目次
建物売買業の市場環境
2024年の建物売買市場環境は、以下のポイントが特徴です。
– 地価の上昇: 全用途平均で2年連続の上昇となり、上昇幅も拡大しています。特に地方四市(札幌、仙台、広島、福岡)の地価上昇率は8.6%に拡大しています。
– 建設費の高騰: 建設費の高騰により、不動産価格が上昇しています。
– オフィスビルの供給: 高機能な大規模オフィスビルの供給が続いており、既存ビルのリノベーションや建替え事業も課題となっています。
– 物流施設の投資: 物流施設への投資が増加しており、2024年問題解消を契機とした物流施設の高機能化が続く予定です。
– 住宅市場の変化: 新築住宅の価格上昇により、既存住宅流通のシェアが増加することが予想されています。新築住宅の省エネ基準対応によるコスト増が新築住宅の価格上昇を促進する要因となります。
– ホテル市場の回復: ホテル市場は本格的な回復が見られ、開発投資も盛んになっています。しかし、需給バランスに応じた投資戦略が必要です。
– 賃貸住宅需要の増加: 住宅価格の高騰により、賃貸住宅需要が増加しており、中古マンションの平均成約価格も上昇傾向が続いています。
これらの要因により、2024年の建物売買市場環境は活発で、特に物流施設やオフィスビル、ホテル市場が注目されています。
建物売買業のM&Aの背景と動向
不動産M&Aの背景と動向を以下にまとめます。
### 不動産M&Aの背景
高齢化と事業承継
不動産業界におけるM&Aは、業界全体の高齢化が一つの背景です。多くの企業が後継者問題を抱えているため、M&Aが活発化しています。
税制面のメリット
不動産M&Aは、一般的な不動産売買と比較して税制面での有利さが手法に採用される理由の1つです。特に、事業の収益性に問題があるケースでも魅力的な不動産を有していれば、好条件の取引ができる可能性があります。
### 不動産M&Aの動向
不動産取得を目的としたM&A
不動産M&Aは、不動産を取得するために行われるM&Aで、対象企業の全株式を買い手企業が取得し、その企業を完全な子会社とします。買い手企業は子会社を通してその不動産を間接的に所有します。
不動産の種類
不動産M&Aの対象となる不動産は多様で、ビル、店舗、マンション、ホテル、駐車場などが含まれます。特に、事業の採算性や将来性が低く、廃業するしかないようなケースでは、会社清算と不動産M&Aが比較検討の対象となります。
M&Aの手法
不動産M&Aで選択されるスキームは、株式譲渡と会社分割が一般的です。株式譲渡では譲受企業が譲渡企業の株式を取得して、企業ごと不動産を引き継ぎます。会社分割では、対象の不動産のみを会社分割で新設会社に移転し、その新設会社を子会社化するという手法が取られます。
### 不動産M&Aの事例
トーセイ株式会社の事例
トーセイ株式会社は、不動産の流動化・開発・賃貸事業と不動産関係のファンド・コンサルティング事業などを展開しています。同社は、不動産M&Aにより優良不動産を取得して収益性を高めたのちに売却する事業モデルを2001年から推進しており、2018年までに13件の不動産M&Aを実施しました。
ビーロット株式会社の事例
ビーロット株式会社は、不動産の再生・開発、コンサルティング、マネジメントなどの事業を展開しています。同社は、不動産再生事業で不動産M&Aを活用したプロジェクトも推進しており、特に「ドシー恵比寿」売却完了の事例が挙げられます。
### 不動産M&Aの利点
効率的な不動産取得
不動産M&Aにより、事業のための物件を効率よく取得することが可能です。また、別の方法では入手しづらい物件を取得することも可能です。
シナジーの生まれる可能性
不動産M&Aにより、隣接している事業が多く、シナジーが生まれやすい業界であると言えます。例えば、マンション賃貸業者がマンション管理業もできるようになれば、外注していた業務を内製化することが可能です。
### 不動産M&Aの注意点
専門的な理解が求められる
不動産取引とM&Aの双方に対して専門的な理解が求められるため、不動産M&Aに詳しい専門家と相談しながら慎重に取引を進めることが重要です。
建物売買業のM&A事例
### 不動産仲介業のM&A事例
#### ハウスコムが宅都を子会社化
– ハウスコムは、2021年3月に宅都の株式を取得し、子会社化しました。宅都は賃貸物件の仲介やホテル事業を展開しており、ハウスコムは不動産テックを活用した経営や事業拡大を目指しました。
#### ハウスフリーダムがアイデムホームを買収
– ハウスフリーダムは、2017年6月にアイデムホームの全株式を取得し、完全子会社化しました。アイデムホームは名古屋市周辺で不動産売買仲介を中心とする事業を展開しており、ハウスフリーダムは事業拡大や中部地域での経営基盤強化を目指しました。
#### APAMANがマイハウスを買収
– APAMANは、2020年4月にマイハウスの全株式を取得し、完全子会社化しました。マイハウスは茨城県で不動産仲介や賃貸物件の管理を展開しており、APAMANは不動産テックを活用した不動産仲介・管理事業の拡大を進めました。
#### ハウスドゥが小山建設・小山不動産・草加松原住建を買収
– ハウスドゥは、2019年8月に小山建設の全株式、小山不動産の株式の55%、草加松原住建の全株式を取得し、3社を完全子会社化しました。ハウスドゥは中堅・中小不動産企業の事業承継を積極的に進めており、事業拡大を目指しました。
#### 燦キャピタルマネージメントが早稲田不動産管理を買収
– 燦キャピタルマネージメントは、2022年12月23日に早稲田不動産管理を子会社化しました。早稲田不動産管理は山林の売買・管理を専門とし、クリーンエネルギー事業に関連する資本を活用することで両者にとって大きなメリットが生じると考えました。
#### 東急コミュニティーがユナイテッドコミュニティーズを買収
– 東急コミュニティーは、2013年2月28日にユナイテッドコミュニティーズを子会社化しました。ユナイテッドコミュニティーズはコミュニティワンとしても知られ、東急グループ傘下の会社となりました。
建物売買業の事業が高値で売却できる可能性
建物売買業の事業が高値で売却できる可能性について、以下のポイントをまとめます。
– 査定額の信頼性: 高い査定額が出ても、そのとおりの価格で売却できるとは限りません。高すぎる査定額を信じることは、売却が長引くリスクがあります。複数の査定結果を比較し、実際の成約価格に近い査定額を選ぶことが重要です。
– 仲介業者の動機: 不動産業者が高すぎる査定額を提示するのは、仲介依頼を獲得するためです。売主は、実際の成約価格に近い査定額を選ぶことが重要です。
– 売却価格の決定: 実際の売却価格は、買主が現れるかどうか、買主がどの程度の金額での購入を希望するか、売主が買主の値引き交渉にどこまで応じるかなど、さまざまな事情に左右されます。相場よりも高すぎる価格を売り出し価格として設定すると、購入希望者が全く現れない可能性があります。
– 不動産屋さんの選定: 不動産を高値で売却するためには、不動産会社とエージェントの総合力が重要です。特に、以下の5つの要素を考慮することが重要です。
– 写真力: 物件の魅力を写真で強調する能力
– 拡散力: 物件情報を広く拡散させる能力
– 忍耐力: 売却期間を長く見据える能力
– 営業力: 売却活動を積極的に行う能力
– ブランド力: 信頼性の高いブランド
– ゲーム理論の視点: 売主、買主、仲介業者それぞれの思惑を整理し、家をより高く売るための最適な戦略を探ることが重要です。売り出し価格を超えた価格設定は、買主の関心を得られず、売却が長引くリスクがあります。
– 売り時を見極める: 投資用の不動産も一般的な物件と同様に、市場のトレンドによって売却のしやすさが大きく変わるため、高値で売却するには、売り時を見極めることが重要です。
建物売買業の企業が会社を譲渡するメリット
建物売買業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです。
– 後継者問題の解決: 会社譲渡を用いると、他の会社が事業を引き継いでくれるため、自社の関係者などから後継者を探さずに済みます。
– 従業員の雇用の確保: 会社譲渡であれば、会社自体を譲り渡すため、従業員の雇用契約も買い手に引き継がれます。
– 譲渡益の獲得: 会社譲渡は株式の取引を伴う手法であるため、売り手の株主は譲渡益を獲得できます。
– 新規事業への進出の促進: M&Aによって当該事業を展開している企業を取得すれば、新規事業への進出にかかる時間を短縮でき、売り手企業のノウハウ・技術力・シェアも獲得できるので、スムーズな事業化を図れます。
建物売買業の事業と相性がよい事業
建物売買業の事業と相性がよい事業は以下の通りです。
### 1. 不動産開発
不動産開発は、建物売買業と密接に関連しています。デベロッパーは、土地の仕入れから建物の建設、販売・貸出までの一連の流れを手掛けています。具体的には、土地の取得、不動産の企画・開発、不動産の売買・賃貸、建物の管理・運営が含まれます。
### 2. 不動産仲介事業
不動産仲介事業は、売り手と買い手を結びつける役割を担います。主に不動産仲介事業と不動産販売代理の2つに分類されます。仲介手数料によって収益を確保し、売買仲介、賃貸仲介、販売・仲介を行うための広告活動が含まれます。
### 3. 不動産投資
不動産投資は、建物売買業と連動する事業です。投資家から資金を集め、そのお金で購入した物件から得られる収益を投資家に分配します。具体的な業務内容としては、投資家に物件を紹介すること、オーナーから預かった投資物件の管理や運用、不動産投資ファンドの運営が含まれます。
### 4. 不動産管理
不動産管理は、建物売買業の後続事業として重要です。不動産オーナーに代わって不動産を効率よく活用するためのサポートや提案を行います。具体的には、定期清掃、建物・設備の維持管理、入居者の集客、入居者のトラブル対応、賃料の集金・管理が含まれます。
建物売買業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、建物売買業の企業様にとって最適なM&Aのパートナーです。その理由は、まず第一に譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点です。これにより、コストを気にせずに安心してご相談いただけます。さらに、豊富な成約実績を誇っており、多くの企業様にご満足いただいております。建物売買業の業界にも深い知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確なアドバイスを提供することが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。