目次
情報処理サービス業の市場環境
情報処理サービス業の市場環境は、以下の点が特徴です。
– 市場規模の安定と拡大:総務省の「2021年情報通信業基本調査」によると、情報処理サービス業界の市場規模は安定して推移しており、2020年度の市場規模は18兆7928億円で、受託開発ソフトウェア業が約47%を占めています。
– DX推進によるニーズの高まり:経済産業省の「DXレポート」で取り上げられた「2025年の崖」問題により、既存システムの刷新が求められ、企業のDXに向けた取り組みが進んでいます。独立行政法人情報処理推進機構の「DX白書2023」によると、DX推進を行う企業の割合は69.3%で、DX推進のニーズが高まります。
– 人材不足の問題:DX推進ニーズに対して、人材供給が追いついておらず、83.5%の企業がDX人材が不足していると回答しています。2030年には約60万人の人材不足が予想されています。
– 新技術の登場による需要の高まり:AI、IoT、ビッグデータなどの先端IT技術の利活用に向け、情報処理業界に対する需要は増大しています。ただし、これを実現する人材が不足しているため、需要と供給のギャップが広がっています。
– 情報セキュリティの重要性:IoT化によって情報流出リスクが高まり、情報セキュリティの強化が求められます。特に、2025年の大阪万博や東京オリンピックなどの大規模イベントではサイバー攻撃のリスクが懸念されます。
これらの点から、情報処理サービス業界は将来性が高いものの、人材不足や情報セキュリティの問題が課題となっています。
情報処理サービス業のM&Aの背景と動向
情報処理サービス業のM&Aの背景と動向は以下の通りです。
### 情報処理サービス業のM&Aの背景
情報処理サービス業は、急速に変化する市場と競合が激しい業界です。企業が自社で事業を拡大しようとすると、新しい技術やノウハウを迅速に導入する必要があります。特に、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、人工知能、IoTなどの技術の進歩により、情報処理サービス業界は大きな変革期を迎えています。
### 情報処理サービス業のM&Aの動向
#### 技術力の補完性 と
情報処理サービス業界には多種多様な技術が存在し、一社だけではすべてを網羅することは難しい。資本提携により、相手企業の強みを自社に取り入れることができ、補完的な技術力を獲得できる。
#### 顧客層の拡大 と
資本提携により、相手企業の顧客に自社のサービスを提供することができる。また、相手企業の顧客層が自社の顧客層と異なる場合、新たな顧客層を取り込むことができる。
#### 財務効果の追求 と
資本提携によって、両社の経営効率を向上させることができる。具体的には、事業規模の拡大によるスケールメリットの実現、業務プロセスの合理化、コスト削減などが挙げられる。
#### 事業拡大の加速 と
資本提携により、自社が手がけている事業領域以外の分野にも進出することができる。また、相手企業が持つ新たな技術やビジネスモデルを自社に取り入れることで、既存事業の拡大や新規事業の創出につなげることができる。
#### 競合他社との差別化 と
資本提携により、自社の競合他社との差別化を図ることができる。特に、技術力の補完性や顧客層の拡大によって、独自の価値を提供し、競合他社との差別化を図ることができる。
#### M&Aの成功事例 と
– クラウドサービス企業の買収 と:クラウドサービス企業を買収することで、自社のクラウドサービス事業を強化し、技術やノウハウの統合によりサービスの品質向上や新しいサービスの開発につながる。
– セキュリティ企業の買収 と:セキュリティ企業を買収することで、自社のセキュリティ対策を強化し、技術やノウハウの統合により高度なセキュリティ対策が可能になる。
– データ解析企業の買収 と:データ解析企業を買収することで、自社のデータ解析事業を強化し、技術やノウハウの統合により高度なデータ解析が可能になる、新しいビジネスモデルの開発につながる。
– システム開発企業の買収 と:システム開発企業を買収することで、自社のシステム開発事業を強化し、技術やノウハウの統合により高品質なシステム開発が可能になる、顧客満足度の向上につながる。
### 情報処理サービス業のM&AにおけるPMI
M&A後に実施されるPMI(Post Merger Integration)は、統合された企業のシステムやプロセスの統一、従業員の人事・教育・研修、顧客や取引先との関係の再構築など、経営的な観点からの統合作業を指します。情報処理サービス業においては、PMIが適切に実施されなかった場合、開発プロジェクトの遅延やシステムの一貫性のなさ、人員の流出などが発生し、業績の低下につながることがあります。
情報処理サービス業のM&A事例
情報処理サービス業のM&A事例を以下にまとめます。
– コプロテクノロジーとピー・アイ・シーのM&A:
– 2023年11月に、コプロテクノロジーがピー・アイ・シーのSES事業を譲受しました。高スキルのITエンジニアの獲得とSES事業の拡大のためです。
– 綱屋とグローブテック・ジャパンのM&A:
– 2023年8月に、綱屋がグローブテック・ジャパンの全株式を取得し、子会社化しました。サイバーセキュリティ人材育成を施し、付加価値の高いサイバーセキュリティエンジニアの派遣事業を開始しました。
– SHIFTとクレイトソリューションズのM&A:
– 2023年6月に、SHIFTグロース・キャピタルがクレイトソリューションズの株式を取得しました。ERP領域の開発力強化と主力事業の成長を目指しています。
– SHIFTとEQIQのM&A:
– 2023年5月に、SHIFTグロース・キャピタルがEQIQのWAHL+CASE事業を会社分割により承継しました。バイリンガルエンジニアや最先端技術を持ったエンジニアの紹介を加えることで、採用力の強化と顧客への提供ソリューションの拡大を目指しています。
– FreeeksとNEXTのM&A:
– 2023年4月に、FreeeksがNEXTを吸収分割しました。事業および雇用の拡大を通じて、DXを総合的かつ包括的にサポートする体制を整備しました。
– テモナとサックルのM&A:
– 2022年4月に、テモナがサックルの株式を取得し、子会社化しました。サブスクリプションビジネスを支援する多様なソリューションの開発とその提供を実現するためです。
– 伊藤忠テクノソリューションズとGHインテグレーションのM&A:
– 2022年2月に、伊藤忠テクノソリューションズがGHインテグレーションの株式の一部を取得し、資本業務提携を行いました。ITエンジニア人材の安定的な確保とアジアにおけるITエンジニア人材の確保を目指しています。
– Branding EngineerとTSRソリューションズのM&A:
– 2022年2月に、Branding EngineerがTSRソリューションズの株式を取得し、子会社化しました。ITエンジニアを双方の顧客に紹介し、DX化の推進を目指しています。
– ヤフーとdelyのM&A:
– 2018年7月に、ヤフーがdelyの株式の一部を取得しました。メディア・コマース事業におけるリソースの活用と独自性や競争優位性の強化を実現しました。
– ビーイングとラグザイアのM&A:
– 2019年5月に、ビーイングがラグザイアの株式を取得しました。Webアプリケーションの開発力を強化し、クラウド環境を活かした新商品の開発を目指しています。
– クラウドワークスと電緑のM&A:
– 2017年11月に、クラウドワークスが電緑の株式の67%を取得しました。ブロックチェーン技術の取得を目指しています。
– SHIFTとホープスのM&A:
– 2020年9月に、SHIFTがホープスの全株式を取得しました。ERPシステムの導入・保守のノウハウを活用し、サービス体制の強化と顧客ポートフォリオの拡大を目指しています。
– サン電子とEKTechグループのM&A:
– 2022年12月23日に、サン電子がEKTechグループの全株式を取得し、連結子会社化しました。IoT技術と情報通信技術のシナジー効果を期待しています。
– コーユーレンティアとGBSグループのM&A:
– 2022年3月4日に、コーユーレンティアがGBSグループの全株式を取得し、子会社化しました。ICT機器レンタルやネットワーク構築のサービスを提供し、FF&Eレンタルとのシナジー効果を高めるためです。
– トランスジェニックとルーペックスジャパンのM&A:
– 2017年11月21日に、トランスジェニックがルーペックスジャパンの全株式を取得しました。情報通信機器開発や販売を手掛け、ニッチ市場への進出を目指しています。
情報処理サービス業の事業が高値で売却できる可能性
情報処理サービス業の事業が高値で売却される可能性は、以下の要素に依存します。
– 優秀なエンジニアの確保:優秀なエンジニアが多く在籍する企業は、自社サービスを開発する事業会社や大手のSIer企業、SES会社など多くの企業からニーズがあります。エンジニアと買い手の求めるスキルがマッチると、高い価格で売却できる可能性があります。
– 技術力の高さと競争優位性:技術力が高い企業は、競争優位性を持ち、買い手企業にとって魅力的な企業となります。技術力の高さが売却価格に大きな影響を与えます。
– 事業内容とポジショニング:事業内容やポジショニングが明確で、市場での競争力が高い企業は、高値で売却される可能性が高くなります。
– シナジー効果:買い手企業との間で想定されるシナジー効果も重要です。買い手企業が新規事業に取り組んでいる場合、既存事業とのシナジー効果を期待できるとのことです。
– 企業価値の評価:企業価値の評価は、インカムアプローチ、コストアプローチ、マーケットアプローチの3種類に大別されます。具体的には、時価純資産に数年分の営業利益を加算することで相場を算出します。
これらの要素を考慮することで、情報処理サービス業の事業が高値で売却される可能性を高めることができます。
情報処理サービス業の企業が会社を譲渡するメリット
情報処理サービス業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです:
1. 事業のリスク回避
– 情報処理サービス業は急速に変化する市場と競合が激しい業界です。企業が自社で事業を拡大しようとすると、新しい技術やサービスを習得するために多大な時間とコストがかかります。会社を譲渡することで、リスクを回避し、新しいオーナーによって事業が拡大される可能性があります。
2. 資金調達
– 会社の譲渡は、企業にとって迅速かつ効果的な資金調達方法の1つです。譲渡によって得られる資金は、新しい事業の開発や既存の事業の拡大に使用することができます。また、譲渡によって得られる資金は、企業の財務状況を改善し、将来のビジネスプランの実現に役立ちます。
3. 事業の専門化
– 企業が自社で事業を拡大しようとすると、新しい技術やサービスを習得するために多大な時間とコストがかかります。一方で、会社を譲渡することで、企業は自社の専門分野に集中し、事業の専門化を進めることができます。これによって、企業はより効率的に事業を運営し、競争力を高めることができます。
4. 技術力の補完性
– 情報処理サービス業界には多種多様な技術が存在し、一社だけではすべてを網羅することは難しい。資本提携により、相手企業の強みを自社に取り入れることができ、補完的な技術力を獲得できる。
5. 顧客層の拡大
– 資本提携により、相手企業の顧客に自社のサービスを提供することができる。また、相手企業の顧客層が自社の顧客層と異なる場合、新たな顧客層を取り込むことができる。
6. 財務効果の追求
– 資本提携によって、両社の経営効率を向上させることができる。具体的には、事業規模の拡大によるスケールメリットの実現、業務プロセスの合理化、コスト削減などが挙げられる。
7. 事業拡大の加速
– 資本提携により、自社が手がけている事業領域以外の分野にも進出することができる。また、相手企業が持つ新たな技術やビジネスモデルを自社に取り入れることで、既存事業の拡大や新規事業の創出につなげることができる。
8. 競合他社との差別化
– 資本提携により、両社のスキルやビジネスモデルの相補性に基づいた戦略的パートナーシップを形成し、業界全体の進化に貢献することが期待されます。
9. 事業継承の実現
– 経営者の高齢化・後継者不足を理由に休廃業・解散する中小企業のうち、休廃業する直前期の決算では、当期損益の黒字である企業は56.5%でした。M&Aを行うことで事業を継承することができ、会社の存続だけでなく従業員を解雇せずにすみます。
10. 譲渡利益の獲得
– SES事業のM&A・売却すれば、業績や会社規模に応じて数年分の譲渡利益を得られるでしょう。多額の現金が入るため、それを元手に新しい事業や主力事業に投資したり、負債を返済することも可能です。
11. 経営の安定化
– SES事業・会社を売却すると、買い手企業の傘下に入り、事業を運営するケースがあります。売り手より買い手企業が大きな規模のことが多く、買い手企業が持つ資金力やブランド力、販売網などを活用し、SES事業の経営が安定できるでしょう。
12. 人材ごと事業を確保できる
– 事業譲渡では、単に事業のみを売却するわけではなく、ほとんどの場合、付随する資産も譲渡され、従事するスタッフも移籍することになります。買い手は人材ごと、そのまま事業を確保して、すぐにシステム開発のプロジェクトを始められる。
13. 事業の安定だけでなく成長も可能
– 買い手が大手企業なら、売却したシステム開発会社の事業の安定も期待できます。また、買い手先の人材リソースを活用することで、事業の安定だけでなく成長も可能です。事業が活性化し仕事が増えることで、売却後の従業員も活躍するチャンスが増えます。
14. 幅広い開発プロジェクトを受注できる
– システム開発会社の人材と事業を買収することで、幅広い開発プロジェクトを受注できるのも利点です。事業譲渡によって、売却した事業は買い手側の企業の内製化に貢献し、自社で完結できるプロジェクトも増えるので、受注を増やせる。
情報処理サービス業の事業と相性がよい事業
情報処理サービス業の事業と相性がよい事業は以下の通りです。
– ソフトウェア業:
– 電子計算機のプログラムの作成とその作成に関する調査、分析、助言などのサービス。
– データエントリーサービスとデータを書き込むサービス。
– データベースサービスと不動産情報、気象情報、科学技術情報などのデータを収集、加工、蓄積し、情報として提供するサービス。
– 情報処理・提供サービス業:
– システムインテグレーションサービスと情報システムの企画提案から要件定義、開発、構築、運用、教育までの全てのサービス。
– データエントリーサービスとデータを書き込むサービス。
– データベースサービスと各種データの収集および提供。
– 市場調査、世論調査と各種調査サービス。
– インターネット附随サービス業:
– ポータルサイト、ネットオークションの運営と情報の提供やサーバの機能を利用させるサービス。
– ゲーム、動画等のコンテンツ提供とインターネットを通じて情報の提供やコンテンツ配信。
– 電子認証、セキュリティサービス提供とセキュリティ関連のサービス。
– コールセンター:
– 顧客サービス業務と電気通信設備を用いて専任のオペレータが集約的に顧客サービスを行う業務。
– データセンター:
– 顧客の提供データの管理と通信回線やコンピュータを用いて顧客の提供データを集約的に管理する業務。
– デジタルコンテンツ関連業:
– 映画・ビデオ・テレビ番組・アニメーションの制作・配給とデジタル技術を用いてコンテンツの制作・配給。
これらの事業は、情報処理サービス業の主な事業内容であり、相性がよい事業として挙げられます。
情報処理サービス業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、情報処理サービス業の企業様にとって最適なM&Aパートナーです。その理由は、譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点にあります。これにより、企業様はコストを気にせずにM&Aを進めることができます。また、豊富な成約実績を誇り、多くの企業様にご満足いただいております。さらに、情報処理サービス業の業界にも深い知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確なアドバイスを提供することが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。