目次
土木建設業の市場環境
2024年度の土木建設投資見通し
2024年度の土木建設投資は、前年度比4.1%増の25兆8,100億円となる見通しである。このうち、政府投資が全体の25%を占め、土木投資全体の構成比は35%となる見通しである。
土木建設投資の構成と推移
– 政府投資: 2024年度の政府投資は26兆2,100億円(前年度比3.7%増)となる見通しで、土木投資のうち25%を占める。
– 民間投資: 2024年度の民間投資は46兆8,100億円(前年度比2.2%増)となる見通しで、土木投資のうち75%を占める。
– 建築投資との比率: 2024年度の土木投資は建築投資の65%に対して35%となる見通しである。
建設業界の課題
– 人材不足: 建設業界は人材不足が深刻であり、労働環境の改善や生産性向上、人材確保などの対策が必要である。
– 資材価格の高騰: 建設業界は資材価格の高騰が深刻であり、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行やウクライナ情勢の悪化が影響している。
– 環境規制の厳格化: 建設業界は環境規制の厳格化に直面しており、CO2排出削減や建設廃棄物の削減が求められている。
2024年問題
– 労働時間の上限規制: 2024年4月から、時間外労働の上限規制が適用され、月45時間・年360時間が原則となる。
– 時間外割増賃金率の引上げ: 月60時間を超える労働に対する時間外割増賃金率の引上げが実施される。
これらの課題を解決するため、DX化や労働環境の改善、資材の高騰に対する対策が必要である。
土木建設業のM&Aの背景と動向
土木建設業のM&Aの背景と動向をまとめます。
### 背景
1. 人手不足と高齢化問題:
– 建設業界では、職人の高齢化と若手の不足が深刻な問題となっています。
– このため、M&Aは人材確保のために活発に行われています。
2. 後継者不足:
– 中小企業において、経営者の高齢化や後継者不足が事業承継を難しくしています。
– M&Aはこの問題を解決するための手段として利用されています。
3. 事業の多角化とシナジー効果:
– 不動産会社やハウスメーカーが建設業を傘下に収めることで、事業の多角化が期待され、シナジー効果が生まれます。
– 例えば、不動産会社が建設業を傘下に収めると、外注していた工事を内製化できるため、時間とコストの削減が期待されます。
### 動向
1. M&Aの増加:
– 近年、建設業界でのM&Aが活発に行われています。
– 2022年の上場企業の建設M&Aの発表件数は38件で、2013年以降で2番目に多い状況です。
2. 異業種によるM&A:
– ハウスメーカーが中堅のゼネコンを買収して建設業界に進出する例が増えています。
– 不動産会社が建設会社を買収すれば、外注していた施工を内製化できるため、プロセスとコストの効率化が実現可能です。
3. 事業拡大と人手不足の解消:
– M&Aは事業拡大と人手不足の解消を目的として行われています。
– 買収によって即座に売却側企業の人手を獲得可能です。
4. M&Aの成功例:
– サイタホールディングスによる朝倉生コンクリートの子会社化や、清水建設による日本道路のM&Aが成功例として挙げられます。
– これらのM&Aにより、企業は競争力の強化と工事受注件数の拡大を目指しています。
### メリット
1. 人材の確保:
– M&Aにより、豊富な経験・知識や技術・資格を持った職人の確保が可能です。
2. 原材料の仕入れや重機などのリソース活用:
– M&Aにより、工事に必要な重機や材料などの資源も受け継ぐことができます。
3. 新規エリアへの進出:
– M&Aにより、未進出エリアでの事業展開が可能です。
4. 官民の補完:
– M&Aにより、自社にはない強みを獲得し、幅広いコネクションを築くことができます。
5. 支配力の強化:
– M&Aにより、地域での経営基盤をより強固にすることができます。
6. 新規取引先の獲得:
– M&Aにより、新規取引先の獲得が可能です。
土木建設業のM&A事例
### 土木建設業のM&A事例
#### 日本乾溜工業と大邦興産のM&A
– 目的: 九州地区における土木建設工事のシェア拡大
– 手法: 株式譲渡
– 概要: 日本乾溜工業が大邦興産の全株式を取得し、子会社化しました。日本乾溜工業は大邦興産が地元で幅広く請け負っている工事を吸収することで、九州地区でのシェアを拡大しました。
#### コニシと山昇建設のM&A
– 目的: 土木建設事業の強化
– 手法: 株式譲渡
– 概要: コニシが山昇建設の株式を取得し、子会社化しました。コニシは山昇建設の技術と全国展開の営業ネットワークを活用し、業績と収益を拡大しました。
#### 大盛工業と井口建設のM&A
– 目的: 山口県の公共工事の請け負い
– 手法: 株式譲渡
– 概要: 大盛工業が井口建設の全株式を取得し、子会社化しました。井口建設は自社事業を会社分割し、土木工事業部門のみを大盛工業に譲渡しました。
#### メイホーエクステックによる三川土建の買収
– 目的: コスト削減、人材交流、技術共有
– 手法: 株式取得
– 概要: メイホーホールディングスの子会社であるメイホーエクステックが三川土建を買収し、約4億円で完了しました。メイホーホールディングスはこの買収で多くの利点を享受することになりました。
#### 明和工業による笠井組の買収
– 目的: 土木工事に関する専門知識の獲得と人材育成
– 手法: 株式取得
– 概要: 明和工業が笠井組を買収し、土木工事に関する専門知識を獲得し、人材育成に取り組みました。
#### OCHIホールディングスによる芳賀屋建設の買収
– 目的: 関東地方でのエンジニアリング事業の拡大
– 手法: 株式取得
– 概要: OCHIホールディングスが芳賀屋建設を買収し、関東地方でのエンジニアリング事業を拡大する計画です。
土木建設業の事業が高値で売却できる可能性
土木建設業の事業が高値で売却できる可能性を以下にまとめます。
### 1. 技術や特許の独自性
土木建設業において、他社にはない技術や特許を所有している企業は、買手にとって大きな魅力となります。特に、水中土木やトンネルに特化した防水工事などの特殊な技術を要する仕事をこなせる企業は、他社が手を付けないニッチな修繕工事や危険が伴う作業に実績がある企業も、特異性によって高値で売買される可能性があります。
### 2. 入札実績や受注実績
入札参加資格を持っていて実際に入札・受注した実績を持っている企業は、同様の資格を持たない企業よりも高値で売却できる可能性があります。国や地方自治体が発注した工事を建設会社が入札により受注するケースが多く、公共工事を遂行する能力があると認められた企業にのみ資格が与えられる仕組みです。
### 3. 安定した取引先や下請け先
安定した取引先や下請け先を持つ企業は、経営の安定性が評価され高値で売却できる可能性があります。建設会社は下請け・孫請けといった多重下請けのことも多く、取引先や下請け先との安定した関係がある企業は、買い手から高く評価されやすくなります。
### 4. 人材や有形資産
有資格者や優れた技能者を豊富に確保している企業は、買い手から高く評価されやすくなります。特に、平均年齢が低い企業であれば、より一層高値での売却可能性が高まると考えられます。また、人材や土地、機材、設備などの有形資産を持つ企業も、相場より高値で売却できる可能性があります。
### 5. 財務やコンプライアンス
財務やコンプライアンス面が健全な企業は、プラス要素を増やす(≒企業価値を高める)のと同時に、マイナス要素を減らすことが重要です。粉飾決算の有無を確認し、ある場合には改善するか、環境汚染や訴訟といった問題を解決しておくことが不可欠です。
### 6. 市場や業績の成長性
市場や業績が過去数年で大きく成長しているタイミングを選ぶことで、建設会社を相場よりも高い価格で売却しやすくなります。買い手企業にとっては、「現時点で売上や利益が出ているか」と同等かそれ以上に「買収後に事業が大きく成長し、自社の企業価値向上に大きく貢献してくれるか」が重要です。
土木建設業の企業が会社を譲渡するメリット
土木建設業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです:
– まとまった資金が手に入る
事業売却をすれば、まとまった資金が手に入り、経営の立て直しに使えます。特に重機などの資産を持っているため、売却金額も大きくなりやすいです。
– 会社全体の収支が良くなる
赤字の事業を売却することで、会社全体の収支を改善できます。例えば、新規建設事業が衰退している場合、その部分だけを売却し、収益性の高い事業に資本を集中させることができます。
– 建設会社特有の処分コストを削減できる
重機などの特殊な設備の処分コストを削減できます。事業売却で重機ごと売却することで、買い手と話し合いをするときに、事業に必要な機械や資材も渡せるため、自社で処分するコストを削減できます。
– 後継者不在でも事業承継できる
後継者が不在でも、事業承継を実現し、買い手企業のもとで事業を存続できます。
– 大手企業へのグループ入りによる経営の安定化、成長性の向上
M&A後、大手企業が持つノウハウや集客ルート、技術力、資金力、知名度を活用して事業を運営できるため、経営の安定化や収益の向上が期待できます。
– 売却利益の確保
現金を対価として受け取ることで、リタイア後の余裕ある生活を実現できる可能性があります。また、新規事業に資金を充てることも可能です。
土木建設業の事業と相性がよい事業
土木建設業の事業と相性がよい事業を以下にまとめます。
### 1. 建築物のメンテナンス業務
定期的な点検や補修が必要なため、建物やインフラ設備のメンテナンス業務は土木建設業にとって重要です。例えば、建物のエネルギー管理や省エネ対策も注目されています。
### 2. 宅建業
自社で建売住宅を建設して販売や、中古住宅を内装工事してリノベーション住宅として転売することが可能です。また、マンションやアパートの新築工事を行い、入居者を集めて賃貸収入を得ることもできます。
### 3. 古物商
現場で出る不用品を販売することができます。例えば、エアコンの下取りや厨房やパーテーションの買取などが考えられます。
### 4. 環境に配慮した建設技術
環境に配慮した建設技術の開発や、省エネルギー技術の導入が求められています。また、地震や自然災害などのリスクに備えた防災技術の開発も必要です。
### 5. インフラ整備の需要
道路やダム、トンネル、鉄道、空港などのインフラ整備が必要です。インフラは人が生活するうえで常に必要なため、定期的な修繕も必要です。
### 6. 自然災害の復旧・復興工事
自然災害によって影響を受けた地域の復旧と復興が必要です。例えば、津波で被害にあった地域の復旧や汚染土壌の処理、道路やトンネルの工事などが考えられます。
土木建設業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、土木建設業の企業がM&Aを依頼する際におすすめの理由がいくつかあります。まず、譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点が大きな魅力です。これにより、コストを気にせずにM&Aのプロセスを進めることができます。さらに、豊富な成約実績を持っており、多くの企業様にご満足いただいております。土木建設業の業界にも深い知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確なアドバイスを提供することが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。