目次
惣菜・デリカ強化スーパーの市場環境
惣菜・デリカ強化スーパーの市場環境は、以下の要素が特徴です。
– チャネル別の伸び:
– 百貨店: 06年においては14.3%と突出して伸びています。
– 食品スーパー: 惣菜の主要チャネルである専門店とコンビニエンスストアは構成比を下げています。
– コンビニエンスストア: 近年の不振は惣菜の不振と大きな関連があり、食品スーパーへのシフトを促進しています。
– 企業の取り組み:
– イオン: オリジン東秀を傘下に入れ、「デリカ事業改革チーム」を立ち上げ、惣菜売上構成比を10%弱から15%に引き上げる目標を立てています。
– イトーヨーカ堂: 惣菜売り場が店舗活性化プログラムの中で大きな位置を占め、シェルガーデンのノウハウを活用した仕掛けを取り入れています。
– ダイエー: 「デリカプロジェクト」を立ち上げ、MD・オペレーションの革新プランを築き上げ、新しいレシピにも着手しています。
– 東急ストア: 三軒茶屋店をリニューアルし、デリカの売り上げ構成比17.6%を目指しています。生鮮部門の原材料を使用した「Fresh Cook DELI」や「RICH DELI」などの商品を充実させています。
– イオン: シェフ・クオリティの惣菜をSPAにより開発・製造し、約500品目を展開し品揃えも充実させています。AI発注システムとの連動によるサプライチェーン全体での生産性向上を推進しています。
– デリカセンターの設置:
– マルエツ: 埼玉県草加市に「マルエツ草加デリカセンター」を開設し、オリジナル商品の開発や品揃えの拡大に努めています。
– 店舗フォーマットの変化:
– ヤオコー: 青果売場と一体化させたフロアレイアウトに取り組んでいます。
– ユーストア: 日雑売場を縮小し惣菜売場を拡大し、ゆったりとした通路を実現しています。
– 高品質の取り組み:
– 多くのGMS・食品スーパー、高級スーパー: 惣菜戦略は「対面」であり、プロのコンシェルジュまで配置しているチェーンもあります。多品種を作り出す作業も「人手」であり、手作りを訴求しています。
– サステナブルな取り組み:
– 東急ストア: 紙パッケージのカットフルーツを導入し、ナッツ・ドライフルーツのバイキングも同社初のコーナー化しています。
これらの要素が惣菜・デリカ強化スーパーの市場環境を形成しています。
惣菜・デリカ強化スーパーのM&Aの背景と動向
スーパーマーケット業界における惣菜・デリカ強化のためのM&Aの背景と動向は以下の通りです。
### 背景
人口減少と競争激化:スーパーマーケット業界では、人口減少が進む中、他業種との競争が激化し、市場規模が縮小することが予想されています。
業界再編:大手企業による業界再編が進んでおり、同業種間でのM&Aが活発に実施されています。同業種間でのM&Aにより、売り手側は大手の傘下に入り、生き残りを図ることができます。一方、買い手企業は事業拡大の実現が可能となります。
### 動向
同業種間のM&A:スーパーマーケット業界では、同業種間でのM&Aが多く行われています。例えば、クスリのアオキホールディングスが木村屋を買収し、全株式を取得しました。これにより、クスリのアオキホールディングスは地域のお客様にさらに支持される店舗づくりができると判断しました。
異業種間のM&A:競争の激化を背景に、異業種間でのM&Aも多くなっています。例えば、Olympicグループがあまいけを買収し、全株式を取得しました。これにより、多摩地区の店舗網の拡充や商品の調達、販売のノウハウの共有によるシナジー効果が期待されています。
プライベートブランドの取り扱い:M&Aを実施すれば、メーカーとの取引を一本化したり、物流を共通化したりすることで、スケールメリットによる収益力の改善が期待できます。また、知名度やブランド力の高いプライベートブランド(PB)を取り扱えるようにもなります。特に、PBを有する大手企業の傘下に入れば、利益率の高いPBを活用して他店舗との差別化ができるようになります。
### 事例
サンフェステによるミヤコフーズの連結子会社化:2024年7月1日、サンフェステはミヤコフーズの全株式を取得し、連結子会社化しました。これにより、サンフェステはミヤコフーズの惣菜販売や製造の強みを活かしつつ、経営管理のノウハウを共有することで、両社の成長と発展を目指す体制を強化しました。
ヤマタネによるショクカイの子会社化:2023年8月、ヤマタネはショクカイの全ての株式を取得し、子会社化しました。これにより、グループ内にある課題解決が可能となり、全国の販売網拡大による事業の強化、サービスの安定的な提供が目指されました。
### メリット
屋号の獲得:M&Aによってお弁当・惣菜屋の屋号を獲得できます。新規参入の場合、顧客が定着するまでに時間がかかりますが、買収先のブランドの獲得により知名度と信頼性を得られれば、買収後すぐに顧客を獲得して収益を上げることが可能です。
従業員や人材の獲得:M&Aによる買収で人材を獲得できれば、円滑な店舗運営を目指すことができます。特に、人材不足が続いているお弁当・惣菜屋業界では、M&Aが参入コストを抑え、余剰資金を事業運営に充てるメリットもあります。
新規事業への低コストでの参入:M&Aによる買収での参入ならば、参入コストを抑えられるだけでなく、余剰資金を事業運営に充てることができます。
新たな顧客・取引先・ノウハウの獲得:M&Aによる買収であれば、固定客・信頼できる取引先・地域性に合わせたノウハウなどが即座に獲得できるため、買収直後から事業を軌道に乗せられます。
事業エリアの拡大:M&Aにより、ターゲットエリアの店舗を買収できれば短期間で参入できるため、事業エリアをスムーズに拡大できるでしょう。
惣菜・デリカ強化スーパーのM&A事例
惣菜・デリカ強化スーパーのM&A事例をまとめます。
### 明治による明治ライスデリカの株式譲渡
– 明治ライスデリカは、明治グループの連結子会社で、炊飯・米飯二次加工品の製造販売を手掛けていました。
– 藤本食品が明治グループから全株式を取得し、藤本ライスデリカに社名を変更しました。
– 目的: 明治グループは、明治ライスデリカの炊飯・米飯加工技術と、藤本食品の多様な惣菜製造技術を掛け合わせて事業拡大を狙いました。
### オイシックスドット大地によるらでぃっしゅぼーやの子会社化
– らでぃっしゅぼーやは、食材宅配サービスを提供する企業で、オイシックスドット大地に吸収合併されました。
– 目的: 経営資源の効率化とシナジー効果の創出を目指しました。
– 結果: 会社名が「オイシックス・ラ・大地」に変更されましたが、業績に大きな影響はなかったとされています。
### ユニー・ファミリーマートHDによるカネ美食品の子会社化
– カネ美食品は、惣菜・弁当の製造販売大手で、ユニー・ファミリーマートHDに株式譲渡されました。
– 目的: 惣菜事業の強化を目指しました。
– 結果: コンビニエンスストアのお弁当・惣菜商品の製造事業を強化しました。
### 日清製粉グループによるトオカツフーズの連結子会社化
– トオカツフーズは、総合中食サプライヤーで、日清製粉グループに株式譲渡されました。
– 目的: グループ内の中食・惣菜・冷凍食品事業の拡大を狙いました。
– 結果: 日清製粉グループは、トオカツフーズと資本提携を行っていたため、子会社化によりさらなる事業拡大を見込めました。
### サンフェステによるミヤコフーズの連結子会社化
– ミヤコフーズは、約50年間惣菜販売業を行っており、サンフェステに全株式を取得され連結子会社化されました。
– 目的: 経営管理のノウハウを共有し、両社の成長と発展を目指しました。
– 結果: サンフェステは、ミヤコフーズの惣菜販売や製造の強みを活かし、経営管理のノウハウを共有することで両社の成長を目指しました。
### ヤマタネによるショクカイの子会社化
– ショクカイは、冷凍食品をメインとした弁当給食向け卸売事業を行っており、ヤマタネに全株式を取得され子会社化されました。
– 目的: 全国販売網の拡大による事業の強化とサービスの安定的な提供を目指しました。
### ぐるなびによる楽天デリバリー・楽天リアルタイムテイクアウトの事業譲受
– 楽天デリバリーと楽天リアルタイムテイクアウトは、ぐるなびが楽天グループから事業譲受しました。
– 目的: 飲食店に対する送客力の向上と自社サービスの利用拡大を目指しました。
### ダスキンによるいちごHDおよびストロベリーコーンズの宅配ピザ事業譲受
– いちごHDとストロベリーコーンズは、ダスキンが宅配ピザ事業を譲受しました。
– 目的: フード事業の拡大を目指しましたが、コロナ禍による事業環境の変化により中止されました。
### スマイルダイニングによるエイトの「パティスリー雪乃下」の事業譲受
– エイトの「パティスリー雪乃下」は、スマイルダイニングが事業譲受しました。
– 目的: ケーキなどの製造販売体制の整備による売上増加や業容拡大を目指しました。
### ヤマタネによるショクカイの子会社化
– ショクカイは、ヤマタネに全株式を取得され子会社化されました。
– 目的: 全国販売網の拡大による事業の強化とサービスの安定的な提供を目指しました。
### スーパーマーケット業界のM&A売却事例
#### クスリのアオキホールディングスによる木村屋の買収
– 木村屋は、クスリのアオキホールディングスに全株式を取得され買収されました。
– 目的: 利便性と専門性の強化をコンセプトとして食品販売に力を入れるため、異業種となるスーパーマーケットの株式取得を積極的に行っています。
#### Olympicグループによるあまいけの買収
– あまいけは、Olympicグループに全株式を取得され買収されました。
– 目的: 多摩地区の店舗網の拡充や商品の調達、販売のノウハウの共有によるシナジー効果を期待されています。
#### マーキュリアインベストメントによるデライトホールディングスの資本参加
– デライトホールディングスは、マーキュリアインベストメントが資本参加し、資本業務提携を行いました。
– 目的: 非公開企業をはじめさまざまなオルタナティブ領域へ投資し、企業の成長を加速させるための支援を行っています。
惣菜・デリカ強化スーパーの事業が高値で売却できる可能性
惣菜・デリカ強化スーパーの事業が高値で売却できる可能性は、以下の点を考慮することで高まります。
– 地域密着型のスーパー: 地域に根付いたスーパーは、特に惣菜や鮮魚が人気な地域では、独占状態にあることが多く、地域のインフラとして愛されていることが大きな魅力です。地域密着型。
– 高品質な惣菜: 手作りの惣菜や鮮魚が人気で、顧客に喜ばれる新商品開発が行われている場合、買い手に大きな魅力となります。高品質な惣菜。
– 事業の流れのシンプルさ: 仕入れ元の実店舗がないため、高需要があり、仕入元の売上も年々上がっており、今後の拡大も期待できます。事業の流れのシンプルさ。
– ノウハウ・技術の共有: 双方のノウハウ・技術・販路を生かせば、競争力の強化も期待可能です。ノウハウ・技術の共有。
– 顧客基盤の特徴: 顧客基盤が特徴的な場合、買い手が魅力に感じる点が多くなります。顧客基盤の特徴。
これらの要素を整理し、アピールすることで、惣菜・デリカ強化スーパーの事業が高値で売却される可能性が高まります。
惣菜・デリカ強化スーパーの企業が会社を譲渡するメリット
惣菜・デリカ強化スーパーの企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです:
– 経営権の維持:事業譲渡では、会社の経営権が譲渡企業に残ることができます。経営権が移動しないため、他事業を継続したり、貸借対照表に計上されていない簿外債務がある場合にもM&Aを比較的容易に行うことができます。
– 特定の事業の選択:事業譲渡では、特定の事業のみを売却することができます。一部の事業のみを譲渡できるため、採算事業に集中でき、残しておきたい資産や従業員を確保できます。
– リスクの遮断:事業譲渡では、特定の事業のみを譲受けることができるため、売り手企業に紐づく税務リスクなどを引き継ぐ必要がありません。
– 節税効果:事業譲渡では、のれん(ブランド力など)を5年にわたって償却し、税務上損金として計上することができます。
– 資金の活用:事業譲渡で得られた譲渡益を、残した事業に投資することで事業の根幹がしっかりし、経営の立て直しも可能です。
– 法人の継続:事業譲渡では、譲渡企業の法人格を残せるため、新規事業を同じ法人格で起こすことも可能です。
惣菜・デリカ強化スーパーの事業と相性がよい事業
惣菜・デリカ強化スーパーの事業と相性がよい事業
### 1. 中食・惣菜事業の強化
中食・惣菜事業は、特に少子高齢化や単身世帯増加、女性の社会進出による需要の増加に応じて、食品強化するスーパー各社が注力を注いでいる。この事業は、利益率が高いこと、他社との差別化を図れること、付加価値を訴求しやすいことなどが主な理由である。
### 2. 新戦略の発表
イオンは、シェフ品質の惣菜をSPA(製造小売業)により開発・製造する新戦略を発表し、約500品目を展開し品揃えも充実させる。この戦略では、最新設備による出荷量の拡大やAI発注システムとの連動によるサプライチェーン全体での生産性向上が行われる。
### 3. デリカの売上高構成比の向上
ヨークベニマルは、デリカの売上高構成比を15%まで高めることを目指しており、「with mom」ブランド化を進めてきた。この取り組みにより、商品を埋めるのは大変だが、お客さまからすると「選べる売場」になってきたと感じている。
### 4. 特定の商品の強化
特定の商品の強化も重要なポイントである。例えば、イオンは「唐王」ブランドを強化し、4月に発表された「から揚げグランプリ」で金賞を受賞した。また、ヨークベニマルは、自社の工場から持ってくるか、もしくはお店で直接デリカとして、マグロのコロだとか、豚カツの豚肉を仕入れることをしている。
### 5. 地域の取り組み
地域の取り組みも重要な要素である。例えば、イオンの天王町店は、地域最大級の食品フロアを構成し、売上構成の65%を食品が占めている。また、ヨークベニマルは、特に競合店と目の前で勝負している市名坂店(仙台市泉区)を皮切りに、かなり鮮魚の取り組みを強化している。
### 6. 新しい販売戦略
新しい販売戦略も重要なポイントである。例えば、イオンは、AIオーダーとの連動によるサプライチェーン全体での生産性向上を推進しており、R&D機能も果たすクラフトデリカ船橋を設立している。また、ヨークベニマルは、時間帯別の展開を推進しており、午前10時くらいにまず1回ピークを作って、次に4時(16時)に向けてまたピークを作るという形で、人のシフトも含め取り組みをしている。
惣菜・デリカ強化スーパーの企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、惣菜・デリカ強化スーパーの企業がM&Aを依頼する際におすすめの理由がいくつかあります。まず、譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点が大きな魅力です。これにより、企業様はコストを気にせずにM&Aのプロセスを進めることができます。また、豊富な成約実績を持っており、これまで多くの企業様のM&Aを成功に導いてきた実績があります。さらに、惣菜・デリカ強化スーパーの業界にも深い知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確なアドバイスを提供することが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。