目次
出版業(娯楽関連)の市場環境
レジャー市場の動向
– 余暇関連市場規模の増加:2023年は71兆2,140億円に達し、前年比13.4%増加。コロナ禍前の2019年比では98.5%の水準まで回復した。
– 国内旅行の増加:国内観光旅行が2年連続で首位。参加人口が増加し、観光・行楽部門は32.1%増加。
– スポーツ部門の伸び:各スポーツ用品、スポーツ観戦が伸び、フィットネスクラブやゴルフ場、スキー場(索道収入)、ボウリング場も堅調。ただし、ゴルフ練習場やキャンプ用品、釣具、スポーツ自転車は反動減。
– 趣味・創作部門の回復:動画配信、音楽配信、電子出版などのコンテンツ配信が堅調。映画、音楽会、演劇などの鑑賞レジャーも回復基調が継続。
– 娯楽部門の増加:テレビゲーム・ゲームソフト、ゲームセンター・ゲームコーナーがプラスとなるも、オンライン・ソーシャルゲームはマイナス。パチンコ・パチスロは長期低迷から脱却、公営競技はプラス成長を維持。外食やカラオケも順調に回復。
雑誌出版市場の動向
– 市場規模の増加:2023年は1,018億米ドルに達し、2024年から2032年にかけての成長率(CAGR)は1.8%を示し、2032年には1,201億米ドルに達すると予測。
– デジタル雑誌の需要の増加:デジタル雑誌の人気が急上昇し、費用対効果、持続可能性、容易なアクセス、幅広いリーチと配信が市場成長を促進。
書籍出版市場の動向
– 市場規模の増加:2023年は834億1,000万米ドルで、2024年には871億8,000万米ドルに達し、2030年には1,136億9,000万米ドルに達すると予測。CAGRは4.52%。
– デジタル書籍出版の拡大:デジタル書籍出版ソリューションの利用可能性と書籍出版活動を奨励する政府の取り組みが市場の成長に寄与。
これらの動向から、出版業界はデジタル化と新しい技術の進歩に大きく影響を受けていることがわかります。特に、デジタル雑誌や書籍の需要の増加と、娯楽関連市場の回復が注目されています。
出版業(娯楽関連)のM&Aの背景と動向
出版業界におけるM&A(企業買収)の背景と動向は、市場の変化と企業の戦略的な対応に根ざしています。以下に主要な点をまとめます。
### 背景
1. 市場の変化:
– 出版業界の縮小とデジタル化:長年にわたる市場の縮小とデジタル化の影響を受け、出版社は生き残りや事業拡大を目指しています。
2. 経営環境の厳しさ:
– 不採算事業の切り離しや倒産企業の事業再生:経営環境の厳しさを反映して、不採算事業の切り離しや倒産企業の事業再生を目的としたM&Aも見られます。
3. コンテンツの価値:
– 独自のジャンルでの強み:中小の出版社は独自のジャンルで強みを持っており、そのコンテンツやノウハウは買い手にとって非常に魅力的なものです。
### 動向
1. 大手出版社のM&A:
– ペンギンとランダムハウスの合併:海外では大手出版社同士のM&Aが行われており、日本でも今後大型業界再編の動きが起こる可能性があります。
2. 出版業界のM&A事例:
– メディアドゥによるエブリスタの子会社化:電子書籍取次業者メディアドゥがエブリスタの株式を取得し、投稿サイトのサービス強化やメディアミックスの推進を目指しています。
– インプレスホールディングスによるイカロス出版の完全子会社化:ITや山岳専門書籍を出版するインプレスホールディングスがイカロス出版の全株式を取得し、コンテンツやノウハウを生かした事業拡大を目指しています。
– フォーサイドによる角川春樹事務所「Popteen」事業の取得:フォーサイドが角川春樹事務所が手がける女子中高生向けファッション誌「Popteen」事業を譲受し、シナジー効果の獲得を目指しています。
3. 出版業界のM&Aのメリット:
– 売り手の優良なコンテンツの獲得:M&Aにより短期間で優良なコンテンツを獲得でき、デジタル化を手早く推進することができます。
– 一貫した販売体制の構築:書店や取次業者を買収して一貫した販売体制を構築することで、販売体制の強化を目指すことができます。
4. 出版業界のM&Aの課題:
– 編集者不足:出版事業の成長を目指す中で、編集力のある企業と連携することが重要であり、編集者不足が課題となっています。
### 将来の動向
1. M&Aによる事業拡大:
– 既存事業の強化:既存事業の強化を目指し、信頼できる編集者の方と連携することで、会社の伸びを図ります。
2. 各種事業の連携:
– アート事業や国際的な文化に精通している企業との連携:各種事業や取り組みと連携できる会社を買収検討し、M&Aに取り組んでいきたいと考えています。
これらの動向から、出版業界におけるM&Aは市場の変化に対応し、コンテンツやノウハウを活かした事業拡大を目指す戦略的な手段として重要な役割を果たしています。
出版業(娯楽関連)のM&A事例
出版業界のM&A事例を以下にまとめます。
### 1. メディアドゥによるエブリスタの子会社化
メディアドゥがエブリスタの株式の70%を取得し、子会社化しました。目標はエブリスタの投稿サイトのサービス強化とメディアドゥの経営資源を生かしたメディアミックスの推進です。
### 2. インプレスホールディングスによるイカロス出版の完全子会社化
インプレスホールディングスがイカロス出版の全株式を取得し、完全子会社化しました。目標はイカロス出版のコンテンツやノウハウを生かした事業拡大です。
### 3. フォーサイドによる角川春樹事務所「Popteen」事業の取得
フォーサイドが角川春樹事務所が手がける女子中高生向けファッション誌「Popteen」事業を譲受しました。目標は「Popteen」事業とのシナジー効果の獲得です。
### 4. メディアドゥによる日本文芸社の完全子会社化
メディアドゥが日本文芸社の全株式を取得し、完全子会社化しました。目標はRIZAPグループの事業の選択と集中、メディアドゥとの協働によるシナジー効果の創出です。
### 5. スピーディーによる高陵社書店の完全子会社化
スピーディーとコミディアが高陵社書店の全株式を取得し、完全子会社化しました。目標は高陵社書店の紙媒体のノウハウを活用し、スピーディが保有するデジタルコンテンツを紙媒体で出版していくことです。
### 6. Donutsによる主婦の友社「Ray」事業の取得
Donutsが主婦の友社が手がける雑誌「Ray」の事業を譲受しました。目標はDonutsが持つデジタルコンテンツのノウハウを生かして、Rayの事業を発展させることです。
### 7. ドリームインキュベータによる枻出版社の一部事業と子会社ピークスの譲受
ドリームインキュベータが枻出版社の出版事業などを譲受しました。目標は枻出版社のコンテンツを活かし、新しいライフスタイルや地域創生につながるデジタルコンテンツを提供することです。
### 8. SDアートによるアルク出版企画の譲受
SDアートがアルク出版企画を譲受しました。M&A後の経営戦略や業務改善により、売上が約7倍に増加しました。目標は既存事業の強化と、出版業においては企画力と営業力を補強できるような信頼できる編集者の方と連携することです。
出版業(娯楽関連)の事業が高値で売却できる可能性
出版業界の娯楽関連事業が高値で売却される可能性について、以下のポイントをまとめます。
1. 知名度の高い雑誌や書籍シリーズは高く評価されます。特に人気雑誌や書籍シリーズを持つ売り手は、M&Aで獲得できるのは非常にメリットが大きいためです。知名度が高く安定した売上が見込める雑誌や書籍シリーズは買い手に高く評価されます。
2. 中小規模の出版社による売却が盛んなため、特定のジャンルに特化した書籍を持つ中小の出版社は大手から魅力的なコンテンツやノウハウを持っていることが多く、M&Aで買収されることが多いです。中小の出版社には特定のジャンルに特化した書籍を持つことが多い。
3. 不採算事業の切り離しや事業再生目的のM&Aも多いため、採算がとりづらいジャンルの書籍を専門とする出版社は経営が苦しいことが多く、M&Aによる事業再生で生き残りを図るケースが見られます。不採算事業の切り離しや事業再生目的のM&Aが多い。
4. 事業譲渡の選択肢も有力です。特定の人気雑誌や書籍シリーズを持つ売り手は、株式譲渡で会社を売却する以外にも、事業譲渡でその雑誌や書籍の事業だけを売却するという選択肢があります。事業譲渡は会社が買い手の傘下に入らず独立性を保てるのが特徴で、売却益は会社の利益となり他事業の資金にできます。
5. 具体的な事例として、メディアドゥがエブリスタの株式の70%を株式譲渡で取得し、子会社化する事例があります。株式譲渡で子会社化する事例も見られます。
出版業(娯楽関連)の企業が会社を譲渡するメリット
出版業界の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです。
### 事業承継問題の解決
エンタメ会社が後継者問題で廃業することになってしまえば、その会社が持っていたコンテンツやノウハウも失われてしまう可能性が高いでしょう。M&Aは、他社に事業承継させることで、後継者問題を解決する方法としても注目されています。後継者問題の解決により、社内に適切な後継者がいなくても、その会社を存続させることが可能になるのです。
### 売却益の獲得
エンタメ会社をM&Aで売却すれば、経営者は売却益を獲得することができます。M&Aでの株式譲渡であれば、会社の引き換えに株主(経営者)の手元には売却金が入ります。売却益の獲得により、経営者は自由に使っていいお金を手に入れることができます。また、引退後の生活費として利用することもできます。
### 廃業や事業撤退にかかる費用の削減
M&Aで会社を売却することなく、後継者不足や事業の悪化を理由に廃業や事業撤退することになった場合には、撤退するためのコストが必要になる場合があります。廃業コストの削減により、従業員の退職金や設備、施設の撤去費用が必要な場合もあるでしょうが、M&Aで会社を売却できれば、従業員も設備、施設も買収側に全て引き継いでもらうことが可能です。
### 経営基盤の獲得
売り手がM&Aを行うメリットとしては、経営基盤の獲得や、後継者問題の解決などがあります。特に中小の出版社は、特定のジャンルに特化した書籍を出版しているところが多く、大手からみて非常に魅力的なコンテンツやノウハウを持っていることが少なくありません。
### 新しい経営戦略の展開
M&Aでエンタメ会社を売却することで、新しい経営戦略の展開が可能になります。例えば、デジタル化を押し進めるために電子書籍に強い大手出版社の傘下に入ったり、自社が持つ優良なコンテンツを買い手企業の経営資源と融合して、メディアミックス展開などの新しい経営戦略をとることができます。
出版業(娯楽関連)の事業と相性がよい事業
出版業界(娯楽関連)の事業と相性がよい事業を以下にまとめます。
### 娯楽関連の出版業界
出版
– 書籍: 文芸、ビジネス・生活実用書、ノンフィクション、ライトノベル、コミック、電子書籍など幅広いジャンルの書籍を取り扱います。
– 雑誌: 漫画誌、ファッション誌、ジャーナリズム誌、芸能誌など多様なジャンルの雑誌を発行します。
### 相性がよい事業
映像
– 実写映画: 映画制作会社が、出版された小説や漫画を原作として映画化することがあります。
– アニメ: アニメ制作会社が、出版された漫画やライトノベルを原作としてアニメ化することがあります。
ゲーム
– ゲームソフト: ゲーム制作会社が、出版された小説や漫画を原作としてゲーム化することがあります。
– eスポーツ: ゲームの電子書籍やコミックを通じて、eスポーツのコミュニティを育てることができます。
Webサービス
– 電子書籍プラットフォーム: 電子書籍を提供するプラットフォームが、出版された書籍をデジタル化し、読者に提供します。
– コミックプラットフォーム: コミックを提供するプラットフォームが、出版されたコミックをデジタル化し、読者に提供します。
### その他の事業
イベント事業
– 読書イベント: 書店や出版社が、読書イベントを開催し、読者を集めます。
– コミックイベント: コミック店や出版社が、コミックイベントを開催し、コミックファンを集めます。
キャラクターグッズの企画・販売
– キャラクターグッズ: 漫画やアニメのキャラクターを使用したグッズを企画・販売します。
これらの事業は、出版業界の娯楽関連事業と相性がよいものです。
出版業(娯楽関連)の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、出版業(娯楽関連)の企業がM&Aを依頼する際におすすめの理由として、まず譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点が挙げられます。これにより、コストを気にせずに安心してご相談いただけます。また、豊富な成約実績を持っており、これまで多くの企業様のM&Aを成功に導いてきた実績があります。さらに、出版業(娯楽関連)の業界にも深い知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確なアドバイスを提供することが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。