目次
企業研修業の市場環境
企業研修サービス市場環境の概要
2023年度の企業向け研修サービス市場規模は、事業者売上高ベースで前年度比3.1%増の5,370億円と推計され、2023年度は同2.4%増の5,500億円に拡大する予測となっています。
市場の動向
1. オンライン研修の拡大
– オンライン研修はコロナ禍で急速に普及し、対面型の集合研修の代替策として機能しました。現在もオンライン研修は主流であり、ハイブリッド形式(オンライン・対面の両方)が広く採用されています。
2. 対面型研修の回復
– 対面型研修は、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが緩和されたことで需要が回復しています。特に新入社員研修のタイミングで需要が高まり、市場拡大を促進しています。
3. 人的資本経営の影響
– 人的資本経営の開始により、企業の教育投資意欲が高まり、研修サービスの需要が増加しています。特に、採用や定着支援の観点からも研修サービスの需要が高まっています。
4. 市場の成長要因
– 継続的な学習の需要が高まり、多くのトレーニングと学習の方法論とソリューションが広く使用されるようになっています。ヨーロッパのトレーニング市場も大幅に成長すると予想されています。
5. 主要な成長企業
– 主要な企業には、Caterpillar Inc.、Cummins Inc.、Volvo Group、Kohler Co.、Phinia Inc.などが含まれます。日本市場のトップ5プレイヤーには、Mitsubishi Heavy Industries, Ltd.、AGCO Corporation、Bosch AG、Continental AG、Ford Motor Companyなどが含まれます。
6. 市場の課題
– eラーニングプログラムの有効性評価のための尺度が欠如していることが、企業研修サービス市場の成長に対する主な障害の1つです。
7. 市場の予測
– 市場規模は予測期間中に約7%のCAGRで成長し、2036年までに約6696億米ドルの価値に達すると予想されています。
企業研修業のM&Aの背景と動向
企業研修業のM&Aの背景と動向を以下にまとめます。
### 背景
1. 教育産業の変化:
– 少子化、学習指導要領の改定、IT・グローバル化などの変化により、教育産業は日々変化しています。
2. オンライン研修のニーズ:
– 新型コロナウイルスの影響によりオンライン研修のニーズが高まり、オンラインに対応できていない企業に対して顧客やノウハウ獲得を目的としたM&Aのニーズが高まっています。
3. デジタル教育の普及:
– デジタル教育の普及により、オンライン学習やAIを活用したカスタマイズ学習など、新たなビジネスチャンスが生まれ、M&Aが活発に行われています。
### 動向
1. 企業向け研修サービス業界のM&A:
– 企業向け研修サービス業界では、2021年11月に英語のeラーニングプラットフォーム「ReallyEnglish」と企業向けオンライン研修ソリューションを提供する「Prospera」を運営する株式会社EdulinXが、語学研修を中心に企業・学校法人向けの研修サービスを提供する株式会社アルクエデュケーションの全事業を承継しました。
2. M&Aの成功事例:
– 統合によるサービス拡充:
– 職業訓練機関と就職支援企業の統合により、教育と就職支援の両方を提供する総合的なサービスが提供され、顧客のニーズに応えることができました。
– キャリアカウンセリングの追加:
– キャリアカウンセリング企業を買収することで、自社のサービスにキャリアカウンセリングを追加し、自社のサービスの質を向上させることができました。
– 求人情報サイトと求人広告企業の合併:
– 就職情報サイトと求人広告企業が合併し、求職者にとってより使いやすいサービスを提供し、求人情報の充実化を図りました。
3. M&Aの成功要因:
– PMI(Post-Merger Integration):
– M&A後、マネジメント統合が重要です。PMIを行うことで、両社の業務プロセスを整合させることができ、スムーズな業務運営が可能になります。
– 組織文化の統合:
– 組織文化や価値観を理解し、それらを調和させる努力が不可欠です。異なる教育方針の統合が大きな課題となるため、統合後の文化的摩擦を最小限に抑えることが重要です。
4. M&Aのメリット:
– 事業拡大と市場シェアの増大:
– 組織を拡大し、市場シェアを増やすことで、既存の顧客基盤を拡大し、新しい市場セグメントにアクセスする絶好の機会を企業に提供します。
– 経営リソースの統合による効率化とコスト削減:
– 複数の学習塾が統合することで、教室の運営コストを共有し、効率的な人材管理システムを構築し、コスト削減や生産性向上が図れます。
– 新規事業への進出:
– M&Aによって、新たなビジネスチャンスに参入し、既存の教育サービスとのシナジーを生み出すことが可能です。
企業研修業のM&A事例
企業研修業のM&A事例をまとめます。
### M&A事例
1. ベネッセホールディングスとUdemy, Inc.
– 譲渡側: Udemy, Inc.
– 譲受側: ベネッセホールディングス
– 目的: 新たな領域への展開
– スキーム: 資本提携
– 結果: 日本市場におけるUdemy, Inc.との共同運営の権利がベネッセホールディングスが独占する形となった。
2. 株式会社ナガセと株式会社サマデイ
– 譲渡側: 株式会社サマデイ
– 譲受側: 株式会社ナガセ
– 目的: 総合力・競争力の強化
– スキーム: 新設分割・株式譲渡
– 結果: 株式会社ナガセが株式会社サマデイから得たノウハウを活かして次世代のリーダー育成に力を入れている。
3. エスエイティーティー株式会社と株式会社マナボ
– 譲渡側: 株式会社マナボ
– 譲受側: エスエイティーティー株式会社
– 目的: 新サービスの開発
– スキーム: 株式譲渡
– 結果: エスエイティーティー株式会社がオンライン家庭教師サービスを提供していた株式会社マナボとのM&Aにより、eラーニングシステムとの融合を目指している。
### M&Aの重要性と研修
M&Aの専門家に求められるスキルは高度化・多様化しており、研修が欠かせません。M&Aの基本的な知識だけでなく、多様化するM&Aにも対応できるようにしなければなりません。
### M&A研修の提供企業
– 日本M&Aアドバイザー協会(JMAA)
– M&A実務スキル養成講座を提供し、M&Aアドバイザーの養成や企業内での部門立ち上げ・研修にも最適なカリキュラム。
– 事業承継・M&Aエキスパート協会(JME)
– M&Aエキスパート認定制度を実施し、中小・零細企業における事業承継・M&Aに精通した人材の養成。
– M&Aフォーラム
– M&A実践実務講座やM&Aリーダーシッププログラムを開催し、M&Aの専門家を育成。
企業研修業の事業が高値で売却できる可能性
学習塾業界におけるM&Aの動向と売却金額の相場について、以下のポイントをまとめます。
– M&Aの目的:
– 顧客や講師の確保:学習塾のM&Aでは、優秀な講師の確保や生徒の集客を目的として行われることが多いです。
– 事業の多様化:新たな事業やサービスを導入、開発するためにもM&Aが有効な手段です。
– 売却金額の相場:
– 学習塾の規模と相場:
– 中小の学習塾:数千万円から数億円単位の相場。
– 地域やブランド力:教室の規模や地域、ブランド力によって売却金額が左右されます。
– M&Aのメリット:
– 後継者不在の問題解決:
– 事業承継:中小の学習塾が抱える切実な問題として、後継者不在が挙げられます。M&Aはこの問題を解決する手段の一つです。
– 経営者の利益:
– 創業者利益の獲得:M&Aにより、経営者は創業者利益を得ることができます。
– 事業の存続・成長:
– 市場での生き残り:変化に取り残されず、市場で生き残る手段の一環としてM&Aが有効です。
– リスクの低減:
– 新規参入のリスク低減:
– 既存の学習塾の買収:すでに事業が軌道に乗っている学習塾を買収すれば、一から講師の確保や生徒の集客を行わずに学習塾事業に参入できます。
これらのポイントを考慮すると、企業研修業の事業が高値で売却される可能性は、以下の要素によって左右されます。
– 事業の将来性と無形資産の価値:
– 営業利益の数年分:一般的には営業利益の数年分、事業の将来性や無形資産の価値が評価されればそれ以上の金額で売却できる可能性があります。
これらの要素を考慮することで、企業研修業の事業が高値で売却される可能性を高めることができます。
企業研修業の企業が会社を譲渡するメリット
企業研修業の企業が会社を譲渡するメリットを以下のようにまとめます:
事業譲渡のメリット
1. 事業の継続:
– _売却した事業は譲渡先企業で運営が継続されます_。そのため、事業を引き受けた会社は譲渡された事業の資産、従業員、顧客基盤を引き継いで事業運営ができます。
2. 特定の事業を指定して売却が可能:
– _特定の事業だけを選択して売却できる柔軟性があります_。これにより、経営者は不要な事業部門を切り離し、戦略的に必要な事業に集中することが可能です。
3. 従業員の雇用を維持できる:
– _従業員の雇用契約が買い手に引き継がれます_。これにより、従業員の雇用が確保されます。
4. 後継者問題の解決:
– _他の会社が事業を引き継いでくれるため、自社の関係者などから後継者を探さずに済みます_。買い手となる会社は「自社事業の規模拡大」「新規の参入」などを目的に会社・企業を譲受するため、事業承継による後継者問題の解決が可能です。
5. 譲渡益の獲得:
– _株主は譲渡益を獲得できます_。譲渡益を獲得できれば、引退後の生活費や興味を持った分野で会社を興す際の費用などに充てられるため、経営から手を引きやすいです。
6. 新規事業への進出の促進:
– _M&Aによって当該事業を展開している企業を取得すれば、新規事業への進出にかかる時間を短縮できる_。売り手企業のノウハウ・技術力・シェアも獲得できるので、スムーズな事業化を図れます。
企業研修業の事業と相性がよい事業
企業研修業の事業と相性がよい事業は以下の通りです。
### 1. 人材育成を専門とする老舗企業
トレノケート株式会社は27年以上の歴史を持つ人材育成の専門企業で、社員研修の受講者は年間約5.3万人、取引企業は約1,200社、提供しているコースは1,400以上です。研修メニューは新入社員から経営層までの全階層をカバーし、豊富なトレーニングをラインナップしています。
### 2. 講師派遣型の研修
株式会社インソースは、社員研修や講座、人材に関するコンサルティングなど、ビジネスにおける「人」のサポートを重視した研修の多さが特徴です。同社の研修は、企業に講師を派遣する「講師派遣型」、1名から参加できる「公開講座」、場所を選ばず受講できる「オンライン研修」の3つのタイプがあります。
### 3. 企業内研修プログラム
株式会社グロービスは累計受講者数約112万人、取引累計企業数約5,200社の研修を行ってきた経験を持ちます。同社は企業にマッチした企業内研修プログラムを提案し、教育とビジネスの両方の経験を兼ね備えた知識豊富な講師が研修にあたります。
### 4. eラーニング形式の研修
株式会社日立アカデミーは、デジタル時代に即した人材育成を展開しています。提供コース数は1,300あり、年間1,200件の研修を開催しています。プロフェッショナル講師陣が中心となって運営しているのが特徴です。
### 5. オンライン研修
株式会社リクルートマネジメントソリューションズは、短時間で学べる「3時間研修コース」やオンラインで好きな時間に受講できるサービスを提供しています。管理者サイトがあるため、人事担当者の研修運用の負担も軽減できます。
### 6. 中堅社員のスキルアップ
株式会社PHP研究所は、中堅社員がリーダー予備軍として、主体性を発揮しながら仕事に臨むための考え方を学び、実務能力の強化を図ります。意識改革や仕事力アップなどの公開型の研修セミナーを通じて、信頼感の獲得や仕事の意味の理解を図ります。
### 7. 研修を成功させるポイント
– 研修の目的を明確に:企業の戦略を実現するための手段としての研修を重視する。
– 研修の内容をカスタマイズ:企業のニーズに合わせて、適切な研修プログラムを選択する。
– 研修の効果を測定:論理思考力や経営に関する知識を測定するアセスメント・テストを提供する。
企業研修業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、企業研修業の企業がM&Aを依頼する際におすすめの理由として、まず第一に譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点が挙げられます。これにより、コストを抑えつつスムーズなM&Aを実現することが可能です。また、豊富な成約実績を誇っており、多くの企業様にご満足いただいております。さらに、企業研修業の業界にも深い知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確なサポートを提供いたします。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。