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公共施設建設業の市場環境
2024年度の公共施設建設業の市場環境は、以下の要素が特に注目されています。
– 大規模投資計画: 新型コロナウイルスの影響による景気後退からの復興に向けた大規模投資が計画されており、公共工事が経済活性化の中心となります。国土交通省は高速道路や鉄道の整備、空港の拡張、港湾施設の整備など、大規模なインフラ整備を計画しています。
– 地方自治体の取り組み: 地方自治体では、道路・橋梁・堤防・水道・下水道・公園・病院などの建設や改修が行われ、安全なまちづくりを進めることを目的としています。
– 価格競争の激化: 公共工事の入札では、業者間の価格競争が激化しています。予算削減の圧力が強まる中、工事費用を抑えたい発注者が増えています。
– 技術革新とデジタル技術の活用: 建設現場では、デジタル技術の活用が進んでいます。リアルタイムでの工程管理や現場の安全管理、3Dプリンターを使った設計や建材の製造などが挙げられます。特に、ドローン技術の活用が注目されています。
– 環境対策とエネルギー効率の高い建材: 2030年には、日本では建築物のエネルギー消費量を50%削減する目標が掲げられています。エネルギー効率の高い建材の導入が求められ、グリーンビルド認証基準に準拠した建築材料や断熱性に優れた窓やドア、太陽光発電に適した建材などが開発されています。
– 建設業のDX化: 建設業のDX化は、業務の効率化とデータの精度向上が図られています。主な導入技術にはBIM、ドローンとAI搭載測量機器、IoTセンサーを活用した遠隔監視システム、VR技術を用いた施工シミュレーションなどが挙げられます。
公共施設建設業のM&Aの背景と動向
建設業界における公共施設建設業のM&Aは、人材確保や事業の多角化、受注の安定化を目的として活発に行われています。以下に主要な背景と動向をまとめます。
### 背景
1. 人材確保: 建設業界は高齢化が進んでおり、後継者不足が深刻です。M&Aを通じて経験豊富な現場監督や職人の獲得が目指されています。
2. 事業の多角化: 不動産会社や近接異業種の企業がM&Aを通じて建設業を傘下に収めることで、工事の内製化やコスト削減を図ることが期待されています。
3. 受注の安定化: 地域での経営基盤を強固にすることで、受注の安定化を図ることができます。地元の競合企業を買収または傘下に置くことで、地域での受注を安定させることが期待されます。
### 動向
1. 大手企業によるM&A: 近年は大手企業によるM&Aが増加しており、商圏の拡大や人材の確保を目的として行われています。
2. 不動産会社によるM&A: 不動産会社がM&Aによって建設業を傘下に収めることで、外注していた工事を内製化し、時間とコストの削減を図ることができます。
3. 地域社会への貢献: M&Aを通じて、地域社会への貢献を図る企業もあります。例えば、メイホーHDは互いのノウハウ・強みを合わせることで、地域社会へのさらなる貢献を目指しています。
### 事例
1. 前田建設工業による前田道路のM&A: 前田建設工業は前田道路を買収し、インフラ運営事業の拡大により安定した高収益基盤を確立しました。
2. 大林組による大林道路のM&A: 大林組は大林道路を買収し、グループ全体での収益性を高める目的でM&Aを実施しました。
3. 清水建設による日本道路のM&A: 清水建設は日本道路を買収し、競争力の強化と工事受注件数の拡大を目指しました。
これらの事例や動向から、建設業における公共施設建設業のM&Aは、企業間のシナジー効果を生み出し、受注の安定化や地域社会への貢献を図るための重要な手段となっています。
公共施設建設業のM&A事例
公共施設建設業のM&A事例を以下にまとめます。
### 日本エコシステムと葵電気工業のM&A
2023年1月、公共サービスや交通インフラに関する事業を行っている日本エコシステムは、商業施設等の空調・給排水設備工事を行っている葵電気工業の全株式を取得し子会社化しました。
### 日鉄パイプライン&エンジニアリングとキャプティのM&A
2022年10月、パイプライン及び関連設備のエンジニアリング事業を行っている日鉄パイプライン&エンジニアリングは、設備工事や導管工事を行っているキャプティの導管工事事業を吸収分割しました。
### 邦徳建設とサニーダのM&A
2022年5月、総合建設業を行っている邦徳建設は給排水管の設備・更生工事を行うサニーダの全株式を譲受し、子会社化しました。
### ウェーブロックホールディングスとエイゼンコーポレーションのM&A
2022年4月、ウェーブロックホールディングスはプラスチックシート・フィルム、その他加工製品等の販売を行う子会社のイノベックス通じて水道施設工事・土木工事・管工事等を行うエイゼンコーポレーションの全株式を取得し、孫会社化しました。
### エクシオグループと光陽エンジニアリングのM&A
2022年1月、エンジニアリングソリューション(通信キャリア・都市インフラ)、システムソリューションを手がけるエクシオグループは空調・給排水衛生・防災設備などの設計施工および保守管理を行う光陽エンジニアリングと株式交換を行い、同社を子会社化しました。
### 協和日成とガイアテックのM&A
2021年4月、ガス工事、建築・設備工事を行う協和日成は、ガス工事や冷暖房・給排水衛生設備工事を行うガイアテックの全株式を取得し子会社化しました。
### 四電工と菱栄設備工業のM&A
2018年12月、建築設備工事、電力供給設備工事を行っている四電工は、給排水・衛生設備工事、空調設備工事を行う菱栄設備工業の全株式を取得し子会社化しました。
### アサノ大成基礎エンジニアリングと三協建設のM&A
2018年9月、建設関連の総合エンジニアリング企業であるアサノ大成基礎エンジニアリングは、土木、建設、管工事、宅地建物取引業を行う三協建設の株式を取得し、子会社化しました。
公共施設建設業の事業が高値で売却できる可能性
公共施設建設業の事業が高値で売却できる可能性について、以下のポイントをまとめます。
– 独自の技術や特許を持つ企業: 特殊な技術を要する仕事をこなせる企業は、他社が追随できない独占的な仕事を継続できる可能性があり、買手には大きな魅力があります。例えば、水中土木やトンネルに特化した防水工事を行える企業は、高値で売却の可能性が高いです。
– 安定した受注が見込める企業: 売上に対する利益率が高い上に、安定した受注が見込める取引先を持つ企業は、買手にとって大きな魅力があります。特に公共工事を受注している企業は、国や自治体からの安定した受注が期待できるため、高値で売却する可能性が高くなります。
– 労働集約型企業の資産価値: 労働集約型企業である建設業は、労働力が最大の財産です。形ある資産といえば建機や資材くらいで、いずれも償却期限が早いものが大半です。M&Aを想定するのなら、今のうちに自社の資産をきちんと見極めておくことが大切です。
– 経営状況分析: 公共工事を受注したい建設業者が工事の入札に参加するための経営事項審査において、経営状況分析を行うことが必要です。この分析により、経営状況分析結果報告書が取得でき、公共工事の入札に参加するための資格を得ることができます。
– 魅力ある会社作り: 有資格者を増やしておく、「他社との差別化を図る」など、魅力ある会社作りを行うための事業改革を挙行することが重要です。これにより、買手が会社の価値を高く評価することができます。
これらのポイントを考慮することで、公共施設建設業の事業が高値で売却できる可能性を高めることができます。
公共施設建設業の企業が会社を譲渡するメリット
建設業の企業が会社を譲渡する際のメリットを以下にまとめます。
### スピーディーな進め方
スピーディーに進められる:株式譲渡は株式の売買でM&Aが完了できるため、交渉が順調に進めば1ヶ月程度で終わることがあります。
### 経営統合の柔軟性
買い手と売り手の合意次第で株式比率を自由に調整できる:株式譲渡は買い手と売り手の合意次第で株式比率を自由に調整できるため、買い手と売り手の関係を両者のニーズに合わせて設定できます。
### 設備や従業員のまとまった引き継ぎ
包括的承継で事業や設備、従業員などをまとめて引き継げる:株式譲渡では包括的承継によって事業や設備、従業員などを買い手がまとめて引き継ぐことができます。
### 経営権の残留
経営権が譲渡企業に残る:事業譲渡では、経営権が譲渡企業に残るため、他事業を継続したり、貸借対照表に計上されていない簿外債務がある場合にもM&Aを比較的容易に行うことができます。
### 不採算部門の分離
不採算部門を分離して収益性の高い事業に資本を集中させる:事業譲渡では、不採算部門を分離することで、より収益性の高い事業に資本を集中させることができます。
### 後継者問題の解決
後継者問題を解決し、企業のブランドやノウハウを継承する:M&Aにより、その買い手が後継者となる事業承継方法が注目され、国や自治体もこれを推奨しています。
公共施設建設業の事業と相性がよい事業
公共施設建設業の事業と相性がよい事業は以下の通りです。
### 公共施設建設業と相性がよい事業
1. 建築工事
– 公共施設の建設や維持管理を行う工事です。役所、学校、図書館などの建設や改修が含まれます。
2. 土木工事
– 道路、橋、ダム、トンネル、上下水道などの建設や改修が含まれます。これらの工事は社会インフラの整備や維持管理を目的として行われます。
3. 給排水設備工事
– 給排水設備の新設や更新が含まれます。これは公共施設の安全と衛生を確保するために重要です。
4. 電気・機械工事
– 電気・機械設備の新設や更新が含まれます。これは公共施設の機能を維持するために必要です。
5. 上下水道工事
– 上下水道の整備が含まれます。これは安全な飲料水の供給や衛生的な生活環境の確保を目的として行われます。
6. 公園・緑地の整備
– 公園や緑地の整備が含まれます。これは都市部における緑地の確保や住民の憩いの場の提供を目的として行われます。
7. 災害復旧工事
– 地震や台風、豪雨などの自然災害による復旧工事が含まれます。これは公共施設の安全を確保するために重要です。
公共施設建設業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、公共施設建設業の企業様がM&Aを依頼する際におすすめの選択肢です。その理由は、まず譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点です。これにより、企業様はコストを気にせずにM&Aのプロセスを進めることができます。さらに、豊富な成約実績を持っており、多くの企業様にご満足いただいております。公共施設建設業の業界にも深い知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確なアドバイスを提供することが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。