目次
施設介護業の市場環境
施設介護業の市場環境
施設介護業は、介護保険制度の改定や高齢化社会の進展に伴い、変化する市場環境に直面しています。
– 事業所数の変遷:
– 通所介護: 近年、事業所数が減少傾向にあったが、現在は回復基調に転じています。
– 訪問介護: サ高住などの施設併設型の訪問介護の増加に伴い、2年連続増加の傾向にあります。
– 認知症対応型共同生活介護、小規模多機能型居宅支援介護: これらは継続して増加傾向にあり、特に訪問看護が急増(1年で1,000件以上)しています。
– 人材不足:
– 人材不足は、介護業界にとって深刻な問題です。実際に職員が不足していると感じている事業所は年々増加しており、最新のデータでは6割以上の事業所が人手不足を感じています。
– 離職率に関しては改善の傾向がありますが、これにより「経験者の採用」がより困難な状況になったともいえます。
– 倒産件数:
– 2024年度上半期には、介護事業者の倒産が95件に達し、過去最多を記録しました。特に「訪問介護」が46件と急伸しました。
– 介護保険報酬改定で基本報酬が引き下げられたことで事業継続を諦めたケースも倒産を押し上げている可能性があります。
– 介護保険報酬改定:
– 2024年は、介護保険、診療報酬、障がい福祉サービス等の3つの保険制度・報酬が改定されます。改定の大枠としては地域包括ケアシステムの深化・推進、自立支援・重度化防止に向けた対応、良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり、制度の安定性・持続可能性の確保などが含まれます。
– 経営環境:
– 物価高と人材不足が深刻化しており、2023年には介護事業者の休廃業が過去最悪を記録しました。
– 国は経営の大規模化・効率化を進めるよう働きかけていますが、介護事業者にとってはこれらの課題が続きます。
施設介護業のM&Aの背景と動向
介護業界におけるM&Aの背景と動向は以下の通りです。
– 人材不足の解消: 介護業界では、処遇や育成面、離職率の高さなどが原因で人材不足が深刻な問題となっています。同業者同士のM&Aが行われており、スキルやノウハウを持つ従業員を獲得し、人材育成を積極的に行うことで新たな人材の確保がしやすくなっています。
– 事業承継問題: 介護保険制度が施行された2000年から20年が過ぎ、経営者の世代交代が進んでいます。後継者が足りず、親族や従業員への承継が難しい企業も多く、M&Aによる事業承継が増えています。
– 成長産業への参入: 介護業界は成長産業として期待されており、異業種からの新規参入が増えています。特に、警備会社や不動産会社、医療機関などの参入が顕著で、有料老人ホーム市場の拡大も背景となっています。
– 地域特性に適した事業者取得: 地域ごとの規制や需要の変動に対応するため、M&Aによって地域特性に適した事業者を取得することが求められます。これにより、地域での競争優位性を確立することが可能です。
– 技術やノウハウの取得: M&Aを通じて先進的な技術やノウハウを取得することができ、これによりサービス品質の向上や新しいサービスの導入が容易になります。
– 規模の経済を追求: 複数の施設を統合することで、運営コストの削減や効率的な資源配分が可能となり、競争力が向上します。
– 海外進出: 介護サービスがまだ充実していない地域での事業拡大や売上向上が見込まれており、中国などへの進出も考えられています。
施設介護業のM&A事例
### 施設介護業のM&A事例
– 日本生命保険によるニチイホールディングスのM&A:
– 日本生命保険は、2024年6月にニチイホールディングスのほぼ全ての株式を買収しました。ニチイホールディングスは医療・介護・保育事業を手掛ける企業で、日本生命保険は1999年に業務提携を結んでおり、事業の生産性・持続性を向上させることを目的としてM&Aを実施しました。
– 揚工舎によるヒューマンライフケアのM&A:
– 揚工舎は、2023年9月にヒューマンライフケアが運営する有料老人ホーム事業・小規模多機能型居宅介護事業の一部をM&Aによって取得しました。揚工舎は高齢者の通所・訪問介護、居宅介護支援などを中心に行ってきた企業で、このM&Aは事業拠点を増加させることを目指しました。
– SOMPOケアによる東京建物シニアライフサポートのM&A:
– SOMPOケアは、2020年12月に東京建物シニアライフサポートの全ての発行済株式を取得し、翌年2021年3月に同社を吸収合併しました。SOMPOケアは介護事業を担う大手企業で、在宅介護サービスから施設介護サービスまで総合的な介護サービスを提供しています。
– ケア21による凛のM&A:
– ケア21は、2022年4月に凛の全ての株式を取得し、子会社化しました。ケア21は訪問介護、居宅介護支援、グループホーム、介護付有料老人ホームなどを首都圏・近畿地方・名古屋・仙台・広島・福岡など全国各地で展開しており、双方の既存事業所と事業展開エリアが重複しているため、M&Aにより営業、人的資源の一本化によって業務の効率化が図れました。
– ニチイ学館による西日本ヘルスケアのM&A:
– ニチイ学館は、2021年7月に西日本ヘルスケアの全ての株式を取得し、完全子会社化しました。西日本ヘルスケアは滋賀県、京都府、大阪府に、計7施設の住宅型有料老人ホーム、グループホーム・小規模多機能型居宅介護およびサービス付き高齢者向け住宅を運営しています。今回のM&Aにより、トータル介護サービスネットワークを生かして、施設利用者や対象地域へ安定的なサービスの供給を図るとともに企業価値を向上しています。
施設介護業の事業が高値で売却できる可能性
介護施設の事業が高値で売却できる可能性について、以下のようにまとめます。
介護施設の事業が高値で売却できる可能性は、以下の点にあります:
– 既存の設備をそのまま利用できる:M&Aにより、稼働している設備を獲得できるため、準備期間や設備の購入費用が不要です。
– 既存の従業員を雇用できる:すでに実績と経験を持つ従業員を雇用できるため、事業をすぐに軌道に乗せることができます。
– 利用者がすでに存在している:M&Aでは利用者も引き継ぎ、一定数の顧客を確保することが可能です。
– 特定施設の特徴:特定施設は総量規制の対象であり、競合に利用者を奪われる心配がないため、収入が突然落ち込むようなことも少ないと考えられます。
– 行政の支援:特定施設は、利用者の介護度に合わせて定額の介護報酬が給付されるため、経営計画や事業収支が立てやすく、その分の収入が安定する。
また、介護事業の市場が成長しやすい市場であり、日本の高齢化社会が進むため、介護事業の需要も高まっていくでしょう。これらの要因により、介護施設の事業が高値で売却される可能性は高いと考えられます。
施設介護業の企業が会社を譲渡するメリット
施設介護業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです。
– 後継者問題の解決: 介護業界では経営者の高齢化が進み、後継者不在が経営に大きく影響する問題です。M&Aによる事業承継を行うことで、廃業になる事態を避けることができます。
– 債務や個人保証からの解放: M&Aの手法の一つである株式譲渡で介護会社を売却すると、金融機関などへの債務を包括的に買い手企業へ引き継ぐことができます。経営者保証ガイドラインが定める条件を満たせば、経営者の負う個人保証も高い確率で解消することができます。
– 売却益の獲得: 株式譲渡の場合は経営者が株式の譲渡利益を得ることができます。また、事業譲の場合は会社が事業の譲渡利益を獲得することができます。廃業をすると、廃業手続きの費用がかかりますが、M&Aによって売却することでそれらの費用がないだけなく、譲渡利益を獲得できます。
– 安定した基盤での経営: 介護業界では3年ごとの介護報酬の改定の影響を避けられません。多くの企業はこのタイミングで経営が悪化しやすい特徴があります。特に規模の小さい事業所の場合は廃業となるケースもあります。M&Aにより大手企業に譲渡することで、報酬改定といった変動に耐えられる安定した経営が可能になります。
– 介護業界の新規参入: M&Aにより許認可や施設建設などの初期費用、介護業務に関するノウハウなど入手にかかる労力を大幅に削減できる点にあります。新しく介護業界に参入する際、土地の入手、施設の建設など費用や労力が必要です。M&Aにより許認可や施設やノウハウを獲得することで費用や時間、労力を軽減させることが可能です。
– 事業の拡大: M&Aにより譲受側は未開拓のエリアを獲得できるメリットがあります。新しいエリアの開拓は、多大な資金と労力を必要とします。既存エリアであってもエリアシェアの拡大と会社全体の業績向上を見込むことができ、シナジー効果を発揮する期待もあります。
施設介護業の事業と相性がよい事業
施設介護業の事業と相性がよい事業を以下にまとめます。
### 施設介護業と相性がよい事業
#### 1. 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
– 常時介護が必要な利用者に対して、日常生活の解除や機能訓練などを提供します。
– 原則、要介護3以上の要介護者を対象にし、特例で要介護1・2の方の入所を受け入れるケースもあります。
#### 2. 介護老人保健施設
– 病状が安定していて入院治療の必要はない利用者に対して、リハビリテーションを中心とする医療ケアや介護、日常生活上の世話を行います。
– 入所期間は原則3カ月です。
#### 3. 療養型医療施設
– 長期間にわたり療養が必要な利用者に対して、療養上の管理・介護・機能訓練その他必要な医療を行います。
#### 4. 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
– 地域密着型介護老人福祉施設(特別養護老人ホームのうち、入居定員が29人以下の施設)に入居している要介護者に対して、入浴・排泄・食事などの介護や日常生活上の世話や機能訓練を行います。
#### 5. 夜間対応型訪問介護
– 夜間帯に利用者の自宅を訪問し、入浴・排せつ・食事・安否確認等、日常生活上の介護サービスを提供します。
#### 6. 認知症対応型通所介護
– 認知症の方を対象にした日帰りのデイサービスセンターなどで、入浴や食事、健康管理、機能訓練などを提供します。
#### 7. 小規模多機能型居宅介護
– 要介護者となる利用者が、自身の状況にあわせて都度「訪問」「通い」「泊まり」などのサービスを選択できるサービスです。
これらの事業は、施設介護業と相性がよい事業として、多様な介護サービスを提供し、利用者の生活をサポートする役割を果たします。
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株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。