポレーション」を子会社化。
    背景・狙い
  • 介護と医療の連携を強化し、高齢者向けサービスを拡充していく目的。調剤薬局との協業で在宅訪問などもスムーズになります。

4-44. 小田原機器による指月電機製作所の交通情報案内システム事業取得

事例概要

  • 小田原機器<7314>は指月電機製作所(西宮市)からバスや鉄道などの交通情報案内システムの開発事業を取得。
    背景・狙い
  • バス機器メーカーとしてトータルソリューションを提供できるようになる。バス車両向けの運賃箱や決済システムを展開する小田原機器にとって事業範囲を広げる再編策。

4-45. 学習研究社による創造学園の子会社化

事例概要

  • 学研HD(旧・学習研究社)<9470>は神戸市を中心に学習塾・予備校「エディック」「創学ゼミナール」を展開する創造学園(売上37.2億円)を株式70%取得。
    背景・狙い
  • 同社が持つ学研教室などと連携し、小中高生向けの学習機会を拡大。創志学園グループとの連携も視野に入れています。

4-46. 駒井ハルテックによる川重ファシリテック鉄構工事事業の取得

事例概要

  • 駒井ハルテック<5915>は川崎重工業子会社の川重ファシリテック(播磨町)から鉄構工事事業を取得し、新設会社の株式66.6%を取得。
    背景・狙い
  • 駒井ハルテックは橋梁事業と併せて鉄骨事業も手がけており、同業態を強化して収益拡大を見込む。

4-47. 旭松食品の納豆事業をミツカンへ譲渡

事例概要

  • 旭松食品<2911>は小野工場(兵庫県小野市)の納豆生産ラインを含む納豆事業をミツカンへ譲渡し工場閉鎖。
    背景・狙い
  • 原材料高騰と市場縮小での収益確保が難しく、長く手がけた納豆事業から撤退して本業の即席みそ汁・高野豆腐に集中するための決断です。

4-48. リソルHDによる東急不動産系ゴルフ場運営3社の買収

事例概要

  • リソルホールディングス<5261>は関西カントリークラブ(京都府亀岡市)、三木よかわカントリークラブ(三木市)などを買収。
    背景・狙い
  • ゴルフ場を運営するリソルHDが関西でも長期安定収益が期待できるコースを取り込み、将来的なリゾート事業との相乗効果を狙う。

4-49. 住石HDによる住石山陽採石の譲渡

事例概要

  • 住石ホールディングス<1514>は岩石採取を手がける住石山陽採石(神河町)を第三者に譲渡。
    背景・狙い
  • グループとして事業再編を進める中で、岩石採取・骨材製造事業から撤退し、主力の石炭事業・エネルギー事業に集中する方向性です。

4-50. リゾートトラストによる関西ゴルフ倶楽部(三明)の取得

事例概要

  • リゾートトラスト<4681>は民事再生手続中だった三明(兵庫県三木市)から関西ゴルフ倶楽部を取得。
    背景・狙い
  • 同社が展開する会員制リゾート事業にゴルフ場を追加し、近畿圏での顧客獲得を狙う。再生支援型の買収事例です。

4-51. 古河電工による銅管・銅板事業の投資ファンド譲渡

事例概要

  • 古河電気工業<5801>は奥村金属(尼崎市)などが行う銅管・銅板事業を日本産業パートナーズ系の特別目的会社に譲渡。
    背景・狙い
  • 銅事業が収益改善の余地が少ないと判断し、注力分野への集中を図る。事業ごとに受け皿SPCを設立してファンドに渡す手法です。

4-52. 極東貿易によるファーレ(ドイツ製給電装置)子会社化

事例概要

  • 極東貿易<8093>は搬送機械向け給電システムを扱うファーレ(川西市)を買収。
    背景・狙い
  • ドイツVahle社製品の輸入販売を行うファーレを取得し、産業機械分野の商材を強化。新規分野開拓を進める一環です。

4-53. ヤマウによる中外道路の子会社化

事例概要

  • ヤマウ<5284>は橋梁・高架道路用伸縮装置の製造・設置を行う中外道路(芦屋市)を買収。
    背景・狙い
  • インフラの老朽化対策などで補修工事が増加する見通しの中、相互の顧客基盤を活用して西日本エリアでの建設需要を取り込む。

4-54. 家族亭による寿製麺の子会社化とその後のシマダヤへの譲渡

事例概要

  1. 家族亭<9931>は麺製造の寿製麺(姫路市)を2012年に子会社化(70%取得)。
  2. その後2014年に、同社が保有する寿製麺株式含む麺製造子会社中野食品を、シマダヤ(東京都渋谷区)に譲渡。
    背景・狙い
  • 当初は外食事業で使う麺の自前調達を狙ったが、低迷する外食事業への集中を見直し、製麺部門を大手のシマダヤに売却して経営リソースを外食運営に集約。

4-55. 黒崎播磨による建材事業の積水ハウスへの売却

事例概要

  • 黒崎播磨<5352>は兵庫県高砂工場で製造する住宅用外壁材事業を積水ハウス<1928>に譲渡。
    背景・狙い
  • 耐火物製造が主力の黒崎播磨が建材事業を切り離し、積水ハウスの需要(外装資材を自社で供給)に応じる形での売却となりました。

4-56. 国際航業HDによるKHC子会社化

事例概要

  • 国際航業ホールディングス<9234>は戸建分譲・ディベロッパー事業を行うKHC(明石市)の株式51.29%を取得。
    背景・狙い
  • 不動産関連事業の拡大とKHCグループが持つ兵庫県での顧客基盤を活かし、国際航業の保有資産と組み合わせた新たな事業創出を狙う。

4-57. 三機サービスによる兵庫機工の子会社化

事例概要

  • 三機サービス<6044>は金属製ドア・シャッター・サッシ製造の兵庫機工(姫路市)を株式交換により完全子会社化。
    背景・狙い
  • 三機サービスは業務用空調保守などを行うが、省エネ機器や防火設備との連携を図りサービス領域を拡大させる戦略。

4-58. 岡三証券による相生証券の第一種金融商品取引事業取得

事例概要

  • 岡三証券(岡三証券グループ<8624>)が兵庫県相生市に本店を置く相生証券の有価証券売買など金融商品取引事業を取得。
    背景・狙い
  • 岡三証券プラットフォームに組み込み、より広範な金融サービスを提供。相生証券は金融商品仲介業へ転換します。

4-59. みらかHDによる杏和総合医学研究所(臨床検査事業)取得

事例概要

  • みらかHD(現・H.U.グループ)<4544>は愛仁会が運営していた杏和総合医学研究所(西宮市)の臨床検査事業を承継。
    背景・狙い
  • 阪神地区での検査網を強化し、一般開業医向け検査サービスも開始。地域での市場拡大を図ります。

4-60. 丸紅による三田カントリー27事業のアイランドゴルフ譲渡

事例概要

  • 丸紅<8002>は三田市のゴルフ場「三田カントリー27」運営をアイランドゴルフに売却。
    背景・狙い
  • グループ全体の事業ポートフォリオ見直しの一環。ゴルフ事業から撤退し、資本を他領域に集中する意図です。

4-61. 兼松によるカネヨウへのTOB

事例概要

  • 兼松<8020>は繊維専門商社カネヨウ<3209>にTOBを行い、完全子会社化。カネヨウは元々兼松の羊毛研究所として設立され兵庫県揖保川町(現たつの市)で事業を開始。
    背景・狙い
  • 繊維事業の環境変化に対応し、一体的な経営でカネヨウの業態変革を促進。カーボン繊維等の新素材市場における競争力強化をめざす。

4-62. メディカルシステムネットワークによるケイツージャパンの調剤薬局事業取得

事例概要

  • メディカルシステムネットワーク<4350>はケイツージャパン(大阪・兵庫で12店舗)から調剤薬局事業を取得。
    背景・狙い
  • 関西地区でのドミナント化を進め、調剤薬局の規模を拡大する。

4-63. 関通による河出興産の出版物流サービス事業取得

事例概要

  • 関通<9326>は河出書房新社傘下の河出興産(所沢市)の出版物流サービス事業を取得。受け皿として関通ネクストロジ(尼崎市)を設立。
    背景・狙い
  • EC・通販物流で培ったノウハウを出版物流に応用し、ITソリューションなどで業務改善を図る。

4-64. ヘリオステクノHDによる関西技研買収・日本技術センターのMBO譲渡

事例概要

  • ヘリオステクノ<6927>は技術者派遣業の関西技研(姫路市)を買収し人材ビジネス拡大。一方、人材サービス子会社の日本技術センター(姫路市)はMBOにより雄渾キャピタル・パートナーズへ譲渡。
    背景・狙い
  • 当初は人材ビジネスの規模拡大を狙ったが、装置事業とのシナジーを発揮しきれず、最終的にMBOで売却という再編が行われました。

4-65. 上組によるライト建設グループ3社の子会社化

事例概要

  • 上組<9364>は重量物輸送や建設工事を手がける「ライト建設」3社(兵庫県西宮市・大阪府泉大津市・茨城県古河市)を買収。
    背景・狙い
  • 重量・建設部門の競争力を強化し、風力発電や新エネルギー関連での輸送需要取り込みを期待。

4-66. レカムによるR・S/G・Sコミュニケーションズの子会社化

事例概要

  • レカム<3323>は関西を地盤にデジタル複合機などを販売するR・S(大阪市)、G・Sコミュニケーションズ(尼崎市)を合計5.6億円で買収。
    背景・狙い
  • 関西の通信機器・IT商材の販売チャネルを獲得し、相互の顧客基盤を活かした事業拡大を狙う。

4-67. ベネッセHDによるアップのTOB非公開化

事例概要

  • ベネッセホールディングス<9783>は持分法適用会社のアップ<9630>(西宮市)をTOBで非公開化し完全子会社化へ。
    背景・狙い
  • アップは幼児から社会人まで学習塾を展開。ベネッセの通信教育などとの連携を深め、サービス強化に向け上場廃止を選択。

4-68. パンチ工業の構造改革(兵庫工場)

概要

  • プラスチック金型用部品大手のパンチ工業<6165>が国内工場の統廃合を進め、兵庫県加西市の「兵庫工業」を特注品専用とし、汎用品は海外に移管。希望退職200人を募集。
    背景・狙い
  • 国内金型部品市場のゼロ成長を想定し、生産効率とコスト削減を目指すリストラ策です。

4-69. マーチャント・バンカーズによるホテルシステム二十一買収・ホテル事業譲渡

事例概要

  • マーチャント・バンカーズ<3121>は「加古川プラザホテル」(加古川市)運営のホテルシステム二十一を取得する一方、宮崎・大分のホテル事業をホロニックホテルズへ譲渡。
    背景・狙い
  • 地域性の異なるホテル事業を入れ替えながら、収益性とシナジーを高める再編。兵庫県では加古川プラザホテルを手に入れました。

4-70. ソラストによるJAWAの子会社化

事例概要

  • ソラスト<6197>は兵庫県や大阪府で認知症グループホームなどを運営するJAWAを子会社化。
    背景・狙い
  • 子どもから高齢者まで包括的に介護・福祉事業を展開するソラストが関西エリアでの拠点拡充を図り、地域トータルケアの実現を目指す。

4-71. ドン・キホーテによるフィデック子会社化

事例概要

  • ドン・キホーテ<7532>は経営不振のフィデック<8423>への第三者割当増資を17億円引き受け、48.60%取得。
    背景・狙い
  • 売掛債権買取サービスを手がけるフィデックの信頼回復と資金繰り支援を担う。フィデックも「焼き肉の牛太」(姫路市)などと合わせた第三者割当増資を実施。

4-72. ダイワボウHDによる赤穂国際カントリークラブの譲渡

事例概要

  • ダイワボウホールディングス<3107>は子会社が運営するゴルフ場「赤穂国際カントリークラブ」(赤穂市)を市川ゴルフ興業(東京都)に2億円で売却。
    背景・狙い
  • グループの選択と集中により、ゴルフ場事業から撤退・縮小して繊維・IT関連等本業に経営資源を振り向ける。

4-73. ハウスコムによるシーアールエヌの子会社化

事例概要

  • ハウスコム<3275>は賃貸仲介フランチャイズ「クラスモ」を展開するシーアールエヌ(京都市・兵庫など46店舗)を子会社化。
    背景・狙い
  • 自社の直営200店に加えフランチャイズ網も獲得し、不動産仲介の全国規模でのシェア拡大を目指す。

4-74. バローホールディングスによるトーホーストアの一部店舗取得

事例概要

  • バローホールディングス<9956>は業務用食品卸のトーホー<8142>が運営する「トーホーストア」34店舗のうち一部店舗を取得(計16店舗)。残り店舗は別企業への譲渡や閉鎖。
    背景・狙い
  • 競合激化で厳しい食品スーパー事業から撤退を進めるトーホーと、関西進出を進めるバローグループの思惑が合致。

4-75. ジェイオーグループHDによるジェイオー建設MBO・播州自動車工業譲渡

事例概要

  • ジェイオーグループホールディングス<1710>は土木建築のジェイオー建設(加東市)を代表者のMBOで譲渡。また自動車整備の播州自動車工業(加古川市)株式を売却。
    背景・狙い
  • グループが民事再生手続に入るなど経営危機に直面する中で、建設部門を切り離し再生。交通セグメントも再編しグループ再建を急いだとみられます。

4-76. ジャルコによるハリーズ買収と中国企業への譲渡

事例概要

  • ジャルコ<6812>はICタグ製造装置のハリーズ(明石市)を買収後、短期間で中国EVATECH社に2億円で売却。
    背景・狙い
  • タッチパネル市場参入を狙ったものの想定ほど拡大せず、追加投資を断念して早期売却に踏み切りました。

4-77. ジェイエスエスによる宝塚スイミングスクールの吸収合併

事例概要

  • ジェイエスエス<6074>は宝塚スイミングスクール(売上2.53億円)を吸収合併し、関西でのスイミングスクール運営を強化。
    背景・狙い
  • 直営化により運営コストやサービス水準を統一し、拡大する健康・スポーツ需要に対応する。

4-78. スターティアHDによるビジネスサービス(姫路市)の子会社化

事例概要

  • スターティアホールディングス<3393>はOA機器販売のビジネスサービスを買収。姫路市周辺の顧客約3000社を取り込む。
    背景・狙い
  • 地域企業のITニーズを取り込み、自社商材(クラウドサービスやデジタル販促など)と掛け合わせて売上拡大を狙う。

4-79. ゼクスのチャーミング・スクウェア芦屋事業を富士薬品へ譲渡

事例概要

  • ゼクス<8913>(当時)は健常高齢者向け住宅「チャーミング・スクウェア芦屋」を富士薬品(さいたま市)に譲渡。
    背景・狙い
  • シニアハウジング事業の赤字や遅れを受けて事業再生に踏み切り、ノウハウのある富士薬品に託す形。

4-80. ココカラファインによるフタツカHDおよびルーカス店舗取得

事例概要

  • ココカラファイン<3098>は兵庫県を中心に70店舗を展開するフタツカHDを子会社化し、加えてルーカス(神戸市)の2店舗も取得。
    背景・狙い
  • 調剤薬局・ドラッグストア大手として関西の店舗網を拡大し、ドミナント戦略をさらに推進。

4-81. シェアリングテクノロジーによる電子プリント工業買収と譲渡

事例概要

  • シェアリングテクノロジー<3989>はプリント配線板メーカー電子プリント工業(尼崎市)を約6.53億円で買収後、2020年に社長らへ売却。
    背景・狙い
  • 大手電機メーカーからの安定受注で企業価値を見込んだが、事業シナジーを発揮できず手放す形となりました。

4-82. ソフィアHDによるアルファメディックスの子会社化

事例概要

  • ソフィアホールディングス<6942>は兵庫県内で6店舗の調剤薬局を運営するアルファメディックス(神戸市)を買収。
    背景・狙い
  • グループ子会社ルナ調剤との連携で兵庫県での調剤薬局網を強化。医療・介護の総合サービスを目指します。

4-83. さかい・ジー・ネットワークス・ジー・テイストに対するジー・コミュニケーションのTOB

事例概要

  • ジー・コミュニケーション(名古屋市)が兵庫県稲美町のクックイノベンチャーを親会社とする再編の中で、さかい<7622>・ジー・ネットワークス<7474>・ジー・テイスト<2694>にTOBを実施。
    背景・狙い
  • グループ内での飲食・学習塾・カラオケなど多事業を統合し、スポンサーとして神戸物産が一部出資していた点が注目されました。

4-84. ダスキンによる蜂屋乳業の譲渡(バンリューへ)

事例概要

  • ダスキン<4665>は氷菓子・アイスクリーム製造の蜂屋乳業(大阪市)をバンリュー(姫路市)に譲渡。
    背景・狙い
  • ミスタードーナツ向けアイスなどの事業拡大を模索したが、主力事業の清掃・フランチャイズ部門に集中するための売却とみられます。

4-85. サンフロンティア不動産によるエコリードイノベーション買収(太陽光)

事例概要

  • サンフロンティア不動産<8934>は太陽光発電事業のエコリードイノベーション(姫路市)を2023年に買収。
    背景・狙い
  • 農地活用型のソーラー事業や自家消費型発電を拡大し、脱炭素社会に対応する新規事業開発へ踏み出す。

4-86. いちよし証券による西脇証券の子会社化

事例概要

  • いちよし証券は西脇証券(西脇市)を株式交換により子会社化。
    背景・狙い
  • 兵庫県北部・中部に強い地盤を持つローカル証券を取り込み、地域顧客との結びつきを強める。

4-87. アインファーマシーズによるメディオ薬局の子会社化

事例概要

  • アインファーマシーズ<9627>は静岡県地盤のメディオ薬局を買収したが、同社は兵庫県にも複数店舗を所有。
    背景・狙い
  • 地域ごとに調剤網を整備するアインの戦略の一環。兵庫県でのシェア拡充にも寄与します。

4-88. イチネンHDによるミツトモ製作所買収

事例概要

  • イチネンホールディングス<9619>はホームセンター向け電動工具を製造・卸するミツトモ製作所(三木市)を子会社化。
    背景・狙い
  • 自動車リースや産業工具など幅広い事業を展開するイチネンHDがDIY向け工具に進出し、ホームセンタールートを取り込む狙いと見られます。

4-89. エイチ・ツー・オー リテイリングによる貨物運送子会社の譲渡(江坂運輸・阪神運送)

事例概要

  • エイチ・ツー・オー リテイリング<8242>は百貨店の物流を担っていた江坂運輸(大阪市)と阪神運送(西宮市)をセンコー<9069>に譲渡。
    背景・狙い
  • 主力の百貨店事業が変革期を迎える中、物流機能を専門業者に集約することで効率化を目指したものとみられます。

4-90. オートバックスセブンによる大洋の完全子会社化とG-7HDへの店舗譲渡

事例概要

  • オートバックスセブン<9832>は兵庫県南あわじ市のフランチャイズ運営会社大洋を完全子会社化、さらに洲本店をG-7HD(神戸市)の子会社へ譲渡。
    背景・狙い
  • 淡路島周辺の経営体制を再編し、フランチャイズ運営の効率化やドミナント効果を高める。

4-91. カネミツによる松本精工の子会社化

事例概要

  • カネミツ<7208>は自動車用電装部品などを手がける松本精工(加古川市)を買収。
    背景・狙い
  • プーリ関連部品製造のカネミツが同社の加工技術を取り込み、EV化が進む自動車業界で新製品開発へ対応力を高める意図があります。

4-92. CSSHDによるヤマト食品のケイエフへの譲渡

事例概要

  • CSSホールディングス<2304>は献立付き食材販売や給食受託を手がけるヤマト食品(神奈川)をケイエフ(姫路市)に売却。
    背景・狙い
  • グループ内で収益が不安定な子会社を整理し、本業のリネンサプライ・ホテル関連サービスへ注力する方針。

4-93. オプテックスグループによるミツテック(淡路市)の子会社化

事例概要

  • オプテックスグループ<6914>は画像処理検査装置メーカーのミツテックを買収(2021年11月)。
    背景・狙い
  • ファクトリーオートメーション領域を強化し、センサー技術と画像処理技術を組み合わせることで製造ラインのトータルソリューションを提供。

4-94. イオンによるウエルシアHDのTOB子会社化とタキヤ・シミズ薬品統合

事例概要

  • イオン<8267>はドラッグストアのウエルシアHD<3141>にTOBをかけ、子会社化。同時に兵庫県尼崎市のタキヤや京都のシミズ薬品、静岡のCFSコーポレーションとの経営統合を主導。
    背景・狙い
  • イオングループ内でドラッグストアを一体化し、医薬品と日用品をカバーする流通網を拡充。関西でもウエルシアHDを核に再編が進みました。

4-95. アウトソーシングによるマークスファクトリー(西脇市)の子会社化

事例概要

  • アウトソーシング<2427>は製造や物流、医療・看護系の人材派遣を手がけるマークスファクトリー(西脇市)を買収。
    背景・狙い
  • 西日本での派遣拠点を増やし、人材不足が顕著な医療・物流分野を取り込むことで事業規模を拡大する戦略。

4-96. TACによる医療事務スタッフ関西・クボ医療の子会社化

事例概要

  • TAC<4319>は兵庫県神戸市を拠点に医療事務派遣を行う2社を買収し、医療系資格教育と派遣を一体化。
    背景・狙い
  • 自社の教育インフラと医療事務の現場ノウハウを統合して、新たなサービスラインを構築しシェアを伸ばす。

4-97. アーバンライフによるアーバンサービス譲渡(関電・森トラスト)

事例概要

  • アーバンライフ<8851>はマンション管理会社アーバンサービス(芦屋市)株の50%を譲渡し、財務体質改善。
    背景・狙い
  • マンション管理業務は引き続き提携関係を維持しながら、主力事業のデベロッパー機能に集中させる意図と推察されます。

4-98. JR西日本によるキリンホテル開発買収

事例概要

  • JR西日本<9021>はキリングループから「ホップイン アミング」(尼崎市)を運営するキリンホテル開発を買収。
    背景・狙い
  • 尼崎駅周辺のホテル稼働率向上と地域活性化に向けて、駅周辺開発にJR西グループが深く関与し、シナジー創出を図ります。

4-99. アートスパークHDによるエイチアイ関西の買収と譲渡

事例概要

  • アートスパークHD<3663>は移動体通信関連ソフトのエイチアイ関西(伊丹市)を約0.98億円で買収。しかし2016年には株式91.7%を第三者に譲渡。
    背景・狙い
  • スマートフォンや車載向けソフト開発での協業を期待したが、十分な成果が得られず手放した形です。

4-100. JRCによる向井化工機・東陽工業などの子会社化と兵庫拠点

事例概要

  • JRC<6224>(旧日本鐵板→JFE系列)グループは兵庫県小野市に拠点を置くJRC C&Mを通じ、プラント設備設計を行う花田設計事務所(芦屋市)や水処理プラントの向井化工機を買収。
    背景・狙い
  • 廃棄物処理やプラント事業などを強化し、幅広いエンジニアリング領域で受注拡大を図る。

5. 兵庫県におけるM&Aの今後の展望

前章まで取り上げた事例から、兵庫県でのM&Aは各産業にわたり活発であることがわかります。特に以下のような動きが今後も続くと考えられます。

  1. 高齢化に伴う事業承継ニーズの高まり
    兵庫県でも後継者不足に悩む中堅・中小企業が増加傾向にあります。そこで大手企業やファンドがスポンサーとしてM&Aを実行する機会が今後さらに広がるでしょう。
  2. 中核都市圏での競争激化による統合
    神戸や姫路といった商圏では小売・外食・サービスなど競争が激しく、大手チェーンや周辺地域の有力企業により集約が進むとみられます。特にドラッグストア・調剤薬局や外食チェーンは今後も出店競争を背景にした買収・統合が予想されます。
  3. インフラ老朽化対応や災害対策に伴う再編
    兵庫県内でも橋梁や道路、下水道などインフラの老朽化が進んでいるため、補修・メンテナンス市場が拡大しています。中外道路やヤマウなどの事例のように、土木・インフラ関連企業がM&Aで統合し、対応力を強化する動きが今後も続きそうです。
  4. 国内外のメーカー再編が県内工場に波及
    川崎重工や神戸製鋼所、古河電工など大手企業の経営戦略や業界再編が、兵庫県内の事業所・子会社の売却・統合・集約につながるケースが引き続き起こる可能性があります。世界的な景気動向や技術革新(EV化など)への対応によっては、今後も大規模な再編が進むでしょう。
  5. ファンドの積極的な参入
    MBOや事業再生の案件を中心に、兵庫県内の企業に対して国内外ファンドが関心を寄せています。海外ファンドや国内独立系ファンドによるM&Aが今後も見込まれます。

6. まとめと地域経済へのインパクト

兵庫県におけるM&Aは、県内の多様な産業構造を背景として活況を呈しています。タクシー・バス、物流、建設、不動産、小売、外食、医療・調剤、介護、ゴルフ場運営など、多岐にわたる業態で買収・統合が行われてきました。いずれの事例でも共通して見られるのは、「事業の選択と集中」「地域密着でのドミナント戦略」、**「後継者難や経営基盤強化を求める中小企業と、スケールメリットを求める大手・ファンドとのマッチング」**といった動機です。

兵庫県は地理的にも広域であり、神戸市や阪神間の都市型産業だけでなく、播磨地域や但馬地域などにおける製造・観光産業、北部の農業など多様な顔を持ちます。そのため、地域ごとに特徴的な再編が進み、県全体としてはお互いを補完する形でのM&Aが数多く行われている点が興味深いといえます。

今後も人口構造や世界経済の変化に伴い、事業領域の再編やグローバル競争への対応が避けられないため、兵庫県内でのM&Aは継続的に増加すると予想されます。特に製造業では、EV関連など新技術への対応やコスト構造改善が課題となるため、関連部品メーカーの統合や事業譲渡が増える可能性が高いです。また、流通・サービス分野では少子高齢化や消費者ニーズの変化を背景に、生き残りをかけた合併・買収が続くでしょう。

一方で、こうしたM&Aが地域経済にもたらす影響は、一概にポジティブなものばかりではありません。経営統合や再編による雇用の安定や生産性向上に期待が持てる一方、集約や合理化の過程で地域の雇用やサービス拠点が縮小される恐れもあります。兵庫県としては、企業の誘致や中小企業の事業継承支援策などを通じて、地域全体での持続的な発展を図ることが重要となるでしょう。

もっとも、県内に拠点を構える企業にとっては、市場環境や技術革新のスピードを考えれば、外部資本を受け入れて生き残りを図る、あるいは積極的に買収を仕掛けて拡大を狙うといった選択肢が不可欠になりつつあります。M&Aはあくまで企業の成長戦略や再生策の一環であり、**「誰と組むか」「どのタイミングで行うか」**が成否を分ける重要なポイントです。

兵庫県内のM&A事例をここまで俯瞰してみると、県が持つ多彩な産業の裾野と、全国的に見ても多様な買収・再編ニーズが交わる場であることが改めて浮き彫りになります。今後も大手・中小、国内・海外問わず、さまざまな主体が兵庫県を舞台にM&Aを進める可能性は高く、県内企業の動向や産業再編の行方から目が離せません。

兵庫県は「五国」(摂津・播磨・但馬・丹波・淡路)とも呼ばれるほどの多様性を内包する土地柄ですが、その分だけ新たなシナジーや事業機会も生まれやすい土壌があるといえます。観光と農林漁業、重工業と先端技術、小売と医療・介護など、さまざまな領域で県内企業同士や全国・海外企業との連携が進むと同時に、今後も数多くのM&A事例が発生するでしょう。

以上、兵庫県における近年のM&A事例を中心に解説してまいりました。地域の産業構造や企業規模、そして個々の企業が抱える課題が複雑に絡み合うことで、M&Aの数と種類が豊富になっている現状がおわかりいただけたかと存じます。今後の展開にも注目が集まるこのエリアは、関西圏における経済再編のキープレイヤーとして、引き続き重要な役割を担っていくと考えられます。