目次
大学の市場環境
大学の市場環境は、以下のような要因によって影響を受けている。
– 入学者数の減少:18歳人口の急激な減少により、大学進学者数が減少している。2023年度には私立大学の入学定員充足率が100未満の比率が53.3%に達し、短期大学では未充足校の割合が92.0%に達している。
– 新増設・改組の増加:18歳人口の減少により、既存の学部学科編成では入学者確保が困難となっているため、2024年は私立大学の新増設・改組が増加傾向にある。
– 専門学校や短期大学からの参入:専門学校や短期大学からの参入が増加しており、地方の医療系に多い。自治体や地域からの要請を受け、大学を設置することで地域におけるインフラ維持に必要な医療系人材を確保することが目的である。
– 政策支援:文部科学省は2024年度から28年度までの5年間を集中改革期間と位置づけ、大学の経営改革や定員規模適正化を支援している。
– 企業の採用意欲の高まり:企業側の採用意欲が高まり、2024年卒の新卒採用が増加している。企業は新卒採用を再開しようと考えており、採用予定数が前年より増加している。
– 教育環境の変化:コロナ禍により、大学の授業形式が変化し、オンライン授業や遠隔授業が増加した。2024年卒の学生は、通常の授業の開始時期の延期やオンライン授業を実施または検討中の大学が多かった。
– 学生活動の減少:サークル・部活動に所属している割合が減少しており、2024年卒では50.6%と半数をようやく超える程度となっている。
これらの要因は、大学の市場環境を大きく影響しており、大学の改革や対応策が必要となっている。
大学のM&Aの背景と動向
大学のM&Aの背景と動向は以下の通りです。
### 大学のM&Aの背景
– 経営環境の厳しさ:大学は授業料や研究費などの収入源が限られており、人口減少による学生数の減少や大学進学率の低下などにより、競争が激化しています。
– 経営効率化と収益増加:大学は経営の効率化や収益の増加を求めてM&Aを行うことがあります。
– 教育や研究の質の向上:大学は優れた研究施設や教育プログラムを持つ別の大学を買収することで、研究力や教育力を強化することができます。
### 大学のM&Aの動向
– 地域内での合併や統合:近年では、同じ地域にある大学同士の合併や、大学と短期大学や専門学校との統合が増えています。
– 海外との提携や買収:海外の大学との提携や買収も増加しており、グローバルな競争に対応するための戦略として注目されています。
– 文化や教育理念の違い:大学のM&Aには、文化や教育理念の違いなど様々な課題があります。また、大学は社会的な役割を持つ存在であるため、M&Aが社会的に受け入れられるかどうかも重要な問題です。
### 大学のM&Aの成功事例
1. 教育関連企業の買収:ある大学が教育関連企業を買収することで、自身の教育サービスを拡充し、新しい教材や教育プログラムを提供することができました。
2. 研究機関の統合:ある大学が同じ分野の研究機関を統合することで、研究力を強化し、研究者同士の交流が活発化しました。
3. オンライン教育企業の買収:ある大学がオンライン教育企業を買収することで、オンライン教育分野に参入し、新しい教育サービスを提供することができました。
4. 医療機関の統合:ある大学が医療機関を統合することで、医療分野における総合力を強化し、より高度な医療サービスを提供することができました。
### 大学のM&AにおけるPMIの重要性
1. 文化の融合:両大学の文化を融合させ、新しい組織文化を構築するための計画を策定します。
2. 人材マネジメント:重複する部門や業務が出てくる場合、従業員の配置や役割の再編成が必要になります。
3. システムの整合性:両大学のITシステムを調査し、統合計画を立てます。これにより、従業員が適切な情報にアクセスできるようになり、業務の効率化が可能になります。
### 大学のM&AにおけるPMIの種類と特徴
1. 文化的PMI:異なる文化を調和させ、コミュニケーションの難しさを解消することが目的です。
2. 人的PMI:人材の才能や能力を評価し、適材適所の配置を考えることが重要です。
3. 資本的PMI:融資や資金調達が必要になる場合に必要です。
4. 技術的PMI:専門的な知識や技術を共有し、新たな研究開発、教育の機会を創出することが目的です。
大学のM&A事例
大学のM&A事例をまとめます。
### 学校法人天理大学と学校法人天理よろづ相談所学園の合併
2021年4月に天理大学の運営を手掛ける学校法人天理大学と、天理医療大学などを運営する学校法人天理よろづ相談所学園が合併しました。このM&Aは大学の運営体制を強化し、中高大一貫教育を目指すために行われました。
### 学校法人永守学園と学校法人京都光楠学園の合併
2021年4月には京都先端科学大学などの学校法人を運営する学校法人永守学園と、高等学校などの教育機関を運営する学校法人京都光楠学園が合併しました。このM&Aは、双方が「グローバル社会で通用する人材を育成・輩出していくことに限界がある」という認識のもと行われ、中高大一貫教育を目指しました。
### 学校法人龍谷大学と学校法人平安学園の合併
2015年4月には、龍谷大学や龍谷短期大学を運営している学校法人龍谷大学と、同大学の付属高校である平安高等学校や平安中学校とが合併しました。このM&Aは、運営体制をさらに高めるために行われ、高大連携教育プログラムや教育交流の制度を通して、高校と大学が同じ法人で運営されていることのメリットを活かしていくことが想定されています。
### 東京工業大学と東京医科歯科大学の基本合意書締結
2022年10月には東京工業大学の運営を手掛ける国立大学法人東京工業大学と、東京医科歯科大学を運営している国立大学法人東京医科歯科大学が基本合意書を締結しました。このM&Aは、2024年の統合を目指しており、両大学の研究効果を高めるために行われ、新大学の名称は仮で「東京科学大学」とされています。
### 国立大学法人京都大学による関西ティー・エル・オーのM&A
2016年2月には京都大学を運営する国立大学法人京都大学が、複数の大学の知的財産を活用した技術移転・研究交流・ベンチャー支援を提供する関西ティー・エル・オーの株式68%を取得しました。このM&Aは、産官学連携本部との連携強化を目的として行われました。
大学の事業が高値で売却できる可能性
大学の事業が高値で売却される可能性を以下にまとめます。
### 大学の事業が高値で売却される可能性
1. 技術力や特許の評価
大学が所有する企業が、技術力や特許が高く評価されている場合、他社が買収することで自社の技術力を強化しようとすることがあります。
2. 業界トップレベル事業
事業内容が業界トップレベルである場合、業界の大手企業が競合他社を抑えるために買収を検討することがあります。
3. 新技術分野への進出
業界への参入障壁が高い分野や新しい技術分野への進出を目指す場合、既存の企業が専門性の高い大学の技術力を活用することで事業を発展させることができます。
4. 経営リスクの軽減
大学が所有する企業が、譲渡先企業に買収されることで、その企業の経営リスクが軽減されることがあります。譲渡先企業が、より経営に精通している場合、より効率的な運営ができるようになり、事業の成長を促進することができます。
5. 資金調達の容易さ
大学が所有する企業が、譲渡先企業によって買収されることで、大学側はその売却額を手にすることができます。この売却額を大学側が再投資することで、新しい事業の立ち上げや研究開発に資金を調達することができます。
6. ブランド力の強化
M&Aによって大手の学校法人あるいは企業へ譲渡すれば、ブランド力の強化に期待できます。ブランド力の強化すれば遠方からの入学志願者増加にも期待できるため、学生の囲い込みも可能です。
7. 学校の存続の可能性
M&Aで他者へ譲渡することによって学校の存続が可能となるため、学生や教職員などへの影響を最小限にとどめることが可能です。
8. 雇用の継続
M&Aにより買収されることで雇用を継続できる可能性があります。またM&Aの後にリストラが行われた場合でも、退職金は支給されるでしょう。
### まとめ
大学の事業が高値で売却される可能性は、技術力や特許の評価、業界トップレベル事業、経営リスクの軽減、資金調達の容易さ、ブランド力の強化、学校の存続の可能性、雇用の継続など、多くの要因によって決まります。
大学の企業が会社を譲渡するメリット
大学の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです:
1. 事業の特化化が可能になる:
– 事業の特化化:大学が所有する企業が、他の企業に譲渡されることで、譲渡先企業がその事業に特化することができます。これにより、特定の分野に特化した事業展開が可能になり、より効率的な運営ができるようになります。
2. 資金調達が容易になる:
– 資金調達:大学が所有する企業が、譲渡先企業によって買収されることで、大学側はその売却額を手にすることができます。この売却額を大学側が再投資することで、新しい事業の立ち上げや研究開発に資金を調達することができます。
3. 経営リスクの軽減が可能になる:
– 経営リスクの軽減:大学が所有する企業が、譲渡先企業に買収されることで、その企業の経営リスクが軽減されることがあります。譲渡先企業が、より経営に精通している場合、より効率的な運営ができるようになり、事業の成長を促進することができます。また、譲渡先企業が大学との提携を継続することで、大学側も事業展開のリスクを軽減することができます。
4. 後継者問題が解決できる:
– 後継者問題の解決:事業譲渡を実施できれば、事業承継が実現し、後継者問題が解決できます。特に、譲渡内容を選別できる事業譲渡では、売り手が赤字企業であっても負債を譲渡対象から切り離せるので、買い手がつきやすいといったメリットがあります。
5. 譲渡益を得られる:
– 譲渡益:事業譲渡では、売り手側が譲渡する事業の現在価値に、今後数年間の営業価値などを加えて算出した価額を現金で受け取ることができます。買い手企業が譲渡する事業に将来性を感じれば、現在の価値よりも大きな譲渡益が得られる点がメリットです。
6. 従業員の雇用が確保できる:
– 従業員の雇用:会社譲渡を行う場合、買い手が自社従業員と雇用契約を再び結んでくれることがあります。これにより、従業員の雇用が確保され、経営権を譲り渡しても従業員に影響を与えることが少なくなる。
7. 新規事業への進出が容易になる:
– 新規事業への進出:M&Aによって当該事業を展開している企業を取得すれば、新規事業への進出にかかる時間を短縮でき、売り手企業のノウハウ・技術力・シェアも獲得できるので、スムーズな事業化が図れます。
8. M&Aによる相乗効果が期待できる:
– M&Aによる相乗効果:M&Aによる相乗効果とは、二つの企業が統合することで、合併前よりも大きな利益や成長が期待できることを指します。シナジー効果、規模の拡大、新しい技術・商品の獲得などが期待できます。
大学の事業と相性がよい事業
大学の事業と相性がよい事業をまとめると、以下のような点が重要です。
– 大学発ベンチャー: 大学の研究成果やノウハウを活かしたスタートアップ企業。経済産業省によると、2021年度の大学発ベンチャー企業数は3,306社で、過去最高の企業数と増加数を記録しています。
– 起業支援コミュニティ・プログラム: 多様化しており、起業部・起業サークル、大学関連の起業を支援するファンド、教育プログラムなどが存在します。例えば、早稲田大学の「ベンチャー稲門会」や上智大学の「Sophia Start-up Club」が注目されています。
– スタートアップ事業化センター: 東北大学のように、大学発スタートアップの創出を支援し、社会的・経済的インパクトを生み出すことを目指しています。東北大学では、教員主導・学生主導で200社近いスタートアップが生まれています。
– ビジネスプランコンテスト: 大学生が参加できるビジネスコンテストが多数開催されています。例えば、「JUMPVol.3」や「武蔵大学 第4回 ビジネスプランコンテスト」などがあり、優秀なアイデアには支援金が贈呈されています。
– ベンチャービジネス研究所: 追手門学院大学の研究所は、学部学生や院生の起業家育成や大学発ベンチャーの育成を支援しています。
これらの点をとで囲んでまとめると、以下のようになります。
– 大学発ベンチャー: 大学の研究成果やノウハウを活かしたスタートアップ企業。
– 起業支援コミュニティ・プログラム: 起業部・起業サークル、大学関連の起業を支援するファンド、教育プログラム。
– スタートアップ事業化センター: 大学発スタートアップの創出を支援し、社会的・経済的インパクトを生み出す。
– ビジネスプランコンテスト: 優秀なアイデアには支援金が贈呈される。
– ベンチャービジネス研究所: 学部学生や院生の起業家育成や大学発ベンチャーの育成。
大学の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、大学の企業がM&Aを依頼する際におすすめの理由がいくつかあります。まず、譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点が大きな魅力です。これにより、コストを気にせずに安心してご依頼いただけます。また、豊富な成約実績を誇っており、多くの企業様にご満足いただいております。さらに、大学の業界にも知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確に対応することが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。