目次
設備工事業の市場環境
設備工事業の市場環境
### 人手不足
設備工事業界は、労働人口の減少と業界の超高齢化により、人手不足が深刻な問題となっています。総務省の「労働力調査」からわかるように、55歳以上の労働者が増加傾向にあるのに対して、29歳以下の労働者が減少しています。人手不足の対策として、人材採用を積極的に行うことが必要ですが、採用難は継続するため、いつ人材が採用できるかが不透明な状況に置かれています。
### 需要の変化
一方で、公共工事の案件が減少している一方で、老朽化した設備の更新ニーズによる民間リニューアル工事が堅調に伸びています。公共・下請工事から民間・元請工事にシフトしている傾向が見られます。民間リニューアル工事の増加により、設備工事業の需要は継続的に高まると予測されています。
### M&Aの活発化
設備工事業界では、人材不足や後継者未定問題が懸念されており、その対策としてM&Aを検討・実施する企業が増えています。M&Aは、企業価値の算出方法やM&Aの進め方、成約までに必要な期間などを考慮し、事前に準備することが重要です。
### 技術の進化
近年、設備工事業者が利益率の高い元請けとなるケースが増加しており、建設業全体の中では比較的上位に属している企業が多いことが要因として考えられます。さらに、5Gなどモバイル基地局や大規模データセンターなどの情報インフラ投資が引き続き堅調に推移しており、コロナ禍のために減少した設備投資が増加しています。
### DXシステムの活用
設備工事業界では、DXシステムの活用が重要視されています。具体的には、BtoB向け業務用空調工事専門店や高圧受電工事専門店の導入や、新規顧客、既存顧客、オプションに対する統合的な施策が推奨されています。これにより、競合他社と差別化し、自社が優位に立てる戦略を打ち出すことができます。
設備工事業のM&Aの背景と動向
設備工事業のM&Aの背景と動向は以下の通りです。
### 背景
1. 建設需要の拡大建設需要の拡大により、昇降設備工事業界においても需要が拡大しており、M&Aによる業界再編が進んでいます。
2. 技術の進化技術の進化により、より高度な機能を持った製品が開発されており、競争力を維持するためには技術力の強化が必要となっています。M&Aによって、技術力を補完することができるため、業界内でのM&Aが進んでいます。
3. 海外進出の加速海外進出の加速により、昇降設備工事業界は海外進出が進んでおり、多くの企業が進出しています。M&Aによって、海外進出のスピードを加速させることができるため、業界内でのM&Aが増えている。
### 動向
1. 同業者間のM&A同業者間のM&Aが活発化しており、顧客基盤や取引基盤の拡大が期待されています。
2. 異業種とのM&A異業種とのM&Aが増えており、電気工事以外の設備工事会社や総合設備工事会社を買収して事業総合化を進める動きが見られます。
3. 大手企業の買収大手企業の買収により、市場シェアを拡大し、中小企業を圧迫することが考えられます。
4. 技術共有とコスト削減技術共有とコスト削減が期待されており、資本提携や株式交換による統合が進んでいます。
### 成功事例
1. 昇降設備メーカーと販売会社の統合昇降設備メーカーと販売会社の統合により、製品の品質向上やコスト削減が実現し、市場シェアの拡大に成功しました。
2. 海外企業の買収によるグローバル展開海外企業の買収によるグローバル展開により、グローバル展開を実現し、製品の品質向上や新規市場の開拓に成功しました。
### PMIの重要性
昇降設備工事業のM&AにおけるPMI(Post Merger Integration)は、企業買収後の合併プロセスにおいて、両社の統合を円滑に進めるための計画・実行・評価・改善のプロセスを指します。具体的には、組織文化の統合、業務プロセスの見直し、人事制度の改善、ITシステムの統合などが含まれます。
設備工事業のM&A事例
設備工事業のM&A事例をまとめます。
### M&Aのメリット
– 事業拡大の機会:M&Aにより、事業の範囲を拡大し、新規取引先を開拓することが期待されます。
– 技術力とサービスの向上:技術力の強化やサービス提供の幅の拡大が期待されます。
– 市場シェアの拡大:市場シェアを拡大し、競争力を高めることができます。
– 経営資源の最適化:経営資源を最適化し、効率的な運営が可能になります。
– 人材不足の解消:人材不足を解消し、従業員の安定した雇用を確保することができます。
– 後継者問題の解消:後継者問題を解消し、企業の継続的な発展を図ることができます。
### 具体的なM&A事例
#### 日本エコシステムと葵電気工業のM&A
– 譲渡形態:株式譲渡
– 取得株式数・取引価額:97,920株(100%)、3億1,500万円(概算額)
– 目的:ファシリティ事業でのサービス提供範囲拡大と業容拡大による新規取引先開拓。
#### 日鉄パイプライン&エンジニアリングとキャプティのM&A
– 譲渡形態:吸収分割
– 取引価額:非公開
– 目的:導管工事事業の強化と企業価値の向上。
#### エクシオグループと光陽エンジニアリングのM&A
– 譲渡形態:株式交換
– 株式交換比率:エクシオグループ1:光陽エンジニアリング1000
– 目的:光陽エンジニアリングが得意とする管工事などの分野での相互協力や顧客基盤の更なる強化。
#### 四電工と横山工業のM&A
– 譲渡形態:株式譲渡
– 取得株式数・取引価額:20,000株(100%)、非公開
– 目的:東京本部との営業面・施工面での協力関係構築と首都圏近傍のエリアにおける総合設備企業としての収益基盤の拡充。
#### 協和日成とガイアテックのM&A
– 譲渡形態:株式譲渡
– 取得株式数・取引価額:189株(100%)、非公開
– 目的:両社の経営資源の共有と事業連携の強化による高いシナジー効果の期待。
#### イシイ設備工業と東海管工のM&A
– 譲渡形態:株式譲渡
– 取得株式数・取引価額:非公開
– 目的:東海管工の新たなグループ入りによる後継者不在の問題の解消と従業員の安定した雇用の確保。
#### 第一カッター興業とユニペックのM&A
– 譲渡形態:株式譲渡
– 取引価額:2億4,500万円(概算額)
– 目的:ユニペックの築き上げた特化した技術と高いサービス、人材を活用することで中核事業を補完・強化。
#### 北陸電気工事とスカルトのM&A
– 譲渡形態:株式譲渡
– 取得株式数・取引価額:60,000株(100%)、非公開
– 目的:グループの北陸地域における商圏のさらなる拡大。
#### 前澤化成工業と常陽水道工事のM&A
– 譲渡形態:株式譲渡
– 取得株式数・取引価額:73,545株(91.93%)、非公開
– 目的:技術・ノウハウの融合と公共事業・民間事業への取り組みの共進。
#### ETSホールディングスとユウキ産業のM&A
– 譲渡形態:株式譲渡
– 取得株式数・取引価額:20,000株(100%)、非公開
– 目的:電気工事の一括受注体制の整備と業容拡大。
#### きんでんとフジクラエンジニアリングのM&A
– 譲渡形態:株式譲渡
– 取得株式数・取引価額:2,000株(100%)、非公開
– 目的:再生可能エネルギー関連工事市場や次世代情報通信関連工事市場での両社の経営資源の相互補完・共有・活用。
#### サコスと親和電気のM&A
– 譲渡形態:株式譲渡
– 取得株式数・取引価額:20,300株(100%)、非公開
– 目的:発電機レンタル事業における新たな需要創造とグループの成長戦略の達成。
#### TOKAIホールディングスと中央電機工事のM&A
– 譲渡形態:株式譲渡
– 取得株式数・取引価額:40,000株(100%)、非公開
– 目的:総合建設事業者として設備工事業における空調・衛生・電気といった主要3工事の受注体制の構築と中京圏における更なる受注拡大。
設備工事業の事業が高値で売却できる可能性
設備工事業の事業が高値で売却できる可能性
設備工事業の事業が高値で売却できる可能性は、以下の要因によって高まります。
– 需要が安定している: 需要が安定しているため、事業価値が高いとされています。
– 技術力やノウハウが重要: 技術力やノウハウが重要視されるこの業界において、優れた技術力を持つ企業は高い評価を受けます。
– 地域密着型の事業: 地域密着型の事業であるため、地元に根ざした企業が強みを持つこともあります。
– 独自の集客ノウハウ: 独自の集客ノウハウや顧客基盤が強い企業は、高値で売却される可能性が高くなります。
– 特許や独占的な仕事: 特許を取得している会社や、他社にはない技術や特定のニッチな修繕工事を行える企業は、高値で売却される可能性が高い。
これらの要因から、設備工事業の事業は高値で売却できる可能性を持つとされています。
設備工事業の企業が会社を譲渡するメリット
設備工事業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです:
– 後継者問題の解決と廃業の回避:M&Aで他の会社や経営者に経営権を売却することで、廃業することなく会社を存続させることが可能です。また、廃業にかかる建物や機材などの廃棄コストを負担する必要もありません。
– 売却利益の獲得:M&Aで会社を売却することで、経営者の高齢化がM&Aでの売却の理由である場合には、売却した利益を引退後の生活費に当てることが可能です。
– 人材採用力の向上と定着率の向上:譲渡後も従業員が引き続き雇用され、人材採用力が向上し、定着率も向上します。
– 設備更新や新たな投資の資金援助:譲渡企業が得た資金を設備更新や新たな投資に使用できるため、事業の安定化が期待できます。
– 主力事業に経営資源を集中できる:不採算部門など一部事業を売却することで、資金や人材や設備などの経営資源を主力事業に集中させることができ、経営の安定化が期待できます。
設備工事業の事業と相性がよい事業
設備工事業の事業と相性がよい事業には、以下の業種が挙げられます。
– 建築・不動産業:建物の高さや形状に応じて昇降設備を設置する必要があるため、昇降設備工事業との協業によって顧客ニーズに応えることが可能です。
– 物流業:商品の運搬や保管の際に昇降設備が不可欠であり、昇降設備工事業との連携によってスムーズかつ効率的な業務運営が可能となります。
– 不動産管理業・施設管理業:修繕やメンテナンスを自社で対応できるため、コスト削減や迅速な対応が可能となり、顧客への信頼性も向上します。
– リフォーム業:物件購入後にリフォームを希望する顧客にすぐ対応でき、デザイン提案から施工まで一貫したサービスを提供することで、顧客満足度が高まり、追加収益も期待できます。
– 電気工事業:IT業や家電設置業と相性が良く、電気工事を通じて家電やスマートホーム関連のサービスを包括的に提供できる点が大きなメリットです。
これらの業種との相乗効果を活かすことで、設備工事業は顧客ニーズに迅速かつ効率的に対応し、事業の拡大を目指すことができます。
設備工事業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、設備工事業の企業様にとって最適なM&Aパートナーです。その理由は、まず第一に譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点です。これにより、コストを気にせずに安心してご相談いただけます。さらに、豊富な成約実績を誇っており、多くの企業様にご満足いただいております。設備工事業の業界にも深い知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確なアドバイスを提供することが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。