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採用代行業の市場環境
採用代行(RPO)の市場環境は、以下の点が特徴です。
– 市場規模の拡大:日本における採用代行の市場規模は、2021年度に前年比15%増の628億円に達しました。世界的にも、2023年時点で約1.2兆円と評価され、2032年までに年平均成長率16%で拡大予測されています。
– 労働力不足の影響:少子高齢化に伴う労働人口の減少により、優秀な人材の獲得競争が激化しています。このため、企業は採用以外のコア業務に注力し、採用活動は外部の専門家に委ねることが増えています。
– 新卒採用支援サービスの需要:2022年度の国内新卒採用支援サービス市場規模は、前年度比7.1%増の1,312億4,000万円に達しました。学生との早期接触ニーズが高まったことで、多様な採用手法へのニーズが高まっています。
– 採用手法の多様化:採用手法が多様化しており、従来の合同説明会や自社セミナーに加え、SNSでのアプローチやオンライン面接などが求められています。
– 企業の採用活動の負担軽減:採用代行サービスの活用により、企業の採用活動の負担が軽減され、最新の採用技術の活用が可能です。
– 柔軟な対応力:採用市場における柔軟な対応力が求められており、RPOの活用が競争優位性を保つカギとなっています。
これらの要因により、採用代行の市場環境は、企業が優秀な人材を確保し、採用活動を効率的に行うための重要な手段となっています。
採用代行業のM&Aの背景と動向
人材採用代行業のM&Aは、企業価値向上と事業拡大を目的として活発に行われています。以下に主要な背景と動向をまとめます。
### 背景
1. 人手不足問題:
– 人材採用代行業では、特にITや医療分野で人手不足が深刻です。優秀な人材を獲得するのは難しい状況であり、M&Aはこの課題を解決するための重要な手段です。
2. 後継者問題:
– 中小規模の人材紹介会社では、経営者が高齢化し後継者不在の問題が多く発生しています。M&Aはこの問題を解決するための手段として活用されています。
3. 大手企業の参入:
– 資金力のある大手企業が、中小規模の人材紹介企業をM&Aするケースが増えています。これにより、人手不足が顕著な業界に参入し、新たな事業展開が可能となります。
### 動向
1. 同業者のM&A:
– 大手人材派遣会社が、中小規模の人材派遣会社を買収することで事業拡大を目指しています。中小規模企業間での競争が激化しているため、M&Aは有効な手段となっています。
2. 優秀な人材の獲得:
– M&Aを通じて、経験豊富な従業員をまとめて自社に取り込むことができます。人材派遣業界では、優秀な人材の確保が重要なポイントであり、M&Aはこのメリットを提供しています。
3. 従業員の雇用維持:
– M&Aを実施することで、従業員の雇用を維持することができます。また、大手企業とM&Aを行うことで、従業員の待遇がよくなる可能性も期待できます。
4. 大手グループへの傘下入り:
– M&Aを通じて、大手グループの傘下に入ることで、ブランド力・営業力・経営資源などを使って自社の売上増加を図ることができます。
5. 譲渡利益の獲得:
– 株式譲渡であれば、株主であるオーナー経営者は対価を受け取ることができます。これにより、老後の生活資金や新たな事業資金が得られます。
### 注意点
1. 事業許可の引き継ぎ:
– M&Aを実施する際には、事業許可の引き継ぎが必要です。適切な手続きを怠ると、事業許可の問題が生じる可能性があります。
2. 競業避止義務の発生:
– M&Aを実施すると、競業避止義務が発生する可能性があります。適切な契約を結ぶことが重要です。
3. 登録者の個人情報流出リスク:
– M&Aを実施する際には、登録者の個人情報流出リスクを考慮する必要があります。適切なセキュリティ対策を講じることが重要です。
採用代行業のM&A事例
採用代行業のM&A事例を以下にまとめます。
– ジェイエイシーリクルートメントによるバンテージポイントのM&A:2020年2月、ジェイエイシーリクルートメントはバンテージポイントの全株式を取得して子会社化しました。
– SHIFTによるEQIQのバイリンガル人材紹介事業のM&A:2023年3月、SHIFTはEQIQが手掛けるバイリンガル人材紹介事業(WAHL+CASE)を承継しました。M&Aは3つの過程で行われ、まず会社分割によってSHIFTがWAHL+CASE事業を引き継ぎ、次に新設会社が有料職業紹介事業認可を取得し、最後に会社分割によってWAHL+CASE事業を新設会社へ引き継ぐ予定です。
– ジェイフロンティアによるAIGATEキャリアのM&A:2021年12月、ジェイフロンティアはAIGATEキャリアの全株式を取得し子会社化しました。M&Aの目的は、ジェイフロンティアの医療人材紹介サービスへの参入です。
– ベルーナによるJOBSTUDIO PTE.LTD.のM&A:2020年1月、ベルーナはシンガポールのJOBSTUDIO PTE.LTD.の全株式を取得して子会社化しました。ベルーナは本件M&Aにより、アジア諸国での医療人材派遣・紹介事業をさらに発展させ、医療機関やスタッフへ向けた業務用品販売も進めていくとしています。
– テクノプロ・ホールディングスによるテクノブレーンのM&A:2018年2月、テクノプロ・ホールディングスは人材紹介事業を行うテクノブレーンの全株式を取得して子会社化しました。テクノブレーンは技術者に特化した人材紹介事業を主力としており、60万件以上の独自蓄積したデータベースの活用で紹介人材の離職率は1%以下を維持しています。
これらの事例は、採用代行業におけるM&Aの動向を示していますが、採用代行業に特化したM&A事例は見つかりませんでした。代わりに、近い事例として人材紹介業界のM&A事例が記載されています。
採用代行業の事業が高値で売却できる可能性
採用代行業の事業が高値で売却できる可能性について、以下のようなポイントが重要です。
– 市場規模の拡大: 採用代行の市場規模は、2021年度に628億円と前年度の546億円から15%の増加を示しており、市場が大幅に成長しています。
– 新型コロナウイルスの影響: コロナ禍の影響で経済活動が落ち込み、採用市場も一時的に縮小しましたが、その後リモートワークなどの新しい働き方が定着し、企業の採用活動が再び活発化しました。
– 社会的な要因: 少子高齢化やダイレクトリクルーティングなどの採用方式の多様化により、採用業務の負担が増加しており、採用代行サービスの利用が増加しています。
– 専門知識と経験: 採用代行サービスを利用すれば、人材採用の専門知識と豊富な経験を持つプロが担当するため、応募者の能力や適性を正確に評価できます。
– 効率化とコスト削減: 採用代行を利用すれば、時間や費用面での無駄を削減し、採用コストの適正化を図ることができます。
– 定着率の向上: 適切な人材採用によって定着率も向上し、追加での採用活動なども防げるため、企業財務にとっても大きなメリットとなります。
これらのポイントを考慮することで、採用代行業の事業が高値で売却される可能性が高まります。
採用代行業の企業が会社を譲渡するメリット
採用代行業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです。
– 後継者問題の解決後継者問題が解決しないまま経営者の体調が急激に悪化すると、後継者探しが非常に困難です。会社譲渡を用いると、他の会社が事業を引き継いでくれるため、自社の関係者などから後継者を探さずに済みます。
– 従業員の雇用が確保できる事業譲渡を行う場合、買い手が自社従業員と雇用契約を再び結んでくれるとは言い切れません。一方、会社譲渡であれば、会社自体を譲り渡すため、従業員の雇用契約も買い手に引き継がれます。
– 譲渡益を獲得できる会社譲渡は株式の取引を伴う手法であるため、売り手の株主は譲渡益を獲得できます。譲渡益を獲得できれば、引退後の生活費や興味を持った分野で会社を興す際の費用などに充てられるため、経営から手を引きやすいです。
– 経営の安定化赤字が進み会社が倒産となると、従業員は職を失い、取引先との商流がなくなります。しかし、企業や事業を第三者に譲渡することで、商流や従業員の雇用を守ることができます。また、売却対価を得ることで創業者利潤を得たり、人材派遣事業が不採算の場合、売却により経営が安定する可能性があります。
– 組織再編が可能事業譲渡では、採算事業を残して不採算事業を売却するなどの組織再編を行い、いわゆる事業リストラができます。特定の事業だけを選んで売却することができるため、会社の経営を安定させることができます。
採用代行業の事業と相性がよい事業
採用代行業の事業と相性がよい事業は以下の通りです。
– 採用戦略設計と採用ターゲットの設定: 採用代行サービスは、採用目標のためにどのように動くかを設計し、競合や市場の調査・分析も行ないます。これにより、より効率的な採用活動が可能となります。
– 採用広報活動と広報の効果的な運用: 採用広報活動の代行では、採用サイトの設計/制作/運用や、SNSを利用したコンテンツの企画/発信、採用イベントの企画/運営などが委託できます。これにより、自社のリソースを最小限に抑えながら、自社を知ってもらえる機会を格段に増やすことができます。
– 候補者対応・データ管理と応募者とのやりとり: 採用代行サービスでは、求人媒体や採用サイトを通じてコンタクトがあった応募者とのやりとりや書類データの管理が委託できます。これにより、採用活動をスムーズに進めることができます。
– 採用計画や戦略の立案と企業の事業計画: 採用代行サービスは、事業戦略や中長期的な企業の事業計画に基づいた採用計画や戦略の立案を行います。これにより、自社で立案した計画や戦略よりも有効性の高さを期待できます。
– 採用フローの全体管理と業務効率化: 採用代行サービスでは、募集要件の計画や策定、求人媒体の選定や発注、求人票の作成、出稿、人材紹介会社の開拓など、採用フローのほとんどの業務代行が可能です。これにより、大幅な業務効率化とコスト削減が見込めます。
– 面接対応の支援と選考結果の通知: 採用代行サービスでは、面接の日程調整や面接の受付・案内、選考結果の通知などが中心です。これにより、採用担当者の手が空くことで、よりコアな業務に取り組めるようになります。
採用代行業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、譲渡企業様から手数料を一切いただかないという大きな特徴があります。これにより、コストを気にせずにM&Aを進めることが可能です。また、豊富な成約実績を誇り、多くの企業様にご満足いただいております。さらに、採用代行業の業界にも知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確なサポートを提供いたします。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。