目次
生命保険媒介業の市場環境
生命保険媒介業の市場環境は、以下の要素によって特徴づけられます。
– 市場規模の予測:
– 2023年: 4兆2,300億米ドル
– 2024年: 4兆5,700億米ドルに達すると予測され、CAGR 8.30%で成長します。
– 2030年: 7兆4,000億米ドルに達すると予測されています。
– 市場の成長要因:
– 消費者意識の高まり: 生命保険のメリットに関する消費者意識が高まり、リタイアメント・プランニング・ソリューションに対する需要が増加しています。
– デジタルプラットフォームの台頭: デジタルプラットフォームやインシュアテック・イノベーションの進展により、顧客エンゲージメントの向上や保険契約管理プロセスの合理化が促進されています。
– 市場の課題:
– 高級生命保険ソリューションの高コスト: 高級生命保険ソリューションの高コストが市場の成長を抑制しています。
– 規制の複雑さ: 規制の複雑さや先進国市場の飽和が課題となります。
– 販売チャネルの多様化:
– 乗合代理店の販売チャネル: 乗合代理店の販売チャネルが多様化しており、来店ショップ、オンライン型、訪問型の販売戦略が進んでいます。
– 直販と代理店販売: 生命保険会社の直販と代理店販売の取組みが進んでおり、業界全体の販売チャネルの戦略が俯瞰されています。
– 技術的イノベーション:
– AIの活用: 引受プロセスとリスク評価を改善するためのAIを活用した予測分析が進展しています。
– 気候変動リスク補償: 気候変動リスク補償やウェルネスをベースとした保険など、進化する顧客ニーズに特化した商品の開発が進んでいます。
– 地域別の市場動向:
– 先進市場と新興市場の乖離: 世界的には、生命・年金保険セクターの2023~2024年の保険料収入の成長が先進市場と新興市場の乖離を促進すると予測されています。
– インフレの影響: 個人の裁量消費へのインフレの影響は、米国と欧州の個人向け生命保険販売を圧迫する可能性がありますが、先進アジアでは規制の逆風が重くのしかかる可能性があります。
生命保険媒介業のM&Aの背景と動向
生命保険媒介業のM&Aの背景と動向を以下にまとめます。
背景
– 規制の厳格化と金融庁による規制が厳格化し、さらに大手生命保険会社の不祥事の影響で業界全体が右肩下がりです。
– 販売チャネルの多様化と現代では、保険代理店だけではなく銀行や郵便局でも保険商品を販売しています。また、インターネットがあれば店舗に行かずに保険に加入できます。
– 保険会社による「売り止め」と金融庁の規制が厳格化しているとともに、販売チャネルの多様化によって保険代理店のニーズが低下しつつあり、保険会社による「売り止め」が増加しています。
動向
– 大企業のM&Aによる勢力拡大と近年は大企業のM&Aによって勢力拡大を図る動きがみられ、特に来店型保険ショップが勢いを増しています。大手保険会社「日本生命保険」は「ほけんの110番」や「ライフサロン」をM&Aにより買収しており、楽天が運営している「楽天生命」もM&Aによって会社化したものです。
– 中小規模の保険会社同士のM&Aも増加と少子化などの影響で保険代理店の市場は縮小していますが、その一方で大企業のM&A戦略などで競争は激化しています。中小保険代理店は市場での生き残りをかけ、同業種間でM&Aを実施するケースも増えてきました。
メリット
– 買い手側のメリットと保険代理店を買収することで手数料による収益増加が期待されます。契約者が保険契約を継続している限り、保険会社から保険代理店へ7年間は手数料が支払われ続けます。
– 売り手側のメリットと保険代理店側のメリットは、売却益を得られることです。M&Aは、会社や事業を譲渡して、その対価を受け取ります。保険代理店の価値、将来性、取引先、顧客数、契約数などが優れているほどに売却価額も高くなります。
今後の展望
– M&Aの進捗状況と2021年には、合計1兆2,000億ドル相当の約8,624件の取引が成立したとされています。保険は、金融サービスにおけるPE取引全体の半分以上を占めています。
– M&Aの課題と取引自体に適した保険の補償範囲を見つけることが課題です。例えば、M&A取引における代理保険や保証保険への関心が高まっています。
生命保険媒介業のM&A事例
### 生命保険媒介業のM&A事例
#### ①メットライフ生命×フォルテシモ
メットライフ生命がフォルテシモの全株式を取得
メットライフ生命は日本初の外資系生命保険会社で、フォルテシモは複数社の生命保険・損害保険を取り扱う保険代理店です。メットライフ生命はフォルテシモの事業拡大を目的にM&Aを行いました。
#### ②エクサウェザーズ×アフラック生命保険
エクサウェザーズとアフラック生命保険の業務提携
エクサウェザーズはAIを活用したサービスの開発を行う企業で、アフラック生命保険はがん保険・医療保険などの販売を行う保険会社です。この業務提携は、アフラックの保険領域の豊富なデータや顧客基盤と、エクサウェザーズのDX・AIノウハウを相互活用することを目指しました。
#### ③朝日生命×NHSインシュアランスグループ
朝日生命がNHSインシュアランスグループの全株式を取得
朝日生命はインターネットでさまざまな医療保険を販売している保険会社で、NHSインシュアランスグループは保険代理店4社を傘下に持つ持株会社です。朝日生命はwithコロナ・afterコロナに対応した営業スタイルの構築を目的として、NHSインシュアランスグループを買収しました。
#### ④第一生命×アルファコンサルティング
第一生命がアルファコンサルティングの全株式を取得
第一生命は大手保険会社で、アルファコンサルティングは複数の保険会社の保険商品の販売を行う保険代理店です。第一生命は「複数社の保険商品と比較した上で契約したい」と考える顧客ニーズに対応するために、アルファコンサルティングとのM&Aを行いました。
#### ⑤日本生命保険×ほけんの110番
日本生命保険がほけんの110番の全株式を取得
日本生命保険は、複数社の保険商品を販売する保険代理店を全国的に展開するほけんの110番を買収しました。ほけんの110番の動向は、M&Aによって事業資金を獲得したため、保険代理店事業の拡大・成長を進めていきました。
#### ⑥アセットガーディアン×第一生命保険
アセットガーディアンが第一生命保険に全株式を売却
アセットガーディアンは乗合保険募集代理店で、第一生命保険は生命保険会社です。第一生命保険は商品・サービスの共同開発や人材交流を通じたノウハウ共有によるサービスの品質向上を目指しました。
#### ⑦ブロードマインド×セブン・フィナンシャルサービス
セブン・フィナンシャルサービスがブロードマインドに事業譲渡
セブン・フィナンシャルサービスは生命・損害保険代理店で、ブロードマインドはファイナンシャルプランニングに関するコンサルティング業務を行います。ブロードマインドは自社事業の加速的な成長を目指しました。
#### ⑧FPパートナー×サプライズジャパン
サプライズジャパンがFPパートナーに全株式を売却
サプライズジャパンは東京海上日動火災保険および東京海上日動あんしん生命保険の専属専業代理店で、FPパートナーはファイナンシャルプランニング業務、保険代理業、金融商品仲介業を行います。FPパートナーは損害保険事業の拡大、生命保険販売の強化を目指しました。
#### ⑨ブロードマインド×セゾン保険サービス
セゾン保険サービスがブロードマインドに株式の15%を売却
セゾン保険サービスは損害保険代理店、生命保険募集代理業を行います。ブロードマインドはセゾン保険サービスの協業を強力に推進することを目指しました。
#### ⑩エムエスティ保険サービス×バーン
バーンがエムエスティ保険サービスに事業譲渡
バーンは損害保険・生命保険代理業を行います。エムエスティ保険サービスはガバナンス体制強化および事業効率の改善を目指しました。
#### ⑪アイリックコーポレーション×ユニアックス
ユニアックスがアイリックコーポレーションに第三者割当増資を引き受け
ユニアックスは自動仕訳システムを提供し、アイリックコーポレーションは生命保険コンサルティング・損害保険代理業を行います。アイリックコーポレーションはユニアックスの第三者割当増資を引き受けました。
生命保険媒介業の事業が高値で売却できる可能性
生命保険媒介業の事業が高値で売却できる可能性は、以下の点から見ておきます。
– 収益安定化: 大手保険会社の傘下入りにより、収益の安定化が期待できます。特に、収益が安定した企業は高値で売却されることが多いです。
– 営業権の価値: 保険代理店がすでに営業権を確立している場合、その営業権は高価で売却されることがあります。特に、営業権が強いと、販路を開拓する必要がなく、既存の顧客を引き継ぐことが可能です。
– 資本力の支え: 大手企業の傘下に入ると、資本力が強化され、経営が安定します。顧客の動きを把握し、市場における変化に迅速に対応できるようになります。
– 従業員の雇用維持: M&Aにより、従業員の雇用を維持できるため、従業員の将来のために視野に入れることができます。
– 事業拡大の可能性: 既存の営業権を活用して、事業を拡大することが可能です。複数の店舗を譲り受けることで、進出を考える地域に事業を広げることができます。
これらの点から、生命保険媒介業の事業が高値で売却される可能性は高いと言えます。特に、収益の安定化、営業権の価値、資本力の支え、従業員の雇用維持、事業拡大の可能性が大切な要素です[収益安定化][営業権の価値][資本力の支え][従業員の雇用維持][事業拡大の可能性].
生命保険媒介業の企業が会社を譲渡するメリット
生命保険媒介業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです。
– 既存従業員の雇用を維持できる・譲渡側がM&Aを活用することで、既存の従業員の雇用を維持できる可能性があります。廃業を避けることで、従業員の職を失うことなく事業を継続できます。
– 大手企業の傘下に入ることで安定した経営が期待できる・譲渡側が大手企業の傘下に入ることで、安定した経営環境が整います。大手企業が収集したマーケティングや顧客データを共有でき、大手企業の事務管理システムを利用してコスト削減が可能です。また、大手企業のブランド力を活かして新規顧客の獲得も可能です。
– 創業者利益を得られる・譲渡側の経営者は、創業者利益の獲得が期待できます。引退後やセカンドライフのための資金調達が見込める可能性があります。また、中小規模の保険代理店では、創業者が会社の債務を保証する個人保証人になっているケースもあり、M&Aによって保険代理店を譲渡すれば譲受側が個人保証を引き継ぐこともあります。
– 事業展開の時間とコストを抑えられる・譲受側がM&Aを活用することで、事業展開にかかる時間とコストを抑えられる点が挙げられます。新規事業参入時や事業規模拡大時には多大な時間とコストが必要となりますが、M&Aを活用することで、譲渡側の店舗や人材を引き継ぐことが可能で、効率的に事業を展開できます。
– 営業基盤を引き継げる・譲渡側の営業基盤や営業のノウハウを承継できる点も、M&Aによる譲受側のメリットです。保険代理店の主な収入源は保険の契約に応じて保険会社から支払われる手数料です。M&Aによって保険代理店を譲り受けることで、譲渡側の既存顧客もそのまま引き継ぐ可能性があり、顧客を確保した状態で事業を開始、展開できます。
– ライバルの減少・譲受側がM&Aを活用することで、ライバル企業の減少が期待できます。同業者を買収または合併することで、顧客を取り合うライバルの数が減り、競争による疲弊を避けることができます。
– 短い期間で事業開始の準備を終えたい場合に適している・M&Aで保険代理店を買収することで、短い期間で事業が始められるため、迅速な事業展開が可能です。店舗を探すことや従業員を集める費用が抑えられ、スムーズな事業展開が期待できます。
– 営業権を獲得してすでに開拓した販路を譲り受ける・M&Aで保険代理店を買収すると、営業権を獲得してすでに開拓した販路を譲り受けることができます。従業員に負担をかけず、店舗の内外で保険商品の提供が可能になります。
– 事業を拡大できる・M&Aで既存の保険代理店を買収すれば、営業権を得られるため、顧客がついた状態で事業を始められ、保険料収入を得ることができます。複数の店舗を譲り受けるケースもあり、進出を考える地域に売却側の店舗があれば一度の売買で事業を広げることができます。
生命保険媒介業の事業と相性がよい事業
生命保険媒介業の事業と相性がよい事業は、以下の通りです。
生命保険媒介業の事業
生命保険媒介業は、保険加入希望者と保険会社の間を取り持つ役割があります。主な業務は以下の通りです。
– 相談・アドバイス・提案:加入希望者の意向やライフプランをヒアリングし、それぞれの条件に適した保険商品を提案します。
– 保険の契約・各種手続き:契約の手続きや加入後の各種手続きを行います。契約の際に保険媒介人が担当する手続きは、その媒介人が持つ権限や取り扱う保険商品によって異なります。
– 保険金請求:保険金の請求が必要となった際に、必要な手続きや書類を準備してくれます。
相性がよい事業
以下の事業は、生命保険媒介業と相性がよいとされています。
– 金融サービス提供:金融サービス提供法に基づき、顧客の意向を把握し、それに沿った保険契約の締結や提案を行います。
– 個人情報管理:顧客に関する情報を適切に保護し、個人情報の保護に関する法律を遵守します。
– リスク管理:保険商品の特性に応じて、顧客が十分に理解できるように、多様化した保険商品に関する十分な知識や保険契約に関する知識を提供します。
大切なポイント
– 顧客の理解:顧客が保険商品の内容を十分に理解できるように、適切な説明を行います。
– 適正な勧誘:顧客のニーズに応じた商品の勧誘を行い、モラルリスクを排除・抑制します。
– 情報の保護:顧客に関する情報を適切に保護し、個人情報の保護に関する法律を遵守します。
これらのポイントを守ることで、生命保険媒介業が適切に行われ、顧客の信頼を得ることができます。
生命保険媒介業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、生命保険媒介業の企業がM&Aを依頼する際におすすめの理由がいくつかあります。まず、譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点が大きな魅力です。これにより、コストを抑えながらスムーズにM&Aを進めることができます。また、豊富な成約実績を持っており、多くの企業様に信頼されています。さらに、生命保険媒介業の業界にも知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確なサポートを提供することが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。