目次
高度医療特化動物病院の市場環境
高度医療特化動物病院の市場環境は、以下の点で良好です。
– 市場規模の増加:ペットの家族化と飼い主の高齢化により、動物病院の支出額が増加し、ペット保険の市場規模も2ケタ成長が続いています。
– ニーズの高まり:飼い主がペットにも人間と同じように高度な医療を受けさせたいというニーズが高まり、一次診療では対処できない疾患に対する二次診療の需要が増えています。
– 技術の進歩:高度な画像診断設備を備えた動物病院や獣医クリニックの拡大により、画像診断技術の進歩が市場に大きな影響を与えています。例えば、AsterisとVetlinkPROのパートナーシップやESAOTE SPAのAugmented Insightテクノロジーを搭載したMyLab X90VET超音波システムの発売などが挙げられます。
– 市場予測:2022年に約792億米ドルと評価された世界の動物病院市場は、2023年から2030年の予測期間にわたって5.80%を超える健全な成長率で成長すると予想されています。
– 地域別の成長:北米は多数の確立された動物病院と診療所、ペットの飼育数の増加と獣医学の進歩により市場を独占し、ラテンアメリカは動物個体数の増加と優れた獣医療ソリューションへの需要と動物サービス支出の増加により急速に成長しています。
これらの要因により、高度医療特化動物病院の市場環境は今後も安定的な成長を続ける見込みです。
高度医療特化動物病院のM&Aの背景と動向
高度医療特化動物病院のM&Aの背景と動向について以下のようにまとめます。
### 背景
動物病院業界の変化
動物病院業界は、昭和期に大きな成長を遂げ、平成期に成熟期を迎えました。令和期には、少子高齢化や動物愛護法の改正などにより、飼育頭数の減少が深刻化しています。農水省の統計によると、直近10年で動物病院1院あたりの犬猫頭数は18.9%減少しています。
### M&Aの動向
外来数減少と対応
2023年から外来数減少の波が押し寄せています。この流れは2024年以降も続いていくと考えられ、減少に対する対応策をとることが急務です。具体的には、1頭あたりの接点を増やすこと(未病・予防や健康診断、歯科など)が求められます。
専門医療・高度医療に対するニーズの増加
ペット1頭にかける費用は年々増加を続けており、ペットの家族化は現在も進行中です。特に慢性疾患や命にかかわる疾患においては、より専門的な知識や経験、スキルを持った獣医師がいる動物病院での治療を望むペットオーナーが増加しています。
承継者不足による企業病院・大型病院の増加
現在、承継者不在という課題に直面している動物病院が増加しています。企業による動物病院のM&Aが加速しており、2024年はさらにM&Aの動きが活発化し、動物病院グループ化の動きが加速すると考えられます。
### M&Aの実践
LTV(ライフタイムバリュー)最大化へのシフト
飼育頭数の減少は今後も加速度的に進んでいく見込みです。病気を治すだけでは頭数減少のスピードに耐えることができなくなってきます。若齢期からの囲い込みや予防・健康診断を徹底して実施し、1頭当たりの売上総額を最大化する方向性にシフトする必要があります。
専門性の磨きこみ
ペットオーナーは症状や病気ごとに動物病院を使い分ける傾向に変わりつつあります。この流れは「ペットの家族化」「インターネットによる情報の普及」などが今後も進むことからも、さらに勢いを増すと考えられます。専門性や強みを持つ動物病院は、飛躍的に業績を伸ばすことができています。
### M&Aの手法
XM&Aの新しいM&A手法
XM&Aは、カルテを資産とみなして近隣の動物病院に承継する新しいM&A手法を提供しています。この手法は、分院を作ることなく譲受ができ、新たな顧客をもたらすことが特長です。
### まとめ
高度医療特化動物病院のM&Aは、動物病院業界の変化や外来数減少、専門医療ニーズの増加、承継者不足などの背景から進んでいます。LTV最大化、専門性の磨きこみ、XM&Aの新しいM&A手法など、動物病院がこれからも競争力を維持するための戦略が求められています。
高度医療特化動物病院のM&A事例
高度医療特化動物病院のM&A事例をまとめます。
– イオンペットによる東京イースト獣医協会動物医療センターの子会社化:
– 地域での動物病院間の連携を図ることで動物医療水準の向上を目指します。各設備の拡充などを進め、医療体制のさらなる充実化を目指します。
– YCP Lifemateによる山口獣医科病院の買収:
– 予防医療や高度医療を充実させる見込みです。YCP Lifemateは、YCPグループ傘下でライフメイト動物病院グループの運営など手掛けています。
– JVCCによるFORPETSの株式取得:
– 動物病院におけるグループ化の推進を加速させました。FORPETSは東京都で2つの動物病院と1つのペットサロンを運営し、東京都23区を中心に予防医療から高度な専門医療まで幅広く診察を行っています。
– エルムスユナイテッド動物病院グループによるタイグリスの子会社化:
– IoTの活用による獣医療技術の向上を進め、より最適な医療の提供につなげています。エルムスユナイテッド動物病院グループは、高度獣医療センター・一次動物病院となる10の病院を運営し、再生医療や先端獣医療、動物iPS細胞の研究、AIを活用した獣医療などを行っています。
– JVCCによるブイアイエスの株式取得:
– 動物病院におけるグループ化の推進を加速させました。ブイアイエスは大阪府・兵庫県・東京都・埼玉県で7つの動物病院を運営しており、各地のショッピングセンター内に動物病院を展開しています。
– JVCCによるフジフィールドの株式取得:
– 企業組織による病院経営モデルを構築して事業構想に賛同する病院のグループに対する参画を促進しました。フジフィールドは、東京都と神奈川県で3つのペットサロン併設型動物病院と7つのペットサロンを運営する企業です。
これらの事例は、高度医療特化動物病院のM&Aが地域での連携や医療技術の向上を目指し、効率化や専門知識の共有を促進することを示しています。
高度医療特化動物病院の事業が高値で売却できる可能性
高度医療特化の動物病院の事業が高値で売却できる可能性について、以下のポイントをまとめます。
– 資本力のある買い手: 高度医療を行うためには先端設備が不可欠であり、豊富な資金力が求められます。資本力のある動物病院グループの傘下に入ることで、病院の設備を充実させることが可能です。
– 高度医療の需要: ペットの高齢化や都市部での高品質な診療の需要が増えているため、高度医療を請け負う動物病院の価値が高まっています。
– 評判の高い病院: 地域の口コミによる評判が高い動物病院は、好条件で売却・譲渡が成立します。特に、視鏡検査・超音波検査・デジタルレントゲンなどの最新機器を導入している病院は、高評価を受けやすいです。
– 売却相場: 動物病院業界のM&Aの場合、売却側は動物病院を守ることを最優先に考え、売却相手を探す傾向があります。M&A相場は割安となるケースが多く、譲渡価額の相場は「純資産+営業利益1~3年分」と考えられます。
– 買い手側のニーズ: M&Aでは、買い手側のニーズと自社のアピールポイントが一致する場合に、希望どおりの条件で取引が成立します。アピールポイントを整理しながら買い手側のニーズをリサーチすることが重要です。
これらのポイントを考慮することで、高度医療特化の動物病院の事業が高値で売却できる可能性が高まります。
高度医療特化動物病院の企業が会社を譲渡するメリット
高度医療特化動物病院の企業が会社を譲渡するメリットをまとめると、以下の通りです:
– 経済的なメリット:売却によって資産を現金化し、経営資金の調達や再投資が可能です。これにより、病院の設備や診療技術の向上、スタッフの研修・賃金改善などが可能になり、より高品質な医療ケアを提供できます。
– 運営効率の向上:M&Aによる統合により、管理コストの削減や共通のシステムの導入が可能で、病院の運営が効率化され、コスト削減のメリットが生まれます。
– 新たな患者ベースの獲得:買収によって市場での競争力が向上し、新たな患者ベースを獲得できるため、業績拡大の機会が生まれます。
– 専門的な知識の取り込み:買収はまた、専門的な知識や経験を持つ獣医師やスタッフを取り込む機会を提供します。これにより、高度な医療ケアの提供が強化され、施設の評判と信頼性の向上が期待可能です。
– 後継者問題の解決:M&Aによる売却・譲渡であれば、信頼できる後継者を探して引き継げます。特に獣医師業界では、子どもに病院を継がせることが難しいことが多いため、M&Aは後継者問題を解決する手段として有効です。
– 資本力の安定:M&Aによって、資本力のある動物病院グループなどの傘下に入れれば、安定した経営が可能です。これにより、充実したサービスを提供するための資金が確保され、競争の激化や医療技術の高度化に対応しやすくなります。
高度医療特化動物病院の事業と相性がよい事業
高度医療特化動物病院の事業と相性がよい事業は以下の通りです:
– ペットショップやカフェとの連携:ペットショップやカフェとの事業承継や連携は、双方の持つ強みを生かすことができ、新しい商品・サービスが話題を呼んで新規顧客獲得に繋がります。
– オンライン決済システムの導入:飼い主の利便性を向上させるオンライン決済システムの導入は、動物病院の受付や予約の効率化に役立ちます。
– 事業承継のマッチングプラットフォーム:動物病院の事業承継のマッチングプラットフォームの開発は、優れた人材の獲得や事業拡大を支援します。
– 地域の救命救急拠点の設立:地域の救命救急拠点の設立は、緊急時の対応を強化し、地域社会との連携を深めます。
– 獣医師や動物看護師の働く環境の整備:獣医師や動物看護師の働く環境の整備は、よりよい治療が提供できるように整備し、専門医療にも柔軟に対応します。
これらの事業は、動物病院の高度医療特化に適しており、サービス品質や利益率の向上に寄与します。
高度医療特化動物病院の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、譲渡企業様から手数料を一切いただかないため、コストを抑えたM&Aを実現できます。また、豊富な成約実績を誇り、これまで多くの企業様にご満足いただいております。さらに、高度医療特化動物病院の業界にも知見を保有しているため、専門的なニーズにも対応可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。