目次
運送代理店の市場環境
運送代理店の市場環境は、複数の課題と機会が交錯しています。以下に大切なポイントをとで囲んでまとめます。
– 市場規模と成長予測:
– 貨物運送市場規模は2024年に1,760億2,000万米ドルと推定され、2029年までに2,158億1,000万米ドルに達すると予測されています。この期間中に4.16%のCAGRで成長します。
– 課題:
– 人員不足と輸送能力の問題:
– 運送業界ではトラックドライバー不足が深刻な状況です。これは長時間労働と低賃金が原因です。
– インフレと需要のピーク:
– インフレ対策として中央銀行が金利を引き上げ、サプライチェーン価格が低下していますが、需要と供給のバランス調整が難しい状況です。
– 2024年問題:
– 2024年4月からトラックドライバーの年間残業時間が960時間(月80時間)に制限されます。これにより、1日に運べる荷物の量が減り、収入が減少する可能性があります。
– 機会:
– 海上貿易の成長:
– 国境を越えた海上貿易の成長が市場を牽引しています。
– 宅配便の増加:
– ネット通販市場の拡大とフリマアプリによる個人間取引の増加により、宅配便の取扱数が増加しています。
– 物流管理の進化:
– 3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)の進展により、物流業務の一部または全部を第三者に委託することで最適化・効率化が実現する可能性があります。
– M&Aの活発化:
– 運送業界ではM&Aが活発化しており、人材確保や2024年問題への対応を目的として大手企業が積極的にM&Aを行っています。
これらのポイントをまとめると、運送代理店の市場環境は、人員不足や2024年問題などの課題に直面しながらも、海上貿易の成長や宅配便の増加などの機会を活かしながら、M&Aを通じて課題を解決し、業界再編を進めている状況です。
運送代理店のM&Aの背景と動向
運送代理店のM&Aの背景と動向
運送代理店のM&Aは、物流業界における人材不足や2024年問題への対応、3PLサービス拡大を目的として活発化しています。以下に主要な背景と動向をまとめます。
### 背景
1. 人材不足と2024年問題
– 運送業界ではドライバー不足が深刻な問題となっています。全日本トラック協会の統計によると、トラックドライバーの年間所得額は全産業平均と比較して、大型トラック運転者で約5%、中小型トラック運転者で約12%低いことが明らかになっています。
2. 3PLサービス拡大
– 3PL(Third-Party Logistics)サービス拡大が求められています。これにより、運送業者は顧客ニーズに合わせた柔軟なサービス展開が可能となり、効率的な物流管理が促進されます。
3. 後継者問題
– 経営者高齢化と後継者不在問題が深刻化しています。M&Aを通じて、後継者問題が解決され、企業の継続的な発展が期待されます。
4. 競争激化とコスト削減
– 物流業界では価格競争が激しくなっています。M&Aを通じて、効率的な輸送を行うための資本・技術の活用が求められます。
### 動向
1. M&A件数の増加
– 物流会社のM&A件数は2000年から2018年にかけて増加傾向にあり、現在も活発です。
2. M&Aの目的
– M&Aは、人材や技術の獲得、経営資源の共有、運営ノウハウの融合を目的としています。具体的には、ドライバーや運航管理者などの貴重な人材を確保し、長期的な事業拡大を図ることが目指されています。
3. 成功事例
– 運送業界におけるM&Aの成功事例として、ファイズホールディングスと中央運輸のM&Aが挙げられます。この買収により、ファイズホールディングスはECソリューションを総合的に提供し、貨物自動車運送業を行う中央運輸の主関東地区での商品輸送を強化しました。
4. メリット
– M&Aにより、譲渡企業は「積載率向上や経営再建の実現」、譲り受け企業は「物流統合やドライバー・拠点の確保」などのメリットを期待できます。また、買収側は人材・車両・設備を包括して取得し、業務の効率化やノウハウ取得により収益力が向上することが期待されます。
### 実施時の注意点
1. 慎重な準備と戦略立案
– M&Aを成功させるためには、慎重な準備と戦略立案が不可欠です。具体的には、適切なサービス提供、効率的な物流管理、柔軟な対応力、異業種との協業が重要です。
2. 経営資源の活用
– M&Aを通じて、売り手・買い手両者の既存の経営資源を上手に活用することで、新規事業の展開や自社が抱える課題の解決が期待できます。
3. 人材確保と労働環境の改善
– M&Aを通じて、人材確保や労働環境の改善が実現します。特にドライバー不足に悩む企業にとって、M&Aはドライバーを一気に確保するための有効な手段です。
運送代理店のM&A事例
運送代理店のM&A事例
1. ファイズホールディングスと中央運輸
– M&Aの目的: ECソリューションを総合的に提供し、貨物自動車運送業を強化。
– M&Aの手法: 株式譲渡。
– 成約: ファイズホールディングスグループは、関東地区で商品輸送を強化し、グループ経営理念の実現を図る。
2. ハマキョウレックスとシティーライン
– M&Aの目的: 九州地域における物流サービスの実績や取引先を新規顧客として獲得し、拠点拡充。
– M&Aの手法: 株式譲渡。
– 成約: ハマキョウレックスグループは、九州エリアでの拠点拡充と中期経営計画の方向に合致。
3. ビックカメラとエスケーサービス
– M&Aの目的: 大型家電の配送・設置の品質向上とシナジー効果の高さ。
– M&Aの手法: 簡易株式交換。
– 成約: ビックカメラは配送の効率化とサービス向上を図る。
4. ロジネットジャパンと青山本店
– M&Aの目的: 食品保管と輸送のノウハウを手に入れる。
– M&Aの手法: 株式譲渡。
– 成約: ロジネットジャパンは、青山本店から得た技術を活かし、さらなるサービス拡大を行う。
5. 五健堂と六ツ星運送
– M&Aの目的: 2024年問題の解決。
– M&Aの手法: 子会社化。
– 成約: 五健堂は、六ツ星運送を子会社にすることで2024年問題を解決。
6. 鴻池運輸と九州産交運輸
– M&Aの目的: 院内物流や医療機器物流のサービスを強化。
– M&Aの手法: 全株取得。
– 成約: 鴻池運輸は、九州産交運輸の技術と組み合わせて効率的な医療物流モデルの構築。
7. トナミホールディングスとケーワイケー
– M&Aの目的: 輸送サービスの高度化促進。
– M&Aの手法: 子会社化。
– 成約: トナミホールディングスは、ケーワイケーの地域密着型の配送サービスを活かした輸送サービスの高度化。
8. 両備ホールディングスとタカラ物流システム
– M&Aの目的: 運送サービスの質の向上。
– M&Aの手法: 子会社化。
– 成約: 両備ホールディングスは、タカラ物流システムの全国的な物流ネットワークを獲得し、運送サービスの質の向上。
運送代理店の事業が高値で売却できる可能性
運送代理店の事業が高値で売却できる可能性について、以下のポイントをまとめます。
– 事業者の価値: 運送代理店の価値は、従業員や荷主との関係、実運送売上や傭車売上の構成など、多岐にわたります。従業員や荷主との関係が重要。
– 収益性: 一般貨物自動車運送事業者の約58,000社のうち、従業員20人以下の運送会社が約7割を占めています。小規模な運送会社の場合、実運送が多く売上を占めることが多いです。実運送が重要な資産。
– 経営環境: 業界全体で約6割の事業者が営業損失、約4割の事業者が経常損失を計上しています。経常損失を継続している場合、債務超過の状態にあることも推測されます。債務超過の場合でも譲渡可能。
– M&Aのメリット: M&Aにより、運転手や車両などの資産を包括して取得でき、事業規模や営業エリアを拡大できます。また、得意先である荷主は物流サービスを継続して利用することができます。経営効率化やノウハウ取得による収益力向上。
– 市場規模: 物流業界の営業収入は約26兆2292億円で、トラック運送事業のみの営業収入が19兆3576億円を占めています。トラック運送事業の重要性。
– M&Aの相場: 一般的な中小規模の運送会社のM&Aでは、時価純資産に営業利益の2〜5年分を加算した額がおおよその相場とされています。相場の範囲。
これらのポイントを考慮すると、運送代理店の事業が高値で売却される可能性はありますが、具体的な相場や価値の算定には多くの要素が関係します。
運送代理店の企業が会社を譲渡するメリット
運送代理店の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです:
– 手続きが簡便であることと。株式譲渡では、対価の支払い後、株主名簿の書き換えをすれば手続きが完了するため、買い手は手続きに必要な時間・手間・コストを削減することができます。
– すぐにまとまった現金が得られる点がメリットと。株式譲渡の対価は基本的に現金であるため、売り手企業にとってはすぐにまとまった現金が得られる。
– 後継者問題の解決・従業員の雇用維持も可能と。株式譲渡によって、後継者問題が解決され、従業員の雇用が維持される。
– 経営権が残ることができると。事業譲渡では、経営権が譲渡企業に残ることができるため、他事業を継続したり、貸借対照表に計上されていない簿外債務がある場合にもM&Aを比較的容易に行うことができます。
– 事業の一部だけを選んで譲渡できると。事業譲渡によって、売り手企業は残したい資産や従業員の契約を選べるため、必ずしもすべての債権者に対して通知や公告を行わずに手続きを進めることができます。
– 大手グループに参入できると。大手グループとのM&Aであれば、安定した事業継続が見込め、売上拡大にも期待できます。
– 債務解消の有力な手法となると。債務に追われている運送会社にとって、M&Aによる売却は債務解消の有力な手法となる。
運送代理店の事業と相性がよい事業
運送代理店の事業と相性がよい事業は以下の通りです:
– 港湾運送事業:運送代理店が海陸運送の接点となる港湾荷役業務を行うことが多いです。具体的には、コンテナターミナル業務や在来船・RORO船業務が挙げられます。
– 通関業:運送代理店が輸入・輸出の手続きを代行することが多く、通関業務が重要です。
– 梱包業:運送代理店が荷物の梱包を手掛けることがあり、梱包業務が必要です。
– 海陸輸送業:運送代理店が海陸の両方で輸送業務を行うことが多いです。具体的には、バンプール業務やコンテナメンテナンス業務が含まれます。
– 保管業:運送代理店が荷物の保管を行うことがあり、保管業務が必要です。
– 保険代理業:運送代理店が荷物の保険代理を行うことが多く、保険代理業務が重要です。
– 各種帳票作成:運送代理店が多様な帳票を作成することがあり、帳票作成が必要です。
– 複合輸送業:運送代理店が複数の輸送方法を組み合わせた輸送を行うことが多く、複合輸送が重要です。
運送代理店の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、運送代理店の企業がM&Aを依頼する際におすすめの理由がいくつかあります。まず、譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点が大きな魅力です。これにより、コストを気にせずに安心してご相談いただけます。さらに、豊富な成約実績を誇っており、多くの企業様にご満足いただいております。運送代理店の業界にも深い知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確なアドバイスを提供することが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。