目次
運用型信託業の市場環境
運用型信託業の市場環境は、以下の要素が特徴です:
– 運用報酬額の増加:公募投信の運用報酬額は直近5年間で33%増加しており、2023年度には4,939億円に達しています。
– 資産規模の拡大:運用型信託会社の資産規模が大幅に増加しており、特に外資系資産運用会社や独立系資産運用会社が高い増収率を示しています。
– パッシブ投信の割合の増加:パッシブ投信の残高シェアは2018年度の41%から2023年度には55%に増加していますが、運用報酬額のシェアはわずか18.2%にしか増えていない。
– 地域別運用報酬額の変化:外資系全体では5年間で89%増加しており、アライアンス・バーンスタイン、フィデリティ投信、ゴールドマン・サックスAMなどが大幅な増収を示しています。日系でも独立系運用会社全体の運用収益額は直近5年間で65%増加しています。
– 債券型の減少:債券型の運用報酬額は5年間で20%以上減少しており、公募投信全体に占める割合は23.4%から13.2%まで低下しています。
– 新たな信託形態の発展:信託業法改正により、新たな形態として運用型信託会社、管理型信託会社、技術移転機関(承認TLO)、グループ企業内の信託(グループ内信託)が発展しています。
これらの要素が運用型信託業の市場環境を形作っています。
運用型信託業のM&Aの背景と動向
運用型信託業のM&Aの背景と動向は以下の通りです。
背景
– 規模と競争: 運用型信託業は市場規模が限られているため、非専業信託業者間での削價競争が激化し、利益空間が狭くなります。
– 制度的制約: 日本では、信託法の改正により、信託業務は専業信託銀行が主に担当することが定められています。
動向
– 大手銀行との兼営: 多くの場合、大手銀行が兼営する信託業務が主流であり、専業信託銀行は市場の占有率が低くなっています。
– M&Aの目的: M&Aは、資産運用機能の強化や経営効率化を目的として行われます。例えば、クレディセゾンは債権回収事業の抜本的な改革を実現するためにJPNホールディングスを完全子会社化しました。
– 戦略的再編: M&Aは、戦略的な再編を目的として行われます。例えば、三菱UFJ銀行は、東南アジアでのビジネスプラットフォーム構築に向けた戦略出資を目的としてバンクダナモンとのM&Aを行いました。
具体例
– マネックスグループとコインチェック: マネックスグループは、仮想通貨交換業への参入を目的としてコインチェックとM&Aを行いました。マネックスグループはコインチェックを完全子会社化し、オンライン証券事業で培ってきた経営管理やシステムリスク管理のノウハウを駆使してコインチェック側の業務改善に注力しています。
– 新生銀行とファイナンシャル・ジャパン: 新生銀行は、個人向け保険ビジネスの強化を目的としてファイナンシャル・ジャパンとM&Aを行いました。新生銀行は銀行窓口で保険商品を販売する方法に加えて、保険乗合代理店の方法を持つこととなり、顧客の多様なニーズに応えることが可能となりました。
重要なポイント
– 専業信託銀行の限界: 専業信託銀行の市場占有率が低く、兼営する大手銀行が主流です。
– 戦略的なM&A: M&Aは、資産運用機能の強化や経営効率化を目的として行われ、戦略的な再編を目的としています。
– 兼営の影響: 兼営する大手銀行が信託業務を主導しており、専業信託銀行の発展が制限されています。
運用型信託業のM&A事例
運用型信託業のM&A事例は、以下の事例に類似していますが、具体的な運用型信託業のM&A事例は見つかりませんでした。以下に近い事例を記載します。
– 信金中央銀行とOrigamiの業務提携:信金中央銀行は全国の信用金庫の核となる中央金融機関で、Origamiはスマホ決済サービスを提供していた会社でした。Origamiはキャッシュレス化推進のために地域の顧客との強い連携を目指しており、地方のネットワークに強い信用金庫と連携することでキャッシュレス決済を普及させることを目的としていた。
– クレディセゾンとJPNホールディングスの株式交換:クレディセゾンはクレジットカード「セゾンカード」などを手がけている企業で、JPNホールディングスは債権回収会社などを子会社に持つ持株会社でした。クレディセゾンは債権回収の内製化や健全化を目的として、JPNホールディングスの完全子会社化を行いました。
これらの事例は、金融業界でのM&Aの動向や目的を示していますが、運用型信託業の具体的なM&A事例は見つかりませんでした。
運用型信託業の事業が高値で売却できる可能性
運用型信託業の事業が高値で売却できる可能性について、以下のようにまとめます。
運用型信託業の事業が高値で売却できる可能性は、以下の点にあります:
– 信託有価証券の価格管理:運用型信託では、受託者が「最低売却希望価格」などの条件に従って、信託有価証券を市場で売却処分を行います。このため、市場の出来高を勘案しつつ、価格にできるだけ影響を与えないように売却処分を行います。
– 客観性のあるチャイニーズウォール:運用型信託では、インサイダー情報から隔離し、客観性のあるチャイニーズウォールを構築します。これにより、不公平な売却処分を防ぎ、信託有価証券の価格に影響を与えずに売却処分を行うことができます。
– リスク管理:運用型信託では、元本割れなどのリスクや手数料などの費用についても注意が必要です。ただし、受託者が裁量で運用を行うため、リスクを最小限に抑えることができます。
– 信託終了時の処分:運用型信託では、信託終了時に一括して元本および収益を現状(金銭または有価証券)のままお客さまへ交付します。ただし、売却できなかった有価証券は指定先に振替手続きを行う方法にて交付します。
これらの点を考慮すると、運用型信託業の事業が高値で売却される可能性は高いと言えます。
運用型信託業の企業が会社を譲渡するメリット
運用型信託業の企業が会社を譲渡するメリットを以下のようにまとめます。
– 柔軟な条件をつけられる: 経営者の理想に基づいた条件をつけた柔軟な事業承継が可能です。株式の議決権と財産権を分けて設定することができ、経営者の死後の事業承継が思いどおりに進むことが保証されます。
– 後継者の地位を確立できる: 信託会社や銀行などの機関を挟んで株式を承継する後継者を現在の経営者が決められるため、経営者の意向を反映しやすくなります。後継者の地位が確立され、後の後継者トラブルを防ぐことができます。
– 経営に空白期間ができない: 経営者が死亡したと同時に議決権や受益権が自動的に指定された後継者に移動します。事業承継のための手続きが不要なため、空白期間が発生しません。従業員や取引先への不安の解消にもなるでしょう。
– 税金対策につながる: 信託された財産は特定の目的(例えば、子どもの教育費や障がいを持つ家族の生活費)に設定することで、贈与税が一定の金額まで非課税になることがあります。
運用型信託業の事業と相性がよい事業
運用型信託業の事業と相性がよい事業は以下の通りです:
– 特許権や著作権の管理:運用型信託会社が特許権や著作権を管理し、収益を生み出すことができます。具体的には、ベンチャー企業や中小企業が保有する特許権や映画、ゲームソフトの著作権を信託し、運用型信託会社がこれらの資産を活用して収益を生み出すことができます。
– 不動産の活用:運用型信託会社が不動産を活用して収益を生み出すことができます。例えば、会社員が親から相続した土地や建物を信託し、運用型信託会社がこれらの資産を解体し、賃貸物件として運用することで収益を生み出すことができます。
– 資金調達:運用型信託会社が資金調達のための信託を提供することができます。具体的には、不動産や貸出債権などの資産保有者が、これらの資産の価値や収益を裏付けとして資金調達を行うための信託を利用することができます。
– 分散投資:運用型信託会社が分散投資を通じてリスクを抑えることができます。投資信託は投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用することで、リスクを分散させることができます。
これらの事業は、運用型信託業の特性を活かし、収益を生み出すことができます。
運用型信託業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、譲渡企業様から手数料を一切いただかないという大きな特徴があります。これにより、企業様はコストを気にせずにM&Aのプロセスを進めることができます。また、豊富な成約実績を誇り、多くの企業様にご満足いただいております。さらに、運用型信託業の業界にも深い知見を保有しており、専門的なアドバイスを提供することが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。