目次
道路貨物運送業の市場環境
道路貨物運送業の市場環境は、厳しい経営環境に直面しています。以下のポイントをまとめます。
– 倒産の増加: 2024年5月には、道路貨物運送業の倒産が46件(前年同月比119.0%増)で、5月としては2005年以降の20年間で最多を更新しました。
– コストアップ: 燃料価格の高騰やドライバー不足による人件費の増加が、業界全体に大きな影響を与えています。
– 時間外労働の上限規制: 今年4月から時間外労働の上限規制が適用され、労働時間の制限が厳しくなりました。これにより、輸送力不足などの問題が生じています。
– ドライバー不足: ドライバー不足が深刻で、求人難や従業員退職が原因となっています。
– 価格転嫁の難しさ: 小・零細規模の下請け業者が多く、コストアップ分の価格転嫁が難しい状況です。
– 物流停滞の懸念: 道路貨物運送業の倒産増加は、物流停滞につながり、業界全体に影響を与えているため、適切な価格転嫁やドライバー確保など多くの課題を抱えています。
これらの要因により、道路貨物運送業界は深刻な課題に直面しています。
道路貨物運送業のM&Aの背景と動向
道路貨物運送業のM&Aの背景と動向は以下の通りです:
背景:
– 物流のグローバル化と電子商取引の発展:物流のグローバル化と電子商取引の発展により、国際輸送や小口貨物の需要が増加しています。
– 人手不足と燃料費の高騰:人手不足や燃料費の高騰が労働力の確保やコスト面での課題を引き起こしています。
– 経営者の高齢化と2024年問題:経営者の高齢化や2024年問題への対応がM&Aの増加の要因となっています。
動向:
– M&Aの増加:2024年1〜6月期に物流業界のM&Aは57件、前年同期の40件から42.5%増加し、最多を記録しました。
– 大手企業のM&A:大手企業がM&Aや資本業務提携を実施し、事業規模や生産性を向上させています。
– 中小企業同士のM&A:中小企業同士のM&Aも増えており、対抗措置を講じようとしています。
メリット:
– 拠点の獲得と効率化:新たな物流拠点を確保することで、配送ルートの選択肢が増え、効率的に荷物を運ぶことができます。
– 人手不足の解消とコストダウン:M&Aにより、ドライバーや車両を一度に確保でき、燃料の仕入れが一括で可能になり、コストダウンが期待できます。
– 業務の効率化と競争力の強化:M&Aにより、新たな取引先との接点が増え、配送業務の効率化が実現し、競争力が強化されます。
注意点:
– 買収先の財務状況の不正確さ:買収先の財務状況を誤って評価することで、M&A後に財務問題に直面することがあります。
– 統合による文化の不一致:買収先企業との文化の不一致により、M&A後に統合がうまくいかず、従業員の離職や業績の低迷が生じることがあります。
これらの点を考慮しながら、道路貨物運送業のM&Aを進めることが重要です。
道路貨物運送業のM&A事例
### 道路貨物運送業のM&A事例
1. 東部ネットワークによるテーエス運輸の株式譲受
– 東部ネットワーク株式会社は、2024年3月1日に日本エア・リキードの子会社であるテーエス運輸株式会社の全発行済株式を取得し、同社を買収しました。
– テーエス運輸株式会社は、液化酸素、液化窒素、液化アルゴンなどの産業用ガスの輸送を手掛けており、今後は水素など新エネルギーの輸送事業にも注力しています。
2. トナミホールディングスによる山一運輸倉庫株式会社の株式譲受
– トナミホールディングス株式会社は、2023年10月3日に山一運輸倉庫株式会社の株式を取得し、同社を買収しました。
– 山一運輸倉庫株式会社は、自動車部品や住宅建材などの運送を主力とし、倉庫保管業務も展開しています。
3. 日本通運株式会社による名鉄運輸株式会社の資本業務提携
– 日本通運株式会社は、2016年4月に名鉄運輸株式会社の株式の20%を取得し、資本業務提携を結びました。
– 名鉄運輸株式会社は、特別積合せ運送事業を中心に名鉄運輸グループのネットワークを基盤に国内物流を展開しています。
4. 鴻池運輸株式会社によるBEL INTERNATIONAL LOGISTICS LTD.の完全子会社化
– 鴻池運輸株式会社は、2018年10月に香港の国際航空貨物会社BEL INTERNATIONAL LOGISTICS LTD.の株式を完全子会社化しました。
– BEL INTERNATIONAL LOGISTICS LTD.は、欧州向けの航空貨物事業を主力とし、中東やインド、北米にも展開しています。
5. トナミホールディングス株式会社による株式会社ケーワイケーの完全子会社化
– トナミホールディングス株式会社は、2018年4月に株式会社ケーワイケーの全株式を取得し、完全子会社化しました。
– 株式会社ケーワイケーは、一般貨物自動車運送事業や営業倉庫、引越・事務所移転作業などを手がけています。
6. 鴻池運輸株式会社による前川運輸株式会社の株式譲渡
– 鴻池運輸株式会社は、2022年3月に連結子会社の前川運輸株式会社の株式の81%を株式会社ベストラインに譲渡しました。
– 前川運輸株式会社は、主に一般消費財を扱う陸運事業を展開しています。
7. SBSホールディングス株式会社によるNSKロジスティックス株式会社の株式取得
– SBSホールディングス株式会社は、2024年10月にNSKロジスティックス株式会社の発行済株式の66.61%を取得し、合弁会社として新たに「SBS NSKロジスティクス株式会社」を設立しました。
– NSKロジスティックス株式会社は、国内物流の持続性と効率化を追求しています。
8. センコー株式会社による株式会社オプラスの子会社化
– センコー株式会社は、2024年5月に株式会社オプラスの全株式を取得し、同社をグループ化しました。
– 株式会社オプラスは、和歌山エリアを中心に食品や日用品の低温輸送を行っています。
道路貨物運送業の事業が高値で売却できる可能性
道路貨物運送業の事業が高値で売却できる可能性は限られていると考えられます。以下の理由から、事業価値が高く評価されることが難しいとされています。
– 収益性の低さ:道路貨物運送業は、収益性が低い水準にあることが多く、売上高総利益率は26.3%程度であり、倉庫業の6割程度にしか達していません。
– 経営環境の厳しさ:事業者が約6割が営業損失、約4割が経常損失を計上していることが多く、債務超過の状態にあることも推測されます。
– 競争の激しさ:過当競争が激しいため、適正な運賃が収受しづらく、荷主との力関係で劣後することが多く、収益を安定させることが難しいです。
– 固定資産の投資:車両などの設備投資が嵩みやすいが、投資効果を計る総資本回転率が平均以上であれば、投資効果が得られていると考えられます。しかし、固定資産の稼働率が低い場合、投資効果が低下する可能性があります。
したがって、道路貨物運送業の事業が高値で売却される可能性は限られており、事業価値を高く評価するには、収益性の向上や経営環境の改善が必要とされています。
道路貨物運送業の企業が会社を譲渡するメリット
道路貨物運送業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです。
1. 資金調達の手段として活用できる:車両や燃料などの資産が多く、運営にも多額の費用がかかるため、資金調達が必要となることがあります。このような場合、会社を譲渡することで、一気に大きな資金を調達することができます。
2. 経営者の負担を軽減できる:運転手の管理や車両のメンテナンスなど、多岐にわたる業務があります。経営者がこれらの業務を一人でこなすのは大変な負担となります。会社を譲渡することで、経営者の負担を軽減することができます。
3. 事業の拡大や新規事業の展開が可能になる:譲渡先の企業が持つノウハウやリソースを活用することができます。これにより、事業の拡大や新規事業の展開が可能になります。また、譲渡先の企業が持つネットワークを活用することで、新たな顧客層の獲得や市場の開拓ができる可能性があります。
4. 取引先との関係を維持できる:M&Aで運送/物流会社を残すことで、取引先との関係も維持できます。特定の運送/物流業者がいないと経営が成り立たない地域では、長年取引を続けてきた近隣の運送/物流会社を必要としている企業も多いです。
5. 労働環境の改善やドライバー不足の解消:買い手企業と協力することで、労働環境の改善やドライバー不足の解消が可能です。
6. 輸送コストの削減:M&Aを行えば、輸送コストの削減が可能です。特に、自力で取引先に営業をして、契約を確保するのにはかなりの時間がかかるため、売り手の持つ取引先をそのまま獲得できるので、手軽に事業の拡大ができます。
道路貨物運送業の事業と相性がよい事業
道路貨物運送業の事業と相性がよい事業は以下の通りです。
– 一般貨物自動車運送事業:他人の需要に応じ、有償で三輪以上の軽自動車を除く自動車を使用して貨物を運送する事業。一般的な荷物の輸送に適しています。
– 特定貨物自動車運送事業:特定の者の需要に応じ、有償で貨物を運送する事業。特定の荷主との契約に基づいて運送を行います。
– 貨物軽自動車運送事業:他人の需要に応じ、三輪以上の軽自動車を使用して貨物を運送する事業。一般家庭向けの配送に適しています。
これらの事業は、道路貨物運送業の基本的な分類であり、それぞれの特性に応じて利用されることが多いです。
道路貨物運送業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、道路貨物運送業の企業がM&Aを依頼する際におすすめの理由がいくつかあります。まず、譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点が大きな魅力です。これにより、コストを気にせずにM&Aのプロセスを進めることができます。さらに、豊富な成約実績を持っており、多くの企業様にご満足いただいております。道路貨物運送業の業界にも深い知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確なアドバイスを提供することが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。