目次
電子商取引運営業の市場環境
日本の電子商取引(EC)市場は、2023年末に大きな成長を示しています。以下に主要なポイントをまとめます。
– BtoC EC市場規模の拡大:2023年末のBtoC EC市場規模は24.8兆円に達し、前年比9.23%増加しました。
– EC化率の増加:EC化率も9.38%に達し、前年比0.25ポイント増加しました。
– BtoB EC市場規模の拡大:2023年末のBtoB EC市場規模は465兆円に達し、前年比10.7%増加しました。
– EC化率の増加:EC化率も40.0%に達し、前年比2.5ポイント増加しました。
– 物流コストの課題:EC市場拡大に伴い宅配便取扱個数が急増しており、物流コストの上昇が課題となっています。
– 宅配便取扱個数の増加:2022年度の宅配便取扱個数は50億個を超えましたが、2023年度には46.4億個と前年比約1%減少しました。
– 物流の2024年問題:トラックドライバーの時間外労働時間の上限規制が行なわれ、トラックの輸送力が不足する懸念があります。
– デジタル技術の進化:EDI(電子データ交換)システムの標準化が、取引プロセスの効率化を加速させています。
– 卸売業のEC化率の増加:卸売業におけるEC化率は37.5%に達し、前年比2.6ポイント増加しました。
– サービス系分野の急成長:サービス業におけるEC導入が、パンデミック後の需要回復に伴い消費者行動に大きな影響を与えています。
– 旅行サービスと飲食サービス:旅行サービスのEC取引が急速に回復し、レストラン予約やデリバリーサービスのオンライン化も進んでいます。
これらのポイントから、日本のEC市場は拡大傾向にあり、物流コストの課題やデジタル技術の進化が市場の動向を形作っています。
電子商取引運営業のM&Aの背景と動向
電子商取引(EC)運営業のM&Aの背景と動向は以下の通りです。
### 背景
– 市場拡大: EC業界の市場拡大がM&Aの活発化を促しています。企業は市場の成長を利用して、主力事業への集中や新市場の開拓を目指しています。
– 技術進歩: ITや物流システムの進歩が、EC事業の効率化と競争力を高め、M&Aの必要性を生み出しています。
– 競争激化: 市場での競争が激化しており、企業は異業種間のM&Aを通じて、コスト削減や売り上げの増加、ノウハウの獲得を目指しています。
### 動向
– 業界再編: 大手EC事業者による業界再編が進んでいます。グループ力の強化や顧客基盤の強化が目指されています。
– 異業種M&A: EC業界では異業種間のM&Aが活発です。理由としては、コスト削減や売り上げの増加、ノウハウの獲得などが挙げられます。
– M&Aの手法: M&Aは資本業務提携や公開買付けなど様々な手法が使用されています。具体的には、資本業務提携では第三者割当増資が活用され、公開買付けでは株式の取得が行われています。
### 事例
– ZOZOとZホールディングス: Zホールディングスは、ZOZOのEコマース事業を強化する目的でM&Aを行い、公開買付けを活用してZOZO株式の50.1%を取得しました。
– 楽天とFablic: 楽天は、EC領域におけるC2C事業の拡大を目的にFablic社を買収しました。M&A後、楽天が運営していたフリマアプリ「ラクマ」と統合されました。
– 小田急電鉄と白鳩: 小田急電鉄は、EC事業を拡大するために白鳩とのM&Aを行い、第三者割当増資を活用しました。
### メリット
– IT投資の強化: M&Aにより、譲渡企業はIT投資を強化し、効率化を図ることができます。
– 商品ラインナップの拡充: M&Aにより、譲り受け企業は商品ラインナップを拡充し、顧客満足度を向上させることができます。
### 注意点
– リスクの管理: M&Aには多くのリスクが伴います。企業は、リスクの管理を徹底し、適切な評価を行うことが重要です。
これらの点がEC運営業のM&Aの背景と動向を理解するための重要な要素です。
電子商取引運営業のM&A事例
### EC業界のM&A事例
#### インターファクトリーによるジグザグのM&A
– 実行時期: 2022年3月
– スキーム: 資本業務提携
– 取引価額: 非公開
– 目的: EC事業者への支援体制の強化
#### 綿半ホールディングスによる大洋のM&A
– 実行時期: 2021年3月
– スキーム: 株式譲渡
– 取引価額: 非公開
– 目的: 取扱商品の拡充
#### ロコンドによるFashionwalkerのM&A
– 実行時期: 2020年7月
– スキーム: 株式譲渡
– 取引価額: 非公開
– 目的: アパレル領域のEC事業強化
#### TSIホールディングスによるEfuego CorpのM&A
– 実行時期: 2020年3月
– スキーム: 株式譲渡
– 取引価額: 非公開
– 目的: アメリカ現地子会社とのシナジー効果
#### ヤフーとZOZOのM&A
– 実行時期: 2019年9月
– スキーム: 株式公開買い付け
– 取引価額: 最大4007億円
– 目的: EC事業のさらなる成長とファッションカテゴリーの強化
#### 楽天と日本郵政のM&A
– 実行時期: M&A事例なし
– スキーム: 業務提携合意書
– 目的: 地域社会への貢献やお客様の利便性向上、事業拡大
#### 楽天とFablicのM&A
– 実行時期: M&A事例なし
– スキーム: 株式取得
– 目的: EコマースでのC2C事業の拡大
#### セブン&アイ・ホールディングスとアスクルの業務提携
– 実行時期: M&A事例なし
– スキーム: 業務提携合意書
– 目的: 各社の経営資源を相互に補完し、高いシナジーが実現
#### ロコンドとFashionwalkerのM&A
– 実行時期: 2020年7月
– スキーム: 株式譲渡
– 取引価額: 非公開
– 目的: アパレル領域のEC事業強化
#### 京王百貨店とセレクチュアーのM&A
– 実行時期: 2016年10月
– スキーム: 株式譲受
– 取引価額: 非公開
– 目的: EC事業領域への進出と、EC事業運営ノウハウやマーケティング力の確保、顧客基盤拡大
#### エディオンとフォーレストのM&A
– 実行時期: 2017年7月
– スキーム: 株式譲受
– 取引価額: 非公開
– 目的: EC事業の拡大と、幅広い商品ラインナップや倉庫運営ノウハウの取り入れ
#### ベルーナとセレクトのM&A
– 実行時期: 2021年8月
– スキーム: 株式譲受
– 取引価額: 非公開
– 目的: グループ内への商品供給、ノウハウ共有、顧客基盤の共有による企業価値の向上
#### ZホールディングスとZOZOのM&A
– 実行時期: 2019年9月
– スキーム: 株式公開買い付け
– 取引価額: 最大4007億円
– 目的: EC事業のさらなる成長とファッションカテゴリーの強化
### 近しい事例
#### プリントネットによる新晃社のM&A
– 実行時期: 2019年11月
– スキーム: 事業譲渡
– 取引価額: 1億2000万円
– 目的: 既存の顧客及び認知度を引き継ぐことによる売上増加
#### ユニバーサル園芸社におけるアーキネットのM&A
– 実行時期: 2018年10月
– スキーム: 株式譲受
– 取引価額: 1億5000万円
– 目的: 園芸関連商品の業容拡大と更なる成長
#### 薬王堂ホールディングスによるネクストミーツのM&A
– 実行時期: 2022年3月
– スキーム: 資本業務提携
– 取引価額: 非公開
– 目的: データの活用や配送網の効率化
#### バイク王&カンパニーによるオズ・プロジェクトのM&A
– 実行時期: 2022年12月
– スキーム: 株式譲受
– 取引価額: 非公開
– 目的: 小売ノウハウを活かしたインターネット販売力の取り込み
#### 綿半ホールディングスによるアベルネットのM&A
– 実行時期: 2018年12月
– スキーム: 株式譲受
– 取引価額: 20億円
– 目的: 取扱商品の拡充、仕入機能の共有化、通信販売のノウハウやシステム基盤の共有
電子商取引運営業の事業が高値で売却できる可能性
電子商取引(EC)運営事業が高値で売却される可能性を考慮する際には、以下の点が重要です。
– 市場規模と需要:日本のEC市場規模は世界で4位であり、特に物販系分野では伸び率が堅調です。例えば、2023年のBtoC-EC物販系分野のEC化率は9.38%で、特に「書籍、映像・音楽ソフト」や「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」がトップ3にランクインしています。
– 業界別の成長:サービス系分野も回復傾向にあり、特に「旅行サービス」がEC化に積極的に取り組んでいます。例えば、エクスペディアやじゃらんnetなどのインターネット旅行代理店(OTA)の台頭が利用率を押し上げています。
– バックエンド業務の重要性:ECサイト運営において、バックエンド業務は顧客満足度を左右する重要な要素です。受注処理、出荷・配送、アフターフォロー、在庫管理が含まれ、これらの業務を自動化するシステムの導入や専任の人員の確保が求められます。
– データ分析と改善力:ECサイトの運営では、データ分析が重要です。売上や集客の分析を行い、商品開発や販売方法、在庫管理に役立てることが求められます。
– 顧客対応力:誠実な顧客対応が重要です。電話やメール、チャットなどで、お客さまからの問い合わせやクレームに対応するスキルが求められます。
– 越境ECの可能性:日本の越境EC市場は米国や中国などで大きく展開されており、特定の市場特性を理解してターゲットした越境ECを展開すれば、売り上げを大幅に伸ばすことができます。
これらの点を考慮することで、電子商取引運営事業が高値で売却される可能性が高まります。
電子商取引運営業の企業が会社を譲渡するメリット
電子商取引運営業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです。
– 譲渡利益の獲得: EC事業を売却すると、譲渡利益を獲得できます。会員数や売上などの目安が良ければ、出だしの出資額やM&Aアドバイザーへ払う費用を合わせた額と比較しても、かなりの利益が残せる可能性が高いです。多くの譲渡利益を獲得すれば、主な事業や新しい事業、引退後の生活資金などに利益が使えるメリットがあります。
– 後継者不在問題の解決: 経営者が高齢の場合などは、早期から事業承継の準備を進めなければなりません。第三者にEC事業を売却すると、ノウハウや従業員の雇用、取引先との契約などが続けられます。つまり、後継者不在問題を解決できるでしょう。
– 主力事業への経営資源の集中: EC事業とは別の主力事業がある場合、EC事業に経営資源を分けると主力事業へ十分な経営資源を投入できず、主力事業の業績が悪くなることもあります。M&Aを行うことで、EC事業に費やしていたリソースを収益性の高い主力事業に投入できます。その結果、会社全体の業績が向上しやすくなるでしょう。
– 経営基盤の安定化: 中小規模事業者の場合、自社のリソースだけでは事業成長が難しいケースも少なくありません。M&Aを活用して大手企業の傘下となる方法は非常に有用です。M&A後は買収側の資金を活用できるので、経営基盤が安定し、自社のリソース面だけでは難しかった事業拡大にも期待できます。
– 従業員の雇用継続: EC事業を承継せず廃業するとなれば従業員は解雇しなければなりませんが、M&Aを活用すれば買収側へ雇用契約を買収側へ引き継ぐことが可能です。株式譲渡は売却側の資産・負債を包括的に承継するスキームなので、基本的に雇用もそのまま維持されます。
– 顧客・取引先の継続: M&Aでは従業員の雇用契約だけでなく、顧客や取引先との関係も買収側へ引き継ぐことが可能です。引継ぎ方法は従業員の雇用と同様で、株式譲渡であれば基本的にそのまま継続されます。
– 新規参入リスクの低減: EC事業に新規参入する際は、市場選定の誤り、システム開発の失敗、ニーズがない商品の販売、顧客が獲得できないなどいろいろなリスクがあります。自社のみでEC事業に新規参入するのは、高い危険性があるのです。M&Aを行うと、軌道に乗ったEC事業が得られるので、自力でEC事業を立ち上げるよりも、新規参入リスクを低減できるメリットがあります。
– 販売網拡大・ECサイト構築の迅速化: 販売網の拡大やECサイトの構築には多くの時間が必要です。M&Aを行うと、売れ筋商品、顧客などさまざまな経営資源を一度に取得できるので、自力で販売網拡大やECサイト構築を行うよりもEC事業が迅速に成長するメリットがあります。
– ECサイトでの自社製品の販売実現: 自社で製造する商品がある場合は、ECサイトにおける自社製品の販売が実現するのも、EC事業を買収するメリットです。M&AでEC事業のノウハウを得ることはかなり有用でしょう。
– トラブル回避にかかる維持費の削減: EC事業を事業譲渡・事業売却すれば、トラブル回避にかかる維持費などを削減できるため、新事業に着手したい経営者から大きく注目されています。
– 売却利益の獲得: 事業譲渡・事業売却を利用すれば、EC・ネット通販事業の売却対価として利益を獲得できます。ここで獲得した売却利益は、経営引退後の生活資金に充てられるほか、他事業の資金として活用することも可能です。
電子商取引運営業の事業と相性がよい事業
電子商取引(EC)運営事業と相性がよい事業は以下の通りです。
### 1. 商品企画
商品企画は、ECサイトで利益を出すためには商品が売れることが大前提です。ユーザー需要のリサーチやトレンド・季節を考慮したうえで、売れる商品やイベント、掲載する商品などを企画・検討することが大切です。
### 2. 仕入れ・製造
仕入れ・製造は、事前に立てた販売計画に基づき、商品の仕入れや製造を行います。迅速に対応するために物流や製造など各部門での連携が重要です。
### 3. サイト制作・更新管理
サイト制作・更新管理は、ECサイトの制作・運用・更新管理が非常に重要です。自社が売りたい商品や販売している商品に合うデザインか、ユーザーが使いやすい機能が備わっているか、サイト内に不具合がないかなど、常にサイトを管理しなければなりません。
### 4. プロモーション
プロモーションは、ECサイトへの集客を目的とした業務内容です。商品の企画、仕入れ、製造、サイト制作や更新、プロモーションが含まれます。ユーザーから目に見える部分が主にフロント業務と考えてよいでしょう。
### 5. 受注処理
受注処理は、ECサイトで商品が売れた後の仕事内容です。商品注文後に商品が問題なくお客様に届くようにする業務内容です。
### 6. 出荷・配送
出荷・配送は、商品がお客様に届くようにする業務内容です。迅速な配送が重要です。
### 7. アフターフォロー
アフターフォローは、商品の購入後に顧客に対する対応を行う業務です。問い合わせ対応や返品・交換の対応が含まれます。
### 8. 在庫管理
在庫管理は、商品の在庫を管理する業務です。商品が売れすぎないようにするためには、適切な在庫管理が必要です。
これらの業務は、ECサイトの運営に不可欠です。
電子商取引運営業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、電子商取引運営業の企業がM&Aを依頼する際におすすめの理由として、まず譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点が挙げられます。これにより、企業様はコストを気にせずにM&Aのプロセスを進めることができます。また、豊富な成約実績を持っており、これまで多くの企業様のM&Aを成功に導いてきた実績があります。さらに、電子商取引運営業の業界にも深い知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確なアドバイスを提供することが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。