目次
障がい者雇用支援業の市場環境
障がい者雇用支援業の市場環境は、以下の点が特徴的です。
– 市場規模の拡大:2021年度の市場規模は前年度比7.9%増の6,931億円となり、2022年度には前年度比8.2%増の7,500億円を予測しています。
– 分野別市場規模:
– 就労移行支援・就労定着支援:862億円(前年度比4.0%増)。
– 就労継続支援A型・B型:5,946億円(前年度比8.2%増)。
– 人材紹介・採用代行サービス:26億円(前年度比13.0%増)。
– 農園・サテライトオフィス型雇用支援サービス:97億円(前年度比24.4%増)。
– 障がい種別の多様化:
– コロナ禍によるテレワークや在宅勤務の増加、精神・発達障がいのある人の増加により、障がい種別の多様化が市場構造に影響を与えています。
– 需要の高まり:
– 障がい者の数の増加や障害者雇用促進法に基づく法定雇用率の推進により、障がい者雇用支援サービスの需要が高まり続けています。
– 法定雇用率の達成:
– 多くの企業が段階的に引き上げられる障がい者の法定雇用率に対応ができていないため、障がい者雇用支援サービスの需要が引き続き高まりを見せています。
– 企業のノウハウ習得:
– 障がい者を受け入れる企業側も障がい者雇用に関するノウハウを習得することが必要であり、多くのサービス提供事業者が顧客企業の理解を深めるためにセミナー実施などの啓蒙活動を展開しています。
これらの点が障がい者雇用支援業の市場環境を形作っている要因です。
障がい者雇用支援業のM&Aの背景と動向
障がい者雇用支援業のM&Aの背景と動向を以下にまとめます。
障がい者雇用支援業におけるM&Aは、障がい者福祉事業の需要の増加や経営効率化の必要性から進んでいます。具体的には、以下の点が重要です:
– 障がい者福祉事業の需要の増加:障がい者雇用支援サービスの市場規模は拡大基調で推移しており、2022年度の市場規模は前年度比8.2%増の7,500億円を予測しています。この需要の増加は、障がい者の数の増加や障害者雇用促進法に基づく法定雇用率の高まりを背景にあります。
– 経営効率化の必要性:障がい者施設や就労継続支援施設の運営は、少子高齢化の進展や障害福祉サービスの需要増加により、特に人材確保や経営効率化が大きな課題となっています。M&Aは、人員の配置やリソースの最適化を図るための解決策の一つとして注目されています。
– 後継者問題の解決:障がい者施設や就労継続支援施設では、後継者問題が顕在化しています。厚生労働省のアンケートによると、合併した社会福祉法人のうち約20%が後継者不在を理由に挙げています。M&Aは、親族外承継ではなく第三者との合併を選択して後継者問題を解決する手段として利用されています。
– 従業員や利用者の減少に対応:障がい者施設や就労継続支援施設は、待遇面への不満や肉体的な負担の大きさなどを理由に従業員や利用者の減少が発生しています。M&Aは、これらの減少に対応するための解決策として進んでいます。
– 新しい事業へと転換:障がい者施設や就労継続支援施設は、新しい事業へと転換するためにM&Aを利用しています。例えば、EC事業や農園・サテライトオフィス型雇用支援サービスなどの新しい分野への進出が目指されています。
これらの背景と動向を考慮すると、障がい者雇用支援業におけるM&Aは、障がい者の自立を支援し、経営効率化を図るための重要な手段として進んでいます。
障がい者雇用支援業のM&A事例
障がい者雇用支援業のM&A事例をまとめます。
### M&Aの背景と課題
障がい者施設や就労継続支援施設の運営は、少子高齢化や障がい福祉サービスの需要増加により、人材確保や経営効率化が大きな課題となっています。これらの施設は地域社会に貢献する重要な役割を担っていますが、経営資源の不足や人手不足が問題となっています。
### M&Aの実施と効果
障がい者施設や就労継続支援施設でもM&Aは実施できます。厚生労働省によると、障がい者施設の在所率は2017年10月1日時点で94.3%で、ほぼ満員の状態です。買い手の会社・団体などは契約が継続される限り利用者を確保できるため、障がい者施設や就労継続支援施設の事業はM&Aの取引対象となる魅力があります。
### 事例
#### 1. 障がい者グループホームの事業譲渡
障がい者グループホームを運営する会社が事業譲渡を行いました。具体的な事例として、東京・神奈川エリアで障がい者就労支援事業を展開するC社が、就労継続支援施設A型事業所を運営していました。C社は自社での店舗展開に加えてフランチャイズの店舗も増やし、グループ全体で20店舗以上・売上5億円を超える規模にまで成長させていました。しかし、C社の経営者は自社では人材採用・店舗運営のノウハウが不足しており、サービスを全国展開するには課題が多すぎると考えました。利用者の仕事を確保する営業活動も経営者自身が行い、迅速な売上拡大は困難でした。資金面にも問題を抱えていたため、全国展開の資金を借り入れようとしても限界を迎え、事業所の譲渡を検討し、教育サービスを手掛ける大手D社とのM&Aを決意しました。C社は譲渡後も社名を継続させ、D社でもC社の顧客・従業員などをそのまま引き継ぐことに成功し、双方が多くのメリットを享受できたM&A事例です。
#### 2. M&Aによる障がい者雇用の課題解消
ニプロ株式会社はM&Aを機に障がい者雇用率が低下した際に、障がい者雇用の課題を解消するためにコルディアーレ農園サービスの導入を行いました。M&Aに伴う障がい者雇用数の低下や社内理解不足による定着率の低さが課題となっていました。導入経緯として、運営体制に信頼感があったため現地見学をして信頼できると思ったことが挙げられます。導入効果として、10名以上の障がい者採用を実現し、充実したサポート体制にも満足しました。
### M&Aの注意点
障がい者施設や就労継続支援施設のM&Aには、特に障がい者の定着状況やサポート体制の整備が重要です。M&Aを機に障がい者雇用が低下することがあるため、充実したサポート体制の整備が求められます。
障がい者雇用支援業の事業が高値で売却できる可能性
障がい者雇用支援業の事業が高値で売却できる可能性について、以下のようなポイントが挙げられます。
– 市場のニーズ: 障がい者雇用支援業は、企業が障がい者雇用で悩んでいるという問題が根底にあるため、ニーズが高いです。具体的には、障がい者雇用ビジネスは、障がい者が働くための場として農園などの働く場を提供し、農園で働く障がい者の人材紹介やサポートを行います。このようなサービスを提供することで、事実上、障がい者雇用を代行するものとなります。
– 法的義務: 障がい者雇用促進法では、事業主が一定数の障がい者を雇用する義務があります。これにより、障がい者雇用支援業は法的に義務付けられており、企業がこれらの義務を遂行するためのサポートが求められます。
– 支援策: 厚生労働省では、障がい者雇用に関する相談・支援や、障がい者を対象とした求人の申込みを受け付けています。また、地域障害者職業センターなどの専門機関の紹介や各種助成金の案内を行っています。これにより、障がい者雇用支援業は、企業が障がい者を効果的に雇用するための支援を受けることができます。
– 成長分野: 障がい者就労支援ビジネスは、社会性と収益性を兼ね備え、コロナ禍でも増収増益を実現しています。特に、関西地方では、障がい者就労支援事業が成長分野として今後拡大を見込まれています。
– 事業譲渡の可能性: 障がい者就労支援事業が複数の施設で運営されている場合、事業譲渡の可能性が高まります。具体的には、100%株式譲渡や就労継続支援B型施設単体の事業譲渡が考えられます。例えば、関西地方の事業譲渡希望額は5,000万円以上とされています。
これらのポイントを考慮すると、障がい者雇用支援業の事業が高値で売却される可能性は高いと言えます。
障がい者雇用支援業の企業が会社を譲渡するメリット
障害者雇用支援業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです:
– 後継者問題の解消:M&Aを活用すれば、買い手企業が後継者になり、後継者不足が解消されるメリットです。
– 業績改善:事業譲渡により、売却益の取得や業績の向上が期待されますメリット。
– 売却益の取得:M&Aの対価として多くの売却益を獲得できるメリット。
– 将来的な不安要素の解消:事業全体の将来性に関しての不安が解消され、事業の持続可能性が確保されますメリット。
– 人材確保:M&Aによって売り手側の人材を獲得できるため、人材不足が解消されますメリット。
– 新規事業の参入:既存の利用者を持つ企業を取得することで、新規事業への参入がスムーズになりますメリット。
– シェア拡大:同業種間でM&Aを行うことで、時間をかけずにシェアを拡大することができますメリット。
障がい者雇用支援業の事業と相性がよい事業
障がい者雇用支援業の事業と相性がよい事業をまとめると、以下の通りです。
### 地方創生型障がい者雇用支援サービス
– 地域に住む障がいのある方が住み慣れた地域で「個々の特性に応じて、安心して、長く」働けることを目的に誕生しました
– 地方農園の運営を通じて、地域に住む「働く意欲を持つ障がいのある方」、「障がい者を雇用したい企業」、「地方自治体」の三者全てに有益な事業モデルを展開しています
– 障がい者が能力や適性が発揮でき、生きがいを持って働けるような職場作り
### 農園系障がい者雇用ビジネス
– 障がい者が働くための場として農園などの働く場の提供や、農園などで働く障がい者の人材紹介、サポートなどを提供します
– 農園で働く障がい者社員は、農園を借りる企業の社員となり、毎月給与が支払われます
– 初期費用や採用に関しては人材紹介料がかかります
### IT業界での障がい者雇用
– 発達障害者と相性が良いIT仕事に注目しています
– IT企業での業務と発達障害の特性とは相性が良い
– 特定分野に対しての集中力や強いこだわりを持つ
– 細部への観察力が高い
– コミュニケーションが苦手な傾向があるため、対人関係のストレスが少なく1人で黙々と作業をすることが多い
### 障がい者雇用の相性に関するポイント
– 障がいに対する理解だけでなく、働きながらの経過観察でわかってくることもあります
– 業務体制と障がいがミスマッチにならないよう、双方にとって効果的な体制を整えていくことが大切です
– 周りの従業員との相性にも気を配っておく必要があります
これらの事業は、障がい者が安心して長く働く環境を提供し、企業が効果的な障がい者雇用支援を実現するための重要なポイントを強調しています。
障がい者雇用支援業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、譲渡企業様から手数料を一切いただかないという大きな特徴があります。これにより、コストを気にせずにM&Aのプロセスを進めることができます。また、豊富な成約実績を誇っており、多くの企業様にご満足いただいております。さらに、障がい者雇用支援業の業界にも深い知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確なサポートを提供することが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。