建設業の市場環境

建設業の市場環境についてのまとめ

2024年の建設業界は、多くの課題と新しい機会に直面しています。

### 市場規模と成長率
市場規模の変動
建築物の総着工数は床面積ベースで減少しているが、工事費予定額ベースでは増加しています。具体的には、床面積ベースで111,214(千㎡)、前年比マイナス6.9パーセントと減少しており、一方、工事費予定額ベースでは285,652(億円)、前年比6.8%の増加となっています。

### 需要の傾向と変化
環境に配慮した建築
環境に配慮した「グリーンビルディング」への関心が高まり、省エネ性能の高い建物や再生可能エネルギーを活用した建築物の需要が増えています。また、高齢化社会に対応したバリアフリー設計や感染症対策を考慮した換気システムの導入が求められています。

リモートワークの影響
リモートワークの普及により、オフィスの在り方も変わり、柔軟な空間設計が注目されています。

### 技術革新の影響
新技術の導入
建築業界では、新しい技術の導入が進んでいます。3Dプリンティング技術を使った建築部材の製造や、ドローンを使った建設現場の測量など、最新のテクノロジーが活用されています。BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)と呼ばれる3Dモデルを使った設計手法も普及しており、建築プロジェクトの効率化が図られています。

### 建設業界が直面する課題
人材不足と高齢化問題
建設業界では、熟練した技術者の高齢化と若手人材の不足が大きな問題となっています。国土交通省による建設業を巡る現状と課題によると、建設業界で働く労働者の35%以上が55歳以上で、29歳以下の労働者は全体の約11%しかいません。この状況は、技術の継承や現場の人手不足につながり、業界全体の生産性に影響を与えています。

倒産件数の増加
建設業界は近年倒産件数の増加が深刻な問題となっています。帝国データバンクの「建設業」倒産動向調査(2023年)によると、2023年の建設業の倒産件数は1,671件となり、前年比38.8%と大幅に増加しました。これは2000年以降で最大の増加率であり、リーマン・ショック期よりも高い水準です。

資材の高騰
建設業界は資材の高騰が深刻な問題になっています。主要な建設資材の価格が大幅に上昇しており、特に木材は世界的な需要の増加と供給不足により、価格が暴騰する「ウッドショック」と呼ばれる現象が発生しています。

### 建設業の2024年問題
働き方改革関連法の施行
2024年4月から、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されます。月45時間・年360時間が原則となり、特別な事情があっても月100時間未満・年720時間以内に収めなければいけません。これにより、長時間労働の常態化や休日の少なさが問題となり、若手の業界離れを加速させる要因となっています。

### 環境規制の厳格化
環境規制の厳格化
建設業界は環境規制の厳格化に直面しています。政府が掲げる2050年カーボンニュートラル目標達成に向け、建設現場でのCO2排出削減が強く求められています。具体的な内容は、重機の電動化、燃料電池化、建材の低炭素化、省エネ設計の義務化などです。

### 資材の高騰
資材の高騰
建設業界は資材の高騰が深刻な問題になっています。主要な建設資材の価格が大幅に上昇しており、特に木材は世界的な需要の増加と供給不足により、価格が暴騰する「ウッドショック」と呼ばれる現象が発生しています。

### 働き方改革
働き方改革
2019年から順次施行された「働き方改革関連法」により、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されます。労働時間の短縮や休日の増加が求められており、これにより、長時間労働の常態化や休日の少なさが問題となり、若手の業界離れを加速させる要因となっています。

建設業のM&Aの背景と動向

建設業のM&Aの背景と動向を以下にまとめます。

### 背景

1. 人手不足:
– 建設業界では、経営者を含む全体の高齢化や人手不足が深刻な問題となっています。
– 人材確保のためにM&Aが活発に行われています。

2. 後継者不足:
– 経営者の高齢化や後継者不足が増加しており、事業承継が困難となっています。

3. 事業の多角化:
– 不動産会社や他の近い業種とのM&Aが増加しており、事業の多角化が期待されています。

### 動向

1. M&Aの増加:
– 2022年には上場企業の建設M&Aの発表件数が38件となり、2013年以降で2番目に多い状況です。
– 近年、M&Aが活発に行われており、異業種によるM&Aも増えています。

2. 大手企業のM&A:
– 大手企業によるM&Aが増加しており、商業圏の拡大や人材の確保を目的としています。

3. 地域での受注の安定化:
– 地域での経営基盤を強固にするために、地元の競合企業を買収または傘下に置くことが期待されています。

4. 新規取引先の獲得:
– M&Aにより、譲渡企業の取引先も引き継ぐことができ、新規取引先の獲得にかかる時間を短縮できます。

5. 市場競争力の向上と事業拡大:
– M&Aを通じて、他社の技術や顧客基盤を吸収し、新たな市場に進出することが可能です。

6. コスト削減と技術の継承:
– 設備を内製することで、仕入れコストの削減や、より自社に合った設備を製造して独自性を発揮することができます。

7. 海外進出:
– 海外進出を目的としたM&Aも増えており、人口の減少などを受けて国内の市場が縮小しているためです。

建設業のM&A事例

建設業のM&A事例をまとめます。

### M&Aの動向とメリット

近年、建設業界ではM&Aが増加傾向にあり、人手不足や市場規模の縮小などの課題に対応するためです。M&Aにより、企業は技術力や経営資本を相互活用し、大きなシナジー効果を期待できます。

### M&A事例

#### 住友林業とクレセント社のM&A
– 目的: アメリカにおける住宅・不動産事業の拡大
– 手法: 100%の持分取得
– 費用: 約393億円
– 結果: 集合住宅事業と商業施設開発の優良プラットフォームを獲得。

#### 淺沼組とSINGAPORE PAINTS & CONTRACTOR PTE. LTD.のM&A
– 目的: アセアン地域でのリニューアル事業の展開
– 手法: 2回の株式譲渡
– 結果: アセアン地域での事業展開を強化。

#### 長谷工コーポレーションと総合地所のM&A
– 目的: サービスのさらなる充実
– 手法: 株式譲渡
– 結果: 560千戸を超える施工実績と総合地所の経験・ノウハウが融合し、顧客ニーズに合った設計・工法の提案が可能。

#### 戸田建設と佐藤工業のM&A
– 目的: 東北エリアの強固な事業基盤の確立と市場シェアの拡大
– 手法: 株式譲渡
– 結果: 第三者への事業承継を目指し、戸田建設の子会社となった。

#### コニシと山昇建設のM&A
– 目的: 建設事業の強化
– 手法: 株式譲渡
– 結果: コニシが山昇建設の技術力を活用し、建設事業を強化。

#### 不二サッシと日本防水工業のM&A
– 目的: 外装すべてを網羅するトータルリニューアル工事の施工体制の確立
– 手法: 株式譲渡
– 結果: 日本防水工業の技術力を活用し、顧客にとって価値が高い工事を提供。

#### アサノ大成基礎エンジニアリングと三協建設のM&A
– 目的: 静岡県での土木・建設事業の強化
– 手法: 株式譲渡
– 結果: アサノ大成基礎エンジニアリングが三協建設の技術力を活用し、静岡県での事業を強化。

#### サンユー建設と行方建設のM&A
– 目的: グループ全体の競争力・収益力を強化
– 手法: 株式譲渡
– 結果: 同じ建設業界に属する両社が、得意分野・役割を活用し、大きなシナジー効果を期待。

#### ナガワと鳥海建工のM&A
– 目的: ユニットハウスの製造や販売、レンタル事業の強化
– 手法: 株式譲渡
– 結果: ナガワが鳥海建工の技術力を活用し、ユニットハウスの事業を強化。

### 近年のM&A事例

#### サイタホールディングスと朝倉生コンクリートのM&A
– 目的: 経営および事業の強化と業績拡大
– 手法: 株式譲渡
– 結果: サイタホールディングスが朝倉生コンクリートの技術力を活用し、生コンクリートの製造販売事業を強化。

#### ナカノフドー建設とトライネットホールディングスのM&A
– 目的: ノウハウ・技術・リソースの相互活用と土木事業の強化
– 手法: 株式譲渡
– 結果: ナカノフドー建設がトライネットホールディングスの技術力を活用し、土木事業を強化。

#### 矢作建設工業と北和建設のM&A
– 目的: 事業エリアの拡大と新規技術・サービスの開発
– 手法: 株式譲渡
– 結果: 矢作建設工業が北和建設の技術力を活用し、マンション工事やホテル・福祉施設の建築工事を強化。

#### 清水建設と日本道路のM&A
– 目的: 競争力の強化と工事受注件数の拡大
– 手法: 株式譲渡
– 結果: 清水建設が日本道路の技術力を活用し、建築事業・土木事業を強化。

#### インフロニアHDと東洋建設のM&A
– 目的: 建築事業・土木事業・舗装事業・機械事業の強化
– 手法: 株式公開買い付け(TOB)
– 結果: インフロニアHDが東洋建設の技術力を活用し、多数の施工実績を持つ海洋土木工事を強化。

### 管工事業界のM&A事例

#### 日本エコシステムと葵電気工業のM&A
– 目的: ファシリティ事業でのサービス提供範囲拡大と業容拡大による新規取引先開拓
– 手法: 株式譲渡
– 結果: 日本エコシステムが葵電気工業の技術力を活用し、空調・給排水設備工事を強化。

#### 日鉄パイプライン&エンジニアリングとキャプティのM&A
– 目的: 導管工事事業の強化と企業価値の向上
– 手法: 吸収分割
– 結果: 日鉄パイプライン&エンジニアリングがキャプティの導管工事事業を吸収し、導管工事事業を強化。

#### 日本電技とエアフィールドのM&A
– 目的: 中部地区のメンテナンス事業の協力会社として育成し、メンテナンス事業の体制強化および品質向上
– 手法: 株式譲渡
– 結果: 日本電技がエアフィールドの技術力を活用し、中部地区のメンテナンス事業を強化。

#### 邦徳建設とサニーダのM&A
– 目的: 受注拡大が見込めず事業継続が困難なサニーダの事業領域にリソースを傾注することが難しいとの判断
– 手法: 株式譲渡
– 結果: 邦徳建設がサニーダの取引顧客との関係維持が期待できるため譲渡に至りました。

#### ウェーブロックホールディングスとエイゼンコーポレーションのM&A
– 目的: 地中熱ビジネスの推進と設計業務への対応力の担保
– 手法: 株式譲渡
– 結果: ウェーブロックホールディングスがエイゼンコーポレーションの技術力を活用し、地中熱ビジネスを推進。

#### エクシオグループと光陽エンジニアリングのM&A
– 目的: 空調・給排水衛生・防災設備などの設計施工および保守管理の強化
– 手法: 株式譲渡
– 結果: エクシオグループが光陽エンジニアリングの技術力を活用し、設計施工および保守管理の事業を強化。

これらの事例から、M&Aは建設業界で事業の強化や技術力の活用を目的として実施されており、企業価値の向上や新規取引先開拓が期待されています。

建設業の事業が高値で売却できる可能性

建設業の事業が高値で売却できる可能性を以下にまとめます。

1. 現時点での利益
建設業が事業の売却を成功させるには、現時点で利益が出ているかどうかが重要です。利益が継続している企業は、買い手企業にとって魅力的な対象となります。

2. 経営者権限移譲
経営者たる社長の権限移譲を事前に決めておくことが大切です。社長不在でも正常に運営できる組織と仕組みを構築しておく必要があります。

3. 有資格者や優れた技能者の確保
建設業界では、技能労働者の減少や高齢化が進んでおり、有資格者や優れた技能者を豊富に確保している企業は買い手から高く評価されやすくなります。特に平均年齢が低い企業はさらに高値での売却可能性が高まります。

4. 競争優位性や希少性の高い強み
安定した売上をもたらす顧客基盤や価値が高い設備、許認可など、競争優位性や希少性の高い強みがあると、買い手からの評価が高まりやすくなります。早い時期から優位性・希少性が高い強みを確保することが重要です。

5. 財務体質やコンプライアンス面の健全性
財務やコンプライアンス面が健全であることが不可欠です。粉飾決算の有無や環境汚染、訴訟などの問題を解決しておく必要があります。これにより、不要な減点評価を受けないためにも、財務体質やコンプライアンス面をクリーンにしておくことが重要です。

6. 市場や業績の成長性
市場や業績が成長しているタイミングで売却することが有利です。買い手企業にとっては、買収後に事業が大きく成長し、自社の企業価値向上に貢献してくれるかが重要です。

7. 特殊な技術やニッチな修繕工事
特殊な技術やニッチな修繕工事を行える企業は、高値で売却される可能性が高いです。例えば、水中土木やトンネルに特化した防水工事、特殊な橋の補修工事、離島専門の工事会社などが該当します。

建設業の企業が会社を譲渡するメリット

建設業の企業が会社を譲渡するメリットをまとめると、以下の通りです:

まとまった資金が手に入る:事業売却をすれば、まとまった資金が手に入り、経営の立て直しに使えます。特に重機などの資産を持っているため、売却金額も大きくなりやすい。
会社全体の収支が良くなる:赤字の事業を売却することで、会社全体の収支を改善できます。例えば、新規建設事業が衰退した場合に保守・整備事業だけを売却し、収支を改善することができます。
建設会社特有の処分コストを削減できる:重機などの特殊な設備を売却することで、処分コストを削減できます。買い手と話し合いをすることで、事業に必要な機械や資材も渡せるため、自社で処分するコストを削減できます。
後継者不在問題の解決:M&Aを行うことで、後継者不在問題を解決し、事業を継続できます。社員の雇用も継続できるため、会社の倒産・清算を回避できます。
人手不足を解消しやすい:M&Aを行うことで、人手不足を解消しやすくなります。買い手側が人材を確保しやすくなります。
経営の安定:大企業の一員となることで、経営の安定を図れます。従業員や取引先の同意を得ることで、雇用関係や取引契約をスムーズに継承できます。
処分コストの削減:事業売却で重機なども含めて売却することで、処分コストを削減できます。買い手にとって嬉しい条件として提示できるため、自社で処分するコストを削減できます。
スピーディーな進め方:株式譲渡はスピーディーに進められるスキームで、交渉が順調に進めば1ヶ月程度で終わることもあります。

建設業の事業と相性がよい事業

建設業と相性の良い事業を以下にまとめます。

### 建設業と相性の良い事業

1. 宅建業
建設業を主に営む会社が宅建業も兼業することで、自社で建売住宅を建設して販売、または中古住宅を内装工事してリノベーション住宅として転売することが可能です。また、マンションやアパートの新築工事を行い、入居者を集めて賃貸収入を得ることもできます。

2. 産業廃棄物収集運搬業
建設業と産業廃棄物収集運搬業を兼業することで、建設現場の廃棄物を収集・運搬することが可能です。これにより、建設現場の清掃業務が効率化され、環境問題の解決にも寄与します。

3. 不動産業
建設業と不動産業を兼業することで、不動産の購入と販売を自ら行うことができます。これにより、仕事を獲得する幅が広がり、公共工事の受注を目指す際に重要な経営事項審査でのポイントを向上させる要因となります。

4. 補償コンサルタント
公共工事に必要な土地等の取得若しくは使用、これに伴う損失の補償又はこれらに関連する業務を行うことで、建設業と補償コンサルタントを兼業することで、公共工事の受注に必要な業務を一貫して行うことができます。

これらの事業を兼業することで、建設業の事業を効率化し、ビジネスチャンスを生み出すことができます。

建設業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由

M&A Doは、建設業の企業がM&Aを依頼する際におすすめの理由がいくつかあります。まず、譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点が大きな魅力です。これにより、コストを気にせずに安心してご相談いただけます。さらに、豊富な成約実績を誇っており、多くの企業様にご満足いただいております。建設業の業界にも深い知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確なアドバイスを提供することが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。