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解体工事業の市場環境
解体工事業の市場環境は以下の点が特徴です。
– 老朽化した建物の解体需要の増加:高度経済成長期に建てられた建物が老朽化し、建て替えが必要なため、解体工事の需要が高まっています。
– 自然災害による需要の増加:東日本大震災の復興特需や地震や豪雨などの自然災害対策に伴う建て替え需要が、解体工事の需要を増加させています。
– M&Aの活況:中長期的に市場成長が見込まれることや団塊世代の大量退職・若手人材不足による人材確保目的などから、M&A件数が増加傾向です。関連・周辺事業者によるM&Aも活発で、廃棄物処理業が解体工事業を買収するケースも見られます。
– 後継者不足と環境規制の強化:後継者不足や環境規制の強化がM&Aの急速な進展を促しています。技術力や資本力を持つ企業が中小企業を買収し、事業規模の拡大や技術力の向上を図っています。
– 地域市場の影響:都市部では再開発や大規模インフラプロジェクトが多く、安定した需要が見込まれるため、企業価値が高く評価されます。一方、地方の解体業者は地域密着型のビジネスを展開しており、その地域特有の需要や競争環境が売却価格に影響します。
– 技術の評価:特定の技術を保有している企業は、その技術が評価されて売却価格が上昇する傾向にあります。たとえば、アスベストの除去や廃棄物処理に特化した技術を持つ企業は、環境規制に対応できることから買収先企業にとって大きな魅力となります。
これらの要因が重なり合い、解体工事業界のM&A市場は引き続き活発な状況が続くと予想されます。
解体工事業のM&Aの背景と動向
解体工事業のM&Aの背景と動向は以下の通りです。
### 背景
1. 都市開発と老朽化
– 都市開発や建物の老朽化が進む中、解体工事業に対する需要が増加しています。
2. 後継者不足
– 解体工事業界では、経営者の高齢化による後継者不足が深刻です。多くの中小企業がこの問題に直面しており、大手企業や資本力のある業者が買収を進めています。
3. 環境規制の強化
– アスベスト除去や廃棄物の適正処理などの環境規制が強化され、解体工事に伴う環境負荷が問題視される中、規制を遵守しながら効率的に事業を展開するためには、技術力や資本力が必要です。
### 動向
1. 市場拡大と技術力の獲得
– M&Aを通じて市場拡大と技術力の獲得が可能です。特に、技術力やノウハウを持つ企業を買収することで、自社の技術力を高めることができます。
2. 事業の多角化
– M&Aを通じて、新たな市場や顧客層を開拓し、事業拡大を図ることができます。例えば、同じ業種の企業同士がM&Aすることで、技術力や人材を共有し、業務範囲を拡大することができます。
3. 地域密着型事業の強化
– 地域密着型の解体工事業者が、同じ地域の競合会社をM&Aすることで、地域内でのシェアを拡大し、経営効率の向上を実現することができます。
4. 関連・周辺事業者からのM&A
– 近年、建設業界内の関連事業者による解体工事業へのM&Aが活発です。例えば、廃棄物処理業が解体工事業を買収するケースも増えています。
5. 元請けから下請けへのM&A
– 発注額の低価格化が進む中、建設事業の元請けが下請けの解体工事会社をM&Aによって買収するケースが増えています。これにより、事業の効率化が図られます。
解体工事業のM&A事例
解体工事業のM&A事例をまとめると以下のようになります:
– ベステラによる矢澤のM&A:ベステラは、2021年12月に矢澤を子会社化しました。ベステラはプラント解体工事を手掛け、矢澤はアスベスト・ダイオキシン対策工事や内装解体工事を行っていました。ベステラはこのM&Aにより、プラント解体工事での環境汚染関連特殊工事に対応する力を強める見込みです。
– 鈴木商会による木村工務店のM&A:鈴木商会は、2021年7月に木村工務店を子会社化しました。鈴木商会は資源リサイクル事業や自動車リサイクル事業を手掛け、木村工務店は道東地域で解体工事を行っていました。鈴木商会はグループ内で解体から廃棄物処理まで完結できる体制を築き、道東エリアの事業を強める見込みです。
– カシワバラ・コーポレーションによる小椋組のM&A:カシワバラ・コーポレーションは、2024年7月に小椋組を完全子会社化しました。カシワバラは大規模建築物やプラント工場の建設・メンテナンスを行い、今回の買収により事業領域を拡大します。背景には、高度経済成長期に建設されたプラント設備や機器の老朽化が進み、解体・再建の需要が高まっていることがあります。
– ベステラによるオダコーポレーションのM&A:ベステラは、2023年7月にオダコーポレーションの株式100%を取得し、子会社化しました。ベステラは主に製鉄・発電・ガスなどの大規模プラントを対象に解体工事業を行い、オダコーポレーションは石油精製装置や化学装置のプラント建設とメンテナンスを中心に行っていました。今回のM&Aにより、両社の発展と企業価値の向上に寄与するとしています。
– 三木資源によるウエストのM&A:三木資源は、2022年5月にウエストを傘下に収めました。三木資源は金属類を中心に産業廃棄物をリサイクルし、ウエストは解体工事を行っていました。三木資源はこのM&Aにより、徳島県内での鉄スクラップ事業の先細りを見据えた新たな商材や商圏の開拓を目指しています。
– 新日本建設による冨士工のM&A:新日本建設は、2021年10月に冨士工を子会社化しました。新日本建設は建設事業や開発事業を行い、冨士工は幅広く工事業を行っていました。今回の買収により、新たな収益機会の確保や開発事業における自社プロジェクトの施工能力拡大が期待されています。
これらの事例から、解体工事業のM&Aは事業効率化や技術取得を目的として行われており、関連事業者による買収も活況となっています。
解体工事業の事業が高値で売却できる可能性
解体工事業の事業が高値で売却できる可能性について、以下のポイントをまとめます。
– 技術や特許の強みを持っている場合技術や特許の強みを持っている場合、最新の技術を有している会社は高値で売却できる可能性があります。特に特許工法を有している場合、その強みを生かして高値で売却できる可能性が高くなります。
– 入札実績や受注実績がある場合入札実績や受注実績がある場合、入札参加資格を持っていて実際に入札・受注した実績を持っている会社は、そうでない会社より高値で売却できる可能性があります。
– 安定した取引先や下請け先を持っている場合安定した取引先や下請け先を持っている場合、取引先や下請け先との安定した関係がある会社は経営の安定性が評価され、高値で売却できる可能性があります。
– 有形資産を持っている場合有形資産を持っている場合、人材や設備といった有形資産も同じくらい重要です。建設機材をレンタルしている会社も多いですが、もしも自社で保有している機材や設備があれば、その資産価値の分だけ売却額が上乗せされます。
– 財務や税務がきちんとしている場合財務や税務がきちんとしている場合、買い手は買収前にデューデリジェンスと呼ばれる会社の調査を行うので、税務や税務に問題があると発覚すれば、売却価格を下げられたり交渉を打ち切られたりするケースもあります。
– 有資格者の数や技能者の年齢が高い場合有資格者の数や技能者の年齢が高い場合、有資格者や優れた技能者を豊富に確保している建設会社は、買い手から高く評価されやすくなります。
これらの要素を踏まえて、解体工事業の事業が高値で売却できる可能性を高めることができます。
解体工事業の企業が会社を譲渡するメリット
解体工事業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです。
– 従業員の雇用確保: M&Aによる売却・譲渡であれば、従業員の雇用を確保できるだけでなく、技術者の経験を引き継ぐことが可能です。
– 後継者問題の解決: M&Aによって第三者に事業を売却・譲渡することで、後継者問題は解決できます。
– 売却・譲渡益の獲得: M&Aによって売却し、譲渡益を得れば、廃業費用などの負担は免れます。
– 事業の将来的な不安から解放: M&Aによって大手企業などの傘下に入ったり、売却・譲渡によって解体工事業を他社に経営してもらったりすることで、将来の不安から解放されます。
– 個人保証・債務・担保などの解消: M&Aによる会社売却を実施すれば、それらは新たな経営者に引き継がれ、経営者にとっては金銭的な負担面だけでなく、精神的にもメリットが大きい。
– 新たな経営者による経営改善の可能性: 会社を譲渡することで、新たな経営者が就任し、自身の経営哲学や経営手法を取り入れることで、経営改善を図ることができます。
– 譲渡金額での資金調達が可能: 会社を譲渡することで、譲渡金額を得ることができ、これを利用して新たな事業の立ち上げや事業拡大に資金調達を行うことができます。
– 事業承継に伴うリスク回避が可能: 会社を譲渡することで、事業承継に伴うリスクを回避することができます。
解体工事業の事業と相性がよい事業
解体工事業と相性がよい事業は以下の通りです。
### 1. 産業廃棄物収集運搬業
解体工事で出た廃棄物を処理場まで運ぶことができるため、解体工事業と密接な関係があります。産業廃棄物収集運搬業許可を取得すれば、解体後の運搬を自社で行うことができ、工事の流れがスムーズになります。
### 2. 廃棄物処理業
解体工事で出た廃棄物を処理することができるため、解体工事業と関連性が高く、M&Aや提携が活発です。
### 3. 建設工事
解体工事と一貫して請け負うことができるため、解体工事業と関連性が高く、M&Aや提携が活発です。
### 4. 環境事業
環境関連の事業を行うことができるため、解体工事業と関連性が高く、M&Aや提携が活発です。
### 5. 下請け解体工事会社
元請け企業が買収することで、事業効率化が図れるため、解体工事業界では活発なM&Aが見られます。
解体工事業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、解体工事業の企業様がM&Aを依頼する際におすすめの理由がいくつかございます。まず、譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点で、コスト面でのご負担を軽減いたします。さらに、豊富な成約実績を誇り、多くの企業様にご満足いただいております。また、解体工事業の業界にも知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確に対応可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。