目次
卸売業の市場環境
卸売業の市場環境は、以下の要素で特徴づけられます。
– 市場規模の予測:
– 卸売市場規模は今後数年間で大幅な成長が見込まれています。2028年には6.5%の年間複合成長率(CAGR)で68兆926億5,000万米ドルに成長すると予想されます。
– 成長要因:
– 持続可能性への注目の高まり、健康とウェルネス製品の需要の高まり、製品提供の拡大、規制の変更、物流の革新、そして蔓延する世界経済の不確実性が成長要因となります。
– 主要動向:
– 卸売分野内のデジタル変革、データ分析とビジネスインテリジェンスの利用、人工知能(AI)の統合、国境を越えた卸売貿易の促進、供給のためのブロックチェーンの実装が含まれます。
– 経済環境:
– 卸売業は、先進国と新興諸国の両方で予想される安定した経済成長の恩恵を受けます。国際通貨基金(IMF)の報告によると、世界のGDP成長率は2020年に3.3%で、2021年には3.4%に増加しました。
– eコマースの影響:
– eコマースの上昇軌道は、将来の卸売市場の成長を促進します。eコマースは、企業と顧客の間で商品、サービス、または情報を電子的に交換することで、効率の向上、広い市場範囲、コスト削減、顧客エクスペリエンスの向上を実現します。
– 課題と生き残り戦略:
– 卸売業はインターネットの普及とともに停滞しつつあり、早急なアップデートが必要です。IT化は、受発注業務のIT化やBtoB ECの導入が効果的です。IT化により、業務効率化が期待され、デジタル商取引が可能になります。
– 食品卸の市場環境:
– 食品卸の市場規模は2023年度に105兆4480億円に達し、8.0%増加しました。市場規模は3年連続で拡大し、100兆円を突破しました。
これらの要素が、卸売業の市場環境を形成しています。
卸売業のM&Aの背景と動向
卸売業のM&Aの背景と動向を以下にまとめます。
### 卸売業界のM&Aの背景
– 流通の中抜き現象:ECサイトや大型ショッピングセンターの増加により、メーカーと小売業が直接取引する流れが進み、卸売業の存在価値が問われます。
– 後継者問題:代表者の高齢化や後継者不在が多く、M&Aが検討される企業が増えています。
– シナジー効果:大量の商品を仕入れてコストを削減し、買い手と売り手の顧客に商品を販売することで売上高を増加させることができます。
### 卸売業界におけるM&Aの動向
– M&Aの活発化:卸売業界ではM&Aが非常に活発に行われています。特に中間業者を省き、生産者と直接取引する「中抜き」が進む傾向があります。
– 地域シェア獲得:地域でのシェア獲得を目的としたM&Aが増えており、特に都市部を中心として市場占有率を獲得することが課題になっています。
– 海外進出:国内企業が海外企業を買収する動きも広がっており、日本のブランドが力を持っているアジア諸国がターゲットとなっています。
### 卸売業界でのM&Aのメリットとデメリット
– 売り手企業のメリット:
– 連帯保証の解除:銀行借入金の保証から外れることができる。
– 仕入単価の減少:大量の商品を仕入れることで仕入コストを削減できる。
– 販路の拡大:買い手のECサイトに載せることで全国の一般消費者に販売できるようになる。
– 買い手企業のメリット:
– 周辺領域進出:同業種の企業を買収することで、市場シェアを高め、競争優位性を強化できる。
– 新規エリア・商品への進出:首都圏と関西など異なる地域での事業拡大が可能。
– 優良な取引先や人材の獲得:大手企業などを取引先に持つ相手を買収できれば、収益増加や業績の安定化が期待できる。
### 卸売業界でのM&Aの特徴
– 同業種同士のM&A:市場シェアの拡大や新しい地域への進出を図るケースが最たる例です。
– 隣接業界とのM&A:飲食店やスーパーマーケットなどの運営企業とのM&Aが活発です。シナジー効果創出や業務の効率化を狙っています。
これらの点が、卸売業界におけるM&Aの背景と動向を理解するための重要な要素です。
卸売業のM&A事例
### 卸売業のM&A事例
大手企業による積極的なM&A
– 大手企業はより多くの食品を取り扱うため、M&Aによる買収を積極的に活用しています。例えば、旭食品株式会社は2015年と2017年に酒卸売会社を買収しました。
– ヤマエ久野株式会社は、2017年に酒類の卸売会社、2016年に菓子の卸売会社へのM&Aを行っています。
他企業とのM&A・業務提携
– 食品卸売業界では、市場環境の変化に対応するために他企業とのM&A・業務提携を行うケースも増えています。例えば、三菱食品株式会社は2011年に明治屋商事株式会社・株式会社サンエス・株式会社フードサービスネットワークと株式交換を行い、各社との統合を済ませていました。
– 国分グループと丸紅は2015年に互いのグループ企業(食品卸売業者)への出資に合わせた提携を行い、流通事業の変化に対応しています。
具体的なM&A事例
– 加藤産業は2021年4月、Song Ma Retail Joint Stock Companyの株式を取得し、子会社化しました。加藤産業は、加工食品・菓子類・低温食品・酒類などの卸売を行っています。
– トーカンは2021年4月、三給の全ての株式を取得し子会社化しました。トーカンは、中部エリア一の卸グループを目指しており、三給は給食市場向けの食品卸売事業を行っています。
– 伊藤忠食品は2019年7月、エブリーと第三者割当増資、および業務提携契約を結びました。伊藤忠食品は、酒類・食品の卸売を主要事業としており、エブリーはデジタル領域の知見を提供しています。
その他の事例
– 神明HDはSBIの事業承継ファンドを通じて、同業の「浜松米穀」を買収しました。神明HDは、米卸業者で全国で200社超ありますが、上位10社を合計してもシェアは40%に満たないため、M&Aを活用して規模拡大を目指しています。
– 静岡県の健康食品卸売会社は、群馬県の輸入雑貨卸売会社を買収しました。両社の資本力が強固になったことで仕入力や商品開発力が向上し、クロスセルにも成功しています。
卸売業の事業が高値で売却できる可能性
卸売業の事業が高値で売却できる可能性について
卸売業の事業が高値で売却される可能性は、以下の要因によって大きく影響を受けます。
– 独自性のある製品やブランド: 小規模事業者であっても、独自性のある製品やブランドを確立できていれば、より高値で取引される可能性が高くなります。
– 優れた技術やノウハウ: 卸売業において優れた技術やノウハウを持ち、事業に必要な設備を獲得できることが買収側にとって大きなメリットとなり、高値での取引が期待されます。
– 取引先の状況: 安定的な収益が見込める取引先を持つことで、事業の価値が高く評価される可能性があります。
– 物流・設備の状況: 良好な物流システムや設備を持つことで、効率的な運営が可能となり、事業価値が高く評価される可能性があります。
– 人材の質: 高い人材の質を持つことで、事業の継続可能性が高く評価される可能性があります。
– 将来得られるシナジー効果: 取引先や商品の内容によって得られるシナジー効果が高い場合、事業価値が高く評価される可能性があります。
これらの要因を考慮することで、卸売業の事業が高値で売却される可能性が高くなることが期待できます。
卸売業の企業が会社を譲渡するメリット
卸売業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです:
– 後継者問題の解決ができる:経営者の高齢化や後継者不足が深刻化しており、M&Aで事業を譲渡することで後継者を探さなくても事業承継が可能です。
– 従業員の雇用が継続される点:M&Aにより従業員の雇用が継続され、売却先の事業規模が大きいため従業員の待遇がよくなる可能性が高くなります。
– 事業基盤を安定させられる点:食品卸売業界の利益率が悪化しているため、事業基盤を安定化させるためにM&Aを行うことが有効です。
– 倒産・廃業を回避できる点:M&Aにより倒産や廃業のリスクを回避し、従業員や取引先への影響を最小限にできます。
– 仕入コストを削減できる可能性:M&Aにより大量仕入が可能となり、仕入費用の削減が見込まれます。
– 売却益を獲得できる点:M&Aにより売却益を獲得し、リタイア後の生活資金や新しい事業の資金として活用できます。
– 優良な取引先や人材が得られる点:大手企業を取引先に持つ相手を買収できれば、収益増加や業績の安定化が期待でき、優秀な人材も獲得できます。
– 業界内での優位性を強固にできる点:同業種の企業を買収できれば、市場シェアを伸ばし、業界内での地位が向上します。
卸売業の事業と相性がよい事業
卸売業の事業と相性がよい事業は以下の通りです。
– 飲食店や料理教室、家庭用品店などの小売業: これらの業種は、卸売業が扱う生鮮食品や日用品に直接関連しており、相性がよいです。具体的には、飲食店向けに食材や調味料、器具を提供することが挙げられます。
– 食品卸売業: 食品卸売業は、飲食店に必要な食材や調味料、器具を扱うため、相性がよいです。
– イベント業やカフェ、レストランなどの開業支援サービスを提供する企業: これらの企業は、じゅう器の販売と組み合わせて事業を展開することができます。
– 梱包資材を提供する企業: 工場向けに梱包材やビニールシート、テープなどの梱包資材を提供する企業も相性がよいです。
– コンサルティングサービスを提供する企業: 荒物卸売業が扱う商品に関連する情報や技術を提供する専門的なコンサルティングサービスも相性がよいです。
– レンタルサービスや修理・メンテナンスを行う企業: 建材や機械部品などの商品を扱っている場合は、取り扱う商品に合わせてレンタルサービスや修理・メンテナンスを行う企業も相性がよいです。
卸売業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
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株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。