目次
鉄骨工事業の市場環境
鉄骨工事業の市場環境は、以下のような特徴を持っています。
– 需要の減少と:大規模建築物の需要が減少しており、鉄骨需要量も前年比11.6%減の391万2150トンに達しています。
– 受注競争の激化と:ゼネコン間の受注競争が厳しくなり、鉄骨や鉄筋の加工賃についても値下げ圧力が強まっています。
– 資材価格の高騰と:鉄骨資材価格の上昇が企業の利益を圧迫しており、利益を出せない会社が増加しています。
– 人材の確保が難しいと:高齢化や人材不足が問題となっており、技術者の引退と労働力の確保が課題です。
– M&Aの活発化と:市場環境の変化を背景に、M&Aが活発化しています。国内から海外への需要を求めたM&Aや周辺業界・異業種へのM&Aも増えています。
– 倒産の増加と:鉄骨工事会社の倒産件数が増加しており、深刻な人手不足や資材高などが背景となっています。
これらの要因により、鉄骨工事業は厳しい状況に直面していますが、M&Aや技術革新などを通じて競争力を維持することが求められています。
鉄骨工事業のM&Aの背景と動向
鉄骨工事業のM&Aの背景と動向は以下の通りです。
### 背景
– 景気の動向に左右される業種: 鉄骨工事業は、建設業界の需要に左右されやすい業種です。
– 人手不足と資材高: 深刻な人手不足や資材高が背景として挙げられています。
– 中小企業の減少: 国内では建設業界の中小企業の減少が進んでおり、鉄骨製造業にとっても取引先の減少が懸念される。
### 動向
– M&Aの増加: 近年、M&Aが活発化しています。特に、M&Aによる事業承継が注目されています。
– 事業規模の拡大: M&Aを通じて、事業規模の拡大を図ることができます。買収先企業の持つ市場シェアを獲得すれば、スピーディな事業展開が可能になります。
– シナジー効果の獲得: M&Aによって、双方の経営資源や技術、ノウハウを融合させることでシナジー効果が生まれ、事業の質の向上につながります。
### 成功事例
– 鉄骨製造会社A社とB社のM&A: A社は、B社を買収し、舞台装置やイベント用の鉄骨製造にも進出。製品の品質向上にもつながりました。
– 瀧上工業株式会社と東京フラッグ株式会社: 瀧上工業は、東京フラッグの全株式を取得し、子会社化。東京フラッグの技術力を取り込むことで、鉄鋼事業のさらなる強化が期待されました。
– 小野建による三豊鋼業のM&A: 小野建は、三豊鋼業の株式を取得し、販売エリアの拡大とシェアの拡大を目指しました。
### メリット
– 従業員の確保: M&Aによる買収であれば、売却側の従業員をそのまま獲得できます。
– 必要な事業を低コストで取得: M&Aによる買収であれば、売却側との交渉次第で、コストを抑えたうえで事業の取得が可能です。
– 新規事業へ低コストで参入: M&Aによる買収であれば、新規事業へ低コストで参入することが可能です。
### 今後の予測
– 中小企業を中心にM&Aの増加: 今後は中小企業を中心にM&Aによる買収・売却が増加すると予測されています。
鉄骨工事業のM&A事例
鉄骨工事業のM&A事例を以下にまとめます。
### 瀧上工業株式会社と東京フラッグ株式会社
2023年3月に、瀧上工業株式会社は東京フラッグ株式会社の全株式を取得し、子会社化しました。瀧上工業は橋梁事業を中核とする企業で、東京フラッグは鋼構造物工事における現場溶接を専門としている企業です。瀧上工業は鉄鋼事業の体制構築を図っており、今回の子会社化は、鋼構造物製造事業の発展を目的としています。東京フラッグの技術力を取り込むことで、瀧上工業の鉄鋼事業のさらなる強化が期待されます。
### 小野建株式会社と森田鋼材株式会社
2019年10月に、小野建株式会社は森田鋼材株式会社の株式を取得し、完全子会社化しました。森田鋼材は鉄筋コンクリート用異形棒鋼加工・販売・施工を手掛けており、小野建は顧客の獲得と付加価値の高いサービス提供を目指しました。
### 旭化成ホームズと中央ビルト工業
2017年2月に、旭化成ホームズは中央ビルト工業の株式を取得し、子会社化しました。旭化成ホームズは住宅建設業を手掛けており、中央ビルト工業は仮設足場製造事業や住宅用鉄骨部材製造・受託事業を行っています。この取得は、住宅用鉄骨部材の生産体制強化と金属加工ノウハウの共有によるコストダウンを目的としています。
### エスイーと森田工産
2015年3月に、エスイーは森田工産の株式を取得し、完全子会社化しました。エスイーは建設用資機材の製造・販売を行っており、森田工産は鳥取県を拠点とする鉄骨工事業を行っていました。この取得は、事業拡大を目的としています。
### 阪和興業とブリヂストン化工品ジャパン
2018年4月に、阪和興業はブリヂストン化工品ジャパンの会社分割により、冷蔵倉庫用の防熱工事事業を約7,000万円で取得しました。阪和興業は鉄鋼・金属原料・非鉄金属・木材・機械など各種商品販売を行っており、この取得は、鉄骨・屋根部屋工事とのシナジー効果創出と事業規模の拡大を目指しています。
### メイホーエクステックと三川土建
2022年12月に、メイホーエクステックは三川土建の株式を約4億円で取得し、完全子会社化しました。メイホーエクステックはコスト削減、人材交流、現場での技術共有、そして経営資源の最適化を目指しています。
鉄骨工事業の事業が高値で売却できる可能性
鉄骨工事業の事業が高値で売却される可能性は限られていると言えます。以下の理由から、鉄骨工事業の売却価格は比較的安くなる傾向があります。
– 設備・機器の必要性が低い点: 鉄骨工事には高額な設備・機器が必要とされることが少ないため、売却価格が安くなる傾向があります。
– 将来への不安による価格設定点: 鉄骨工事の経営者は将来への不安から、早く負債を解消したり従業員の雇用を確保したい思いから、比較的安く売却希望価額を提示することが多く見られます。
– 企業価値の算出方法点: 鉄骨工事会社の売却費用相場は、企業価値を算出する方法によって異なります。マーケットアプローチ、コストアプローチ、インカムアプローチの3つがあり、実務ではそれぞれの手法を組み合わせて企業価値を算出します。
したがって、鉄骨工事業の事業が高値で売却される可能性は低く、売却価格は比較的安くなる傾向があります。
鉄骨工事業の企業が会社を譲渡するメリット
鉄骨工事業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです。
### 後継者問題の解決
会社譲渡を用いると、他の会社が事業を引き継いでくれるため、自社の関係者などから後継者を探さずに済みます。買い手となる会社は「自社事業の規模拡大」「新規の参入」などを目的に会社・企業を譲受するため、事業承継による後継者問題の解決が可能です。
### 従業員の雇用確保
事業譲渡を行う場合、買い手が自社従業員と雇用契約を再び結んでくれるため、従業員の雇用が確保できます。会社譲渡では、株主が買い手に変わるのみで会社の形態には変更が生じないため、新たな雇用先を探すことなく経営権を譲り渡せるのです。
### 譲渡益の獲得
会社譲渡は株式の取引を伴う手法であるため、売り手の株主は譲渡益を獲得できます。譲渡益を獲得できれば、引退後の生活費や興味を持った分野で会社を興す際の費用などに充てられるため、経営から手を引きやすいです。
### 廃業のコストがかからない
M&Aによる売却であれば、廃業にかかる費用を削減できます。廃業を選択した場合、廃業コストを負担しなければならないが、M&Aによる売却であればこの費用を削減できます。
### 個人保証・債務・担保などの解消
M&Aによる売却であれば、契約次第で売却先に引き継いでもらうことも可能です。個人保証・債務・担保などの存在は、鉄骨工事会社の経営者や親族などにとって経済的・精神的に大きな負担ですが、M&Aによる売却であればこれらの負担が解消されます。
### 事業規模の拡大
M&Aを通じて、事業規模の拡大を図ることができます。買収先企業の持つ市場シェアを獲得すれば、スピーディな事業展開が可能になるでしょう。また、双方の経営資源や技術、ノウハウを融合させることでシナジー効果が生まれ、事業の質の向上につながります。
鉄骨工事業の事業と相性がよい事業
鉄骨工事業と相性がよい事業としては、以下の業種が挙げられます。
– 建築業:鉄骨工事に欠かせない鉄骨や鉄筋を用いた建築物や構造物を専門に手がけるため、シナジー効果が期待できます。
– 土木工事:土木工事においても鉄骨や鉄筋が重要な役割を果たすため、相性がよいと言えます。
– 鋼構造物製作業:鋼構造物の製作においても鉄骨や鉄筋が必要なため、鉄骨工事業とのシナジーが期待できます。
– 建設資材の販売や商社業務:鉄骨などの建設資材を扱うことで、顧客からの信頼を得られ、サービスの幅を広げることができます。
これらの業種は、鉄骨工事に必要な技術や資材を提供し、鉄骨工事業の事業を支えることができます。
鉄骨工事業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、鉄骨工事業の企業がM&Aを依頼する際におすすめの理由がいくつかあります。まず、譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点が大きな魅力です。これにより、コストを気にせずに安心してご相談いただけます。さらに、豊富な成約実績を誇っており、多くの企業様にご満足いただいております。鉄骨工事業の業界にも深い知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確なアドバイスを提供することが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。