目次
塗料卸売業の市場環境
塗料卸売業の市場環境は、以下の要素によって特徴づけられます。
– 市場動向: 住宅リフォーム需要に大きく左右されます。2023年は住宅リフォーム市場規模が前年比0.6%増加し、7兆3,575億円と推定されました。
– 市場規模の変化: 市場規模は成熟しており、低下傾向にあります。1990年代後半から減少傾向が続いています。
– 価格変動: 石油価格に左右されやすい。塗料・顔料の原料は石油だからです。石油価格の変動が生産量に大きな影響を及ぼします。
– 海外進出の必要性: 国内における将来性が厳しいため、海外展開が急務です。先進国の塗料卸売業界は成長しにくい状況にあり、世界的に見ると先進国の大手企業が新興国へ海外展開しています。
– M&Aの活発化: M&Aが業界の現状を打破するための手段です。M&Aを通じて海外市場への進出や効率の向上が図られています。
塗料卸売業のM&Aの背景と動向
塗料卸売業界のM&Aは、環境規制の強化や消費者の環境意識の高まりを背景に、技術力の向上を求める企業が活発に進められています。以下に主要な背景と動向をまとめます。
### 背景
– 環境規制の強化:環境規制が厳しくなり、環境に優しい製品の需要が増加しています。
– 消費者の環境意識の高まり:消費者が環境に優しい製品を選ぶ傾向が強まり、企業は環境に優しい製品を開発する必要があります。
– 市場規模の減少:国内市場が成熟し、市場規模が減少しています。新規参入は難しく、海外市場への進出が求められます。
### 動向
– 大手企業同士のM&A:大手企業同士がM&Aを行い、さらにシェアを広げています。例えば、アクゾ・ノーベルやシャーウィン・ウィリアムズが同業の企業を買収しています。
– 海外進出:海外市場への進出が活発です。特に新興国への進出が目立ち、世界規模での再編が進んでいます。
– M&Aによる経営統合:大手企業同士のM&Aにより、経営統合が進んでいます。これにより、顧客や販路を共有し、ノウハウや技術を合わせることが可能です。
– 中小企業のM&A:中小企業が大手企業に買収され、経営基盤が強化されます。後継者問題も解決し、経営から退くことができます。
### メリット
– 従業員の雇用確保:中小企業が大手企業に買収されると、従業員の雇用が確保されます。
– 経営基盤の強化:大手企業の支援を受け、経営基盤が強化されます。
– 後継者問題の解決:M&Aにより、後継者問題が解決し、経営から退くことができます。
これらの点が塗料卸売業界のM&Aの背景と動向を形成しています。
塗料卸売業のM&A事例
塗料卸売業界のM&A事例をまとめます。
### 塗料卸売業界のM&A動向
塗料卸売業界では、国内市場の需要停滞を受けてM&Aを通じた業界再編が進行しています。海外進出の足掛かりとして海外現地企業を買収する事例も見られます。市場が縮小傾向にある塗料卸売業界の参入障壁は高いため、世界的な市場でシェアを獲得できれば将来的に寡占状態になる可能性があります。
### 大手企業によるM&A
塗料卸売業界の大手企業同士がM&Aによって経営統合を行い、さらにシェアを拡大する動きも見られます。例えば、アクゾ・ノーベル(オランダ)やシャーウィン・ウィリアムズ(アメリカ)などは、同業の企業を次々に買収して規模を拡大中です。
### 日本ペイントホールディングスのM&A
日本ペイントホールディングスは、海外の塗料メーカーの買収を積極的に行っています。例えば、フランスのCromologyを2022年1月に買収し、スロベニアのユブを同年前半に買収する決定をしました。
### アックによるM&A
アックは、2019年8月に同じく塗料販売店である久米商会の全株式を取得し子会社化しました。取得価額は非公開ですが、アックは拠点拡大および同業同士の連携による成長を目的にM&Aを実施しました。
### 大日本塗料のM&A
大日本塗料は、2024年1月26日に完全子会社であるジャパンパウダー塗料製造(JPCM)を吸収合併することを決定しました。
### その他のM&A事例
– Sun Chemical Group S.p.AによるSAPICI S.p.A.のM&A:印刷インキ・有機顔料・合成樹脂などの製造・販売を手掛けるDICの完全子会社であるSun Chemical Group S.p.Aは、イタリアの接着剤・ポリマメーカーであるSAPICI S.p.A.とその持株会社であるFINAPE S.r.L.の全株式を取得しました。
– 日本ペイント・オートモーティブコーティングスのM&A:日本ペイントホールディングスの連結子会社で、自動車用塗料の製造・販売を手掛ける日本ペイント・オートモーティブコーティングスは、ケイマン諸島を拠点にするTong Yang Holding Corporationから中国で自動車用プラスチック塗料の製造・販売を手掛ける連結子会社5社の株式を追加取得して完全子会社化しました。
– Nippon Paint (M) Sdn. Bhd.によるVital Technical Sdn. Bhd.のM&A:日本ペイントホールディングスの完全子会社であるNippon Paint (M) Sdn. Bhd.は、シーラント・接着剤の製造・販売を手掛けるVital Technical Sdn. Bhd.の株式75%を取得しました。
– 東京インキによる荒川塗料工業のM&A:東京インキは、紙加工用塗料や建築用塗料などの製造・販売を手掛ける荒川塗料工業の全株式を取得しました。
– 日本ペイントホールディングスによるBetek Boya ve Kimya Sanayi Anonim ŞirketiのM&A:日本ペイントホールディングスは、グループ会社9社の体制で建築用塗料・建設用材料の製造・販売を手掛けるBetek Boya ve Kimya Sanayi Anonim Şirketiの株式95.915%を取得しました。
これらの事例から、塗料卸売業界におけるM&Aは、国内市場の需要停滞に対応し、海外進出を促進するための重要な手段として機能しています。
塗料卸売業の事業が高値で売却できる可能性
塗料卸売業の事業が高値で売却される可能性について、以下のポイントをまとめます。
– 市場規模の減少: 塗料卸売業界の市場規模は1990年代後半から減少傾向にあり、国内市場での拡大は難しい状況です。
– 海外進出の必要性: 海外市場への進出が求められており、海外企業の買収が活発化しています。
– 大手企業の買収: 大手企業同士のM&Aによる経営統合が進んでおり、数十億円~数兆円規模の取引も見られます。
– M&Aの費用と相場: M&Aの費用と相場は企業の規模や設備、売上などで決定され、海外企業の買収では高額な取引価額が設定されることが多いです。
– メリット: 売却側には従業員の雇用確保、後継者問題の解決、売却益の獲得、大手企業の下で安定した経営が得られます。
これらのポイントを考慮すると、塗料卸売業の事業が高値で売却される可能性はあるものの、具体的な相場は企業の状況や取引内容によって大きく異なります。
塗料卸売業の企業が会社を譲渡するメリット
塗料卸売業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです。
– 従業員の雇用確保特に中小企業に大きなメリットがあります。経営不振に陥っている会社も多く、M&Aによって大手企業に引き継げば従業員の雇用を確保できます。
– 後継者問題の解決多くの中小企業で深刻化しています。M&Aにより会社を売却できれば、後継者不足を解消できます。
– 売却益の獲得戦略的にM&A手続きを進めれば、高額な売却益を狙える。
– 大手企業の下で安定した経営大手企業の傘下になると、安定した経営が可能です。
– 不要事業の売却不要事業を売却し「集中と選択」を行った経営が可能。
– 借入金の連帯保証から解放会社売却により、経営者個人に負担される借入金の連帯保証や担保差し入れから解放される。
– 経営者の立場から退いて休める経営者は会社を引っ張ってきた役割から解放され、休みの時間が得られる。
– 買収側のメリット人材の確保や必要な事業を低コストで獲得、海外進出のための拠点・販路拡大が可能。
塗料卸売業の事業と相性がよい事業
塗料卸売業の事業と相性がよい事業として、以下の業種が挙げられます。
– 建築関連の業務:塗料卸売業と同様に建築現場と密接に関わるため、建築材料卸売業や建築資材販売業、建築設計事務所、建設会社などが考えられます。具体的には、建築材料卸売業や建築資材販売業が挙げられます。これらの事業は、塗料以外にも様々な建築材料が必要となるため、取り扱いがしやすい業種となります。
これらの事業は、塗料卸売業と同様に建築現場と密接に関わるため、お互いのニーズに合わせた商談や提案がしやすく、協力し合うことで両社の業績向上につながる可能性が高いです。ただし、建築業界は景気に左右されやすいため、経済状況の変化によっては需要が落ち込むこともあります。
塗料卸売業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
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株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。