目次
人材紹介業の市場環境
人材紹介業の市場環境は、以下の点で特徴があります。
– 市場規模の増加:2021年度以降、人材紹介業の市場規模は増加傾向にあり、2023年度は前年度比6.3%増の9兆7,156億円に達しました。2024年度はさらに前年度比5.6%増の10兆2,602億円に予測されています。
– 人手不足の影響:人手不足感の強まりにより、人材派遣業市場が堅調に推移しています。特にITエンジニアや介護職などの需要が高い。
– ホワイトカラー職種の人材紹介業:ITエンジニアや即戦力人材への需要の高まりにより、市場が拡大しています。コロナ禍の反動で高まっていた採用需要には一服感が見られたが、市場規模を縮小させるほどの影響はなかった。
– 再就職支援業:新型コロナウイルス禍の終息で社会活動の正常化が進んだほか、人手不足によって大規模な人員削減などの動きが減ったことで、需要の高まりは限定的なものとなっています。
– AI技術の活用:AI技術の発展により、人材紹介業の効率化や精度向上が期待されています。特にChatGPTの活用が提案されています。
– オンライン面談の増加:オンライン面談が増加しており、求職者にとって時間や場所の制約がなくなり、スカウトメールへの返信率が上がっていますが、信頼関係の構築が難しいという声もあります。
これらの点が、2024年の人材紹介業の市場環境を形作ります。
人材紹介業のM&Aの背景と動向
人材紹介業のM&Aの背景と動向は以下の通りです。
### 背景
– 労働市場の変化: 高齢化社会や産業構造の変化により、人材ニーズの多様化が顕著になっています。
– デジタル化の進展: IT人材や特定分野への需要が高まっています。
– ニーズの多様化: 労働市場において価値の高い専門性を有した人材の集客力、紹介力の向上が求められています。
### 動向
– 大手企業による買収: 大手企業が中小規模の人材紹介会社を積極的に買収し、業界再編が進んでいます。
– 専門性の強化: 専門分野に強みを持つ人材紹介会社が重宝され、M&Aが活発に行われています。
– サービスの多様化: M&Aを通じて、ITコンサルティングやキャリア形成支援などの対人支援型サービスの提供が期待されています。
– 地域展開: 地域密着型の人材会社を複数買収し、全国ネットワークの構築が可能となり、大手企業との取引機会が拡大します。
### メリット
– 市場シェアの拡大: M&Aを通じて、市場シェアを迅速に拡大し、競争力が強化されます。
– 人材確保: M&Aにより、まとめて人材を確保し、特定の分野に強みを持つ企業を買収することで、幅広いニーズに対応可能となります。
– 経営資源の活用: 他社の経営資源を活用し、目下の経営課題を解決することができます。
### 課題
– 競業防止義務: M&A後、売却側は競業防止義務が課せられます。
– 統合プロセスの管理: M&A後、統合プロセスの管理や文化的違いの克服が必要です。
### 将来の予測
– M&Aの活性化: M&Aが活性化すれば相手先もみつかりやすくなるため、人材紹介業界でM&Aを検討しているのであれば、よいタイミングだといえるでしょう。
– 技術革新や国際展開: 技術革新や国際展開を視野に入れたM&Aも進んでおり、競争がますます激化しています。
人材紹介業のM&A事例
人材紹介業のM&A事例を以下にまとめます。
### 大手人材紹介会社によるM&A
– リクルートホールディングス、パーソルホールディングス、パソナグループは、多くのシェアを占めています。中小規模の人材紹介会社を買収し、業界再編を加速しています。
### 具体的なM&A事例
– ウィルグループによるDXHUBへの事業売却:
– ウィルグループは、外国人向けモバイルサービスに関する事業を吸収分割方式によりDXHUBに承継させました。既存事業とのシナジーが乏しいため、この事業の分割を決定しました。
– ライクによるデジタルディフェンスのM&A:
– ライクはデジタルディフェンスの全株式を取得し、連結子会社化しました。デジタルディフェンスが運営する3つの認可保育園との相乗効果を見込んでいます。保育事業の成長を目指し、地域に根ざした子育て環境の整備とノウハウの共有による価値向上を図るものです。
– SHIFTとバイリンガル人材紹介事業のM&A:
– SHIFTはWAHL+CASE事業をSHIFTグロース・キャピタルに簡易吸収分割にて承継しました。WAHL+CASEはスタートアップやテック業界のリーディングカンパニーを顧客とし、バイリンガルエンジニアや最新のスキルを持つ希少なIT人材の紹介に強みを持っています。顧客に卓越したバイリンガルエンジニアを提供でき、顧客の事業成長に新たな提案を提供し、顧客単価の向上に貢献できるとしています。
– フルキャストホールディングスとヘイフィールドのM&A:
– フルキャストホールディングスはヘイフィールドの全株式を取得し子会社とした。ヘイフィールドは不動産業界に専門特化した人材紹介事業を行っており、「宅建 Job エージェント」は高品質で顧客満足度の高い人材サービスを提供しています。ヘイフィールドグループに登録するスタッフの有資格・専門職へのステップアップや正社員などの雇用形態を求める方への最適な機会の創出を目指しています。
– リンクアンドモチベーションがiDAへリンクスタッフィングを譲渡した事例:
– リンクアンドモチベーションはリンクスタッフィングの人材派遣事業をiDAへ事業譲渡しました。リンクスタッフィングは営業・販売職に特化した国内人材紹介・派遣事業を行っています。リンクアンドモチベーションは子会社のリンクスタッフィングにおける国内人材紹介事業部門に集中するため、人材派遣事業のM&Aを行いました。今回のM&Aにより、グループ内の採用・育成してきた人材を、人材紹介事業へ再配置する方法で、収益体制の確立を目指します。
### 人材派遣会社のM&A事例
– ハイブリッドテクノロジーズがキャスレーコンサルティングをM&Aした事例:
– ハイブリッドテクノロジーズはキャスレーコンサルティングの子会社化を決定しました。キャスレーコンサルティングは情報処理システムに関する受託開発や労働者派遣事業を行っています。ハイブリッドテクノロジーズはキャスレーコンサルティングのノウハウやPM/コンサルティング人材を獲得し、既存事業である「ハイブリッド型サービス」の品質と安定性の向上を図るとしています。
– メイホーホールディングスがエムアンドエムの人材派遣事業をM&Aした事例:
– メイホーホールディングスはエムアンドエムが手掛ける人材派遣事業を譲受しました。エムアンドエムは岩手県で人材派遣事業や業務請負事業を行っています。メイホーホールディングスは東北エリアでの事業規模とシェア拡大を図るためにM&Aを行いました。
– ひろぎんホールディングスがマイティネットプラスをM&Aした事例:
– ひろぎんホールディングスはマイティネットプラスの全株式を取得して子会社化しました。マイティネットプラスは人材派遣事業・ITサポート事業・研修事業を行っています。ひろぎんホールディングスは人材派遣事業へ新規参入と業務軸の深化・拡大を目的としてM&Aを行いました。
– iDAがリンクスタッフィングの国内人材派遣事業をM&Aした事例:
– iDAはリンクアンドモチベーションの子会社であるリンクスタッフィングが手掛ける人材派遣事業を譲受しました。リンクスタッフィングは営業・販売職に特化した国内人材紹介・派遣事業を行っています。iDAはリンクスタッフィングの人材紹介業を強化すべくリソースを集中させ、高収益体制の確立を図るためにM&Aを行いました。
### その他のM&A事例
– SHIFTがEQIQのバイリンガル人材紹介事業をM&Aした事例:
– SHIFTはEQIQが手掛けるバイリンガル人材紹介事業(WAHL+CASE)を承継しました。WAHL+CASEはバイリンガル人材の紹介に強みを持っています。SHIFTはWAHL+CASE事業を引き継ぎ、顧客に卓越したバイリンガルエンジニアを提供し、顧客の事業成長に新たな提案を提供するためM&Aを行いました。
– ジェイフロンティアがAIGATEキャリアをM&Aした事例:
– ジェイフロンティアはAIGATEキャリアの全株式を取得し子会社化しました。AIGATEキャリアは医療人材紹介やコールセンター事業を行っています。ジェイフロンティアは医師・看護師・薬剤師などの医療業界に特化した人材紹介サービスを新規展開し、将来的には放射線技師・臨床検査技師・介護士などへの紹介領域拡大を図るためM&Aを行いました。
– ジェイエイシーリクルートメントがバンテージポイントをM&Aした事例:
– ジェイエイシーリクルートメントはバンテージポイントの全株式を取得して子会社化しました。バンテージポイントは外資系金融機関とコンサルティングファームに特化した人材紹介業を行っています。ジェイエイシーリクルートメントは世界11ヵ国で事業を展開しており、バンテージポイントのノウハウを活用して事業を拡大するためM&Aを行いました。
人材紹介業の事業が高値で売却できる可能性
人材紹介業の事業が高値で売却できる可能性についてまとめます。
### 売却価格の相場
人材紹介会社のM&Aの売却価格は、さまざまな要因によって左右されます。企業規模、業績、成長分野、地域的な要因、そして経済環境などが売却価格に大きな影響を与えます。
### 売却価格の算出方法
売却価格は、EBITDA倍率(営業利益ベースの倍率)や売上高倍率を用いて算出されます。一般的には、EBITDAに対する倍率は3倍から6倍程度ですが、成長率が高い企業や特定の市場で強い競争力を持つ企業の場合、7倍から10倍の高倍率で取引されることもあります。
### 企業規模と売却価格の関係
大手の人材紹介会社は既存のクライアントベースが広く、リピートビジネスや長期契約が多いため、売却価格が高くなる傾向があります。さらに、事業の多角化やIT技術の導入による効率的な業務運営を行っている企業は、より高い評価を受けることがあります。
### 地域的な要因と市場環境の影響
都市部や成長が期待される地域では、労働市場が活発であるため、より高い売却価格がつくことが多いです。一方で、地方や人口減少が進んでいる地域では、売却価格が相対的に低くなる傾向があります。
### 買い手の視点とプレミアム
買い手側にとって、M&Aは迅速に事業を拡大する手段となるため、戦略的な目的を持つ企業はプレミアムを上乗せしてでも買収を進めることがあります。特に、既存の事業にシナジー効果を期待できる場合や、新たな市場に参入するための足がかりとして重要な買収になる場合は、売却価格が高騰することがあります。
### 結論
人材紹介業の事業が高値で売却される可能性は、企業規模、業績、成長分野、地域的な要因、そして経済環境など、さまざまな要因によって大きく変動します。企業価値を正しく評価し、適切なタイミングで売却することが、成功するM&Aの鍵となります。
人材紹介業の企業が会社を譲渡するメリット
人材紹介業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです。
– 後継者不足を解消できる後継者候補がいない場合でも、M&Aによる事業承継であれば買い手企業が後継者(新たな経営者)となるため、自社の存続が可能です。
– 従業員の雇用を維持できる買い手の経営により存続するため、従業員の雇用も維持され安泰です。
– 個人保証から解放される債務も買い手に引き継がれるため、個人保証や担保差し入れは解消されます。
– 売却利益を獲得できる株式譲渡で会社を売却すれば、その対価をオーナー経営者が受け取り、人材紹介会社の規模・売上高に応じた売却利益を獲得できます。
– 事業の選択と集中が実現できる不要となった事業やその関連資産だけを選別して売却するのが可能で、経営状態が好転するでしょう。
これらのメリットにより、人材紹介業の企業が会社を譲渡することで、事業の存続、従業員の雇用維持、経営の効率化が図れます。
人材紹介業の事業と相性がよい事業
人材紹介業の事業と相性がよい事業は、以下の通りです。
– 総合型のサービス提供: 人材紹介業は、総合型のサービス提供が適しています。総合型の人材紹介会社は、幅広い業種・職種を扱うことができ、求人掲載数も多いです。総合型の人材紹介会社は、事務職や営業職など幅広い業種・職種を扱います。
– 特化型のサービス提供: 特定の領域に特化した人材紹介も有効です。特化型の人材紹介会社は「マスコミ・広告」「看護」「保育士」など特定の領域に絞った人材紹介を行うことができます。特化型の人材紹介会社は「マスコミ・広告」「看護」「保育士」など特定の領域に絞った人材紹介を行います。
– キャリアカウンセリング: 人材紹介会社は、求職者に対してキャリアカウンセリングや応募書類の添削サポートを行うことができます。求職者に対しては、キャリアカウンセリングや応募書類の添削サポートを行います。
– 企業へのコンサルティング: 人材紹介会社は、企業に対して候補者の紹介や面接スケジュールの調整、求職者との勤務条件のすり合わせなどのサポートを提供することができます。企業に対しては、候補者の紹介や面接スケジュールの調整、求職者との勤務条件のすり合わせなどのサポートを提供します。
– KPI管理: 人材紹介業で成果を出すためのKPI管理が重要です。KPI管理の方法を設定・改善し、管理することで、効率的なマッチングを実現できます。KPI管理の方法を設定・改善し、管理することで、効率的なマッチングを実現します。
これらのポイントを踏まえると、人材紹介業は総合型や特化型のサービス提供、キャリアカウンセリング、企業へのコンサルティング、KPI管理が重要な要素となります。
人材紹介業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、人材紹介業の企業がM&Aを依頼する際におすすめの理由がいくつかあります。まず、譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点が大きな魅力です。これにより、コストを抑えつつ、安心してM&Aを進めることができます。さらに、豊富な成約実績を持っており、多くの企業様にご満足いただいております。人材紹介業の業界にも深い知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確なアドバイスを提供することが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。