目次
ITコンサルティング業の市場環境
2024年のITコンサルティング業界は、以下の要素が特に注目されています。
– グローバル市場の成長トレンド:
– AIやクラウドテクノロジーに関する需要の伸長が顕著で、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展が市場拡大の重要な原動力となっています。
– 主要プレイヤーと競争環境の変化:
– 主要なコンサルティングファーム間での競争がさらに激化し、AIやクラウド分野における専門サービスが強化されています。日本市場でも、独自のサービス提供で差別化を図る例が増えています。
– 国内市場での成長領域:
– ESGやサステナビリティ関連のコンサルティング需要が拡大しており、環境問題や社会貢献を重視する企業が増加しています。また、デジタル化が進む中でのサイバーセキュリティ支援やITコンサル分野も引き続き成長が期待されています。
– AI・クラウドの導入拡大と課題:
– AIやクラウド技術の導入が加速しており、AIを活用した業務効率化や意思決定支援ツールが企業の競争力向上に貢献しています。ただし、技術の透明性の欠如やセキュリティリスクが新たな課題として浮き彫りになっています。
– 新たな市場と地域に向けた戦略:
– 中東地域への進出が注目されており、エネルギー分野やインフラ投資が拡大しています。アジア市場も重要な成長領域として位置付けられていますが、政治的リスクや急激な規制変更が潜在的なリスクとして挙げられます。
– 国内ITサービス市場予測:
– IDCによると、2024年以降の国内ITサービス市場は、サービスセグメント別、産業分野別のいずれも好調を維持し、2023年~2028年のCAGR 6.2%で成長し、2028年には8兆8,201億円に達すると予測されています。
– ITコンサルタント企業の売上高ランキング:
– 野村総合研究所やアビームコンサルティングなどの大手ファームが売上高ランキングでトップに立っています。
これらの要素が、2024年のITコンサルティング業界の市場環境を形成しています。
ITコンサルティング業のM&Aの背景と動向
ITコンサルティング業のM&Aの背景と動向は以下の通りです。
– 技術革新と人材不足:IT業界は急速な技術革新とサービスの多様化に伴い、人材育成が追いつかないケースが多い。M&Aを通じて優秀なエンジニアを確保することで、顧客企業へのサービス提供力を強化できるメリットがあります。
– 企業規模と成長戦略:IT企業は総じて企業規模が小さい先が多く、それもM&A取引が活発に行える理由ではないかと考えます。各社とも生き残りをかけて、成長期に入るタイミングを見定めつつ、成長戦略の一環としてM&Aを採用する企業が増えている。
– 地方での採用難易度とM&A:近年、大都市圏での採用が難しくなる中、大手IT企業は、地方の有力なシステム開発会社とのM&Aに力を入れています。
– M&A件数の増加:2024年上半期のIT業界におけるM&A件数は676件に達し、前年同期比で約10%増加しました。10年前の2014年上半期と比較すると、3倍以上に膨らんでいます。
– M&Aの目的:一般に、M&Aを実施している企業は、経営者の高齢化や後継者不足を背景とした事業承継、経営不振からの脱却、成長戦略の一環などの背景があります。特に、若い経営者中心に企業の成長に必要な技術やノウハウ、人材等を取り込むバイアウトを繰り返すことで、会社の戦略的発展をめざしています。
– 新技術とニーズの高まり:新技術の台頭や他業界からのニーズの高まりによって、IT業界は業績だけでなく、M&A件数も上昇傾向にあります。
– 異業種間のM&A:近年、異業種間でのM&Aが増えています。例えば、建設コンサルティングとシステム開発の組み合わせによるM&Aが挙げられます。
– IT企業同士のM&Aと異業種M&A:IT企業同士のM&Aがメインではありましたが、近年増加しているのが、異業種とIT企業のM&Aです。製造業などのIT業種以外の一部の企業が、IT企業(特に受託開発ソフトウェア業などの開発機能を持った小規模SIer)を譲り受ける事例が増えています。
これらの動向から、ITコンサルティング業のM&Aは、技術革新と人材不足を解決するための戦略的発展を目指し、企業規模の小ささや地方での採用難易度を克服するために活発に行われています。
ITコンサルティング業のM&A事例
ITコンサルティング業のM&A事例を以下にまとめます。
### ITコンサルティング業のM&A事例
1. 日立製作所によるソシエダ―ド・デ・コンサルトレス・アプティーボの買収
– 2011年1月: 日立製作所はスペインのITコンサルティング事業会社ソシエダード・デ・コンサルトレス・アプティーボを買収しました。買収によって日立はアプティーボの持つスペイン国内の有力顧客を獲得し、ITコンサルティング事業をより強化していくとみられています。
2. NTTデータによるキューデータサービスの買収
– 2019年12月: NTTデータはアメリカのIT人材派遣会社キューデータサービスを買収しました。キューデータは金融業や地方自治体への派遣事業を展開しており、NTTデータはシナジーが生めると見込んでいます。
3. キリンホールディングスとNTTデータの情報システムで資本提携
– 2012年3月: キリンホールディングスとNTTデータが情報システム分野で資本提携しました。キリングループの情報システム分野を担ってきたキリンビジネスシステムの発行済み株式の49%をNTTデータに譲渡する形で資本提携を行いました。経営管理の高度化や戦略実行に向けた業務システムの開発・情報インフラの構築を行い、ビジネスの発展につなげる方針です。
### 近似事例
1. ユニリタによる無限の買収
– 2018年2月: ユニリタはシステムインテグレーションを手掛ける無限を子会社化しました。対象会社のシステム開発力を活かすことで、既存顧客のニーズへの対応力の強化に成功しました。両社の技術力や業務ノウハウへの知見を合わせることで、新たなサービスソリューションを開発したいとしています。
2. SAMURAI&J PARTNERSによるヴィオの買収
– 2018年1月: SAMURAI&J PARTNERSはITソリューション、システム受託開発を手がけるヴィオの全株式を取得し完全子会社化しました。ヴィオは流通や金融、官公庁系ビジネスアプリケーション開発などに実績を持つ企業です。この買収により、買い手のSAMURAIは主力のデータ通信高速化ミドルウエア「astConnector」シリーズを拡大するとともに、新規分野と位置付ける「金融×IT」関連での相乗効果を狙っています。
ITコンサルティング業の事業が高値で売却できる可能性
ITコンサルティング業の事業が高値で売却できる可能性について、以下のポイントをまとめます。
– 自社の強みを把握すること:売り手企業が自社の強み(優秀なエンジニアなど)を認識し、アピールすることが重要です。具体的には、優秀なエンジニアの確保や優良取引先の確保が効果的です。
– シナジー効果の期待:買い手企業との間で期待できるシナジー効果が大きい場合、売却価格が高くなる可能性があります。特に、買い手企業との間で想定されるシナジー効果が高い場合、売却価格が高くなる可能性があります。
– 企業価値評価:売り手企業の将来的な収益性を基準に、企業価値を算定するアプローチ(インカムアプローチ)や、市場情報を参考にするマーケットアプローチが有効です。具体的には、企業価値の客観的な評価が重要です。
– エンジニアの人数と単価:エンジニアの人数と単価を基準にした計算方法も有効です。例えば、エンジニアの人数 × エンジニアの単価で算出した価格を、売買金額として提案することができます。
– 交渉の重要性:最終的な売却金額は、売り手と買い手の交渉で決定されます。売り手が自社の強みを的確にアピールし、買い手企業に自社の魅力を認識してもらうことが重要です。
これらのポイントを踏まえると、ITコンサルティング業の事業が高値で売却できる可能性は高いと言えます。
ITコンサルティング業の企業が会社を譲渡するメリット
ITコンサルティング業の企業が会社を譲渡するメリットをまとめると、以下の通りです。
– 譲渡対象範囲を選択できること譲渡人からすれば残しておきたい事業を選択でき、譲受人からすれば欲しい事業だけを選択できます。合併手続きのようなオールオアナッシングにならない点が事業譲渡の魅力となります。
– 簿外債務を回避できることDD(デューディリジェンス)を実施しても、譲渡人が抱え込むすべての債務を発見することは困難です。しかし事業譲渡の場合、事業の範囲を選択できることはもちろん、債務を承継するか否かについても選択することが可能です。
– 法定の手続き規制が少ないこと法定手続きが不要とされているのですが、一方で、事業譲渡は、その事業を構成する個々の財産の売買取引となるため、個別対応が必要となります。
– 税金が発生すること事業譲渡は売買取引である以上、その対象となる事業に含まれる資産に課税対象がある場合は消費税を負担する必要があります。一方、合併手続きの場合、消費税は課税されません。
– 売却利益を獲得できることIT企業を株式譲渡(会社譲渡)で売却すれば、その売却利益は株主のものになります。
– 各種認可を継承できること株式譲渡(会社譲渡)は会社を包括的に譲渡するため、その会社が取得している許認可もそのまま承継することができます。
– 後継者に関する問題の解決株式譲渡はM&Aを活用し、別企業に買収してもらう方法があるため、後継者がいなくても問題なくできます。
– 会社の負債の解消株式譲渡では買収側の同意がなければ負債を引き継げませんが、事業譲渡では買収側の同意がなければ負債を引き継ぐことができません。
ITコンサルティング業の事業と相性がよい事業
ITコンサルティング業の事業と相性がよい事業は以下の通りです。
– IT戦略策定: ITを企業の経営戦略の一部として活用し、計画、立案、実行を支援します。IT投資や情報化人材戦略、CIO支援。
– ERPパッケージ導入: ERPパッケージ(SAPやOracleなど)を活用して企業の業務改革(BPR)を実現させ、企業成長を支援します。ERPパッケージ導入支援。
– CRMシステム構築: 顧客ニーズを把握し、顧客ごとにパーソナライズされた商品・サービスを提供する仕組みを構築、支援します。CRMコンサルタント。
– SCM戦略立案: SCM(サプライチェーン)戦略立案、計画から導入や、コスト削減、BPOなどのテーマにおいて課題解決、収益改善を支援します。SCMコンサルタント。
– プロジェクトマネジメント: ITプロジェクトを総合的に管理し、組織全体のプロジェクトマネジメントの品質や能率を向上させ、全体収益に直結する支援をします。PMOコンサルタント。
– サイバーセキュリティ: クライアントのサイバー領域に関する課題を把握して対策を提案し、実行を支援します。サイバーセキュリティコンサルタント。
– AIソリューション: お客様の持つ様々な課題・求められるニーズに最先端の「AI」を駆使し、経営的観点、ビジネス的観点、技術的観点からAIをインテグレーション、お客様に最適なサービスを提供します。AIソリューション。
これらの事業は、ITコンサルティング業の基本的な領域であり、企業のパフォーマンス向上に大きく貢献します。
ITコンサルティング業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
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株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。