目次
臨床試験支援業の市場環境
臨床試験支援業の市場環境は、以下の要素が特に重要です:
– 市場規模と成長率:2024年には261億米ドルに達し、年平均成長率7.52%で2029年には375億米ドルに達すると予測されています。
– 主要プレーヤー:Iqvia Holdings Inc.、F. Hoffmann-La Roche Ltd.、Laboratory Corporation of America Holdings、Eli Lilly and Company、Novo Nordisk A/Sが主な企業です。
– 地域別成長:アジア太平洋地域が予測期間中に最も高いCAGRで成長すると予測されています。
– 規制とコンプライアンス:厳格な規制とコンプライアンスが臨床試験に影響を与え、募集を複雑にし、国際的な研究では国を越えた相違と倫理基準が課題を追加します。
– 新技術の採用:臨床試験手順を容易にするための新技術の採用が地域の市場成長を支援しており、例えばMedable社やAdvarra社が自動化技術や施設、患者、スポンサーの調整を行う新技術を発表しています。
– 課題:新興市場における熟練した専門家の不足、厳しく複雑な規制プロセスが患者登録の妨げとなり、試験スケジュールの遅延につながるなど、いくつかの課題に直面しています。
– 市場の拡大要因:製薬企業による研究開発投資の高さ、慢性疾患の有病率の上昇、治験パイプラインの充実、企業によるアウトソーシングの拡大が市場成長を促進しています。
臨床試験支援業のM&Aの背景と動向
臨床試験支援業のM&Aの背景と動向を以下にまとめます。
背景:
– 高コストと低成功率:
– 製薬業界における新薬開発には、10年以上かかる期間と成功確率が25,000分の1という高コストと低成功率が特徴です。
– これにより、巨額の資金が動き、M&Aが積極的に行われています。
– パイプラインの重要性:
– 製薬会社の価値を決める重要な要素は、保有するパイプラインの数です。パイプラインとは、医療用医薬品候補化合物、つまり新薬候補のことを指します。
– 例えば、武田製薬が申請手前のフェーズ3の段階の開発薬が3品目しかないのに対し、シャイアー社は15品目を保有していました。
動向:
– CRO・SMO業界の成長:
– CRO・SMO業界は近年M&Aが活発な業界の一つで、企業力の向上や海外進出を見据えたM&Aが行われています。
– 国際化とネットワークの強化:
– 世界中のCRO・SMO企業は、治験環境が国際化したため、治験体制の強化を促進しています。
– 日本の大手CRO・SMO企業は、海外企業との協力体制を強めています。
– M&Aの目的と計画:
– CRO・SMO業界では、さまざまな目的や計画によりM&Aが行われています。例えば、大手CRO・SMO企業による中小CRO・SMO企業の集約化や、CRO・SMO企業とIT企業の提携など。
– 具体的なM&A事例:
– ケアネットによるSattの買収:
– ケアネットは、スペシャリティ医薬品のプロモーション支援サービスの安定成長のための事業基盤づくりに向け、Sattの全株式を取得しました。Sattは臨床研究支援業務を行っており、ケアネットはSattの優秀なCRAや医師会員資産を利用して事業のDX化を進めます。
– トランスジェニックによるMASCのM&A:
– トランスジェニックは、MASCの全株式を取得し、子会社化しました。MASCは治験コーディネータ、治験審査委員会、臨床薬理試験などの業務を行っており、今回のM&Aにより臨床試験事業との相乗効果を獲得しました。
– 新日本科学によるイナリサーチのM&A:
– 新日本科学は、イナリサーチの普通株式を公開買付けにより取得し、完全子会社化することを決定しました。イナリサーチは医薬品や医療機器の安全性試験を受託しており、新日本科学はイナリサーチとの協業によりバイオ医薬品など新たな創薬モダリティへの対応や受託体制のグローバル化を進めます。
大切なポイント:
– パイプラインの重要性:
– 製薬会社の価値を決める重要な要素は、保有するパイプラインの数です。
– 国際化とネットワークの強化:
– 世界中のCRO・SMO企業は、治験環境が国際化したため、治験体制の強化を促進しています。
– M&Aの目的と計画:
– CRO・SMO業界では、さまざまな目的や計画によりM&Aが行われています。例えば、大手CRO・SMO企業による中小CRO・SMO企業の集約化や、CRO・SMO企業とIT企業の提携など。
– 臨床試験支援のDX化:
– 両社の優秀なCRAや医師会員資産を利用して事業のDX化を進めることが重要です。
臨床試験支援業のM&A事例
### 臨床試験支援業のM&A事例
#### CROのM&A事例
– エムスリーによるミナケアの連結子会社化:
– エムスリーは2024年6月にミナケアを子会社化しました。エムスリーは医療従事者専門サイト「m3.com」を運営し、製薬会社に向けてのマーケティング支援や治験支援サービスを行っています。対象会社のミナケアは、保健事業戦略コンサルティングのサービスを中心とした保健事業支援サービスを展開しています。このM&Aにより、両社の強みを生かして健康づくりや予防の新たなサービスの開発や提供など事業拡大を目指します。
– トランスジェニックによるMASCの子会社化:
– トランスジェニックは2023年3月にMASCの全ての株式を取得し、子会社化しました。トランスジェニックは創薬支援、投資・コンサルティング事業などを展開しています。対象会社のMASCは、治験コーディネータ、治験審査委員会、臨床薬理試験などの業務を行っています。このM&Aにより、臨床試験事業との相乗効果の獲得とともに、さらなる充実したサービス提供を目指します。
– 新日本科学によるイナリサーチ株式の公開買付け:
– 新日本科学は2022年6月に、イナリサーチの普通株式を公開買付けにより取得し、完全子会社化することを決定しました。新日本科学は医薬品開発受託(CRO)事業やトランスレーショナルリサーチ(TR)事業を行っており、イナリサーチは医薬品や医療機器の安全性試験などを受託しています。この買収により、新日本科学はバイオ医薬品など新たな創薬モダリティへの対応や受託体制のグローバル化を進めるため、イナリサーチとの協業により事業のさらなる強化を目指しています。
#### SMOのM&A事例
– シミックHDによるノックオンザドアの子会社化:
– シミックホールディングスは2022年10月に、ノックオンザドアと資本業務提携契約を締結し、第三者割当増資による株式の引受と既存株式の譲受を通じて、ノックオンザドアを子会社化することを決定しました。これにより、シミックHDの議決権所有割合は51.7%となります。シミックHDは医薬品開発支援を行う企業グループで、ノックオンザドアはてんかん支援プラットフォーム「nanacara®」を展開しています。このM&Aにより、シミックグループはデジタルプラットフォーム「harmo®」を強化し、希少疾患領域での患者支援や臨床試験の活用など、さまざまなシナジーを創出することを目指しています。
– アイロムNAによるデルマラボからのSMO事業承継:
– アイロムグループの完全子会社であるアイロムNAは2021年4月に、デルマラボのSMO事業を承継しました。アイロムグループは先端医療、SMO、CRO、メディカルサポートの4つの事業を展開しており、アイロムNAは臨床試験業務支援を担当しています。この承継により、アイロムグループは北海道エリアでの治験実施医療機関との提携を拡大し、皮膚科領域の臨床試験受託を強化し、売上の増加を目指します。
#### CRO・SMO業界のM&A動向
– ケアネットによるSattの買収:
– ケアネットは2024年5月に、Sattの全株式を取得し子会社化しました。ケアネットは製薬会社の営業支援サービス、Web上で医療コンテンツサービスを提供しており、Sattは臨床研究支援業務を行っています。この買収により、ケアネットはSattが有する優秀なCRA人材等とケアネットが有する医師会員資産・インターネット情報提供技術等を融合することにより事業のDX化を進め、治験プロセスにおける新しいソリューションの開発を図っていく予定です。
– インテージHDによるアルフレッサHDへのCRO事業承継:
– インテージホールディングスは2024年6月に、子会社であるインテージヘルスケアのCRO事業を新設分割により新会社へ移し、その全株式をアルフレッサホールディングスに譲渡しました。この事業承継により、両社の強みを生かして臨床試験サービスの提供を強化することを目指します。
臨床試験支援業の事業が高値で売却できる可能性
臨床試験支援業の事業が高値で売却できる可能性について、以下のようにまとめられます。
治験関連業務・SMO受託会社のM&A動向
治験関連業務・SMO受託会社のM&Aは、十分な人気度があります。特に、CRO機関同士やSMO機関同士のM&Aが活発に行われており、CROとSMO、あるいはCROないしSMOとその関連業種のM&Aも想定されます。
M&Aのメリット
– 後継者問題の解決後継者問題を解決でき、社会的信用を維持したまま安心してリタイアできる。
– 従業員の雇用維持従業員の雇用維持ができる。
– 負債や保証などからの解放負債や保証などからの解放ができる。
– M&Aによる売却益を得るM&Aによる売却益を得ることができる。
CRO・SMO業界のM&A動向
CRO・SMO業界では、M&Aによる買収や売却が数多く存在します。特に、CRO機関同士やSMO機関同士のM&Aが活発に行われており、CROとSMO、あるいはCROないしSMOとその関連業種のM&Aも想定されます。
M&Aによる事業の拡大
– 大手による売却で海外が視野に大手とM&Aで事業譲渡を行えた場合、事業提携などが行われ販路が拡大する可能性があります。
– 新規顧客、新たなノウハウ、優秀な人材などの獲得新規顧客、新たなノウハウ、優秀な人材などの獲得ができる。
これらの点から、臨床試験支援業の事業が高値で売却される可能性は高いと考えられます。
臨床試験支援業の企業が会社を譲渡するメリット
臨床試験支援業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです。
– 会社・研究所の存続: 経営が困難な場合は、事業譲渡により会社再建の舵取りが可能です。
– 大手による売却で海外が視野に: 大手とM&Aで事業譲渡を行うと、事業提携などが行われ、販路が拡大する可能性があります。国内シェアのみであった状況を海外までシェアを広げられる可能性もあります。
– 後継者問題の解決: M&Aによる事業譲渡で後継者問題を解決する事例が多く見られます。買収側の経営陣が売却側の事業に参画し、後継者問題に対応しています。
– 研究者・従業員の雇用維持: M&Aにより事業を継続させ、研究者や従業員の雇用を維持することができます。
– 負債や保証などからの解放: M&Aによる事業譲渡で、売却対象となった事業や資産は全て買収側の企業に引き継がれ、経営者は事業を譲渡し、負債や保証から解放されます。
– M&Aによる売却益を得る: M&Aにより事業を譲渡し、対価として現金などの売却益を得ることができます。これは新たな事業への投資や得意分野への資産増額などに活用できます。
臨床試験支援業の事業と相性がよい事業
臨床試験支援業の事業と相性がよい事業は以下の通りです。
1. 製薬・製造業:
– 臨床試験は医薬品や医療機器の開発において不可欠なステップです。製薬・製造業は臨床試験を通じて製品の安全性や有効性を確認し、承認を得るためにCROやSMOに業務を委託します。
2. 医療機関:
– 小規模医療機関では、治験を実施するための経験や人員確保が困難です。SMOはこれらの問題を解決し、医療機関の標準業務手順書の作成や治験事務局の運営支援を行っています。
3. 研究機関:
– 研究機関は新しい薬や治療法の開発に積極的に取り組んでいます。CROやSMOは研究機関が臨床試験を効率的に実施できるように、企画支援やデータ収集、分析をサポートしています。
4. 医薬品・医療機器の開発:
– 臨床試験は医薬品や医療機器の開発における重要なステップです。CROやSMOはこれらの開発プロセスにおいて、臨床試験の企画支援、モニタリング、データ収集、分析などをサポートしています。
5. データ管理システム:
– EDCシステムやクラウド、ブロックチェーンなどのデータ管理システムを活用した高品質な臨床試験が行われるようになっています。CROやSMOはこれらのシステムを活用して、データ収集や分析を効率化しています。
これらの事業は、臨床試験支援業と相性がよい事業であり、各企業が臨床試験を効率的に実施し、医薬品や医療機器の開発を進めるために不可欠です。
臨床試験支援業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
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株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。