目次
和装製品製造業(足袋を含む)の市場環境
和装製品製造業(足袋を含む)の市場環境は、コロナ禍による需要の減少と人手不足の深刻化で特徴づけられています。
需要の減少
足袋の需要は、新型コロナウイルス感染症の拡大や生活スタイルの変化により大打撃を受けています。福助の足袋の2020年の売上高は19年比で52%減少し、21年はやや回復したものの同比72%減少しました。また、和装を着飾ることが多い成人式や卒業式、茶道や華道の集まりなども激減しています。
人手不足
和装製造業界は職人の高齢化と後継者不足で慢性的に人手不足の状態にあります。京友禅協同組合連合会調べによると、令和5年度の生産数量は前年比12.1%減少し、コロナの影響が大きいとされています。西陣織工業組合の主力である帯地の生産数量もピーク時の3.8%まで減少しており、各種織機の台数もピークの1割を切っています。
生産基盤の縮小
市場規模は70年代初頭をピークに減少が続いており、数年前には3000億円を割ったと見られています。京友禅京小紋生産量はピーク時の2%を割っており、西陣織工業組合の帯地の生産数量も同様に減少しています。
業界の対応
業界全体が人手不足の深刻化に直面しており、既存の加工や技法の喪失などに繋がる可能性があります。福助は新ブランド「Tabeez」を開発し、コラボレーション商品を発売するなど、需要喚起を図っています。しかし、加工賃の上昇や職人の高齢化による生産能力低下が深刻化しており、多くの工場では稼働率が低下しています。
和装製品製造業(足袋を含む)のM&Aの背景と動向
和装製品製造業(足袋を含む)のM&Aの背景と動向についてまとめます。
### 背景
1. 市場縮小:和装製品の需要が減少しているため、市場規模が縮小しています。
2. 人材不足:和装製品製造に必要な技術やノウハウを持った人材が不足しているため、企業は他社の技術力や人材を取り込むことで生産性向上を狙っています。
3. グローバル化:和装製品製造業はグローバル化が進んでおり、アジアなどの新興国においても競合他社が増加しているため、企業はM&Aによってグローバル展開を図っています。
### 動向
1. M&Aの増加:近年、和装製品製造業においてM&Aが増加しています。企業間での競争が激化し、業績低迷が続いているため、M&Aが活用されています。
2. ブランド力の強化:ブランド力やデザイン力が重要な要素となっており、M&Aによってブランド力を強化することが狙いの一つとなっています。
3. 統合の重要性:M&A後の統合において、適切なPMI(Post-Merger Integration)が重要です。統合計画の策定や実施、人事制度やITシステムの統合、製品ラインの再編成などが含まれます。
### 成功事例
1. 呉服店と和装小物店の統合:呉服店と和装小物店が統合し、和装一式を扱う専門店を開業。両社の顧客層が重なっていたため、相乗効果が期待できました。
2. 革製履物ブランドのM&A:ある革製履物ブランドが、同業他社を買収することで事業拡大を図りました。買収した企業の製造技術や販売網を活用し、自社のブランド力を強化することで市場シェアを拡大しました。
### メリット
1. 事業規模の拡大:M&Aにより事業規模が拡大し、ノウハウやブランドを自社内に取り込むことができます。
2. 経営資源の集中:不採算事業を売却して主力事業へ経営資源を集中させることができます。
3. グローバル展開:M&Aによってグローバル展開が図れ、国際市場への進出が可能になります。
### 重要なポイント
– 統合計画の策定:統合計画の策定が重要です。適切な統合計画を立てないと、統合後の文化の調和やシステムの統合が不十分になる可能性があります。
– 人材の再配置:人材の再配置が必要です。M&A後の人材マネジメントのシステムを合わせ、人材の再配置や育成プログラムを策定することが重要です。
– ブランド統合の戦略的計画:ブランド統合の戦略的計画が必要です。ブランド統合が不十分である場合、消費者からの信頼低下や販売不振が発生する可能性があります。
和装製品製造業(足袋を含む)のM&A事例
和装製品製造業(足袋を含む)のM&A事例についてまとめます。
### 和装製品製造業のM&A動向
和装製品製造業におけるM&Aは、同業他社の買収や、異業種との提携が多く見られます。具体的には、以下のような動向が見られます。
– 同業他社の買収:呉服店や和装小物店の統合が行われ、両社の顧客層が重なっているため、相乗効果が期待されます。
– 異業種との提携:着物レンタル事業を手掛ける会社が、観光業界との提携を行い、外国人観光客向けのレンタル事業を展開しています。
### 和装製品製造業のM&A事例
#### 和心が着物レンタル事業をインバウンドコンソーシアムにM&Aした事例
– 事業譲渡の背景:和心はコロナ禍でのインバウンドの急激な減少を受けて収益が悪化し、オリジナル製品の製造販売などを行うモノ事業へ経営資源を集中させるために、M&Aでのコト事業の譲渡に踏み切った。
#### テイツーが山徳・着物インターナショナルをM&Aした事例
– 事業拡大の目的:テイツーはリユース事業を展開する会社で、三徳もリユース事業を行う会社で、M&Aにより取扱商品の幅を広げるとともに、国内だけでなく海外の販路拡大も可能にしました。
#### 游洛庵による倉染匠のブランドの事業のM&A
– ブランド創りの目的:游洛庵は染呉服製造元卸業、悉皆業を行っており、「一乃倉」ブランドの事業を譲り受けました。時代に合わせたブランド創りを目的としています。
### 和装製品製造業におけるM&Aのメリット
– ノウハウの取り込み:同業他社を買収することで、買収する会社が持つノウハウやブランドを自社内に取り込み、事業の拡大を図ることができます。
– 顧客層の重なり:呉服店と和装小物店の統合により、両社の顧客層が重なり、相乗効果が期待されます。
– 新規分野への進出:異業種との提携により、新規分野への進出が可能になります。
和装製品製造業(足袋を含む)の事業が高値で売却できる可能性
和装製品製造業(足袋を含む)の事業が高値で売却できる可能性について、以下のポイントをまとめます。
– コスト上昇の影響: 和装製品の製造には原材料費、電気やガス等の光熱費、商品を運ぶ物流費、そして人件費が必要です。コストが上昇しているため、各社の業績(利益率)が圧迫されている状況が続いています。
– 売上高の動向: 呉服卸の上位50社の売上高は589億4,002万円で、前年比109.5%増加していますが、コロナ前との比較では70.2%の水準に留まっています。染呉服製造の上位50社の売上高は225億5,888万円で、前年比108.4%増加していますが、コロナ前との比較では74.3%の水準に留まっています。
– 生産能力低下と人手不足: 職人の高齢化と後継者不足が慢性的な人手不足を引き起こしており、加工から納品までの期間が長期化しています。多くの工場では稼働率が低下し、商況が芳しくありません。
– 財政状況: 和装産業の縮小やコロナによる経済活動の停滞の影響により、団体会員の減少や団体財政の厳しい環境が続いています。会費に頼る財政運営が今後一層難しくなることが予測されています。
– 売却価格算定: 製造業の売却価格算定には、インカムアプローチ(収益価値を基に)やコストアプローチ(コストを基に)など、複数の方法があります。適正な企業価値を算出するためには、無形資産の価値も考慮する必要があります。
これらのポイントを考慮すると、和装製品製造業の事業が高値で売却できる可能性は限られていると言えます。特に、コスト上昇や生産能力低下、人手不足などの課題が存在し、財政状況も厳しい状況が続いているためです。
和装製品製造業(足袋を含む)の企業が会社を譲渡するメリット
呉服・服地小売業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです:
1. 経営者の負担軽減:会社を譲渡することで、経営者は経営からの負担を軽減することができます。特に、事業承継に関する問題を抱える場合は、後継者を見つけることが難しいため、会社を譲渡することで経営者自身の負担を軽減することができます。
2. 資金調達の効率化:会社を譲渡することで、企業が必要とする資金を調達することができます。特に、譲渡先が大手企業や投資ファンドなどの場合、資金調達の効率が高まることがあります。また、資金調達により、企業の成長戦略を実行することが可能になる場合があります。
3. 事業の再生・拡大の可能性:会社を譲渡することにより、譲渡先が事業の再生・拡大に取り組むことができます。特に、譲渡先が経営に熟練した人材を有している場合、事業の再生・拡大に向けた戦略を迅速に実行することができます。また、譲渡先が新たな市場や顧客層にアプローチすることで、事業の拡大が期待できる場合もあります。
4. 従業員の雇用維持:株式譲渡/会社譲渡では、従業員の雇用も、そのまま引き継ぐことができます。買い手側は、賃金などの雇用条件を上げることで従業員が辞めないよう努めます。
5. 手続きの簡素化:株式譲渡/会社譲渡は手続きが簡単でスムーズに引き継ぐことができます。特に、他のM&A手法と比べると手続きが簡単に進められるメリットがあります。
これらのメリットにより、和装製品製造業の企業が会社を譲渡することで、経営者の負担を軽減し、資金調達を効率化し、事業の再生や拡大を図ることができます。
和装製品製造業(足袋を含む)の事業と相性がよい事業
和装製品製造業(足袋を含む)の事業と相性がよい事業は以下の通りです。
– 紡績業:繊維製品の製造が中心であり、和装製品の素材として使用される綿、絹、毛などの糸を提供することができます。具体的には、綿紡績業、毛紡績業、化学繊維紡績業が適しています。
– 染色整理業:和装製品の色や質感を調整するために必要な染色や整理処理を行うことができます。具体的には、綿・スフ・麻織物機械染色業や絹・人絹織物機械染色業が適しています。
– 織物業:和装製品の素材として使用される綿、絹、麻などの織物を提供することができます。具体的には、綿・スフ織物業や絹・人絹織物業が適しています。
– ニット生地製造業:ニット生地を使用した和装製品を作るために必要な生地を提供することができます。具体的には、丸編ニット生地製造業が適しています。
これらの事業と和装製品製造業を組み合わせることで、より高度な製品を提供し、競争力を高めることができます。
和装製品製造業(足袋を含む)の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、和装製品製造業(足袋を含む)の企業がM&Aを依頼する際におすすめの理由がいくつかあります。まず、譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点が大きな魅力です。これにより、企業様はコストを気にせずにM&Aのプロセスを進めることができます。さらに、豊富な成約実績を持っており、これまで多くの企業様のM&Aを成功に導いてきた実績があります。特に、和装製品製造業(足袋を含む)の業界にも深い知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確なアドバイスとサポートを提供することが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。