目次
製造業の市場環境
2024年の製造業市場環境は、複数の課題と課題に対する戦略的な対応が求められています。以下に大切なポイントをまとめます。
– 実質成長率: 製造業の実質成長率は2024年度に1.4%となり、前年度の1.2%よりも高くなりました。
– 設備投資: 設備投資を増やす見通しの企業は前回調査よりも0.5ポイント増の75.9%で、製造業では78.8%となり、業種別では精密機器(94.7%)、ガラス・土石製品(87.5%)、ゴム製品(85.7%)などが高い割合で設備投資を予定しています。
– 雇用者数の増加: 雇用者数の増加動向は製造業が前回から5ポイント増の73.8%となり、業種別では精密機器(89.5%)、化学(83.7%)、機械(83%)などが高い割合で雇用者数の増加を予定しています。
– 海外生産: 海外生産について、海外現地生産を行う企業は2023年度は65.2%で、2028年度見通しでは63.4%と若干の減少が見込まれていますが、全生産高のうち海外現地生産比率は2023年度は23.9%、2028年度見通しでは24.3%と0.4%上昇が見込まれています。
– デジタル化: 製造業におけるデジタル化は進んでおり、インダストリー4.0やスマートファクトリーの導入が本格化しています。これにより、資産効率・労働生産性・製品品質の向上やコスト削減が期待されています。
– 課題: 製造業は価格努力や海上コンテナ料金の推移など、様々な課題に直面しています。シリコンサイクルの影響や物流の2024年問題、価格競争などが大きな課題となります。
– 対策: 製造業者は在庫確保や万全な準備を行うことが求められています。また、自社独自の強みを見出し、製品価格を上げても他社に顧客を奪われないようにすることが大切です。
製造業のM&Aの背景と動向
製造業のM&Aの背景と動向についてまとめると、以下の点が重要です。
– 市場競争の激化:ソース市場は多様な製品が存在し、消費者の好みも多様化しています。市場での競争が激化し、企業は新製品の開発や既存製品の改良に注力する必要がありますが、これには多大な投資が必要となり、資金面での課題が生じます。そこで、M&Aを通じて技術や製品のラインナップを強化し、市場での競争力を高めようとする企業が増えています。
– グローバル化の進展:近年、グローバル化が進展し、海外市場への進出が必要不可欠となっています。しかし、海外進出には多大なリスクが伴い、課題も多くあります。そこで、M&Aを通じて海外市場での知見やネットワークを持つ企業との提携を模索する企業が増えています。
– 経営効率の向上:製造業におけるM&Aは、事業の効率化や技術の獲得を目的として行われています。大手企業が中小企業を買収することで、経営の安定化や技術力の向上を目指しています。また、M&Aによってすでに軌道に乗っている事業を買収することで、新規事業が失敗するリスクを抑えたり、既存事業のさらなる強化を図ることが可能となります。
– 大手と中小企業間のM&A増加:大手製造業の会社は、技術力や市場へのアクセスを拡大し、新しい事業領域への進出を図るため、中小企業とのM&Aに積極的に取り組んでいます。特に革新的な技術や特許を持つ中小企業が注目されています。
– 異業種企業とのM&Aの傾向:製造業界では従来の枠を超えた異業種間M&Aも増加しています。これは、テクノロジーの進化に伴い、新しいビジネスモデルやサービスの開発を求められていることが原因です。例えば、AIやIoTの導入による製造プロセスの効率化や新製品開発が進む中において、異業種からの知識や技術の獲得に対する重要度が大きくなっています。
– M&Aのメリットとデメリット:製造業におけるM&Aは企業にとって多大なメリットをもたらす一方で、リスクも伴います。売却側のメリットには経営の安定性と資産価値の向上、従業員の雇用保障が含まれます。一方、買収側のメリットには技術と資源の獲得、市場シェアの拡大が含まれます。
製造業のM&A事例
製造業のM&A事例を以下にまとめます。
1. 日本電産と三菱重工工作機械
– 目的: 有するギヤに精通した人材・高度な技術力の獲得、工作機械事業のさらなる発展
– 手法: 株式譲渡
– 実行時期: 2021年5月頃(予定)
– 売却金額: 約300億円
2. 萩原工業と東洋平成ポリマー
– 目的: 新規市場の開拓、合成樹脂の用途開発、事業のさらなる成長
– 手法: 株式譲渡
– 実行時期: 2018年6月
– 売却金額: 11億3,000万円
3. 東京エレクトロンデバイスとアバール長崎
– 目的: 新規事業の確立、製造事業のさらなる拡大
– 手法: 株式譲渡
– 実行時期: 2017年7月
– 売却金額: 10億6,400万円
4. 進和とダイシン
– 目的: 新規事業(車載部品製造・販売)への参入、新規顧客の獲得・既存顧客との取引深耕
– 手法: 株式譲渡
– 実行時期: 2019年10月
– 売却金額: 非公表
5. 日阪製作所と小松川化工機
– 目的: 食品機器・医薬機器の事業領域拡大、新規顧客の獲得
– 手法: 株式譲渡
– 実行時期: 非公表
– 売却金額: 非公表
6. 日本ニューマチック工業と立山高圧工業
– 目的: 事業のさらなる拡大、後継者不在の課題解決
– 手法: 株式譲渡
– 実行時期: 非公表
– 売却金額: 非公表
7. 岩谷産業と太平工材および太平金属
– 目的: 売り手企業の販売網やサービス体制とのシナジー創出による競争力・収益力の強化
– 手法: 株式譲渡
– 実行時期: 2024年3月
– 売却金額: 非公表
8. 定松製作所と丹後テック
– 目的: 後継者不在の課題解決、双方の強みを活かした発展の実現
– 手法: 株式譲渡
– 実行時期: 2023年7月
– 売却金額: 非公表
9. 愛三工業とアイエムアイ
– 目的: 電動化製品事業の成長、車載用電池に関する技術の蓄積
– 手法: 株式譲渡
– 実行時期: 2023年11月
– 売却金額: 非公表
10. Mipoxと大久保鉄工所
– 目的: 多角的な受託研磨事業の展開
– 手法: 株式譲渡
– 実行時期: 2023年10月
– 売却金額: 非公表
11. JX金属と大阪合金工業所
– 目的: 原料調達におけるサプライチェーンの強化、先端素材の安定供給、新製品開発の強化
– 手法: 株式譲渡
– 実行時期: 2023年6月
– 売却金額: 非公表
12. ヤマシナと中国山科サービス
– 目的: 販路拡大などのシナジー効果創出
– 手法: 株式譲渡
– 実行時期: 2022年3月
– 売却金額: 1億9,300万円
13. 岡谷鋼機と旭精機工業
– 目的: 資本業務提携に伴う、経営資源・経営ノウハウの相互活用による事業効率の向上
– 手法: 資本業務提携(第三者割当による自己株式の処分)
– 実行時期: 2022年1月
– 売却金額: 1億5,776万円
製造業の事業が高値で売却できる可能性
製造業の事業が高値で売却できる可能性について、以下のポイントをまとめます。
### 1. 買い手からのニーズがある強みを確立する
買い手からのニーズがある強みを確立していると、相場よりも高い価格で売却できる可能性が高まります。具体的に以下の強みが挙げられます。
– 熟練技能を有する職人
– 競争優位性(希少性や模倣困難性など)の高い技術
– 安定的な収益源となる取引先
– 特許などの知的財産権
こうした強みを確立したら、買い手企業にアピールし、魅力を認識してもらうことも重要です。
### 2. 市場や自社の将来性が高いタイミングで売却する
市場や自社の将来性が高い(≒業績が伸びている)タイミングだと、そうでない場合よりも買い手企業からのニーズが大きくなるため、より高値で売却しやすくなります。
### 3. 独自の技術や優秀な人材を持つ
独自の技術や優秀な人材を持っている場合、相場以上の高値で売却することも可能です。特に、独自の技術をアピールすることで、買い手が見つかれば売却価格を大きく上げられる可能性があります。
### 4. 安定した取引先や収益源を持つ
安定した取引先や収益源を持っている場合、収益性の高さを買い手に伝えれば、売却価格の上昇につながります。特に、大量生産品を製造している企業では、原価管理を徹底することで高い収益を上げていることもあります。
### 5. 製造設備が整っている
製造設備が整っている場合、売却相場が高くなる可能性があります。新しい設備が導入されていれば、メンテナンスがしっかり行われているものであれば高値で買収されるでしょう。
### 6. 不採算事業を売却できる
不採算事業を売却できることで、経営資源を主力事業に投入でき、会社全体の業績も改善できるでしょう。
これらのポイントを踏まえると、製造業の事業が高値で売却できる可能性は、買い手からのニーズがある強みを確立し、市場や自社の将来性が高いタイミングで売却し、独自の技術や優秀な人材を持つ、安定した取引先や収益源を持つ、製造設備が整っている、不採算事業を売却できるなど、多くの要素が関係しています。
製造業の企業が会社を譲渡するメリット
製造業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです:
– 手続きが簡単でスムーズに引き継げる:株式譲渡や会社譲渡は、株式の授受によって経営権を移す手法なので、他のM&A手法と比べると手続きが簡単に進められるメリットがあります。
– 従業員の雇用を守ることができる:従業員ごと譲渡先の企業に譲渡することで、従業員の雇用を守ることができます。また、雇用が継続されれば、従業員に退職金を支払う必要もなくなります。
– 技術やノウハウを次世代に残す:長年培ってきたものづくりの技術やノウハウを譲渡先の企業に引き継ぐことで、次世代に残すことができます。
– 廃業コストを削減:工場や機械を所有している場合、廃業するとこれらの処分を自費で行わねばなりませんが、M&Aでは工場や機械ごと譲渡先の企業に引き継がれるため、廃棄にかかる費用負担を免れることができます。
– 後継者問題の解決:M&Aによる事業売却であれば後継者がいなくても自社の継続が可能です。また、後継者問題を解決する方法としてM&Aは多くの企業で活用されています。
– 自由な時間を得られる:M&Aによる売却により、事業を引き継ぐことができれば、自由な時間を得られるでしょう。
– 譲渡益を獲得:事業・会社を売却することで譲渡益を獲得できるメリットがあります。これをもとに新事業を始めたり、引退後の資金として活用できたりします。
製造業の事業と相性がよい事業
製造業の事業と相性がよい事業を以下にまとめます。
1. 食料品製造業
– 水産食料品製造業: 水産缶詰・瓶詰製造業、海藻加工業、水産練製品製造業、塩干・塩蔵品製造業、冷凍水産物製造業、冷凍水産食品製造業などが含まれます。
– 畜産食料品製造業: 部分肉・冷凍肉製造業、肉加工品製造業、処理牛乳・乳飲料製造業、乳製品製造業(処理牛乳、乳飲料を除く)、その他の畜産食料品製造業が含まれます。
– パン・菓子製造業: パン・菓子製造業は、パンや菓子の製造を中心に行う事業で、パン・菓子製造業が含まれます。
2. 繊維工業
– 繊維機械製造業: 繊維機械の設計、製造、販売を行う事業で、繊維生産に必要な機械を提供します。
– 繊維雑品製造業: 繊維雑品の製造を行う事業で、日用品や衣類などを製造します。
3. 金属製品製造業
– 金属プレス製品製造業: 金属プレス製品の製造を行う事業で、金属をプレス加工して製品を作ります。
– ボルト・ナット製造業: ボルトやナットなどの金属部品の製造を行う事業で、機械や建物の構造に必要な部品を提供します。
4. 電気機械器具製造業
– 産業用電気機械器具製造業: 産業用の電気機械器具の製造を行う事業で、工場や工事現場で使用される機械器具を提供します。
– 電子計算機等製造業: 電子計算機や電子機器の製造を行う事業で、情報技術に必要な機器を提供します。
5. 輸送用機械器具
– 自動車・同附属品製造業: 自動車や自動車の部品の製造を行う事業で、輸送用の機械器具を提供します。
– 鉄道車輌・同部品製造業: 鉄道車両や鉄道車両の部品の製造を行う事業で、鉄道輸送に必要な機械器具を提供します。
製造業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
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株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。